べート・ローガがヘスティアファミリアに入るのは間違っているだろうか【リメイク版】 作:爺さんの心得
べートきゅんは天使、はっきりわかんだね。
「ベルくうううううううん!!大丈夫かい!?け、怪我はないかい!?どこか具合が悪いところとか!?」
「だ、大丈夫ですよ神様ああああああああああああ!!」
ベルとベートがホームに帰って待っていたのは、ヘスティアタックルであった。
ベルが何でドアが壊れているのだろうという疑問を持った瞬間に、ヘスティアがベルに抱きついて体のあちこちを調べ回る。
正直、何故こんなに心配されているのかベルにはわからなかったが、ベートの含み笑いで何故か全てを悟ったような気がした。
「ベート君が慌ててベル君の場所を聞いてくるから何事かと……ッ!!」
「おう駄神じっとしてろよぶっ殺す」
「え、ちょ、待って、待ってくれべート君!そ、そんな殺意に溢れーーーにょわああああああああ!?」
ああ、やっぱり心配してくれてたんだ。
頬の伸ばし合いっこをしている二人を、ベルは何とも和やかな瞳で見つめることが出来たのであった。
若干頬が赤くなっているヘスティアが稼いできてくれたお金で、今回の夕食はじゃが丸くんパーティとなった。
各自、お好みの塩をかけてじゃが丸くんを吟味し、今回のことに話題を膨らませていく。
「ミノタウロスにあったぁ!?ほ、本当に大丈夫だったのかい?」
「はい、ヴァレンシュタインさんに助けていただいて……」
「そして自分から逃げていったと」
「ぐっ……」
「まぁ、そのヴァレン某君のことは別にいい。問題はーーー君がそのヴァレン某君に恋心を抱いている事だぁ!?」
「絶対、神にかけても無理なことだな」
「神様もベートさんも酷いです!?」
容赦ない言葉に、ベルは涙目になる。だがベートもヘスティアも悪びれることなく、ただ黙々とじゃが丸くんを食べ進める。
やがてじゃが丸くんパーティが終われば、次は眷属達のステイタス更新である。……最も、今回はベートは更新しないため、ベルだけになってしまうが。
「………………?」
「神様?」
ステイタス更新をし終わり、ヘスティアがベルのステイタスを確認していた時だった。
突然ヘスティアの動きが止まり、ある一点を凝視し始める。不審に思ったベルが声をかけたが、ヘスティアは「何でもない!」と少しどもって、紙に写し始めた。
「はい、ベル君」
「ありがとうございます……やっぱり、あまり上がっていませんね……」
「そんなことはないさ。ミノタウロスに追いかけ回されたのか、敏捷が結構上がっているよ。もしかしたら、ベート君に追いついてしまうかもね」
「ほざけ。そんな簡単に抜かされてたまるか」
「ぶー。ベート君のいけずー!」
「子供かテメェ!?」
「で、でも!僕頑張りますね!ベートさんに追いつくために!!」
そう言って、ベルはニッコリと笑う。
ベートはグッと喉を詰まらせ、また溜息を吐いた。
「で、お前なんか隠してるだろ」
「ギクッ」
ベルがぐっすりと眠った後、ベートとヘスティアは教会の中で向き合っていた。
ヘスティアの手には、先程ベルに渡したものと同じ紙が握られている。
その翻訳した紙を、ヘスティアは大切に持っていたが、不審がったベートがそれを追求しようとしていた。
「ぐぬぬぬぬぬ……」
「オラ吐け。楽になるぞ」
「ぬぬぬぬぬ……ベート君なら……まだいいか……」
悩んだ末、ヘスティアは持っていた紙をベートに渡す。
ーーーそう、何も弄っていない、本当のベルのステイタスを。
「…………
訝しげにその単語を口にしたベートは、何かを知っているであろうヘスティアの方を見る。
ヘスティアはぷくりとそっぽを向いていたが、やがて悔しそうに、絞り出すように話した。
「…………君なら察せれると思うよ。憧れる人を追いかける気持ち……その憧れる人は少なくともヴァレン某君。……つまり、そのスキルは……」
「ほぼ恋心で出現したといっても過言ではないと」
「ううううう!!ヴァレン某いいいい……!!」
わなわなとこの場にいないアイズに恋敵を覚えるヘスティア。それを冷めた目で見ていたベートは、またステイタスの用紙を見る。
憧憬一途……誰も発現したことのない、レアスキル。自分のスキルは狼人としてのスキルが多いため、レアスキルはない。
しかもLv.1からだ。まだまだ未熟な彼の、第一歩となりえるかもしれない。このレアスキルは。
「…………」
不意に、ズキリと胸が痛み始める。
ベートはその胸の痛みに気づきながらもそのままにし、グシャリ、と羊皮紙を握りしめる手の力を強めた。
