結構空いてる気がしたけれどそこまで空いてなかったですね笑
ってなわけで(どういうわけだ)特別編?です!話の内容が逸れたりはしません!
さぁさぁ誰人称でしょーか。ってすぐわかるけどね。笑
昔、先輩教師に聞かれたことがある。
『どうして教師になろうと思ったの?』
この手の質問はよく聞かれる。私はいつもと同じように答えた。
『高校時代、教師に救われた経験があるんです。その人は私のことを決して見捨てずに真剣に私と向き合ってくれました。私もそうなりたいと思ったからです』
私は高校時代なんの取り柄もない生徒だった。気が弱く、スポーツも苦手。しかし勉強が人一倍できていた。それをよく思わない女子生徒にイジメを受けていたのだ。私は嫌気がさし学校を休みがちになった。そしてついに学校へいかなくなり、両親が学校にイジメについて問いただしても『なにもなかった』の一点張りだった。諦め掛けていたその時、担任でもなかった女教師が家に押しかけてきたのだ。
『おい!平塚!いるんだろ?!ちょっと話がある!』
私は面識のなかった先生だったのでここはわざわざ出向く理由がわからなかった。止めようとする親を振り払い、私の部屋まで来たのだ。
怒られる、もしかしたら殴られるかな…そう思った時。
『すまなかった』
そう言って先生は私に頭を下げた。それから私の親にも。
『学校がうやむやにしたことは私が必ず暴きます。そして私も最大限の配慮をします。私はそれを伝えに来ました』
私はその時決めたのだ。この人みたいになろう、って。
それからの私は変わった。地味な見た目を変え、積極的にコミュニケーションをとるようになった。それから私へのいじめは無くなり、気兼ねなく学校へ来れるようになったのだ。
私は改めてその先生にお礼を言った。
すると先生は
『私が助けたのではないよ、君が勝手に助かっただけだ』
そう言って私に微笑みかけてくれた。
そして私は教師への道を進んだ。
おっと、話が逸れたな。すまない。先輩教師の質問は実にありきたりであり、私の体験談こそが私の教師への道を進めた理由だ。
先輩教師は、でも、と付け加えた。
『教師も所詮は人なのだから無力なのだと思うわ』
そう言った先輩教師の顔はただただ優しい笑顔だった。哀れみでもなく悲しみでもなく、ただ純粋に優しかった。
ーーー
私は目の前の光景にただただ唖然としていた。生徒が急いできて欲しいとのことだったので、何事かと思い駆けつけた。
私の目の前にあったのは横たわる1人の生徒。
その生徒に必死に呼びかける女子生徒。
落ちてきたであろう照明器具を必死にどける生徒達。
そして赤だった。
私の意識のほとんどがその赤色に奪われていた。
大量ではなかったものの、決して少なくはない量だ。それを目の前にしてなにもできないでいた。
照明器具をどけたところに横たわっていたのはーー
「ひ、比企谷か…、これは一体…」
「すみません平塚先生、説明している暇はありません」
「そ、そうだな。すまない」
自分が思っていたよりも動揺しており、冷静さを欠いていた。結局私はなにもできぬまま救急車が到着した。少しでも力を、と早急に案内し比企谷は救急車で運ばれていったのだ。私ももちろん同伴した。一色、雪ノ下、由比ヶ浜も同じく同伴し、救急車の中でも必死に比企谷に向かって呼びかけていた。
いまの私は彼女達よりも無力だ。これほど自分を無力だと感じたことはあっただろうか。
病院に着いたと同時に緊急手術が行われ、私達はただ祈ることしかできなかった。
そして担当医から比企谷はもう目を覚まさないかもしれないと聞いたとき、私の中で何かが崩れたような気がした。
もし私が比企谷に奉仕部を紹介しなければこんなことにはならなかったかもしれない。いまそんなことを考えても無駄なことはわかっている、けれどそう考えずにはいられなかった。
泣き崩れる一色や比企谷妹、それに奉仕部の仲間である由比ヶ浜や雪ノ下。私は彼女達になにをしてあげられたのだろう。私のしたことで彼と彼女達の人生を狂わせてしまったのではないか。
