べート・ローガがヘスティアファミリアに入るのは間違っているだろうか【リメイク版】 作:爺さんの心得
エピローグ前のお話。全体的にモンスターの戦闘の終わり際を中心に書きました。
ベートきゅんの出番が少ないです!!!(絶望)
「【ウィーシェの名のもとに願う】」
決意を顕にした妖精の口からーーー歌が零れる。その歌は、この現状であろうと美しく響き、耳を擽り、人々を幻想の世界にへと誘う、天使の歌のようだった。
その歌に気づいたベートは、食人花の攻撃を避けながら、妖精を振り返った。腹から夥しい量の血を流しているにも関わらず、彼女はしっかりと佇み、その凛とした姿を見せていた。
「【森の先人よ、誇り高き同胞よ、我が声に応じ草原へと来れ。繋ぐ絆、楽宴の契り、円環を廻し、舞い踊れ】」
その時、魔力に反応した食人花が数多の蔓を彼女に向けた。彼女を潰そうと、その鋭利な蔓を彼女に向けて放つ。
「レフィーヤの邪魔するなー!」
しかし、数多の蔓が彼女に攻撃をしようとした瞬間、それはティオナによって分断される。
他にも、ティオネが叫びながら引きちぎったり、ベートが俊敏な動きで烈断を起こしたり、アイズが魔法を纏って撹乱したりと、彼女らはなん人足りともこのモンスターを妖精に近づけさせなかった。
そんな彼女の成果もありーーー妖精の歌は、届く。
「【至れ、妖精の輪。どうかーーーー力を貸し与えてほしい】」
歌を紡ぎ終えた彼女は、息を吐くようにその曲名を零した。
「【エルフ・リング】」
刹那、光の爆散と共に鈴の音が木霊する。山吹色の魔法円は翡翠色に変化し、散った光は杖先に収束され、妖精を優しく包み込んだ。光のヴェールを纏う彼女は、目を瞑り、魔力を集中させた。
「【ーーー終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に
完成した筈の魔法にさらに上乗せし、別種の魔法を構築する。魔力が格段に上がり、食人花に狙われる可能性があるにも関わらず、彼女はさらに魔力を収束させていく。
彼女は、王女のように、優雅に気高く、美しく戦うことは出来ない。いつも迷惑をかけ、守ってもらっているばかり。王女のように並行詠唱も出来なければ、どんな事が起きても冷静に行動することさえ出来なかった。
そんな彼女でも、評価されるところがあった。それは彼女にしかあらず、この二つ名を名付けるきっかけとなったもの。
「【閉ざされる光、凍てつく大地】」
ーーー
彼女の種族、『エルフ』の魔法に限り、詠唱及び効果を完全把握したものを行使する事が出来る、前代未聞の
その魔法に因んで名付けられた二つ名はーーー「
今彼女が歌っているのは、エルフの王女ーーー【
「【吹雪け、
極寒の吹雪が放たれ、隙も与えずに全てを凍てつく、王女しか持たない無慈悲で最強の攻撃魔法がーーー今、歌と共に放たれる。
「【ウィン・フィンブルヴェトル】ーーーーーッッ!!」
直後、レフィーヤ・ウィリディスの放った三条の吹雪が、食人花に襲いかかった。
***
ああ、分かっている。あの人の隣に立ちたいというこの思いが、無駄な思いだということくらい。
吹雪が放たれる最中、レフィーヤは一気に消耗していく精神力を感じながら、悔しさに歯噛みした。
自分はいつも、誰かの迷惑になっていた。態々師として就いてくれた王女にも溜息を零され、一喝され。姉妹のアマゾネスや金髪の少女にはいつも助けられる、そんな冒険が嫌だった。
ーーーもっと自分が、しっかりしていれば。
こんなモンスターの戦いも、楽に終えれたかもしれないのに。
アイズの剣が折れずに、もっと優勢になっていたかもしれないのに。
ーーー
(もっと、もっとーーー!)
あの凶狼に負けないように。
『雑魚は変わろうともしねぇ』
ああ、全くその通りであろう。
レフィーヤはいつも自分で責めてばかりで、その先に進む事が出来なかった。
ああ、認めよう。彼の言葉は的を射ている。
彼が弱者を嫌うのも、分かるかもしれない。
だから、そんな弱者にならない為に。
(ーーー私はもっと、強くなるっっ!!!)
