べート・ローガがヘスティアファミリアに入るのは間違っているだろうか【リメイク版】   作:爺さんの心得

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 最後のテストも終えたので投稿。実は最後の部分で凄い悩んでたなんて言えない……!



それぞれの思いを募り、新たな冒険へ

 

 

 

 

 

 ーーーモンスターの大規模騒動から、数日。

 

 あの後、ベートがベルの元に辿り着いた時には、既に決着が着いていた。『シルバーバック』を討ち取った後に、安堵によって数々の疲労が押し寄せて倒れたへスティアをおぶったベルに、ベートは丁度合流したのだ。

 疲労が回復したら直ぐに目が覚めるとのことなので、へスティアの事はベルに任せて、ベートはその間ファミリアの資金調達を行う事にした。ベルも動けない今、ファミリアを支えるのは自分しかいない。

 

 モンスターの騒動についてだが、第三者の介入によって引き起こされたものとされた。詳しい事は分からないが、モンスターの警備にあたっていたガネーシャ・ファミリアの冒険者数人が、全員倒れていたとの事。その隙をついてモンスターが解放された、というのが事件の全貌だという。

 その後にガネーシャ・ファミリアがどうなったのかは知らない。ベートには興味もない事であった。

 

 

 

 あの時拾った不気味な魔石を手で弄びながら、ベートは思案する。

 

 (ガネーシャ・ファミリアがどうなったのかは知らねぇが、あのファミリアだってそんな簡単に倒される冒険者じゃねぇはずだ)

 

 少なくとも、Lv4ぐらいはいたであろう。そのLvのものが簡単に倒されるとなれば、この事件を起こした者は彼らと同等のものか、またはそれ以上の者となる。

 

 (きな臭ぇな……やっぱ、これ拾うんじゃなかったな)

 

 不気味な魔石を見て、ベートは今更ながらの後悔に溜息を吐く。

 何かに使えるかも、と思って拾ってきたが、何となくこれを持っていると嫌な予感がして堪らなかった。

 ーーー売っぱらって金にした方が得かもな。

 

 「……金になるか、確かめるのもありだよな」

 

 よし、とベートは腰を上げ、外に出る。

 本拠地を出たベートは、それを懐に入れて足早に歩き出す。早くこれを処分して、楽になりたい気分であった。不気味な魔石といっても珍しいのには変わりないので、恐らく高値で買い取ってくれるであろう。それを全てファミリアの資金に回そう。

 そうしようと心に決めて、ベートはギルドの換金所に向かった。

 

 

 

 

 「ーーー買い取れないね」

 

 そして換金所の人間を、思いっきり殴りたくなった。

 不気味な魔石を手に換金所に出してみれば、たっぷりの時間を置いた後にこの一言。苛立ちが募っても仕方がない。

 

 「……何でだ」

 

 「見た事ないからだよ、こんな魔石。鑑定でもしないと駄目だね。時間はかかるけどやるかい?」

 

 「いい。時間の無駄だ」

 

 バッ、と魔石を懐に入れて、ベートは換金所を後にする。

 さて、本格的にどうしてしまおうか。ギルドで換金出来ないとなると、他にこの魔石を売れる所はない。あるとすれば、ならず者達が集まるダンジョンの街くらいだが、ギルドですら分からないとなると、あそこも難しいであろう。

 所持したままなのは大変危険な気がするが、売れない以上これは交換材料として取っておこう。

 「……潜るか」

 

 目的の無くなったベートは、丁度いいと迷宮へ行く事を決め、足を進める。ここまでの苛立ちの発散や資金集め、彼には色々と仕事がある。それを果たす為に、今日も彼は迷宮へと潜るのであった。

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

 「ぐぬぬぬぬぬぬ……!」

 

 その頃、レフィーヤは無念との勝負に打ち負けていた。

 自身のファミリアの『黄昏の館(ホーム)』、その一室で、レフィーヤは枕を抱き締めながら悔しい叫びを押し殺していた。時々、耐え切れずにバタバタと足を忙しなく動かす事もある。

 

