???SIDE
「『セイクリッド・プレアデス』と『セイクリッド・トレミス
既にフィールドに出ている永続魔法『
トレミスの咆哮とプレアデスの放つ光と共に相手の墓地にある『ネクロガードナー』とフィールドの『サイバー・ツイン・ドラゴン』が手札に戻す。もっとも、融合モンスターであるサイバー・ツインは手札では無くエクストラデッキだが。
融合・シンクロ・エクシーズと言ったエクストラデッキから召喚されるモンスターにバウンスはかなり有効だ、手札コストにさえ出来なくなるのだから。
「なっ!? さっきからバウンスばっかり使って、卑怯だぞ!」
「黙れよ、負け犬」
相手の言葉をそう切り捨てる。既に相手のフィールドは空、モンスターの総攻撃力は相手のライフを完全に上回っている。観客のブーイングは鬱陶しいが後は攻撃宣言するだけで終る。
こうしていると思い出す。幼い日の出会い……オレの“仲間”達との出会い。そして、再会を約束しての別離。
オレ達の目標の為にオレは強くなる為に三年の月日を仲間達と離れる事を選んだ。
多くの相手と戦う為に、もっと多くの仲間と出会うために。
「行け、セイクリッド・トレミスM7! セイクリッド・プレアデス!」
既に相手には壁となるモンスターも伏せカードも無い。オレの宣言と共に無人の野となったフィールドを白銀の星龍と神星騎士団の騎士団長が往く。これがオレの辿り着いた一つの成果。
プレアデスの持つ光の剣が相手を切り裂き離脱すると、トレミスM7の全身が発光し光がブレスとなって撃ち出される。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
(時々思うけど、ソリットビジョンの攻撃って実際のダメージを発動してないよな?)
トレミスM7の攻撃で吹飛ばされる相手を眺めつつそんな事を思う。まあ、兎も角……これでこの大会も終わりだ。
SIDE OUT
「ふぅ」
後ろから聞こえてくる歓声を聞き流しつつ、通路の壁に背中を預けて手帳を取り出す。
(これで何とかデュエルアカデミアの入試前に目標にしてた大会は制覇出来たな)
手帳に書かれた『アマチュアリーグ・アジア大会』と書かれた文字に横線を引く。此処一年で開催される比較的大きなDMの大会は全て制覇できた。決勝戦で勝利する、このあと表彰式は有るがそれだけで目的は達した。
(やっと会えるな、あいつらと……。さあ、始めようか……)
彼が取り出すのはデュエルアカデミアの特別枠での筆記試験の合格と実技試験の特別推薦枠の番号。アジア大会の本戦と筆記試験が重なってしまった為に、中学三年生の本大会出場者は特別枠と言う形で筆記試験を別会場で受けられる事となっている。
アマチュアとは言え年齢問わずアジア圏の各国から多くのデュエリストの中からベスト16に選ばれると言う事は十分に実力者として認められていると言う事だろう。
だが、当然ながらリスクも伴う。特別枠は通常の物よりも合格ラインが高い上に、アジア大会の本戦と並行して行われる事となる為に余計に合格は難しくなっている。そんな中で見事、彼『緋勇 勇斗』はアジア大会優勝と筆記試験合格を成し遂げたわけだ。
(それにしても……)
優勝者を称える歓声が響く中、呆れの感情の混ざった苦笑を浮かべる。
(散々ブーイングしていたくせに、優勝した途端、これか?)
どうでも良いと言った態度でトロフィーと優勝商品のカードを受け取るとそのまま会場を後にする。
(この三年でお前達はどう変わった? 以前の様に仲間のままか? それとも、奴らに毒されてオレの敵になるか?)