いつか、あの人達と並べるように。
そんな夢を抱きながら、レフィーヤの意識は暗転した。
ーーー意識を失う前に、背中に仄かな暖かみを感じた。
事態が収束した。
レフィーヤの放った魔法が食人花を凍りつくし、そこにティオナ達が追い討ちをかけたことで、ここの騒動は沈静した。もうこの辺りにモンスターの気配は無いし、一先ず安心と言っていいであろう。
ベートは小さく息を吐きながら、倒れたレフィーヤの傍に寄る彼女達を垣間見る。あの大規模な魔法を放ったせいか、それとも血を流し過ぎたのか。恐らく両方に原因があると思うが、レフィーヤの顔は青白く、ぐったりとしていた。エルフのギルド員が慌てて回復薬を飲ませて、取り敢えず一命は取り留めたらしいが。
(……にしても、な)
レフィーヤの魔法の事も気になるが、問題は今回の騒動についてである。特に、今回出現した食人花は、異様であった。
(レベルも高かったし、数も多かった。それにあんなモンスター、ガネーシャファミリアが態々ダンジョンから連れてくるか……?)
連れてくるとしても、怪物祭に相応しい獰猛なモンスターを連れてくるに違いないであろう。それにあの食人花は連れてくるだけで一苦労であるし、瀕死の状態まで追い込むのは至難の技だとベートは考える。レベル5の冒険者が束になっても中々倒れなかったとなると、と考えたところで、ベートは眉を顰めた。
「……チッ、臭ぇな」
ーーーこのモンスター騒動、何か裏がある。自分には関係の無い、黒い事情が。
ふと、少女達はあの食人花と関係があるのではないかと思ったが、今彼女達に聞くのは無理であろう。ほとぼりが冷める時に聞こうにも、ベートの悪名で中々欲しい情報を得られないかもしれない。
(……まぁ、俺には関係ねぇし。忘れるか)
しかしこの件に関しては、ベートが介入する理由がない。
故にベートは楽な道を行く。この件に関われば、何かとベートにも因縁がつけられ、食人花のようなモンスターとも戦えるであろう。
強者のモンスターと戦えるのは嬉しい。ーーーしかし、関係の無い事柄に首を突っ込むのは正直面倒だ。
「……さて、駄女神の所にでも行くか」
最早、この広場に用はない。自身の主神の安否を確認する為にベートは歩き出したが、その時、視界の端にベートの目を引きつける光が差し込んだ。
「あ?」
ベートが視線を下に降ろせば、恐らく食人花の魔石であろう物が転がっていた。しかし、その魔石は何処か違っていた。通常の魔石は毒々しい紫色をしているが、この魔石はおどろおどろしい黄土色であった。
気味が悪い。ーーーしかし、あの食人花の事を少しでも知りたいのは事実。忘れようとは言ったが、僅かな情報を持っていても損ではないであろう。
(それに、これを拾えば、何かの交換材料になるのかもしれねぇ)
本当にそんな場に居合わせるのかは分からないが、念の為だ。魔石を拾い上げて仕舞ったベートは、改めて駄女神の元まで歩き出した。
****
地上のダンジョンとも呼べるダイダロス通りにも、モンスターは入り込んでいた。
突如迷い込んできたモンスターに、ダイダロス通りの住民は我先にと家に駆け込み、外の世界を自主的に閉ざしていく。未だ聞こえる喧騒に怯え、恐怖し、足が竦む。
『ここで、ステイタス更新をする』
その一方で。
ベル・クラネルは、一世一代の大仕事を果たそうとしていた。
『ベル君、君があのモンスターを倒すんだ!』
モンスターによってダイダロス通りの一角まで追い込まれた場所で、
『む、無理ですよ神様!僕が、そんな事ーーー!!』
無論、ベルは反論した。あのモンスターと自分との実力差は、天と地だ。叶う筈がないと。そんな事をするなら、逃げて他の冒険者に助けを乞うた方が良いと。
『ーーーここで君があのモンスターを倒さないと、さらに大きな被害が出る。だから、君があのモンスターを倒すんだよ!ここにいる冒険者は、君しかいないのだから!』
しかしへスティアは、それでも尚引き下がらなかった。
強情に粘るへスティアに、ベルは歯噛みする思いで、弱々しくへスティアに反論する。
『……でも、僕の武器じゃ、あいつに攻撃を通すことも……』
『攻撃が通ればいいのかい?』
その反論に、へスティアは食いつく。
え、とベルの呆然とした言葉に目もくれず、へスティアは背負っていたある『物』を、ベルに渡した。
ベルがそれに瞠目するのを見て、へスティアは自信ありげに最後のひと押しをする。
『その武器があれば、あのモンスターにも攻撃が通る。ここでステイタス更新をすれば、君はもっと強くなって、あのモンスターを倒すことがてきる!決断は今だ。もう一度言うよ、ベル君ーーーー君が、あのモンスターを倒すんだよ!』
己の手で光る漆黒の短刀を見詰めたベルは、主神の真っ直ぐな瞳と揺るぎないその思いに押され、力強く頷いた。
そして、今。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!」
