~Aqoursの生誕祭~   作:ほおずきん

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お待たせしました。

今週は梨子とルビィの生誕祭ですね。
作者としてはこんなに詰め詰めにしてほしくなかったのですが……(笑)

まぁ何はともあれ2作品ともしっかり書き上げておりますので是非ご覧ください。



~桜内梨子生誕祭~

 もう桜が咲いている、まだ2月下旬なのになんだか少し季節外れ感があるかな。

 でもなんだか私たちの卒業をいち早くお祝いしてくれてるみたい。私はお祝いなんてされなくてもいいからこの時間がもっと長く続いてほしいと思うのだけれど……。けど時間は進むのをやめてくれません。

 桜という文字は私の苗字にも入っていて少し特別な感覚を抱いています。

 そんな桜が咲き誇る季節は出会いと別れの季節ともいわれていて入学式や進級、卒業式に合わせて桜は咲いてくれます。

 もう私たちも卒業か……なんて思ったりもして。なんだか今まで君と過ごしていた時間がまるで昨日のことのように思い出されます。

 

「あの……一緒に帰りませんか?」

「おう、もちろんいいぞ!」

 

 勇気を出して振り絞った一言、君にうまく届いて私の願いの一つが叶ったみたいです。

 

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「なぁ梨子、まだ2月なのに桜咲いたな……。今年は早いって言ってたけどこんなに早いなんてなぁ」

 

 隣を歩いていた藤谷 悠人(ふじや ゆうと)君が私に話しかけてきます。

 ついこの間も悠人君は学校で『梨子! 今年の桜の開花は早いらしいぞ! 梨子もうれしいだろ!』なんて私に話しかけてきてくれました。私は悠人君やクラスの人との別れがとても惜しかったのに悠人君は対照的にとてもうれしそうでした。

 

「ふふっ、そうだね」

「なんだよ梨子、なんで笑ってるんだよ」

 

 私がクスッとほほ笑むと悠人君は納得がいかない様子で少しふてくされてました。こうして初めて一緒に帰ることができたり悠人君の知らない一面を見ることができたり今日の私は幸せ者です。

 

「だって悠人君それこの前も言ってたよ? 何度も言われる私の身にもなってください」

 

 少し私がいじわるを言うと悠人君は何も言わず腕を組んで考え出してしまいました。

 でもやっぱり同じことは何度も言われたくないかな……。別の反応しなきゃいけないかなって思っちゃってだんだん反応に困ってしまうし……。

 

「いやーだってうれしくないか? 桜が俺たちのことを祝福してくれてるみたいでさ!」

 

 悠人君は少し考えた後、うれしそうに両手を広げて私の前に立ってそういいます。

 だけど私はどうしても別れがつらくてそんな気分にはなれませんでした。

 

「……うん、そうだね」

「なんだ、梨子はうれしくないのか?」

 

 私が少し詰まったように返事をすると悠人君は心配そうに私に問いかけてくれました。もちろん卒業することはおめでたいことなのだけれどお別れか卒業かを天秤にかけるとやっぱり私には別れのほうが辛く感じてしまったのです。

 

「私は……みんなと離れ離れになっちゃうことのほうが悲しいかな」

 

 まだ考えが纏まらなくてうまく言葉にすることはできないけど、時間は待ってくれません。あまり考えていると悠人君との楽しい時間があっという間になくなってしまいそうな気がして……。まだこうして心の中で考えていてもいい言葉が見つかりません。とにかく悲しいし寂しかったんです。

 

「そんなこと言うなよ! またいつか一緒に集まればいいだろ?」

 

 悠人君には悲しさやさみしさといった感情はないのでしょうか、決して悲観的にはならず楽観的です。反対に少し気持ちが沈んでいる私を察して励ますように言葉を投げかけてくれます。

 もちろん悠人君は大学生になっても連絡を取り合って同窓会などをしてこうして会えばいいと言っているのだと思いますが私にとっての会うということは今こうして悠人君と二人きりで帰ってるこの状況しかないのです。もうこの状況にはどう足掻いても戻ることは一生できないのです。そうやって私は悠人君に伝えたいのですが、それがうまく言葉にして伝えることができないのです。

 ってせっかく勇気を振り絞って悠人君と初めて一緒に帰ることができたのにこんなに暗い雰囲気だといやだよね……。しっかりしなきゃ。

 

「そう……だねっ」

 

 そうやって振り絞った言葉はまた詰まってしまい、いつの間にか私の目からはポロポロと涙があふれてきてしまいました。

 

