『外物語』   作:零崎記識

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過度な期待はせずに気楽に見ていくことをお勧めします。
感想・批評は歓迎ですが暴言・悪口は炎上の原因となりますのでおやめください。

ハッピーニューイヤー!

大変長らくお待たせしました!

今年も『外物語』をどうぞよろしくお願いいたします!


黒猫編
つばさファミリー その壹


001

 

羽川翼について、語ろう。

 

あの誰よりも公明正大で、頭脳明晰で、完全無欠な委員長、羽川翼の物語を今更ながらに語り聞かせよう。

 

今回のことは春休みに比べれば些細なことだったと、後になって思う。

 

怪異とかを抜きにすれば、誰にでも起こりうるありふれた不幸話。

 

後の詐欺師ではないが、今回の物語から得るべき教訓があるのだとすれば、『善良なだけの人間など存在しない』だろう。

 

善良なように見えて、それは周囲に対して()()()()()()()だけだ。

 

光があれば影があるように

 

表があれば裏があり

 

白があれば黒がある。

 

これはそんな当たり前の話に過ぎない。

 

一人の不幸な女の子の、長年被り続けてきた化けの皮、否、()()()が剥がれる物語。

 

さて、それではお聞きいただくとしよう。

 

あれは、ゴールデンウィークのことだった―――

 

002

 

ゴールデンウィーク

 

四月末から五月初めにかけての大型連休。

 

家族や恋人、友人で旅行に出かける人も多いだろう時期である。

 

『黄金週間』とは随分大層な名前を付けられているものだが、しかし大抵は途中で平日が入り込む飛び石連休だったりするので、『黄金』というネーミングは流石どうなんだと、個人的には思うのだ。

 

精々『鍍金』くらいが妥当だろう。

 

黄金……に見えるけれど実はそうでもなかったみたいなガッカリ感をよく表せていると思う。

 

メッキウィークに改名すればいいのに。

 

ということでゴールデンウィーク改めメッキウィークのまさに初日の現在。

 

俺が何をしているのかって?

 

それは―――

 

「何二度寝してるんじゃ、死ね」

 

「うおぉぉぉ!?」

 

絶賛、命の危機です。

 

寝ている俺の眉間目掛けて容赦なく振り下ろされた刀をすんでのところで回避する。

 

「ぬぉぉぉぉぉ!?」

 

その次の瞬間に俺の腹を掻っ捌こうと一閃された刀を背中が床と平行になるくらい後ろに反って躱す。

 

だが、まだまだ襲撃は終わらない。

 

「って危ねぇぇぇ!?」

 

リアルマトリックスから体勢を戻す隙も無く俺の上から刀が迫る。

 

ギリギリで俺は白刃取りに成功した。

 

まさかゴールデンウィーク初日から寝込みを襲撃されてリアルマトリックス避けをさせられた挙句に真剣白刃取りをすることになるとは……。

 

全く『黄金』じゃねぇ…

 

むしろ血にまみれている。

 

『鮮血週間』だ。

 

『ブラッディウィーク』だ。

 

あ、ちょっとかっこいい。

 

じゃなくて!

 

「な、何しやがるんだキスショット!」

 

「二度寝するようなパートナーは死んでいいに決まってるじゃろう。せっかく儂が起こしてやったというのに寝るとはいい度胸じゃ。死ねばいいんじゃ、死ねばいいんじゃ、死ねばいいんじゃ」

 

「お前初っ端からキャラ設定滅茶苦茶になってんぞ!?」

 

前回とつながらねえよ!

 

寧ろ前回よりバイオレンスになってるじゃねえか!

 

こんな時に『鉄血』になられても…

 

「やかましいわ!三ヵ月も放っておきよって!おかげで前回までどんなキャラだったか忘れてしもうたではないか!」

 

「それは俺の所為じゃねぇ!!」

 

全部あのバカ作者(零崎記識)の所為だっつの!

 

閑話休題(誠に申し訳ございません)

 

「で?こんな朝っぱらから俺の寝込みを襲撃したのはどういう訳なんだキスショット」

 

「いや朝っぱらとはいうがの、もう昼といっても過言ではない時間じゃぞ」

 

「いいだろ別に、休みの日くらい惰眠を貪ったって」

 

「完全にダメ人間の台詞じゃな」

 

「うぐ……」

 

確かに……。

 

自分で言っといてアレだが俺も同じこと思った。

 

「ま、まぁ俺のことは一先ず置いておくとして」

 

「目をそらすな」

 

ふぇぇ…キスショットからの目線が痛いよぉ…。

 

ついでに読者からの目線も痛い。

 

あ、イタいのは俺そのものか。

 

「それで?さっきの凶行の理由は何だったんだ」

 

「いやの、儂もあの一件以来吸血鬼というキャラを卒業してしもうた訳じゃろ?」

 

「うん…まぁ、そうだな」

 

「それで儂も心機一転、新しいキャラを開拓していこうと思ったのじゃが……」

 

「その結果があの狂人かよ!」

 

お前暴力系ヒロインはやめとけって……。

 

絶対人気でないから。

 

某ロボット学園の某モップさんとか滅茶苦茶叩かれてるから…。

 

「儂は原作と違ってロリ属性は無いからのう、最大の萌え要素が無い儂は考えたのじゃ、ならば別の属性を自分で付加してしまえばよいとな!これでこの作品の評価はレッド突入間違いなし!」

 

「おいバカやめろ!」

 

アウトォォォ!

 

限りなくアウトを極めしアウトだ!

 

レッドなのは評価欄じゃねえ!

 

この作品がレッド(カード)(退場)だ!

 

それにさぁ……

 

「だからって『アレ』はないだろ『アレ』は、お前は一体何を目指していたんだ」

 

「最近漫画で見た『やんでれ』なるものを実践していたつもりじゃったのだが……」

 

……。

 

毒されすぎだろ…お前。

 

それにしてもヤンデレか……。

 

それ、こいつには一番付いたらダメな属性じゃね?

 

嫌だぁぁぁ…不死身にされて永遠にnice boatされるのだけは嫌だぁぁぁ……。

 

流石の某誠君もそこまでされる程罪深くはないと思うんだ。

 

だが誠〇ね。

 

それか『儂と我がパートナー以外はこの世界にいらない!』とか言って人類全員滅ぼしたりして……。

 

実現性が高すぎて怖い!