 (ーーー悔しい、悔しい)

 

 その思いが、レフィーヤの心を隙間なく占める。

 モンスターの騒動、食人花との強制戦闘、そのどれもがーーー殆ど、レフィーヤは足を引っ張っていた。食人花の時は最後の最後で役に立ったのかもしれないが、殆どの場面、彼女は無様に地面に沈み込んで、後は皆に任せっきりだった。

 それが何よりも悔しかった。自分はまだ未熟という現実が、さらにレフィーヤを思い詰めさせていた。

 

 「……」

 

 だが、レフィーヤが悩んでいたのはそれだけではない。

 思い起こすは、食人花との強制戦闘。微睡みの中で朧気に見えた、あの人(アイズ)の仮の剣が折れる瞬間。

 それを狙ったのか、食人花の攻撃が彼女に直撃する……その直前に、一人の狼人(ベート)が、彼女を救った。

 その後は背中を合わせてのコンビネーション。強さも同等で、技量も自分と比べて遥かに高い。

 簡単に言えば……まるで、相棒。そんな雰囲気を、二人からレフィーヤは感じ取った。直感だが。

 

 (……もし、凶狼が私だったとしたらーーー)

 

 ーーー『大丈夫ですか、アイズさん』

 

 ーーー『レフィーヤ……!ありがとう……!』

 

 ーーー『ここからは私が援護します。アイズさんは体制を整えて、直ぐに攻撃準備に』

 

 ーーー『うん、ありがとう。レフィーヤに任せるね。信じてる、から。ーーー大好き、だよ?』

 

 「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………うへへ」

 

 自分と凶狼の立場を入れ替えて妄想を繰り広げたレフィーヤの頬は、完全にだれ下がっていた。少々余計な部分があったのは否めない。しかしレフィーヤはとても満足そうに枕に顔を埋めている。

 こんな事が現実に起こりうるはずがないと分かっていても、それがレフィーヤの動力源である。アイズ無しでは生きられない、そんな体になってしまったのだ。

 もしあそこで、アイズを失ってしまったら……そう考えるだけで、体が震える。

 

 (そう簡単には死なないと分かっていても、やっぱり怖い)

 

 あの攻撃が、アイズの急所(クリティカル)になっていたら。

 為す術もなくぶっ飛ばされて、地に伏せていたらーーーああ、考えたくもない。

 

 (その点に関しては、凶狼(ヴァナルガンド)に感謝ですね)

 

 今、丁度くしゃみを出しているであろう青年に、レフィーヤは取り敢えずの謝礼を心の中で彼に零す。

 

 「〜〜〜〜〜だから、悔しい!」

 

 強くならなければ。

 あの凶狼のように、憧憬(アイズ)の隣に立っても不自然でない程に鍛えて、強くなって!

 そして凶狼に言うのだ。『雑魚でも、彼女の隣になれたぞ』と。ざまぁみろ!と。

 雑魚も焚き付けられれば、凶暴な獣になるという事を、彼に思い知らせてやる!

 

 (さぁ、そうと決まれば自主練自主練!)

 

 今まで抱き締めていた枕を放って、レフィーヤは軽快に部屋の外に出た。

 目指すはダンジョン。己を高める為には、まずそこしかない!

 そこでまずは、並行詠唱が出来るようにならなければ。今まで度々とリヴェリアに鍛えられてきたが、実は並行詠唱を全く取得出来ていない。それもこれもレフィーヤ自身が未熟だったため。だから今日からは『ああ、また失敗した。もう嫌だ』とネガティブになる甘い自分に喝を入れる、そして必ずや並行詠唱をものにすると心に誓った。

 まずは一階層から。その後に徐々に下層に行って慣らしていこう。常日頃から言われていた並行詠唱の特訓。見ていてくださいリヴェリア様……!と、レフィーヤは固い意思を持って、『森のティアードロップ』を手に、バベルへと向かうのであった。

 

 

 

 

 そして神は、この娯楽を逃すわけがなかった。

 

 

 

 

 「あ」

 

 「あ?」

 