「あれ? どうして私泣いているんだろう? おかしいよね、せっかく悠人君と一緒に帰ってこうして楽しい話をしているのに、おかしいよね……」

「梨子、大丈夫か? ごめんな、そんなに悲しかったんだな……」

「ううん、大丈夫。ごめんね、急に泣き出したりなんかして」

 

 私が急に泣き出しても悠人君は困惑することもなく優しく話してくれました。

 

「それじゃあ、私の家こっちだから……また明日」

「おう、また明日な。」

 

 分かれ道でお別れを告げた後

 

「梨子! 明日はちゃんと笑顔で学校来るんだぞ!」

「うん! ありがとう悠人君」

「やっぱりお前には笑顔のほうが似合ってるし、そのほうが可愛いぞ!」

 

 私も今日の最後は笑顔でお別れしようと思い、笑顔を作って返事をすると悠人君はわけのわからないことを口にしてきました。私が可愛いなんてありえません。けど好きな人に可愛いって言われるのはなんだか気分がいいです。

 

「ははっ、梨子顔赤いぞ!」

 

 悠人君に改めて声をかけられ、はっと我に返りました。

 ところで今悠人君は私の顔が赤いと言ったのでしょうか……? 悠人君の言葉が確かならば、と思い自分の顔に手を当ててみると自分の顔が自分の顔でないように熱かったのです。

 そんな顔を悠人君に見られたくないと顔を手で隠しながら指の隙間から悠人君の顔をチラッとみると悠人君は今まで私と話していた時では考えられないほどお腹を抱えて笑っていました。

 そんなところをみると私も自然と笑みがこぼれてきて今までのことがどうでもよくなったかのような気持ちになりました。

 

「悠人君も明日はちゃんと笑顔で来てね! 今日は楽しかったよ、ありがとう!」

 

 悠人君は少し驚いたような顔をしましたがすぐニコッと笑顔になり親指を突き立て「おうっ!」と言いました。

 こうして悠人君と別れて家に到着しました。

 家に帰って食事やお風呂を済ませてベッドに入ると今日のことが思い出されました。

 明日はちゃんと笑顔でみんなと会えるかな、笑顔でさよならいえるかな。

 そんなことを考えていたらまた自然と涙があふれてきてしまいました。

 でもこの涙は明日みんなと笑顔でさよならを言うための涙なのかなって思うと、とてもすがすがしい気分になりました。私は涙を拭いて眠りにつきました。

 

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 卒業式の当日私たち卒業生は正装をして胸に赤いバラを身に着けています。

 正装と言っても学校の制服なのですが……。

 普段制服の第一ボタンを開けている男の子も上までボタンをぴっちり閉めて、女の子もいつもはスカートを上げて短くしていますがスカートをきちんと履きこなしていてお淑やかです。

 私はいつもスカートを上げたり変な着方をしたりしていないのでいつも通りの制服と何も変わりはないのですが、胸についているこの生き生きとしたこの赤いバラがいつもの私とは違うことを教えてくれていました。

 

「おう、梨子」

 

 受付を済ませて私が教室に入ると男の子の輪の中心になっていた悠人君が真っ先に話しかけてきてくれました。

 

「おはよう、悠人君。ほかの子たちとしゃべっていたのはいいの?」

「もちろん、そんなことより昨日約束した梨子の笑顔のほうが大切だ。いい顔してるぞ? 大丈夫そうだな」

「うん、そういう悠人君も。今日はいい式にしようね」

「おう! 最後までお互い笑顔だぞ!」

 

 そういって悠人君はまた男の子たちの輪に入っていきました。

 男子たちには「なんだよあれ」といろいろ言われているみたいでしたが私は悪い気がしませんでした。

 だって好きな人と学校で一番最初にしゃべれたのですから。

 そういう私も席に着くと仲のいい女の子たちから迫られて「なんか悠人といい感じだったね! なにかあったの?」なんて言われたけど、私は「ううん、なんでもないよ。いつも通り」って言って女の子たちからの質問を濁しました。きっと悠人君もそうしていると思います。

「ふーん、そっか」なんて女の子たちも納得していない様子ではありましたがそれ以上言及はしてきませんでした。

 しばらくすると担任の先生が部屋に入ってきて、いよいよ卒業式が始まるということや私はこのクラスを持つことができてよかった。などと言ってくれました。もうすでに涙を流している子たちが数人いたけれど、私はぐっとこらえました。だって笑顔でいるって約束したから――

 