彼らに何かを与えられたと思っていた。
ただそれは儚く散ってしまうのだろうか。
ーーー
「私は学校にこのことを報告してくる。みんな、遅くならないように」
私は少し俯いた。
「何もしてやれなくてすまない」
私は踵を返して重い足取りでその場を立ち去ろうとした。私はこの時、昔先輩教師に言われた『教師も所詮は人なのだから無力だ』という言葉を思い出していた。
本当に私は無力だ。彼を奉仕部に入れたことで彼の周りに大きな変化があった、それだけを見て満足していたのだ。
しょうがないと言われればそれまでだ。だが私の罪悪感は拭えなかった。
「先生!」
「なんだ?一色」
「せ、先輩は絶対に助かります。任せてください」
そう言った彼女の目は腫れていた、しかしその瞳は覚悟を決めていた。
今までこんな強い目を見たことがあっただろうか。
この時自分が感じた罪悪感は彼ら彼女達の行為を踏みにじる行為だと思った。
確かに私が奉仕部は彼を入れなければこの事故はなかったかもしれない。
けれど彼を入れなければ彼ら彼女達はここまで変わることがなかっただろう。
「…ふっ、君がそう言ってくれると私も助かるよ」
私は踵を返し、いつものように格好をつけてその場を後にした。彼女達の辛い思いかき消すように格好良く。
彼女達はまだか弱い、それは彼女達を含めていろんな生徒を見てきた私だから確信を持って言えることだ。
だが、彼女達は覚悟を持っているのだ。それは大人になった私たちでは持ち得ない強くたくましいもの。
辛く苦い過去を何度でもやり直すチャンスがある。どんな壁でも超える勇気がある。そしてその力がある。
そう感じたのだった。
ーーー
次の日私は授業が午前中で終わったということで比企谷のお見舞いに行くことにした。
あわよくば目を覚ましていないだろうか、なんていう期待も込めて。
病院に着き、手続きを済ませ比企谷の病室へと向かった。扉を開けると、昨日とは違う真っ白の病室で1人の青年、いや、少年がベットで眠っていた。
君の腐った目が見えないと印象も変わるものだな。なかなかいい顔をしている。
かといって見惚れることはなくベットのそばの椅子に腰掛け、病院のロビーで買った比企谷の大好きなマッ缶を隣の机に置いた。試しに私のぶんも買って見た。初めてで興味がそそられたのだ。
プルタブに指をかけ勢いよく開けると、缶ジュース特有のカコンという音がする。ぐいっと一口飲んでみると予想以上の甘さであった。
「人生は苦いんだからコーヒーぐらい甘くていい、か」
彼にマッ缶が好きな理由を聞いた時、決まり文句のように言うセリフだ。本当に彼らしい理由だと思う。
私が教師になってから理不尽だと思うことが数え切れないくらいあった。彼は社会のそんな不条理な社会をすでに見限っているのだろうか。
「…まったく、本当に可愛げがないな。君というやつは」
「最初君は言っていたな、変わることは現状からの逃げだと。けれど君は本当に変わった。良いようにな。周りが君を変えてくれたんだ。その捻くれた性格がむしろ良かったんじゃないかと思えてくるよ」
「しかし変わったのは君だけではない。周りも君のおかげで変わってきているのだ。君は人の悪意に敏感なくせに人からの好意は驚くほど鈍感だからな。彼女達も苦労していることだろう」
「私も教師という立場だが、君たちの行く末をずっと見届けたいと本気で思うよ」
「しかしそれはできない。君たちはこの時間が全てではないんだよ。この先バラバラになって数々の苦難に何度も立ち止まるだろう」
「それでも君達は負けないさ。仲間がいる。昔の君じゃない」
「だから早く帰ってこい、比企谷」
私は病室を後にし、学校へと帰った。
この先どうなるかはわからない。教師だって知らないことだらけだ。
私は彼ら彼女らの可能性に賭けることにした。
じゃじゃーん。静ちゃんでしたー!
あまり平塚先生人称って見たことないので書いて見ました笑
感想もドシドシ受け付けておりまーす!