ベルは、雄叫びを上げながら『シルバーバック』に疾走する。手には漆黒の短刀をきつく握りしめて。ボロボロになりながら、彼はそれを構えた。
『ーーッ!』
シルバーバックが、先程と同じように腕を振り下ろす。先刻まで、この冒険者はこれで根を上げていたのだから、今回もこの攻撃をすれば容易く事を終えることが出来ると、シルバーバックは野生の勘でそう信じていた。
しかし、そのシルバーバックの予想は大きく外れる。
ベルに向かって振り下ろされた拳。轟音と共に割れる石畳に満足気に頷こうとしたーーー刹那、視界の端に走る、白い影を見つけた。
『!?』
それは、ベルであった。
先程まで、惨めに歯向かい、逃げ回っていた、冒険者であった。
シルバーバックは瞠目した。どうして先程の攻撃でやられない、と。どうしてこいつは生きているのだ、と。
『ウアアアアーーーッッ!』
焦りが募ったシルバーバックのやけくそ気味の大振り。それもベルは躱していく。
何度も、何度も、何度も。先程の同じ攻撃を繰り返すも、それは軽々といなされていく。
何故だ、どうして当たらない。どうして奴は死なない!?そんな焦燥が徐々にシルバーバックを占める、その矢先。
シルバーバックは、英雄の兆しを見た。
体がとても軽く、動きやすい。
まるで、自分が自分でないみたいだ。とベルは自負する。
自分の動きに戸惑っているシルバーバックを見て、ベルは「自分は本当に進化している」と改めて自覚した。
たったの一度のステイタス更新でここまで進化する事が出来るなど、誰が思うのだろうか。
先程までとは比べ物にならない動き。体がついていけなくなるかも、という不安も密かにあったが、それも心配いらないようだ。
ーーー実を言うと、ステイタス更新で大幅に力が増大したとはいえ、ベルはあのシルバーバックには勝てないのだ。あのシルバーバックに正面から突っ込めば、ベルは間違いなく敗北する。それは揺るぎない事実である。
で、あれば。ベルに残された勝利条件とは。
余裕が出てきたベルは、自身のアドバイザーの言葉を思い出す。
『いい?ベル君。どんなに強大なモンスターであっても、そのモンスターには必ず弱点が存在する。これはどのモンスターにも共通して言える弱点なの。これを知っておけば、迷宮に潜っても生き残る確率は上がるし、モンスターも倒しやすくなるわ』
その、弱点、
しっかりと『モンスターの弱点』を確認したベルは、シルバーバックの大振りを避けて、その勢いのままシルバーバックの懐に潜り込む。
そして彼は、シルバーバックの胸部を見据えた。
『モンスター共通の弱点。それは、中に眠っている魔石を砕く事。それでモンスターは死に至る。大体のモンスターは胸の辺りに魔石があるから、覚えておいてね』
ーーーモンスターの命とも言える魔石を、砕く事。
それがベルに残された使命。ベルに残された勝利条件。
不意に、ベルは憧憬と冀望を思い浮かべた。自分よりも、遥か高みにいる彼らをどうしてここで思い浮かべたのかは分からない。
ただ、そこで思ったのは。
(ーーー僕は、冒険する事が出来る)
ーーーー瞬間、彼は短刀を構えてシルバーバックに突進した。
「うおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!」
勝てる、という絶対的自信と、死ぬ、という逃れられない恐怖。
それらを全部振り切るベルの雄叫びは、ダイダロス通りに浸透する。
狙うは胸部、モンスターの命!
ーーーそこを、破る!
進化したベルについていけれないシルバーバックは、彼が何をしようとしているのか、全くわからなかった。
ただ、これだけは分かった。
「う、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!」
ーーー自分は、負けたのだと。
直後、胸に破裂するような痛みが走り、シルバーバックは絶叫を上げた。
最後に彼が見たのは、憎たらしい程に澄んだ青と、
(レフィーヤちゃんにベートきゅん関連のスキルが出来ることは)ないです。へっへー!騙されたー!(ウザイ)
これ以上オリスキル作っちゃうと作者が(把握ミス等で)死んじゃう!ベルきゅんだけにするの!
この話を書くためだけに原作一巻を読み直しました。シルバーバックの戦闘は何度読んでも熱くなりますね……ベルきゅんの最初の脅威、シルバーバック。ちょっとというか結構変わったところがあるかもしれませんが、自分的には納得いっているのでもういいです(満足気)
次回はエピローグ、怪物祭終わりとなります。実はこの後の展開思いついてねぇ!!リリちゃん編は書こうと思ってるんですけどそれだけで終わっていいのかと!!ちょっとオリ話混ぜようかなと!、考えてましてね!!プロット考えてきますすいません!!
沢山のお祝いの感想ありがとうございます!頑張った甲斐がありました!これからもよろしくお願いします!ではいつもの。
ベート・ローガぁー!愛してるぅーー!!!!!