 

こいつならやりかねない!

 

ということはキスショットのヤンデレ化=人類滅亡じゃないですかヤダー

 

それだけは絶対に阻止せねば!

 

何で俺、こんな何気ない日常の中でも人類の命運背負ってるんだ……。

 

「しかしお前様よ、儂にはどうしても解せぬのじゃが……」

 

「何が?」

 

「なぜ『やんでれ』は自分の血を態々料理に仕込むのじゃ?人間が血を吸ったところで意味など無かろうに、吸血鬼じゃあるまいし」

 

あー……成程。

 

元吸血鬼にとっては血は食料だもんな。

 

カルチャーギャップってこういうのを言うんだろうなぁ……。

 

「それはだな…」

 

うーん何と説明したものか……。

 

「『ヤンデレ』は吸血鬼にあこがれている女の子を指すからだ!」

 

大嘘である。

 

「おぉ!そうじゃったのか」

 

だが、人間の文化に疎いキスショットは簡単に信じた。

 

「そう!だから『鉄血』にして『熱血』にして『冷血』の伝説の吸血鬼であらせられるところのキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードにとって『ヤンデレ』は目指すものじゃないんだ!」

 

「ふぅむ…成程、それは知らんかったわい、ならば仕方ない、『やんでれ』を目指すのはやめにしておくとするかの」

 

ふぅ……。

 

何とか危機は去ったか。

 

心配しなくともお前にはもう一つ重要な属性が付いてるって。

 

そう……BBAという名の立派な属性がな!

 

ドゴォ!

 

「む…なんか不愉快なことを言われた気がするのじゃが……」

 

ABUNEEEEEEEE!!!

 

今のはマジで死ぬかと思った。

 

目線を顔のすぐ横に移すと、そこには壁に突き刺さったキスショットの拳があった。

 

まさか心を読まれたのか……!?

 

アレ?こいつ吸血鬼だよな……?

 

覚じゃねえよな……?

 

金髪のBBAで吸血鬼で覚って……。

 

お前は一体何想郷の妖怪なんですかねぇ……。

 

こいつが弾幕勝負に参戦するとかどんな悪夢だ……。

 

皆まとめて蹂躙する未来しか見えねぇ……。

 

『心渡』とかあの世界ではチートでしかないんだよなぁ……。

 

多分あの世界にある物の殆どは斬れるぞ。

 

斬れないものなど……あんまりない!

 

斬れなければ物理で殴る。

 

勝ち目がねぇぇぇ……。

 

もはや出禁食らうレベル。

 

何でも受け入れる世界なのに……。

 

俺はとりあえず強そうなやつを煽ろう。

 

弾幕には枕で対抗しよう。

 

某奇跡の人に

 

「どれだけ非常識なんだお前!」

 

とかツッコませて

 

「おまいうwww」

 

って返したい。

 

某烏のブンヤに

 

「速さが足りない!」

 

とか言ってみたい。

 

いっそ俺が異変起こすのもいいかもしれない。

 

いやぁ夢が広がり(悪だくみが捗り)ますなぁ。(ゲス顔)

 

閑話休題(話が逸れた)

 

「ふむ『やんでれ』がダメとなると……どの他にどのキャラ付けをするべきかのう…」

 

「え、諦めてねぇのかよ…」

 

勘弁してくれ…。

 

「いやいや、キスショット、そもそもキャラ付けなんてお前には必要ないって」

 

「どういう事じゃお前様?」

 

「良いかキスショット、キャラ付けって言うのは魅力が足りないキャラを魅力的にする手段であって、既に十分魅力にあふれているお前には必要ないんだ」

 

「そ、そうか…改まって言われると照れるのう」

 

赤面しながらはにかむキスショット。

 

あら可愛い

 

さっきの発言は方便的な意図がかなりの割合で含まれていたが、こうしてみると強ち間違いではないと思う。

 

「それに、俺は今のままのキスショットが一番魅力的だと思う」

 

ありのままの姿見せていこうぜ?

 

これで良いんだって自分信じろよ。

 

大丈夫だって、お前なら何も怖くない!

 

「ほ、本当か!?」

 

「あぁ、本当だ」

 

パァーって感じにキスショットが笑う。

 

花が咲いたような笑顔って感じのやつ。

 

実際笑顔一つでこんなにも魅力的なんだから、ホントこいつってチートだよなぁ……。

 

絶世の美女って、こいつのためにある言葉だと思う。

 

ある種の神々しささえ感じるくらいである。

 

あのバカ作者(零崎記識)も、映画版の冷血編のキスショットの笑顔シーンにやられてたし……。

 

「ならば仕方がないのう!お前様がそう言うのなら儂はこのままでいるとしよう!」

 

「おう、それが良い」

 

変なキャラ付けしようだなんて考えないでくれ。

 

ホント頼むから。

 

こんなことで滅亡しかける人類に申し訳ないから。

 

「儂がどうかしておったようじゃ、確かに儂らしくもなかった。冷静に考えれば、儂にとって重要なのはお前様だけで萌え要素がどうのなど、要らん心配じゃった」

 

「そのままのお前が一番だぞ」

 

「んふふ~儂もお前様が一番じゃ」

 

うーん……にしてもこいつのキャラ崩壊が著しい。

 

あの一件以来、こいつはずっとこんな感じだ。

 

もうデレデレである。

 

あぁ……あの頃の高貴なキャラは何処へ…。

 

いやまぁ、顔もスタイルも極上品の美女に好意を向けられて嬉しいっちゃ嬉しいのだが…。

 

寧ろ嬉しくないない奴なんていないだろ普通。

 

好意的に接してくるのもいいが、キリッとして高貴なキャラも同じくらい好きなんだよなぁ。

 

こいつはそうしていたほうが様になるというか…。

 

それでたまにこうやってデレる一面を見せてくれればもう破壊力抜群よ。

 

俺でも堕ちると思う。

 

いや、既に堕ちてるか。

 

キャラ付けとか関係なく、どんなキスショットでも全部好きになれる気しかしないからなぁ……。

 

俺はもうこいつを嫌うことができない。

 

ぐぬぬ…これが惚れた弱みか…。こいつといい羽川といい……。

 

うわっ…最近の俺、負けすぎ……?