 式が始まって卒業生が入場するときお母さんとお父さんの顔をチラッと見ることができたけど二人とも泣いていました。

 そりゃあ娘の成長する姿を見たらどんな親でも泣くよね……。

 心の中でお母さんとお父さんにしっかりとありがとうを告げて席に着きました。

 私の場所は悠人君の後ろ姿がちょうどしっかり見えるという最高の場所でした。

 神様が祝福してくれて用意してくれたのかな、って練習の時から思っていました。

 ありがとう……。さようなら悠人君。

 悠人君の背中に心の中でそうつぶやくとなんと悠人君がこちらを振り向きました。その顔はとても暗く、私の言ったことが聞こえたような顔でした。

 今は学年代表の人が卒業生を代表して言葉を述べています。

 その中にあった『3年前に私たちを迎えてくれた桜並木は今日は送りだすように咲き誇っています』というフレーズに私は、はっとしました。

 私が3年前の入学式の日に初めて見た満開の桜……。あれから私はどれだけ成長することができてどれだけいろいろな人と出会うことができたんだろう。

 そういえば悠人君と初めて出会ったのもあの満開の桜が咲いている日だったなぁ。

 私の横を通り過ぎて行った君を一目見て私はきっとこの人のことが好きになるんだろうって思いました。

 けどそれは一目ぼれとは違う現象で、でももちろん根拠なんてないし理解なんてできないくらいおかしい話だけどその時思ってしまったし今現在、実際に悠人君のことが好きなのだから当時の私は間違っていなかったのでしょう。

 1、2年生の時は悠人君と同じクラスになることはなかったけれど、3年生になって初めて悠人君と同じクラスになれた時はとてもうれしくてそこから学校に行くのが毎日楽しみになったり、人間関係もうまくいったりしました。

 だけど内気な私は悠人君と話す機会もあまりなくて、うれしさと同じくらいそのことが辛くもありました。

 けど悠人君を眺めているだけの日々にも慣れて、つい先日ようやく一緒に帰ろうと言える勇気がついたところでした。時期的には遅かったしもっと早くに言えていたらたくさん悠人君と帰ることができたのかな、なんて思いますが一回だけでよかったような気もします。だって私の心臓が持ちそうにないから。

 

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 式を終えてから友達と写真撮ったりいろいろ話したりするから先に帰っていて、と両親に告げて1時間ほどしてからようやく友人たちとの積もる話も終えて、またどこかで会おうね、なんて言って。

 やっぱりさよならを言うと少し悲しいなって思って、なんだか家に帰る気分になれなくて、いつも家に帰る道とは違う道を帰っていたら……。

 

「あれ? 梨子じゃん、家こっちじゃないのになんでこんなところにいるんだ?」

 

 なんと悠人君と出会ってしまいました。

 なんだかこんな言い方すると悠人君に失礼かもしれませんが、まさかいるとは思っておらず、びっくりしてしまったので仕方ありません。

 

「いや、その、道! 道間違えちゃって……」

 

 なんとなくさみしかったから散歩していたなんてとても恥ずかしくて言い出せなくて。とっさにだた答えが道を間違えちゃった。どちらかといえばこっちのほうが恥ずかしい、かな……。

 

「ははっ、道間違えたなんて梨子らしくないな、帰れそうか? 送っていこうか?」

「ううん大丈夫、来た道戻ればいいだけだし。ありがとう」

「そうか、今日お互いずっと笑顔でいれたな。約束守ってくれたみたいでよかったよ」

「そういう悠人君こそ、途中で泣きそうになってたの私知ってるけどね」

 

 クスッと私が笑って言うと悠人君は不満げにしながらも笑っていました。

 

「それじゃあ、また会おうな」

「うん、またどこかでね」

 

 そこで私は悠人君に背を向け家へと歩き始めました。最後に話せたのが悠人君でよかった……。

 もう後悔はありません、そう思っていました。私が一方的に好きで、会わなくなればもう好きでなくなるだろう。なんて甘い考えをもっていました。会わなくなれば好きじゃなくなるなんてそんな気持ちあり得ません。

 少し歩いてしまった道を振り返っても彼はいません。

 降りてきたこの坂道を走るしかありません。もう友達のままで遠くから君のことを見て満足している私は嫌なんです。今のままさよならして後悔したくありません。

 

「ハァ、ハァ、やっぱりちょっと待って! 悠人君!」

 ああ、よかった……。君に言えそうだ。

「私っ、私ね! あなたのことが――――――」




閲覧ありがとうございます。
いかがだったでしょうか。

それではルビィ生誕祭でお会いしましょう。
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