そう思った後思わず苦笑する。朱に交わったところで簡単には染まる様な奴等じゃない事は自分が良く知っている。
(さあ、始めよう……オレ達革命を)
革命の始まり……昔の仲間達は既に其処に、新たな仲間達との再会を約束した場所へ、成果として得たアジアチャンプと言う称号と共に。
アジア大会決勝の翌日、先日のアジア大会優勝の勢いも醒めぬままにデュエルアカデミアの入試の実技試験となった訳だが……
「遅刻だぁ!!!」
盛大に寝坊していた。一応、日本国内で行われた大会決勝なのだが、入試試験の会場とは離れていたりする。
これまで出場した大会の優勝賞金で試験会場の近場のホテルに泊まりたかったのだが、悪い事にデュエルアカデミアの入試には全国から未来のデュエルキングを目指す(中にはカードデザイナー等を目指す者も居るが)多くのデュエリストが集まる。
当然ながら自宅から試験会場まで向かうのに時間が掛かり、試験の日程から近くのホテルなどで一泊から二泊する必要がある者も多く居る。……結果、この時期のこの辺のホテルは何処も満室になる。結果、アジア大会に出場していた勇斗が泊まれたのは割と遠いホテルだったりする。
全力疾走した結果幸運にも間に合いました。受験番号毎に実技試験は行われるため、特別枠である勇斗の試験は最後に行われる事となる。
仮にも大規模な大会の出場者……それも向こうは予定していなかっただろうが、大会優勝者である以上、アカデミア側の意思としては実技試験の『メインイベント』としているのだろう。
そんな事を考えながら会場に飛び込むと現在行われている試験デュエルは佳境に入っていた。高守備力のモンスターを並べた守備デッキに対して受験生は見事に破壊輪を使ったコンボで勝利していた。
「へー、中々やるな」
試験管のデッキの傾向と対策を見れなかったのは残念だが、それなりに実力者なのだろう。時間的に考えれば恐らくは一桁以内……知識=実力と言う訳ではないが、カードの知識を持っているという事は直感的に新たなコンボを生み出す事にも繋がるのだ。其処から考えると……
「一度、話してみるのも良いな。上手く行けば仲間に出来るかも……」
『受験番号110番。遊城十代くん、試験フィールドに来てください』
「へ?」
アナウンスに思わず気が抜けてしまう。自分と会場の時計を比べても明らかに百番代の実技試験はもう終っているはずだが……。
(……トラブルでも起こったんだろうな)
そう結論付けると試験フィールドに茶色の髪の能天気そうな雰囲気の少年が現れる。
「行っけー、フレイムウイングマン! スカイスクレイパー・シュート!」
「マンマミーヤ!」
結果、遊城十代と言うらしいHERO使いの受験生は試験官に勝利した。
(明らかに試験用とは違う本気のデッキって所か……。それにしても、あいつのデッキの改良点は多々有るな。……でも)
受験生のデュエルを見ていて感想を考えていると改めて思う。
(友達になるのは良いだろうけど……オレ達の“仲間”には向かないな……あいつは)
『特別枠、緋勇勇斗君、試験フィールドに来てください』
放送を聴くと笑みを浮かべる。そして、観客席の枠に足を掛けて一気にジャンプ、空中で一回転して音もなく試験フィールドに降りる。勇斗の行動に唖然としている周囲だが、先程十代と戦った顔面蒼白の男性が口を開く。
「シ、シニョールが特別枠の受験生ナノーネ?」
「はい、緋勇勇斗と言います」
遅れて歓声の上がる周囲を無視してデュエルディスクにデッキをセットする。
『我が主、先程のデュエルで手の内は見て居たでしょうが、油断は大敵でございます』
勇斗の背後に現れた白銀の鎧の騎士が片膝を付いてそう進言する。
(分かってる)
「ワターシがシニョールの相手を勤めるデュエルアカデミア実技担当試験最高責任者の『クロノス・デ・メディチ』ナノーネ」
「今日はよろしくお願いします」
そう言うと勇斗は右腕に付けられていたデュエルディスクを起動させる。同様にクロノスもディスクを展開する。
「「デュエル(ナノーネ)!!!」」
勇斗 LP4000
クロノス LP4000
「この試験デーハ常に受験生に先行を譲る事になっているノーネ」
「それじゃ、お言葉に甘えて。ドロー」
素早く手札を確認すると手札のカードを召喚する。
「オレは『セイクリッド・レオニス』を攻撃表示で召喚」
空中に描かれた獅子座のマークから獅子をイメージさせる白銀の騎士が現れる。
セイクリッド・レオニス ☆3