 

この二人に対してはもう『過負荷(マイナス)』並みに勝てる気がしない。

 

某負完全さんみたく、これからは二重括弧で括弧つけて喋ろうかな……。

 

『また』『勝てなかった』

 

なんつって

 

あ、でも気持ち悪がられて引かれそうだからやっぱり止めよう。

 

パクリはよくないな、ウン。(漂う今更感)

 

閑話休題(茶番が長すぎた)

 

……。

 

どうでもいいが、この作品『閑話休題』で遊びすぎじゃないだろうか?

 

特殊ルビとはいえ自由にもほどがあるだろ。

 

閑話休題(だって遊びやすいんだもの)

 

「さてお前様」

 

「何だよ改まって……」

 

「『恋バナ』をするぞ」

 

「え?何だって?」

 

聞き間違いか?

 

難聴系主人公になった覚えはないんだが……。

 

「じゃーかーらー『恋バナ』とやらをするぞ」

 

「オーケー聞き間違いじゃなかったか」

 

『恋バナ』とか、こいつに似合わない単語が出てくるもんだから一瞬自分の耳を疑っちまったぜ…。

 

「さてはお前、月火に何か吹き込まれたな?」

 

『恋バナ』そんな浮ついた話が大好物な年齢にある女子が、この家には二人いる。

 

俺の妹共だ。

 

ただし、火憐は基本脳筋だから恋愛とかそういう浮ついた感情はあんまり分かっていない。

 

しかし彼氏はいるらしい。

 

多分、意味合いとしては『伴侶』ではなく『番』だろうがな。

 

消去法で、こいつにまた要らんことを吹き込んだのは月火になる。

 

「お前様よ」

 

「何だ」

 

「『恋』とは何じゃ?」

 

「……」

 

いきなり哲学的な問題をぶち込んできやがったな……。

 

「……生憎、その問いに答えるには俺には経験が不足していてな」

 

前の世界を含めても、俺は生まれてこの方恋なんてしたことが無い。

 

俺と対等に並び立てるほどの存在がこれまでいなかったからだ。

 

簡単に例えるならば、犬や猫が好きな人は沢山いるだろうが、そいつらを普通『異性』としては見れないだろう?

 

そういう事だ。

 

つまるところ、俺はステージがあまりにも違いすぎたのだ。

 

それが覆ったのは僅か一か月前に過ぎない。

 

「じゃがお前様よ、儂の見たところお前様はあのメガネの小娘に好意を抱いているのではないのか?見たところ随分と仲が良さそうではないか」

 

「いや……確かに羽川のことは好きだが、これが『恋』とか言われると少し疑問なんだよなぁ」

 

「ならばお前様は『恋』とは何だと考えておるのじゃ?」

 

「はい?」

 

「お前様の感情を『恋ではない』と結論付けるならば、まず前提として『恋とは何か』を知っている必要があるわけじゃろう?ならばお前様は一体何をもって『恋』を定義するのじゃ?」

 

「弁証法かよ……」

 

小難しい話になってきたなぁ……。

 

「んーあれだ、一般的に言えば『恋』ってのは誰かの『異性としての魅力』を根拠にする感情だろ?」

 

「まぁ、そうじゃの」

 

「だが俺は、羽川を()()()()()欲しいと思っているわけでは無いんだ。人間としてのあいつは好きだ。友達としても勿論好きだ。女としてのあいつも……まぁ好きではあるんだが、そこまで強い感情にはならない」

 

「釈然とせんのう……」

 

「自分の感情を明確に語れる奴なんていないだろ」

 

そもそも感情自体が不明確な物なのだから。

 

「まぁ、俺が羽川に好意を抱いていること自体は否定しないがな。人間として、友人としてあいつは最高だと思うし、一緒にいてくれれば普通に嬉しいし楽しいが……」

 

「あくまでも『女として』ではない…ということじゃな」

 

「魅力を感じない訳ではないんだがな、ただそれは俺にとってはあまり重要じゃないってだけで」

 

「うーむしかし、お前様の小娘に対する好感度はとても友情では説明つかんと思うのじゃが……」

 

「何でそんなに根掘り葉掘り聞こうとしてくるんだよ……」

 

「お前様じゃからじゃな」

 

「答えになっているようでなってない回答をどうも」

 

「で?どうなんじゃ実際」

 

「えぇ…コレ言わなきゃダメ?」

 

「ダメじゃ」

 

「あーそうだな……こんな答えしかできなくて悪いが、実は俺にもよく分からん」

 

「何故じゃ?」

 

「確かに自覚はしてるんだ、俺が羽川に向ける感情は友人に向けるソレを大きく逸脱している。それは認めるが、だからと言って女として見ているわけでも無い。どころかそれすらも大きく超えた感情のようにも思えるし……」

 

「さしものお前様も、感情の問題は一筋縄ではいかぬということかの……かかっ」

 

「ところでお前はどうなんだよ」

 

「む?」

 

「俺にだけ喋らせてないで、お前の『恋バナ』とやらも聞かせろよ」

 

そう言うと、キスショットはニヤリと笑った。

 

「何じゃ、儂の処女性がそんなに気になるのか?えぇお前様よ」

 

「誰もそんな話はしていないだろ……」

 

話が一気に下世話になったな……。

 

さっきまでの真面目さはどこに……。

 

「かかっ!まぁ安心せい、昔一人眷属を作りはしたが、儂が本当に心から対等と認めた相手はお前様だけじゃよ」

 

「そりゃ嬉しいね」

 

「いや、軽く流しておるがコレかなりすごいことなのじゃよ?儂が本気で惚れこんだ男なんてこの500年に一人もおらんかったんじゃから」

 

「お、おぅ……結構ドストレートに言うんだな」

 

「もうベタ惚れじゃ」

 

「ベタ惚れなのか…」

 

全く包み隠さねぇなぁ……。

 

こっちの方が気恥ずかしくなってくるんだが……。

 

バタンッ!

