感想・批評は歓迎ですが暴言・悪口は炎上の原因となりますのでおやめください。
「よう、今回だけ前書きを担当する零崎無闇だ」
「かなり待たせちまったみたいですまないな」
「え?
「はっはっは、奴には投稿を大幅にサボった罰として……」
「地 獄 の 業 火 に 焼 か れ て も ら っ た ぜ」
006
道端で猫が死んでいる。
この状況だけで、一体どれほどの人が死んだ猫がまさか怪異であると思うだろうか。
この何気ない日常の光景の裏に非日常が潜んでいることをどれほどの人が疑うだろうか。
例え予め情報を得ていたとしても。
こんな唐突に前触れもなく怪異が現れるなど、誰が予想できようか。
車に轢かれた猫を埋葬してやる。
文字に起こせばなんてことは無い。
あまりにも普通で―――
あまりにも当然で―――
あまりにも日常で―――
そこに非日常の存在は感じられなかった。
そして、そんな当たり前の光景を前にして、彼女もまた、当たり前の行動をとった。
車に轢かれて血まみれで、内臓も飛び出している猫の死体を、少しの躊躇いもなく、寧ろ慈しむように抱きかかえ、彼女は言った。
「阿良々木君、手伝ってくれる?」
死んだ動物を埋葬してやる。
彼女の行動は何も間違ってはいない。
道徳的で、倫理的で、人道的な
『正しい』行動だ。
模範的な人間の行動そのものである。
正に美徳。
しかし、その正しさも美しさも、彼女の歪さを知る俺から見れば、悲しいものに見えた。
美徳は、悪徳があってこそ映える。
それが無い彼女の行動は、何処かプログラムに従った動きのようで、機械的だった。
そうすることが正しいから行動しているのではなく
そうすることしかできないから
そうするしか取るべき行動を知らないから
彼女の行動は、そうやって、本来あるはずの選択肢を全て最初から殺して『正しい』選択肢を突き進んでいるようであった。
そんな彼女の異常性の前には一匹の猫の死など埋没してしまっていた。
猫
食肉目ネコ科ネコ族の哺乳類。
鋭い爪を持ち、主に鼠、小鳥を狩る。
夜行性で夜目が効く目を持つ。
犬と並んで人に懐きやすいため、愛玩用にペットにしている家庭も多い。
「障り猫」
それが今回、羽川が遭遇した怪異の正体だ。
「今回の件についての落ち度は僕にある。怪異は何の理由もなくそこに現れたりはしない。怪異の出現には、それに相応しい理由があるって言うのが、僕の持論なのだけれど、だからと言ってそれが必ずしも分かり易いものとは限らないし、猫という動物は猫又や火車のように日本では怪異として馴染み深いけれど、それ以上に猫という動物は日常にありふれている。
確かに。
例えば、その怪異がもしトラやライオンだったら俺も一目で気づけただろう。
「見た目の特徴だけ伝えて障り猫がどういう怪異なのかを話さなかったのは完全に僕の失策だ。それを君が知ってさえいれば委員長ちゃんが障り猫と遭遇するであろうことは君にも容易に想像がついただろうに」
「……どういうことだ?」
「
―――アイツだけはマジでヤバイ。
軽薄な口調の中で、この一言だけには焦りが混じっているように聞こえた。
「委員長ちゃんの歪さに、障り猫は誂えたかのようにピッタリだ」
「怪異にはそれに相応しい理由がある……か」
「委員長ちゃん程、障り猫に
「そんなにヤバイのか、障り猫って怪異は」
「いや、障り猫そのものは大した怪異じゃない。そこのハートアンダーブレードと比べれば雑魚も雑魚。存在としては天と地の差がある弱小な怪異さ。それが
例えば―――と、忍野はキスショットに目を向ける。
「阿良々木君と事のついでのように話した吸血鬼の噂話が、君という例外的な人間と、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードという例外的な怪異を引き合わせた……こんなできすぎた偶然、裏に何らかの作為があるのではないかと疑いたくなる偶然を、彼女は何気なく、意図せずに引き起こす」
だからこそ―――
「そんな委員長ちゃんが障り猫という相性抜群の怪異と出逢って、
忍野は、確信しているように断定した。
「俺は……どうするべきだ?」
「ここは二手に分かれよう。僕は君達が埋めたという猫を
「お前が和太鼓なのかはどうでもいいが、とにかく俺は猫を埋めた場所を教えればいいんだな?」
「概ねの場所を口頭で教えてくれればいいよ、後は自力で猫ちゃんのお墓には辿り着けるから」
ふむ…伊達に放浪してないってことか?
