《完結》うp主と彼女たちの妄想話。   作:雷電p

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やさしさにあふれる少女と――――――――俺

 

 新春―――――

 

 

 正月の機運も通り過ぎ、世の中もようやく落ち着きを取り戻し始めた今日この頃。 こたつの中で身を丸め込ませていたであろう肢体も、これから冬本番となる極寒の中に放り込まれて、身震いしながら背筋をピンッと伸ばすことだろう。 学生やら社会人やら、その他諸々の生き物たちにとって、この季節ほど辛いモノは無いはずだ。

 

 俺たち人間は特に寒さに弱い。 いくらクマみたいに冬眠をする変温動物とは違って、一年中、体温をコントロールして活動できる恒温動物であるにしても辛いものだ。 いや、活動できる故に辛いのかもしれない。

 夏場なんて、ただ暑いだけでよっぽどのことがない限り問題など起こりやしない。 だが、冬場は違う。 冬の寒さは体内外全身すべてに支障を与えさせるモノで、筋肉が冷えて固まったり、肌は寒さと乾燥で切れてしまうことがしょっちゅうだ。 身体を伸ばしたり、ハンドクリームで肌を労わったりするなど手入れは欠かせない。 おまけに、極寒の凩が体力を奪う。 つくづく、良いところがない季節であると言える。

 

 

 はぁ、と溜息を吐くと白いモヤがゆらゆら揺れながら上がっていく。 そして、気が付かないうちに空の色と同化して見えなくなる。 そうした冬ならではの現象を見つめながら空を仰ぐ。

 雲ひとつない澄んだ空。 しかも、漆黒に塗り潰され、添えられたかのように置かれた満月が煌々と彩る夜空が何とも美しかった。 砂のように散らばる星々もまたいい。 大きいものから小さいものまで千差万別の星々が一望できることに満足してしまう。 さっきまで、嫌々言っていた寒さも感じることさえ忘れてしまうほどに見惚れてしまう。

 

 なんだ、冬も捨てたもんじゃないな……

 

 

 なんて、愚痴をこぼしてしまうのだが、この他にも俺はこの冬に特別な想いを抱いていることがある。 それはとっても大切な―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ! こんなところにいたの? 寒いから風邪引いちゃうよ?」

 

 

 

――――そう、心配そうに駆け寄ってくる彼女こそ、欠かせない存在なのだ。

 

 

 俺と同じく青い縦縞模様の浴衣を締めて、その上に赤い羽織りを着て温かくしている彼女。 暖房の効いた部屋から外に出たからブルッと身を震わせて、寒そうに縮み出す。 寒いよぉ…と言いながらもトコトコと小さなステップを踏んで近寄ってくるので、無理に戻れとも言えない。 俺は片方の腕を広げて胸を出し、彼女を迎える準備をする。 それに気が付いたのか、彼女は元からそこにあったと勘違いしてしまうほど、俺の胸の中にストンと収まった。 俺と彼女とでは体格差がかなりあるため、俺が彼女を包み込むような姿となる。 また、自然と見上げるいわゆる上目遣いをして俺を見るのだった。

 

 そんな彼女の背中をさすりながら少し微笑んでみる。

 

 

 

「―――っと、あぁ、花陽。 ちょっと、夜空が綺麗でな」

「えっ……わぁぁ……! 本当に綺麗……!」

 

 

 夜空に指を指して位置を確認してみせると、花陽は目をきらきらと輝かせて嬉しそうにする。 こっちも違った意味で綺麗な夜空を描いているのだが、それは俺にしか見ることのできないものかもしれないな。

 

 

 

「そろそろ中に入ろうか?」

「うん…ちょっと、名残惜しいけどね」

「大丈夫さ、客室の窓からでも見えるはずさ」

「そっか! うん、それもいいよね♪」

 

 

 嬉しそうに声を弾ませる花陽を傍らに、俺と身体を重ね合わせながら屋内に入る。 ぽかぽかとした温もりを感じながら、この後のことに気持ちを高まらせていたのだ。

 