 

「もう!お兄ちゃんいつまで寝てるつもりなの!」

 

と、柄にもなく『恋バナ』なんぞをしたせいで漂う微妙な空気を俺の部屋のドアごと打ち破るように、月火が俺の部屋に突撃してきた。

 

「アン姉さんも、お兄ちゃんを連れてくるように頼んだのに何お兄ちゃんと仲良くお喋りしてるの」

 

そうそう、うちの家族はキスショットの事を『アン』と呼んでいる。

 

ハート『()()』ダーブレードという訳だ。

 

俺は普通に『キスショット』だけどな。

 

「おぉ、そう言えばそうじゃったな」

 

「その結果があの凶行かよ!?」

 

どんな頼み方されたら『俺を起こしてきて』が『寝込みを襲ってきて』になるんだ…。

 

「ところでお兄ちゃん、アン姉さんと一体何を話してたの?」

 

「『恋』とは何じゃということを語らっておったのじゃ」

 

「恋!なぁんだアン姉さん、それなら恋愛経験皆無のお兄ちゃんじゃなくて私にしてくれればよかったのに!ファイアーシスターズは恋愛相談も請け負っているんだよ!」

 

「ぶん殴るぞお前……」

 

俺を流れるようにディスってんじゃねえ。

 

「恋愛相談だぁ?お前は兎も角、火燐にそんな真似ができるのかよ」

 

「火燐ちゃんを荒事専門の戦闘員と思ったら大間違いだよお兄ちゃん、火燐ちゃんも恋愛相談には乗ってるよ、全部成功したことがないだけで」

 

「ソレ明らかに向いてねぇじゃねえか!」

 

相談しただけ損じゃん……。

 

恋敗れた相談者に合掌…。

 

ウチの脳筋妹がすいません。

 

「大丈夫大丈夫、私の成功率は100%だからプラマイゼロだよ」

 

「それはそれで異常だな……」

 

もしそれがホントならお前は将来結婚相談所に就職するべきだ。

 

ぜひともこの国の少子化解決に尽力してもらいたい。

 

「んじゃそんな恋愛マスターの月火に質問だが」

 

「ふっふっふ……何でも聞いてくれて構わないよ恋愛素人君」

 

(♯^ω^)ピキピキ…

 

「おい落ち着けお前様、うぬの力で本気で殴りに行こうとするな」

 

「HA☆NA☆SE☆キスショット!一発でいいからこいつを殴らせてくれ!」

 

「いや一発でも大ごとじゃから!絶対ただじゃすまぬから!」

 

「ちょっとだけ!ちょっとだけだから!」

 

「そんな女をなし崩し的に手籠めにするクズ男みたいなセリフは止めい!」

 

「ちょっとコツンとするだけだから!」

 

「そんな軽く小突くだけみたいな言い方してもダメじゃ!」

 

「血祭りにあげてやるぅ」

 

「落ちつけぇ!」

 

「お兄ちゃん達ってホント仲いいよね……」

 

閑話休題(クールダウン中)

 

「それで?私に聞きたいことって何なの?」

 

「あぁお前ってさ、彼氏いるだろ?」

 

「うん蝋燭沢君。それが?」

 

「じゃあ聞きたいんだが、『人を好きになる』って、一体どういう感じなんだ?」

 

「妹にする質問じゃないよね、ソレ…」

 

うん、俺もそう思う。

 

「うーん…と言っても、それは感情の問題だから…言葉で言い表すのは無理だよ。強いて言えば『何となく』としか言いようがないよ」

 

「『何となく』か」

 

「そう『何となく』、『何となく』好きかなーって思って、『何となく』好きだなーって感じて、『何となく』好きだって分かる。恋なんてそんな感じだよ」

 

「相手のここに惚れたとかは無いのか?」

 

「そりゃ後から優しいとか、カッコいいとか、お金持ちだとか、色々と理由をこじつけることはできるよ?でもそういうのって、全部好きになった後の話なんだよね。『彼のこういうところが好き』って言うことはできるけれど、『彼がこうだから好き』って言うことはできないんだよ」

 

「そういうもんか」

 

「そういうものだよ」

 

じゃあ私は下に行ってるから、お兄ちゃんたちも早く降りてきてよね。

 

そう言い残し、月火は去っていった。

 

「うーん結局、今までの話で分かったことは、『何も分からない』ってことだな」

 

色々と小難しい話を並べた割には、得られたものは何もなかった訳だ。

 

「まぁ、高々例外と吸血鬼と小娘が議論しあったところで感情が説明できれば苦労は無いという事じゃな」

 

「そう言われると何かすげー事やっていたように思えるから不思議だ」

 

実際はただの不毛な議論だったのに…。

 

さて、このままこうしてたらまた月火が機動隊の如く部屋に突撃しかねないので、そろそろ下に降りるとするか。

 

ガチャ

 

「ただいまー」

 

キスショットと共に下に降りると、そこでどうやらジョギングに行っていたらしい火燐と玄関で鉢合わせた。

 

「あ、兄ちゃん起きたんだ」

 

そう言って靴を脱ごうとする火燐は、まるで着衣水泳でもやったかのようにずぶ濡れだった。

 

「兄ちゃんを起こすという魔王と戦うにも等しい大役を、月火ちゃんとアン姉さんに任せて大丈夫かと思ったけれど、どうやら無事起こせたようで安心したぜ」

 

「兄の目覚ましを世界を救う事と同列に語るなよ……」

 

いや、世界ならさっき人知れず救ってきたところだけれどさ…。

 

寝ている魔王を暗殺して永眠させようとする勇者を止めてきたところだけれどさ…。

 

魔王が世界を救うRPGってなんやねん。

 

勇者が魔王の倍凶悪なんですがそれは……。

 

「で、お前その()どうしたんだ?」

 

そう、こいつがずぶ濡れになっているのは着衣水泳をしたわけでもゲリラ豪雨に襲われたわけでも無く、大量に汗をかいた結果だ。

 

根拠は臭いである。

 

言葉では言い表せないほど強烈に汗臭い。

 

正直鼻をつまんでこいつを今すぐ風呂場にぶち込んでやりたいところだが、汗まみれのあいつに触ることすらしたくないので今はひたすら耐えている。

 

この強烈な臭いを前に顔色一つ変えずに応対している俺の精神力を誰か褒めて欲しい。

 

見ろ、キスショットなんか臭いを体内に入れないように必死に口閉じてるんだぞ。

 

顔を見れば明らかに表情が引きつっている。

 

「何をどうしたらそんな妖怪濡れ女みたいになるんだよ」

 

というか、お前身体大丈夫なのか?