*
憧れる人を追いかけることによって、彼はーーーベル・クラネルはさらなる進化を遂げる。ベートはそう直感していた。
もちろん、それで強者となるのなら別にいい。寧ろなってほしいものである。無様で惨めに晒していた彼に、もうならない為なら。
だがベートはーーーその彼の姿を想像すると、非常に腹が立った。
「がるぅあああああああああああああああああああああ!!」
向かってくるモンスターの大群を、ベートは蹴り一つで殲滅する。
攻撃をする暇もなかったモンスターは、たちまち黒の粒子となって魔石だけが零れ落ちた。
「……ハァ……」
ダンジョン32階層。
未だに人が訪れない大広間に、ベートは何時間もこの場でモンスターを狩っていた。
ベルにスキルが発現したその後、彼は直ぐにダンジョンに潜りモンスターと死闘を繰り広げる。
まだ階層主が現れない時間帯まで篭もり続ける彼の額には、若干汗が滲み出ていた。
「………………」
手元にあるポーションをじっと見つめ、やがてそれをバックパックに仕舞う。何時間も狩り続け疲労が溜まり、傷も出来ているというのに、彼は回復は愚か、休憩することもなかった。
モンスターがダンジョンから生まれ、標的をベートに定める。
ベートはそのスパルトイの大群を鼻で笑い、強化された敏捷と威力と共に、モンスターの軍勢へ再び突っ込んだ。
「がるぅあ!!」
目の前のモンスターの頭蓋骨を、膝でぶっ壊す。
そして向かってくる周りのモンスターは、地面に手をつけて回し蹴りで潰す。
バラバラと魔石が散らばっていき、そして敵の数も増えていく。数多のモンスターボロボロと、母なる大地から産まれてくる。
「ぐるるるる……!!」
ギラリ、と眼光を凄ませ、ベートはその大群を睨むように見据えた。
ああ、イライラする。
とても、収まりきれないくらいにイライラする。
何体も何体もモンスターを狩っても、全然この苛付きが収まらない。
奇声をあげたモンスター達が、ベートに向かって突っ込んできている。
「ーーー糞がぁ!!」
対してベートは、吠える。
獰猛なる野獣と化す彼を止められるものは、今この場にいない。
ただ彼は、モンスターを狩る『モンスター』でしかない。
(ーーーああ)
俺は今、何でイライラしてるんだっけ。
モンスターの頭、腕、首、四股を潰しながら、ベートは今更そんなことを考え始めた。
そうだ、ベルがレアスキルを発現した時からだ。
そのレアスキルが、ベルに大きな成果を上げるかもしれないと、自分でそう思ったんだ。
Lv.1で。
(……何だ、考えれば簡単な事じゃねえか)
モンスターはもう、死んだ。
モンスターがいる証拠になるのは、モンスターの体から出てきた魔石だけ。
ベートはその一つをガシャ!と踏み潰し、舌打ちを零した。
(大人気ねぇ、俺も)
彼はこの感情を知っている。
まだ駆け出しの冒険者が出したレアスキル。そうだ、それを見て、予測して、想像して。
(ーーー嫉妬、なんてな)
自分にも、あんなレアスキルがあれば強くなれるかもしれない。
自分のスキルと魔法は、この『傷』を思い出させる枷だ。魔法は自分の心によって発現し、それは魔法にも反映される。そうーーー弱い自分が、現れるのだ。
べートは魔法が嫌いだった。昔の自分を重ねているようで。
だから魔法は使わなかった。もう過去を振り返らない為に。
その時、ふと背中に熱いものを感じた。
「……?」
背中ーーー恩恵がある場所。
怪我をしたわけでもないのに、何故ここがいきなり熱くなったのだろう。
しかしそれは一瞬の出来事だったので、別に深く考えなくていいであろう。
べートは洞窟の天井を見上げる。自然の光すら差さない、宵闇の中心に立ち尽くす彼に、ダンジョンがそんな彼を嘲笑うかのように、次々にモンスターを産み出す。
「……糞がッ」
べートは回復薬を呷り、湧き出したモンスターーーー「モンスターパーティ」に、身一つで突っ込んでいった。
その時に、また背中が熱くなったことに、べートは気づかなかった。
変更点→最後のべートきゅん視点
ここもあまり変更点が見当たらなかったので今日中に上げてしまおう……!あと3話やね!
日刊ランキング28位ありがとうございます!嬉しい限りでございます!いやはや神さま仏さまリーネ様ああああ!読者様にはリーネ様がたくさんおりますね!
前作を閲覧してくださった方々も楽しんでもらえて何よりです。これからどんどん頑張りますよ!
さぁ最後は皆!せーの!
べート・ローガぁー!だぁーい好きぃー!!