 

 何故なら、今日は2人だけの旅行に来ているのだから―――――

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

 花陽と知り合ったのは今から数年も前のことだ。 きっかけをつくってくれたのは、知人である西木野真姫からだ。 真姫とは、数年来もの付き合いでちょっとした幼馴染みたいなヤツだ。 そんな真姫が高校に上がった時、当時流行していたスクールアイドルに所属することとなり、その流れで友人が出来たのだ。

 

 その友人こそ、小泉花陽だ。

 花陽と初めて会った時、小鹿のようにびくびく震えてて、俺と目を合わせようとすると泣き出しそうになるくらい気弱な女の子だった。 花陽の友人である星空凛もいたのだが、真姫と一緒で花陽とは真逆の性格だった。

 

 しかし、意外なことに俺はそんな花陽に惹かれていった。 ド直球に言ってしまえば、一目惚れなのかな? 彼女たち3人を並べて見て、一番印象に残ったのが花陽だったからそうかもしれない。 でも、そんな曖昧な言葉では言い表すことのできない魅力が彼女にあった。 一言で言ってしまえば、かわいい。 他の2人とは違うかわいさに惚れ込んで行ってしまったのだ。

 

 

 初対面から何度か交友を続け、なんとか2人だけで話をすることが出来た時、確信してしまったのだ。 あぁ、この子と一緒に居たいと。

 やんわりとした癒しの笑み、絶えることがないやさしさ、あどけないかわいさ―――それらが俺の心に突き刺さり、気持ちを押し進めだしたのだ。 そして、彼女のために出来るだけのことをしようと決心させるにまで至らせたのだ。

 

 

 それからというモノ、俺たちは時間さえ合えば逢って話をしたり出掛けたりしていた。 さすがに同じ学校ではなかったし、スクールアイドルをやっている彼女に与えられた時間と言うモノは限られたモノだったはず。 なのに、それを惜しむことなく、いつも屈託のない笑みを浮かばせて俺と一緒に居てくれた。

 だから俺も、彼女のやさしさに応えるように、彼女の抱えている悩みなどの相談にのったりした。 その中でも一番の難題だったのが、スクールアイドルμ’sを続けるか否かという選択。

 

 それはちょうど、こんな冬の寒い日の夜だった。

 電話で急に呼び出された俺は、ただ呆然と立ち尽くして夜空を見上げていた彼女を見て戸惑った。 いつもとは違う雰囲気、なにやら重く圧し掛かるかのような空気に圧倒されそうになった。 けれど、何を!という気前で立ち向かって花陽の相談に乗ったのだ。

 

 人気絶頂中だったμ’s。 強豪校を打ち負かして一躍、時の人となっていた花陽たちが、この先続けるべきか悩んでいた。 その選択はメンバー全員に与えられていて、花陽もその一人だった。 アイドルが好きで、花陽自身もアイドルをやることが好きだった故に、自分たちのグループがなくなることに戸惑いを隠せなかった。

 花陽が初めて勇気を振り絞ってやり始めたグループ……その想いと言うのは、部外者である俺には到底量り尽くすことが出来ないほどに違いなかった。 そんな想い入れのある大きな決断に、俺が入り込んでいいのだろうか? 当時はそう思っていた。

 けど、俺だからこそできることがあるんじゃないかって思い、俺から言える最高の言葉で花陽を勇気づけた。

 

 

『花陽が……花陽たちが見せてきた姿は、今でも俺の中で鮮明に生き続けている。 グループを残して、また新たな景色を見せたっていい。 たとえ、グループが解散しようとも花陽たちが残してきたモノは決して色あせることも廃ることもない。 辛いことかもしれないが、あとは、花陽が決めることなんだ………! がんばれ!』

 

 