 

明らかに人間が出せる汗の量を上回っている気がするのだが……。

 

「いや、あたしジョギングってそんなにしないから、加減がわからなくてさ。ペース配分を間違っちまったようだ」

 

「ほう」

 

「意外と長かったな。42.195キロ」

 

「お前フルマラソンを走ってきたのか!?」

 

節子、それジョギングやない、マラソンや

 

「だってほら、今日はゴールデンウィーク開始祝いのジョギングで、イメージは聖火ランナーだったから」

 

「聖火ランナーは42・195キロも走ったりしねえよ!」

 

混ざってる混ざってる

 

「えーでも国と国を繋ぐんだからそれくらいは走るんじゃねーの?」

 

「そもそも聖火ランナーは一人じゃなくて多くの人数で区間ごとに区切って走るんだよ。もし仮にお前の言う通りだとしても、国々の間隔が42・195キロは短すぎる!」

 

ご近所さん過ぎるだろ!

 

「いや兄ちゃん、42・195キロは長かったよ」

 

「そりゃ車使ってもそれなりの距離だし長いことは長いだろうが」

 

「うん。実感してる。これ以上なく実感してるいくら42・195キロといっても精々100メートルの10倍かと思っていたんだけどな」

 

「……」

 

絶句した。

 

あ…ありのまま、今起こった事を話すぜ!

 

おれの妹が42・195キロを1キロだと思っていた

 

な…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

頭がどうにかなりそうだった…頭が悪いとか脳筋だとか、そんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ。

 

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。

 

「そっかそっか、疲れるわけだ。ようやくこんなにヘロヘロになった理由が分かったぜ」

 

あ、キスショットも若干青ざめてる。

 

お前元とはいえ怪異に怯えられてんじゃねぇよ…。

 

「で、兄ちゃん。ゴールテープはどこだ。用意してくれてるんだろ?」

 

「あぁ?ねぇよそんなもん」

 

「あれ?おかしいな。月火ちゃんに頼んでおいたはずなのに」

 

「何言ってんだ?お前は未だゴールしてないぞ?」

 

「え?」

 

「いやだから、42・195キロがお前の目標だったんだろ?ってことはメートルに直せば42159メートルだ。ってことは100メートルの約420倍だぜ?お前が走った距離じゃ全然足りねえよ」

 

「えぇ、そうだったのか!?分かったぜ兄ちゃん!じゃあ、あたしちょっと今から走りなおしてくるから月火ちゃんに伝えといて!」

 

そう言って、火燐は家を飛び出していった。

 

「………」

 

妹のあまりのバカさ加減に言葉も出ない。

 

「鬼かお前様…」

 

「いや、流石にあれは騙される方が悪いだろ…」

 

普通に『だから何?』で済ませて欲しかった…。

 

本当、どうやったらあんなに残念な頭で生きていけるんだ……。

 

「風呂でも沸かしといてやるか…」

 

創造したゴールテープを玄関に張りながら、俺はせめてもの罪滅ぼしをするのであった。

 

その後、ゴールテープを切って真っ白に燃え尽きている火燐を数十分後に発見し、速やかに風呂場にぶち込んだ。

 

風呂から上がって復活した火燐に月火と同じことを質問したところ

 

「顔見てこいつのガキを産みてーなーって思ったら、それが好きってことなんじゃねーの?」

 

と言った。

 

俺の妹は、本能で生きる女だった。

 

003

 

家で駄弁っていただけなのに、もう既に1万文字近くも書いている。

 

という訳で、ここからはさっさと展開を進めようと思う。

 

家で遅めの朝食をとった後、特にやることもなかった俺は散歩に出かけた。

 

そうしてあてもなく彷徨い歩いていると、道中で羽川を発見した。

 

うーん、でもなんか様子がおかしいな……。

 

俯きながら歩く羽川の表情は、心なしか消沈しているようであった。

 

何かあったのか?

 

そう思うや否や、俺の足は彼女に向って歩き出していた。

 

「よう、羽川」

 

背後から声をかけると、羽川は驚いたように振り返った。

 

そして、羽川の顔を真正面から見たことで俺は気付いた…。

 

気付いて――――しまった。

 

羽川の顔の左側をほとんど覆い隠すようなガーゼに、気づいてしまった。

 

「阿良々木君じゃない、元気してた?」

 

「おう元気してたぜ、そう言うお前は、どうやらそうでもないようだが」

 

そう言うと、羽川は一瞬はっとしたような表情を浮かべ、より一層表情を曇らせた。

 

「え、えぇっとね阿良々木君……これは――」

 

「ちょっと見せろ」

 

そう言うや否や、俺は羽川の顔の左半分を覆っていたガーゼを剥がす。

 

ひどい傷だ

 

「打撲の痕に切り傷か……」

 

痛々しかった。

 

頬の部分は青黒い痣になっており、眼の高さの位置には深めの切り傷ができていた。

 

「誰かにひどく殴られたようだな、切り傷は恐らく、メガネごと殴られたことによる傷だろう、かなりの広範囲に痣ができていることから、強い力で何度も殴られた……ってところか」

 

俺は羽川にガーゼを張りなおしながら言う。

 

「で、何があったか説明してもらってもいいか?」

 

「……うん。じゃあ歩きながら話そっか」

 

追い詰められて遂に観念した犯人のように羽川は語りだした。

 

「阿良々木君はさ……妹いるでしょ」

 

「ああ、手のかかる奴らが二人な」

 

「あはは、立派にお兄ちゃんしてるんだね」

 

「不本意ながらな」

 

「仲がいい家族だね」

 

『家族』

 

その言葉を発した瞬間、羽川の眼に影が差し込んだ気がした。

 

「私には――家族がいないの」

 

「いない……か」

 

「うん、誰一人」

 

家族がいない。

 

字面だけ見れば、天涯孤独の身であるとしか捉えられないだろうが、それはあり得ない。

 

俺や彼女が通う直江津高校は私立だ。

 

当然、授業料だって決して安くは無い。

 

その上、自分の生活費までも彼女一人で稼いでいるというのは無理がありすぎる。

 

一体どれだけのバイトを掛け持ちしているんだって話だ。

 

だから恐らく、家族ではなくとも彼女を扶養している人はいるのだろう。

 

それを、彼女は家族とは呼ばないだけで…。

 

「お父さんとお母さんと私、三人で暮らしてるの」

 

「だが、家族じゃない」

 

羽川は無言で頷いた。

 