俺も一年かけたフィールドワークのお陰でかなり土地勘はある方だが、こいつもこいつで自分なりのノウハウを持っているのだろう。
なら、ここはこいつを信用しておくか。
「分かった。場所は時間が無いようだから手短に話す。それで?俺達はどうすればいい?二手に分かれるんだろ?」
「阿良々木君には、委員長ちゃんに
「適材適所か……」
「そうそう、まさかこんな見ず知らずのおっさんが真夜中に女子高生の家を訪ねる訳にはいかないからね。僕はあの青い服は苦手なんだ」
日本の警察は仕事熱心であることがうかがえた台詞だった。
お巡りさんは有能である。
「その点阿良々木君なら問題ないだろう?吸血鬼の身体能力ならまず捕まらないし。仮に逮捕されてもスキルを使えば簡単に脱獄できるだろう?」
「通報される前提で話してんじゃねぇ」
確かにこんな時間に友人とは言え同級生の女子の家を訪ねるなんて非常識だとは思うけれど……。
うーむ……羽川が無事だった場合は彼女の両親にはなんて説明しよう……。
困った……非常に困った。
「あなたの娘さんの友人ですが娘さんはもしかしたら今日埋葬した猫の霊に取り憑かれているかもしれなかったのでその確認に来たのですが娘さんの様子はどうでしょうか?」
なんて、馬鹿正直に言えるわけもないし……。
変な宗教の勧誘と思われて門前払いされるのは確実だな。
下手すりゃマジで通報されかねん。
確認だけして後はスキル使って記憶消すか?
……マジで犯罪染みてきたな。
ま、いいや。(ヤケクソ)
バレなきゃ犯罪じゃないからセフセフ。(暴論)
『吸血鬼のスキルで人の記憶を消してはならない』
なんて法律はないし。(詭弁)
――という訳で、俺は羽川の安否を確認しに羽川の家へと向かうのであった。
「――やれやれこんな時間に女子の家に夜這いに行くとは、我が相棒は随分と節操が無いのう」
「人聞きの悪いこと言うなよ……」
「じゃがこんな夜更けに若い男が若い女の家に行くなど、どう見ても夜這いにしか見えんじゃろ」
「うぐ……」
確かに問題ではあるけれども……。
自分でもそう見えるって自覚はしているけれども……。
「しかも吸血鬼のスキルを使って空まで飛んで行くとは、よほどあの小娘が大切と見える」
「まぁ、大切な友達だからな」
ごうごうと風を切る音を聞きながら、俺達は月を背にして夜を飛ぶ。
「じゃからお前様の行動は既に友人に対するソレを大きく逸脱しておると言っておろうが」
「そ、そうか……?」
「生涯の伴侶は一人だけしか認めんなんて貞操観念をお前様に押し付ける気は無いが、ハーレムを作るなら作るでそれ相応の器を示してもらわんとな」
「いや、そんなつもりは微塵もないのだが……」
「まず全員に平等に愛を注ぐことは基本じゃが、愛情を分割して注ぐようではだめじゃな、全員に100%の愛情を注げるようにならねばならん」
「俺がハーレム作る前提で話を進めるな」
「当然儂にもこれまでと同じか、それ以上にしてもらわんとな。ちゃんと満足させてくれないと、儂も嫉妬に狂って何をするかわかったものじゃないぞ」
「やめろ!番外編の話を本編で持ち出すな!」
メタいなぁ……。
あ、逆になっちった。
「ところでお前様よ、お前様はあの小娘の家の場所は把握しておるのか?」
「明確には知らないが、以前近くまで送っていったことがあるからな。大体の場所は分かる」
「意外じゃな、お前様の事じゃからもう既に特定しておるものと思っておったが」
「アイツの家の事は敢えて考えないようにしていたんだよ。アイツ、自分の家の位置とか、『家族』に関係することは極力隠しておきたかったみたいだからな」
「意外に紳士なんじゃな」
「意外とはなんだ意外とは……っと、喋ってる間についたみたいだぜ。この辺のはずだ。降りるぞ、キスショット!」
「承知した!」
そう言うや否や、俺達は翼をたたんで真っ逆さまに急降下する。
そして、地面に衝突する直前で翼を広げ、ふわりと音もなく着地する。
さて、確か羽川の家はこの近くのはずだが……。
「―――にゃおん」
俺があたりを見回していると、不意に背後から鳴き声が響く。
どうやら、羽川の家に行く必要はなさそうだ。
だが、手間が省けたことを喜ぶわけにはいかない。
何故なら、それが意味することとは即ち―――
「よう、こんな夜更けに女とデートとはいい御身分だにゃあ―――例外」
―――羽川は、
視界に映る白、白、白。
どこまでも純白に、彼女はそこにいた。
白くて
白無垢で
白々しくも
その白さはまるで、障り猫という怪異の本質に対する皮肉のようであった。
鴉の濡れ羽のような艶やかな黒髪は透き通るような白髪に
ただでさえ白かった肌は病人のように更に白く
変わっていた。
変じていた。
変化していた。
猫の怪異だからだろうか、そんな彼女の服装は上下の真っ黒な下着のみというあられもない恰好であった。
全裸じゃないだけ障り猫の主人への気遣いがうかがえる。
闇のような黒を纏った白無垢な彼女。
それはまるで、今の羽川と障り猫の関係性を暗示しているようであった。
―――だが、
白無垢に変化した容姿も、扇情的な下着姿も、
問題なのは―――重要なのは……そう。
彼女の頭に『
もう一度言おう
彼女の頭に『猫耳』が生えているのだッ!