 今思えば、なんて変な台詞なんだろうと苦笑いしてしまう。 けど、そんな言葉でも花陽は喜んで受け止めてくれて、あの時自分の気持ちを伝えられたって言っていた。 何を選択したのか……それは言わずとも、今の歴史が教えてくれる……。 彼女たち…花陽が選択した道は、決して間違いではなかったと証明されているのだから………。

 

 

 

 その年の卒業シーズン、俺は何故か花陽の通う音ノ木坂に居た。 まだ、1年だったし、他校の生徒なのにどうして敷地に入っているのか全く意味不明だ。 だが、それは花陽から呼ばれたというのが理由だった。 どうしても俺に伝えたいことがあると言って、満開の大きな桜の木の下で佇んでいた。

 

 

 

 すると、春風が吹き荒れると共に現れた彼女から―――――

 

 

 

 

 

『ずっと、あなたのことが好きでした―――――花陽と付き合ってくれますか―――――?』

 

 

 涙ながらに、ぎゅっと籠った決意を基にした言葉が俺に望まれたのだ。 ハッキリ言って、心臓が飛び出てきそうな驚きがあった。 まさか、彼女からその言葉を聞くことが出来るだなんて思っても見なかったからだ。

 気持ちを大いに乱しながらも、俺は気持ちを整えて―――――

 

 

 

『俺も――――花陽のことが大好きだ! 喜んで受けさせてもらうよ!』

 

 

 

 花萌ゆる新春に、止まることのない感情を曝け出しながら、俺たちはあつい抱擁を交わしたのだった――――

 

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

 そして、現在―――――

 

 

 

「はい、あーんして?」

「うん、あ~…ん……う~ん! おいしいですぅ♪」

 

 

 旅館の部屋にあった饅頭をお互いに食べ合いをしているのだった。

 

 

 付き合い始めてからもう何年も経ち、高校も卒業して大学に入り、その大学も今年で卒業する直前にまで差し迫っていた。 それなのに、こんなところで呑気に遊び惚けてもいいのかと揶揄させられるかもしれない。 だが、安心してくれ、俺たちはもう何もしなくても自動的に卒業することが出来る状態にあるのだ。 だからこうして、早すぎるかもしれないが卒業旅行に来ているわけだ。

 本当ならば、俺たちの他に真姫と凛も来ることとなっていたが、俺たちのことを気遣って2人だけで来ることになったのだ。 まあ、そのおかげで楽しくやっているのだけどな。

 

 

 

「ねぇ~、もっと食べさせて下さいよぉ~……」

「はいはい、ちょっと待っててな……」

 

 

 すっかり甘えん坊状態になった花陽は、俺にべっとりと身体をひっつけながら饅頭を食べたいとねだってくる。 無理に食べさせないようにすると、とても切なそうに悲しそうな表情をするか、ぽこぽこと軽く叩きながら甘えた口調で催促してくるのだ。 個人的には、この3種の表情をすべて見てみたいと言う気持ちであったり、また新たな表情を発見してみたいと思うところもあったりする。

 でも今のところは、この嬉しそうに俺の指から食べる様子が何とも言えないでいる。 時々、誤って俺の指まで口の中に入れるのだが、痛くない程度の甘噛をしたりするので割と気に入ってたりする。

 

 だからこうして―――――

 

 

 

「花陽、あーん」

「あ~…ん……んんん~幸せですぅ♪」

 

 

 この嬉しそうな表情に惚れ込むのだった。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、花陽からお風呂に入っていきますね」

「あぁ、ゆっくり入っておいで」

 

 

 餌付け(?)に一段落つくと、花陽は先に温泉に浸かりに行った。 この時間だと、確か女湯が優先だったと思うので、俺は後からということで先にさせた。

 こんな寒い日は温泉に限るもんなぁ……そう思いつつ、畳の上で仰向けになって寝るのだった。

 

 

 

 

「――――ん? メールか?」

 

 

 ふと、自分のスマホに受信ランプが点滅してたので、すぐにとって確認してみた。

 

 

 

「ん、真姫からか……どれどれ?」

 