「今のお父さんとお母さんは、本当のお父さんとお母さんじゃないの」

 

「血のつながりが無いってことか」

 

「そう、昔の事なんだけれどね、私と同じくらいのある女の子がいて、その子がある日身ごもって生まれたのが私」

 

「私生児ってことか」

 

「そうなるね」

 

「父親は?」

 

羽川は首を振った。

 

「分からない。調べようによっては分かるかもしれないけれど、そんなことしたところで向こうにも、私にも良いことは一つも無いから調べても仕方のないことだけれどね」

 

「今の母親は?血のつながりが無いってことは……」

 

「そう、違う人。私を産んでくれたお母さんは、すぐに自殺しちゃったから」

 

「自殺……」

 

「ベビーベッドの上で首を吊って」

 

モビールみたいだった。

 

と、羽川は冗談めかして言う。

 

「ただ、自殺の直前に、産みのお母さんは結婚していたんだよね。ほら、子育てって、手間と時間も沢山かかるけれど、それと同じくらいお金もかかるじゃない?やっぱり10代の女の子がシングルマザーするには無理があったってことなんだろうね」

 

「それで金目当ての結婚か…」

 

「相手にしてみれば、いい迷惑だっただろうけれどね、愛情もないのに結婚した相手が早々に死んで、残ったのは強引に押し付けられた赤の他人同然の赤ん坊だけだって言うんだから」

 

そんな風に自嘲する羽川は、見ていてとても痛々しく映った。

 

「それが…私の最初のお父さん」

 

「『()()()』ってことは…」

 

「そう、その人も今のお父さんとは別の人」

 

「最初のお母さんの自殺の原因は、正直分からない。もともと繊細な人だったっていう事もあるらしいんだけれど、お金目当てに結婚するには彼女は少し、ロマンチスト過ぎたみたい」

 

淡々とした調子で、羽川は言った。

 

「その最初のお父さんがね、私はほとんど覚えていないんだけれど、真面目な仕事人間って感じの人らしくてね、子育て何てできない人だったんだって。で、また結婚。今度は子育て目当てってことなるのかな。だったらベビーシッターでも雇えばよかったのにね。まぁ真面目な人だったらしいから、教育上母親がいないのはよろしくないとか考えちゃったのかな?」

 

と、羽川はろくに覚えていない最初の父親をフォローする。

 

「で、そのお父さんは結局働きすぎで過労死しちゃったんだ。で、残されたお母さんが今のお母さんで、その再婚相手が今のお父さんってこと」

 

以上、おしまい。

 

と、羽川は笑顔でまとめた。

 

要するに、押し付け押し付けられを繰り返して盥回しにされた挙句にたどり着いたのが今の両親という事だ。

 

成程、家族じゃないというのもうなずける話だ。

 

戸籍上は家族なのだろうが、羽川の家族は所詮赤の他人同士の関係…ということだ。

 

「本当―――なんでなんだろうね」

 

―――何で私たちは…家族になれないんだろう。

 

「私はこんなにも……『娘らしく』しているのに」

 

―――『()()()』……しているのに。

 

「血が繋がっていなくても家族になれるって――私も昔はそう思ってたんだけれどね。流れに流れてやっとたどり着いた家だったから、仲良くしようとか思ってたんだけれどね。ままならないもんだよ」

 

ままならないし―――

 

つまらないよ―――

 

『行き詰っている』

 

春休みの時に、羽川が言っていたことだ。

 

俺もそうだった。

 

どうやら、得てして現実というのは、ままならないものらしい。

 

やはり俺と羽川は、よく似ている。

 

似通っている。

 

この上なく相似形だ。

 

「ごめんね阿良々木君」

 

唐突に、羽川はそう言った。

 

「今、私、意地悪なことを言ったよね」

 

俺が何か言う前に、畳みかけるように羽川は言う」

 

「いきなりこんなこと言われたって、反応に困るでしょう?だからどうしたって感じだし、そもそも阿良々木君には関係ないし――でも、なんだかちょっと同情しちゃうようで、筋違いの同情しちゃう自分に罪悪感を覚えちゃうでしょう?悪いことをしちゃったような、そんな……嫌な気分になったでしょう?友達のプライベートを覗き見しちゃったみたいで、重い気分になったでしょう?」

 

まるで自分の罪を懺悔するように、羽川はまくしたてる。

 

「だから話したんだ」

 

「……」

 

「阿良々木君が話せって言ったことにかこつけて、本当は断れば阿良々木君はあっさり引いてくれたはずなのに、私はそれを免罪符にして阿良々木君で、憂さを晴らした」

 

こんなのは愚痴でもない、ただの――――

 

「欲求不満の……解消だよ」

 

違う。

 

「解消されたようには、とてもじゃないが見えないけれどな」

 

お前は何も悪くない。

 

だから――そんな風に世界一自分が嫌いですみたいな顔するな。

 

「別に、俺でよければ好きなだけ憂さを晴らせばいい、欲求不満なら好きなだけ解消してもいいから、そんなに自分を責めるな。卑下するな。お前の愚痴くらい、いつでも聞いてやるよ」

 

だって俺達は―――

 

「友達……だろ?」

 

「……阿良々木君はさ……いい人だね、優しくて、良い人」

 

だから……今だけはその優しさに甘えさせて……

 

「続き……聞いてくれる?」

 

「おう、どんとこい」

 

「私が自分の身の上を知ったのはね、小学校に入る前だったの。あの人達―――本当に私のことが邪魔みたい」

 

お前は私たちの家族じゃない―――

 

羽川の両親は冷徹にも幼い羽川との間に境界線を引いたのだ。

 

「だから……殴ったのか?」

 

羽川は俯く。

 

「なぁ羽川」

 

「何かな、阿良々木君」

 

()()()()()()()()?」

 

そして俺は、羽川の禁断の領域に踏み込んだ。

 

「―――誰にも言わないって約束してくれる?」

 

「約束しよう」

 

そうして、羽川は重い口を開く。

 

「お父さん…今朝、お父さんに殴られたの」

 

「……そうか」

 

正直、そうじゃないかとは思っていた。

 

羽川の痣を見る限り、かなりの強い力で殴られていたため、羽川の母親があくまでも普通の成人女性程度の腕力しか持っていないと仮定すれば、恐らくは父親にやられたのだろうと、おおよその見当はついていた。