攻撃力1000/守備力1800
「中々守備力は高いようデスーガ、攻撃表示じゃ意味無いノーネ」
「その通り。でもね、セイクリッド・レオニスの効果発動! このカードが存在している限り、自分のメインフェイズに一度、もう一度セイクリッドを召喚できる。レオニスをリリースし……現れろ、蠍座の騎士『セイクリッド・アンタレス』!」
獅子座の騎士が消えて其処に現れる蠍座のマークから現れたのは蠍座の騎士。
セイクリッド・アンタレス ☆6
攻撃力2400/守備力900
「アンタレスの効果、召喚・特殊召喚に成功した時、自分の墓地のセイクリッドを手札に加える」
墓地に存在しているレオニスを再び手札に加える。これで手札の消費は一枚に抑えた。
「ムム、一ターン目から手札の消費を最小限に押さえて上級モンスターをするナンーテ、中々やるノーネ」
「その通り……オレの
勇斗が一ターン目でする事の多い一手、アンタレスとレオニスの効果を使ってのアンタレスの召喚。レオニスの存在を知られる危険こそ有るが、それなりに手札も温存できて悪くない手だろう。
勇斗の
(さて……)
手札へと視線を向ける。先程のデュエルを見る限りでは、初手から相手の切り札である
流石に攻撃力2400のアンタレスでも☆8で攻撃力3000の上に伏せカードも殆ど無意味にする効果と貫通ダメージを与える効果持ちのギアゴーレムが相手では召喚時の効果しかないアンタレスでは負けるだけだ。
付け加えるなら、アンタレスの守備力は僅か900と下手したら☆3以下のモンスターにも倒されるステータスだ。
(手札には保険も有る事だし、フリーチェーンの罠もないしな。アンタレスには悪いけど)「オレはこのままターンエンド」
ギアゴーレムが出てくる可能性を考えるとフィールドの魔法・罠を吹飛ばす大嵐の魔法も考慮しておく必要がある。取り合えず初手はアンタレスを犠牲にして様子見だ。
伏せカード無しのターンエンドにアンタレスが『えぇっ!?』と言う顔をしているが、そこはスルーしておこう。
「それでは、ワタクシのターン。ドローニョ」
クロノスがデュエルディスクの展開した部分にカードをセットすると周りの景色が歯車だらけの街へと変わる。
「っ!?」
「フィールド魔法『
(初手から『
「カードを二枚伏せて手札から『大嵐』を発動! フィールド上の魔法・罠を全て破壊スルーノ」
「行き成り、最上級を二体って……受験生相手に手加減無しですか?」
「フフン、流石は特別枠の受験生。これだけーで先の展開を予想するナーンテ。破壊された歯車街と黄金の邪神像の効果発動! 先ずは二体の邪神トークンを特殊召喚!」
相手フィールドに現れる二体のトークン。そして、
「そして、『
攻撃力3000
フィールドに出現する機械仕掛けのドラゴン。相手のコンボはまだ終わりでは無い。
「更に、二体の邪神トークンを生贄に、『古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)』を召喚!」
地響きを立てながら出現する巨大な機械の巨人。会場である海馬ドームの天井さえも突き破るほどの巨体が同じ大きさのガジェルドラゴンと並び現れる。
「バトル!
ギアゴーレムの拳が迫る中、アンタレスは何かを期待するような目で勇斗を見ているが、
「悪い、アンタレス」
手を合わせて謝る。
『あ、主ぃぃぃぃぃぃぃ!?』
ギアゴーレムの鉄拳に粉砕されるアンタレスを尻目に無言のまま手を合わせる勇斗だった。
勇斗 LP4000→3400
「更に
「手札から『速攻のカカシ』の効果発動」
ガジェルドラゴンの噴出した炎を派手な格好のカカシが受け止める。勇斗のデッキの中で数少ない光属性でないモンスターでもある今回の保険だ。
「手札からこのカードを捨ててバトルフェイズを強制終了」
「上手く防いだようナノーネ。ワターシはこれでターンエンドナノーネ」
何とか防いだ物の相手のフィールドには二体の攻撃力3000のモンスター。流石に油断したら負ける。
『さっきの110番よりもとんでもない状況だぞ』
『完全に終わったな』
『あんなの無理だよ、勝てる訳無いよ』
『恥をかく前にサレンダーした方が良いんじゃ無いのか?』
周りは既に勇斗の敗北で終わりだと言う声で溢れているが、当の勇斗は余裕の笑みを浮かべている。
(負ける? オレが? ……笑わせてくれるな……この程度のピンチ……オレは、何度でも乗り越えてきた!)