「にゃおん」
彼女は鳴く。
猫のように。
ゴロゴロ……と、喉を鳴らす。
その仕草は、完全に猫そのものであった。
「――お前、ご主人の友達だろ?」
その乱暴な口調は、羽川とは似ても似つかないものだった。
「お前のことはよく覚えているにゃ。ご主人が俺を埋めた時に一緒にいたお前のことは、ご主人の次位に印象的だったからにゃ」
障り猫はギラリと目を輝かせる。
「それにしても伝説の吸血鬼、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードと同等の存在。俺にゃんかじゃ及びもつかねーような最強の存在が二人もそろって態々ご主人の様子を見に来るとは驚いたにゃ」
そう言うと猫は何かをこっちに放った。
ドサッと音を立てて何かが地面に落ちる。
それは人だった。
中年の男女の二人組。
彼らに見覚えは無かったが、大体の想像はつく。
「そいつら、ご主人の『両親』ってやつらしーぜ?まぁ俺にはよくわかんにゃいけれど」
ゴミを見るな眼で猫は羽川の両親を見る。
「そいつらはもう
「…………」
「おい、さっきから黙ってにゃいでにゃんか言えよ、例外」
猫が先ほどから一言もしゃべらない俺に対して怪訝な眼を向ける。
俺はゆっくりと姿勢を低くし、手を地面につく。
「お前様…?」
いきなりクラウチングスタートの態勢をとった俺にキスショットも怪訝な眼を向ける。
二人に『何だコイツ?』みたいな視線を向けられるが、関係ない。
パァン!
スターターの音を脳内で再生しながら、次の瞬間、俺は刹那的な速さで猫の背後に移動する。
「にゃあッ!?」
猫が咄嗟に後ろをむこうとするがもう遅い。
俺は両手でしっかりと猫耳を触る。
「すっげぇ!猫耳だ!猫耳の羽川だ!羽川の猫耳だぁ!!」
「にゃあぁぁぁぁぁ!?」
猫耳を撫でまわし、隅から隅まで感触を楽しむ。
何だか力が抜けていくような気がするが
そんなことは関係ない。
プールの水をストローで吸われている程度の感覚しかないので問題はない。
今はこの猫耳羽川を愛でることが先決だ。
「あぁもう可愛いなぁ可愛いなぁ」
「にゃぁぁぁ!変態にゃぁぁぁぁぁ!」
怪異の脚力をフルに使って羽川が大きく跳躍し、逃走を図る。
だが、その程度で俺から逃れることはできない。
着地地点に先回りした俺は大きく手を広げて羽川を待ち構える。
「お か え り」
「にゃぁぁぁぁぁぁぁ何でいるにゃぁぁぁ!?」
「ほ~らたかいたかぁ~い」
いや、ニュアンス的には『他界他界』と言ったほうが適切だろうか。
吸血鬼という人外の、それもキスショットという例外的な怪異と同等のスペックを持つ俺による高い高いである。
それはもう上に放り投げたとかそう言う次元ではなく上空向けて射出したとか、そう表現されるべきものだった。
力加減を間違えればそのまま地球から飛び出し、そのまま昇天(物理)してしまうだろう。
ま、そんなミスはしないけれど。
「にゃぁぁぁああああああああ!?」
手足をジタバタさせながら落ちてきた羽川をしっかりキャッチ。
そしてッ!
すかさずッ!
羽川をッ!
撫でるッ!
撫でるッ!
撫でまわすッ!
あ、一応言っておくと俺が触ってるのは猫耳とか尻尾だけだから。
胸やら下半身やらそう言うアレな部分には一切触れてないから。
元々人体には存在しない器官を触ってるだけだからこれはセクハラではない。
「ホレホレここか?ここが良いのかぁ?」
「にゃあッ!ダメッ!そこは……そこは敏感にゃのにゃぁぁぁぁッ!」
こ れ は セ ク ハ ラ で は な い。
イイネ?