 

「お父さんの持ち帰った仕事にね、うっかり私が口を出しちゃったから、殴られました。お母さんは、それを黙って見てました。だから―――全部私の自業自得なの」

 

「そんなわけあるか」

 

()()()()()()()()()()そんなになるまでお前が殴られなければいけない理由は無い。

 

「だってほら、考えてみてよ阿良々木君。もし阿良々木君が40歳くらいでさ――見も知らぬ十七歳の子供から、知ったような口を利かれたとして?ちょっと腹が立っちゃっても、かちーんと来ちゃっても、それは仕方がないと思わない?」

 

「思わねぇよ」

 

俺は羽川の言葉を切り捨てる。

 

「俺には分からない。何故その程度の事でお前がそんなになるまで殴られなければいけなかったのかも、お前が何で自分を殴った父親と、それを黙って見ていた母親をそこまでして庇おうとするのかも、何より、何故大ケガするくらい殴られておいて、お前が()()()()()()()()()のかも、俺にはさっぱり理解できない」

 

なぜお前は、さっきから加害者のフォローばかりしているんだ。

 

「ここは泣くところだろう?悲しむところだろう?怒るところだろう?なのに何故、お前は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

痛かったんだろう?辛かったんだろう?悲しかったんだろう?

 

なのに何故――――

 

「お前は、()()()()()()()()()()()()()()()()?なぜ平然と笑っていられる?」

 

「だって……それは…」

 

「『()()()()()()』?」

 

「そう……()()()()()()…殴られても仕方ないのよ」

 

成程……。

 

そういう事か。

 

それがお前の……答えか。

 

「阿良々木君、約束してくれたよね?『誰にも言わない』って、約束して……くれたよね」

 

切実な顔で言う羽川。

 

「あぁ、安心しろ。誰にも言わねえよ」

 

それを俺は、渋々受け入れるしかなかった。

 

俺に被害があったわけでも無いのに、これ以上干渉するべきではない。

 

羽川(被害者)がそう言っている以上、俺は口を出すべきではない。

 

だが……

 

「お前は……本当にそれで良いのか?」

 

「お願い。黙っててくれたら私何でもするから」

 

「ん?今何でもするって(ry」

 

シ リ ア ス 終 了 の お 知 ら せ

 

「あ、阿良々木君?」

 

「何でも?本当に『何でもする』って言ったな?」

 

「い、言ったけど…あれ?私がおかしいのかな?今結構シリアスなシーンじゃなかった?」

 

「ンなもん知るかい!羽川が一生絶対服従するって言ったことに比べればそんなの小さい小さい!」

 

「一生絶対服従とは言ってません!」

 

「でも回数指定してなかったじゃん、ということは無限に聞いてくれるっていう事だろ?」

 

「一つです!一つだけ何でも言うことを聞くから!」

 

「む、しまった訂正されてしまった」

 

「本当もう頭痛いよ…」

 

「よし決めた!じゃあ叶える願いを無限にしてくれ!」

 

「定番だけど厚かましすぎる!?確かによくあるけれど!」

 

「ダメか…」

 

「ダメです」

 

「じゃあ死んだばっちゃんを生き返らせてくれ!」

 

「それも定番だけど普通に無理だから!実現可能な奴にして!」

 

「オラに元気を分けてくれぇ!」

 

「サ〇ヤ人だったの!?」

 

「頼む!」

 

「切羽詰まったように言ってもダメ!」

 

「ダメか」

 

「せめて私にできる範囲にして…」

 

「じゃあお前、俺の女になれよ」

 

「なってもいいけれどその似非ホストキャラはやめて!」

 

「え?いいの?」

 

「まぁ…何でもって言ったわけだし……まさか冗談だったの?」

 

「い、いやその…普通に断られるかと思ってネタでやってました」

 

「もう、それで結局どうするのよ」

 

「うーん」

 

ただいま思考中……

 

「よし!」

 

「決まったの?」

 

「あぁ、だがとりあえず人目につかない場所に行こう、話はそれからだ」

 

羽川を近くの茂みに連れこんだ

 

羽川を近くの茂みに連れ込んだ

 

羽川を近くの茂みに連れ込んだ

 

何故だろう…同じことを3回言っただけなのに犯罪臭がヤバイ。

 

いや、でも一応合意の上だから問題ない……よな?

 

「で?阿良々木君はこんなところで私に一体何をさせようって言うのかな?」

 

「俺が言うのもアレだが、羽川、なんか異様に落ち着いてない?」

 

「女子の方が意外といざという時は潔いものなんだよ阿良々木君」

 

「そういうもの…なのか?」

 

「あーあ、私の初体験ってこんな所なんだ」

 

「いや度胸ありすぎだろ!」

 

死地に向かう兵士並みに覚悟決めてやがる……。

 

やばいな女子。

 

「それとも何?叫び声でも出して欲しいのかな?」

 

「やめてください(社会的に)死んでしまします」

 

「さぁ、もったいぶってないで早く言いなさい!」

 

「お、おう、じゃあ言うぞ……」

 

「聞きましょう」

 

何だろう、羽川に度胸がありすぎて最早余裕すら感じる。

 

だが、ここで折れたら男が廃る。

 

俺も覚悟を決める!

 

「羽川」

 

「何」

 

「俺に、そのガーゼの下舐めさせてもらおう!」

 

(○◇○;;J) <ヘ、ヘンタイダー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「無闇だぜー!」

【作者だよー!】

「ここであったが百年目ぇぇ!」

【モルスァ!?】

【ぐ、ぐふ…いきなり何をするんだい】

「るせぇ!よくも今まで無駄なネタでシリアス台無しにしてくれやがったなぁ!悪ノリが過ぎることといい、更新頻度の遅さといい!お前には言いたいことが山ほどあるんだ!」

【ま、待て悪かった、謝るからその高く振り上げた拳をいったん下――――】

「問答無用!」

【タピオカァ!?】

「ふぅ、やっとすっきりした」

【ひどい目に遭った……でもこれでやってみたいことリストの一つ、『キャラとのド突き漫才』にチェックっと】

「何だよそのリスト!?」

【ハイハイ、ということでね、前章とはあとがきの書き方をガラッと変えて、こうしてアニメ版の次回予告の形で私筆者の零崎記識と本作の主人公零崎無闇君で執筆中の裏話とか次回予告とかをしていこうと思います】