そう考えて意識を向けるのはクロノスの最後の手札。
(少しは手加減していると考えるべきか……。まあ、次のターンで終らせる)「オレのターン、ドロー! 手札から魔法カード『強欲な壷』を発動して二枚ドロー。魔法カード『カップ・オブ・エース』を発動」
フィールドの中央に表れたコインが表を示す。そして、七枚に増えた手札の一枚に視線を向ける。
『勇斗、私の出番?』
語りかけてくるのは抑揚の少ない少女の声。薄っすらとした青い髪の少女の姿の……先ほど引いたカードに宿る者の声。
(確かに力を借りれば勝てるけど……十分だ)「オレは手札のセイクリッド・シェアトを特殊召喚、更にレオニス、もう一度来い!」
それぞれが己の司る星座……水瓶座と獅子座の紋章から勇斗のフィールドに現れる水瓶座の騎士『セイクリッド・シェアト』と獅子座の騎士レオニス。
セイクリッド・シェアト ☆1
攻撃力100/守備力1600
「そして、レオニスをリリース……来い、魚座の騎士『セイクリッド・レスカ』!」
上空に現れる魚座の紋章から現れる特徴的な双剣を持った魚座の騎士。
セイクリッド・レスカ ☆6
攻撃力2200/守備力1200
「レスカの効果、手札のセイクリッドを守備表示で特種召喚、もう一体のレスカだ!」
守備体制で召喚されるもう一体のレスカ。これで反撃の準備は整った。
「シェアトの効果発動、自分フィールド・墓地のセイクリッドを選択し、そのレベルと同じにする事が出来る。オレはレスカを選択!」
セイクリッド・シェアト ☆1→☆6
「行くぜ……レベル6となったシェアトと守備表示のレスカでオーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」
二体の星騎士達はそれぞれの加護を持つ星座へと代わり、六つの渦を成し新たな星座を作り出す。新たに作り出される星座は蠍座、
「エクシーズ召喚! 星界より降臨せよ騎士達の守護龍、『セイクリッド・トレミス
セイクリッド・トレミスM7 ランク6
攻撃力2700/守備力2000
光り輝く星龍セイクリッド・トレミスM7は二体の大型モンスターを見下ろしながら咆哮をあげる。
「フフン、中々強力なモンスターを召喚したようデスーガ、攻撃力2700ではまだまだワターシのモンスター達には勝てないノーネ」
「いやいや、別に戦って勝つ必要も無いでしょう。トレミスM7の効果発動、オーバーレイユニットを一つ使い、一ターンに一度だけ相手フィールド、または墓地のカードを手札に戻す。オレは古代の機械巨人を選択!」
「マ、マンマミーヤ! ワターシの
トレミスM7の放つ光の前に成す術も無く消え去って行くギアゴーレム。すると、
『ふざけるな!』『バウンスなんて卑怯だぞ!』『そんなの、リスペクトじゃないっス!』
周囲の観客席からブーイングが飛んでくる。
『うるさい』
(まったく、鬱陶しい)「さて、手札から永続魔法『強者の苦痛』を発動。相手はレベル×100攻撃力がダウン。これでレスカと互角、トレミスより下回った」
「で、デスーガ、それでもワターシのライフはまだ残るノーネ」
追い詰められた状況に冷や汗を流すクロノスだが、残った手札へと視線を向けつつそう言う。
「いや、このターンで終わりだ。魔法カード『鬼神の連撃』! オレのフィールドのエクシーズモンスター、トレミスM7を選択して発動! オーバーレイユニットを取り除き、二回の攻撃が出来る!」
「なんでスート!」
行け、セイグリット・トレミスM7! シャイニング・ブラスト!」
ガジェルドラゴンは己へと向かって来るトレミスM7を迎撃せんと炎を撃ち出すが、トレミスM7は素早い動きでそれを回避し上空に飛翔し全身の輝きを口へと集める。集められた輝きは光の奔流となって撃ち出され、ガジェルドラゴンを粉砕する。
クロノス LP4000→3500
「レスカよ、トレミスに続け! そして、トレミスの二回目の攻撃!」
双剣を構えレスカがクロノスへとダイレクトアタックを直撃させ、トリミスM7のブレスが完全にクロノスのライフを削りきる。
「ペペロンチーノ!」
『あ、あの、主? あの方吹飛ばされましたよ!?』
『唐辛子?』
(ソリッドビジョンなんだよな?)
トレミスM7のブレスに吹飛ばされたクロノスを一瞥しつつ慌てたように叫ぶ比較的真面目なセイクリッドのカードの精霊の一体レオニスと、妙な所を疑問に思っている青い髪の少女。原理は不明だが吹っ飛ばされたクロノスを見て何度もデュエルディスクと吹飛ばされた相手の間に視線を動かしている勇斗。
己の勝利を確認すると未だにブーイングが響く中勇斗は試験フィールドから降りていく。
だが、そんなブーイングの響く試験会場の中で……。
「勇斗も合格できるかな?」
「うーん、試験官の先生にも勝ったんだし間違いないよね」
「それにしても、アジア大会で優勝しても相変わらずやな……」
幾つかの視線は確実に……
「フフ……。彼が理樹君の言っていた元六人目か。なるほど、面白くなりそうだな」
友好的な意思が向けられていた。
試験フィールドを出てゆっくりと壁に背中を預けると、デッキから先程のデュエルでは使わなかった最後の手札のカードを取り出す。
「どうだ……会場には“あいつ等”は居たか?」
『ダメ、此処には居ないみたい。やっぱり、デュエルアカデミアって所に行くしかないみたい』
『ハッ、我々も勇斗様からの命で調べていましたが、やはりあの方々は……』
「そうか……。これで、やるべき事は二つか」
『うん。勇斗も目的と私の目的』
「いや、お前の目的もオレの目的の一つだ。カードに封印されたお前の仲間は必ず見つけ出す」
『ありがとう』
「気にするなよ、“レヴィアタン”。それに……あいつ等とのあの日からの約束だったからな……。デュエルアカデミアから……オレ達の手で今のデュエル界を……変えるんだ、ってな!」
決意を込めて勇斗はそう叫ぶのだった。