『今日は一段と寒くなるようだから、くれぐれも花陽を風邪ひかせないようにしなさいよ!』

 

「……まったく、わかってるさ……」

 

 

 何とも過保護なメールだ。 とは言っても、今日始まったことではない。

 

 俺たちが付き合い始めた頃から執拗なほどに真姫からメールが届くようになった。 それのどれもが花陽のこと。 ほんと、お母さんかよ! と言いたくなるようなことを次々と受信してくるので、ちょっとした悩みの種だったりしている。 逆に、時々送ってくる凛のメールがかなり砕けた内容だったりするので、ちょうどいい具合に気持ちのバランスを保ってたりする。

絶妙すぎるんだよなぁ……まったく。

 

 

「……と、思っていたら凛からも来た!」

 

『かよちんとの2人っきりの旅行はどうかにゃ? とっても楽しんでるかにゃ? だとしたら、凛たちを褒めてもいいんだよ! 凛たちが取り計らったんだから感謝してもいいんだよ?(チラッチラッ

 

  P.S.

 おみやげ楽しみにしてるにゃぁ~♪』

 

 

「ふふっ、ああ、とっても感謝してるぜ」

 

 

 こういう感じの少し笑える内容のモノを送ってくれるから気持ちが楽になる。 それに、何やかんや言って、今回は2人のおかげでここに来れたんだ。 お礼を言っておいかないといけないな。

 

 返信ボタンを押して、新規にメール文を作成し始める。 簡単だが、それなりに気持ちが伝わる文だと思うので、これでいいや。

 

 

「――――っと、よし。 送信っと。 これで一仕事終えたな。 さて、残り時間何しようか……?」

 

 

 そう、天井板の木目でも眺めようとした時だった――――

 

 

 

 

 

 

「あっ……あのぉ………」

 

 

 ゆっくりと襖が開いたと思ったら、花陽が顔を出したのだ。 しかも、少し困ったような表情でだ。

 

 

「ん、どうした花陽?」

「そのぉ……実はね………」

 

 

 もじもじとじれったく言葉を濁している。 本当にどうしたんだろう? 逆に心配になってくるのだった。

 

 

 

 だが、次の瞬間、とんでもない言葉が飛び出てくる―――――――

 

 

 

 

「実は………お風呂が混浴用しか空いて無かったんです………」

「…………えっ………?」

「それで………もしよかったら……一緒に入りませんか………?」

「…………えっ………???」

 

 

 

 こん……よく………だとっ………?!!

 

 思わず目をギンギンに見開いてしまうくらいに驚いてしまった。 そんなことがあるモノなのか? と世の中の常識に訴えかけてしまう。 だが、これは現実なのだと、胸の動悸が告げてくる。

 

 

 

 さて、俺の選択は――――――

 

 

 

 

 

 

「わ、わかった……それじゃあ、一緒に入ろうか………?」

「………! うん……♪」

 

 

そうして、俺たちは一緒に手を繋いでゆっくりと道を歩いてゆくのだった――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――あと……利用する人は他に居ないみたいで……私たちだけの貸し切りみたいですよ……?」

「マジか…………」

 

 

 

 今回、初めてお互いの肌同士を見せ合い、尚且つ大人の慣れ染めをしてしまう夜となるのだった―――――

 

 

 

 

~fin~

 




ドウモ、うp主です。


花陽!!今年は間に合ったよーーー!!え?1時間遅れてるって?いやいや、1/17の25時じゃないか!セーフだよ、セーフ…………



………ごめんなさい………。


今年こそはちゃんとした時間に投稿したかったのですが、仕事上忙しく執筆できる時間が無かったというのが現実でした。
しかし、こうしてかたちにすることが出来たのはよかったと思います。やっぱこうじゃないとね………?


そんなこんなで、この小説も次で最後。海未ちゃんです!!!
どんな話になるのか、それは俺の妄想が頑張ってくれるはずです!


ではでは、次回もよろしくお願いします!!
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