「無視か!」

【ホラ無闇君、自己紹介して】

「野郎……あーどうも、『外物語』主人公の零崎無闇だよろしく頼む」

【ハイということでやっていきたいと思います。では早速カンペ出して】

「テレビ番組か!?つか誰が出してんだそのカンペ!?」

【えーでは最初の話題はですね…】

「聞けや!」

投稿が遅れた理由

「オラ吐けキリキリ吐けやこのバカ作者、事と次第によっちゃ脳天ぶち抜くぞ」

【分かった分かったから創造した銃を眉間にグリグリしないでお願いだから】

「とっとと吐け」

【アッハイ。えーそれはですねぇ……主に理由は三つありまして……】

【一つ目がリアルの事情ですね、私リアルでは学生でして…傷物語の最終話を投稿したのがちょうど夏休みの最後の方だった訳で、その後学校が始まってプレゼンやら課題やらで忙しくなりまして……執筆する時間が夜にしか取れなかったことですね】

【二つ目は展開の行き詰まりですかね、傷物語は無闇君主体で結構ストーリー自体は単純だったんですけれど、黒猫編は中心が羽川さんで家族の問題って言う非常に難しい複雑なテーマなので、どういう風に始めてどういう風に締めるか、って言うのが結構手探りでやっている状態で、なかなか筆が進まなかったんです】

「三つめは?」

【三つめはその……私も執筆の参考のためにほかの方々の作品を見ているんですが……】

「が?」

【皆さんの作品が面白すぎて読むことだけに熱中して執筆するのを忘れてました】

「天罰!」

【ナムサン!?】

「ホホォォウ?お前いい度胸だなコメント欄で散々失踪したんじゃないかって心配させてたくせに面白すぎて執筆忘れてだぁ?随分とナメ腐ったこと言ってくれるじゃねぇか」

【誠に申し訳ありません!】

「おまえただでさえこんなネタ満載のカスみたいな作品を読んでくれる方々だぞ?もっと大事に扱わんかい!」

【おっしゃる通りでございます!】

「ということでなるべく生存報告とかはまめさせるから、これからもこの作品をよろしく頼むぜ!」

【なにとぞよろしくお願い申し上げます】

「よし、次行くぞカンペ出せ!」

【君順応早くない?】

何で今回だけこんなに文字数多いの?

【それはですねぇ……新年を祝っての大盛サービスです!】

「本当は?」

【キスショットと駄弁るシーンが思いの外長くなってまとまり切りませんでした】

「やっぱりか……」

【仕方ないじゃないか!原作の会話シーンはどう考えたって無闇君のキャラじゃなかったんだもの!】

「まぁ……妹の胸揉んだり下着見せ合ったり金巻き上げたりしてるからなぁ……」

【無闇君はそこまで変態じゃないので、あとキスショットとの兼ね合いもありますし】

「オイ、さらっと俺にちょっとは変態性があるみたいな発言止めろ」

【え?違うの】

「違うわ!」

つ今回の最後

【やっぱ変態じゃん】

「へ、変態ちゃうわ!」

【まぁムッツリ変態な無闇君は置いておいて、002の話に戻りましょう】

「ムッツリ変態!?」

【002は原作と違って阿良々木家の一員として暮らしているキスショットの様子を描写したかったってのがありますね、他にも無闇君が羽川さんを実際どう思っているのかとか、そう言う喋らせておきたい情報を詰め込んだらいつの間にかあんなに長くなっていしまいました】

「つまり思い付きで話作ってるコイツの自業自得って訳だな」

【キスショットの扱いがホント難しい……】

「原作だと、アイツ幼女姿で学習塾廃墟で膝抱えて終始無言だからな」

【個人的にはちゃんとヒロインさせてあげたいところなのですが、今のとこと無闇君のストッパーって言うかツッコミ係になってますからね…】

「傷物語での羽川の役割みたいだな」

【ですね、でもなぜかあの娘はその上で頼んでもいないのにヒロインしてましたけれど】

「まあ、お前の推しキャラだしな……アイツ」

【原作だとあんなに苦労してるのに報われませんからねぇ彼女。それをどうにかしてやりたいって気持ちは無きにしもあらずですね】

「そんなあいつを掘り下げるのが今回の章なわけだが……」

【まだ結末がはっきり決まってない…】

「どうすんだよお前……」

【いやだって羽川さんはホント難しいんだって!黒猫編が終わっても化物編でまた来るし、やるかどうか未定だけど白猫編だってあるからその兼ね合いもあってどうするかがホント難しいキャラなんだって!】

「原作でもアニメでも、相当愛されてるからなアイツ……」

【という訳で私としてのもうその場その場のノリと勢いでどうにかするしかない状況です】

「それで後々苦しくなってくるだけだっつーのに、本当学習しないなこいつは…」

【仕方ないじゃないか!この作品は100%ノリで書かれた二次創作なんだから!】

「西尾先生のキャッチコピーをパクるな」

次回予告

「もう次回予告か」

【初回だけあって結構喋ったと思うけれどね】

「ほらやるならさっさとやれ」

【ではでは、次回は原作004~005までの予定です】

「いよいよ今回の物語が始まるな、というか、まだ始まってすらいなかったのかよ」

【前置きが長いのも、物語シリーズの特徴っちゃあ特徴だよね】

「まぁそうだが…」

【原作では忍野が登場したり、忍ちゃんのドーナツ好きが発覚したりする章だね】

「キスショットもドーナツ好きにするのか?」

【当然。うちのキスショットのドーナツ愛はぱないぜ?】

「確かにアイツのドーナツ愛は原作でもかなりのものではあったが……」

【お菓子やスイーツをおいしそうに食べる女の子って、イイヨネ】

「結局はそれが目的かい!まぁ確かに認めるけどさぁ」

【という訳で!次回はキスショットのドーナツ愛が可愛い回…に、なるといいな!】

「願望!?」

【「次回、『つばさファミリーその貳』!」】

【なるべく早く投稿できるように善処いたします】

「確約しろや!」

「あ、えーとこの作品を読んでいただいた読者様ならびにお気に入り登録をしてくださった皆様、ありがとうございました」

【質問・意見はコメント欄へどうぞ!】

【「ではまた次回!」】



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