 ばったりと、森人と狼人はバベルの前で鉢合わせる。

 一人は己を高める為。一人はファミリアの資金集め(暇潰し)の為にバベルへと足を運んでいた。なのでこの邂逅は全くの偶然、ということはお互い理解している。

 だがレフィーヤはベートと顔を合わせた途端、目を吊り上がらせてビシッ!とベートを指差し、

 

 「絶対に!!!!負けませんから!!!!」

 

 と、ベートに高らかに宣言した。

 キョトン、と目を丸くしたベート。ふんっ!と鼻息荒く指を下ろした彼女は、満足したかのようにいの一番にバベルに駆け込む。……バベルの入口付近でまた「負けませんから!!!!」とわざわざ振り返って叫ぶ彼女には、何も言うことはあるまい。

 

 「…………………………………………あ?」

 

 一方、よく分からない意思表示を勝手に突きつけられたベートは、ただ立ち尽くすしか無かった。

 そしてその後、ベートのレフィーヤの印象に「よく分からねぇことを言い出すよく分からねぇ女」と刻まれることとなった。

 

 

 

 

 (負けない、負けないもん!!!)

 

 そんな彼女が宣言した言葉をもう一度、今度は違う人物に言い張ることになるということを、この時の彼女は知る由もなかった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 「よく映えるわね、あの子」

 

 かの美神が、ふと感想のように零した。彼女が見詰める先には一つの鏡。その鏡には、真っ白な兎のような少年と、凶暴な灰色の狼の青年が映し出されている。

 彼女は狼を視界に入れて、弧を描く。

 

 「この子のおかげで、あの子はまたさらなる輝きを出した……」

 

 恍惚そうに歪めるその姿すら、美しく目眩を起こしそうである。

 彼女はねっとりと、熱烈な視線を彼ら二人に向け、蕩ける甘いビターチョコのような声色で言う。

 

 「もっと、もっと見せてちょうだい。私にその輝きを、穢れのない純白の姿を---」

 

 神はさらに望む。もっと、至高の存在を求めて。その輝きを求めて。

 今日も美神は、美しい輝きを放つ白兎を観察するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 第一関門突破、と言ったところであろう。

 

 「あれ、何かアイズ嬉しそう。何かあった?」

 

 「……そう?」

 

 「あらホント。いつもより目の輝きが一段と」

 

 「……うん」

 

 

 

 しかし、彼らの冒険はまだ始まったばかりである。

 

 「神様。僕はもっと強くなりたいです。もっと、もっと、ベートさんみたいに」

 

 「……うん、頑張れ、ベル君。応援してるぜ!だけど無茶はするなよ!ベート君も心配するからさ!」

 

 「はい!」

 

 

 これはまだ序章。プロローグに過ぎないのだ。

 

 「【解き放つ一条の光、聖木のゆが---】きゃあああ!えいっ!……………………また失敗……」

 

 

 

 

 ほら、また次の冒険が待っている。

 

 白兎がさらなる高みへ上り詰めるための、第二の関門が待ち構えている---。

 

 

 

 

 「お兄さん方、お兄さん方!サポーターをお探しですか?」

 

 「探してねぇし望んでもねぇ、帰れ雑魚」

 

 「ベートさあああああん!?」

 

 

 

 

 







 これにて第二章は終わりです。次はやっと第三章。あのくそ可愛いパルゥムちゃん回です。
 この第二章色々とありましたねぇ……一時期長く行方をくらませてしまい、その説は本当に申し訳ございませんでした。長いこと期間はあけていてもちゃんと帰ってきますからね!
 実は当初はこんなにお気に入りや評価が来るとは思ってもみなかったんですよ。ベートきゅんってああいうキャラですし、好きな人は少ないかなぁと思っていたんですよ。それが覆されましたね。何だよ皆ベートきゅん大好きじゃーん!!仲間ー!!
 そんな皆様のおかげでここまで来れました。次の第三章でお会いしましょう。
 それでは恒例のあれで締めくくります。


 ベート・ローガぁー!!愛してるぅぅぅぅうううう!!

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