「俺の撫でテクで昇天しな!」
「悔しいにゃ……でも…力が抜けるにゃぁ~」
「フハハハ快楽に堕ちろ……堕ちたな(確信)」
「何を――しておるのじゃこの戯けがぁぁ‼」
その瞬間、音を置き去りにして飛来したキスショットの跳び膝蹴りが俺の側頭部にヒットし、痛みを感じる間もなく俺はぶっ飛ばされた。
だが、それで終わりではない。
盛大に吹っ飛ぶ俺に追いついたキスショットが俺の顔を掴んで上に放り投げる。
雲を突き抜けて投げ飛ばされた俺の上空にキスショットが先回りし、そのまま両手を組んだ拳で俺を叩き落とす。
あ、コレドラゴン〇ールとかでよく見る奴だ。
てかさっきからキスショットが無言なのが怖い!?
もうさっきから
(〈●)言〈●〉)
↑こんな殺意に満ち溢れた顔してんの!
超KOEEEEEEEEEE!!
オマエヲコロスと言わんばかりの表情のキスショットの攻撃はまだ止まらない。
墜落する俺をまたしても待ち構えていたキスショットは間髪入れずに格ゲーの達人みたいな空中コンボを決めてきて俺はサンドバッグ状態でボコボコにされた。
K O ‼
YOU WIN‼
PERFECT‼
そして俺の意識は途切れた。
「やれやれ世話のかかる相棒じゃ」
そう言ってキスショットはただの屍と化した相棒を嘆息しながら担ぎ上げる。
「お、おい……俺が言うのもにゃんにゃんだがよう、大丈夫にゃのか……『ソレ』」
「ん?なんじゃまだいたのか。心配せずとも手加減はしておいたわい」
「いや、どう見ても本気でボコボコにしてたようにしか見えなかったにゃ」
「なぁにたったの10回程度しか死んでおらん」
「にゃあんだそれなら安心……ってにゃるか!やっぱり殺す気だったじゃにゃいか!」
「うるさいのぅ…高々たった10回死んだ程度じゃろう?こんなの死んだうちに入らんわい」
羽川は悟った。
あ……ダメだコイツら価値観が違いすぎる
と。
「ま、まぁ一応礼を言うにゃ」
「ふん、自惚れるでない。儂はただ我が相棒ともあろう者が愚かにも暴走して醜態を晒すのを止める義務が相棒たる儂にあるからそれを果たしたまでじゃ。断じてうぬのためなどではないわい。ホレ、用が無いなら疾く去るがよいグズグズしてると折角鎮圧した相棒がまた起きて暴走するぞ」
「お、おう、そうさせてもらうにゃ」
「それと一つ忠告じゃ」
「忠告とにゃ?」
「儂は別にうぬの事などどうでもよい。故にこれからうぬが何をしようとしても儂は関心もなければ興味もない。手助けもせぬし邪魔もせぬ。それは恐らく我が相棒も同じじゃろう。じゃが、うぬがもしも仮に我が相棒の親族に手を出せば我が相棒とてうぬの事は捨て置けなくなるじゃろう。分かるか猫?」
「つまりお前ら怪異殺しと例外に邪魔されたくにゃければ例外の家族には手を出すにゃ……ということだろ?」
「然り、狙う相手はよく考えて選ぶことを勧める」
「分かったにゃ。虎の尾を踏まにゃいように精々気を付けるにゃ。にゃはは、俺は猫にゃのに虎とは傑作にゃ。あばよ怪異殺し、気絶してる例外にはよろしく言っておいてくれにゃ」
そう言い残し、羽川は夜の闇に消えた。
007
「ハッ!ここは誰?私はどこ?」
「目が覚めたか」
羽川が去ってから数分後、俺はキスショットの肩の上で目を覚ました。
「……何で俺はお前に担がれてるんだ?」
「さぁ?なぜじゃろうな」
「……というか、気を失う前までの記憶が曖昧なんだが、キスショット、お前何か知らないか?」
「何処まで覚えてるんじゃ?」
「猫耳生やした羽川がいたとことまでは覚えてるんだが……そこから先がさっぱり……」
「あぁうぬ、盛大に鼻血吹いて倒れてたぞ」
「えぇ!?俺そんなギャグみたいに気絶したの!?」
「うむ、下着姿の猫娘に興奮しすぎたんじゃな」
「えぇぇぇぇ!?」
そんな女に全く耐性が無い童〇のような振る舞いを俺がぁ!?
マジかよ……。
今更女の下着姿程度で発情なんて俺がするわけないんだがなぁ……。
でも嘘ではないっぽいし……。
えぇぇぇ……マジでそんなこと俺がやったのかぁ?
ふーむ相手が羽川だったからだろうか?
それで猫耳って言う要素もプラスされて破壊力が倍率ドンッ!
でもって俺、昇☆天ッ!
……みたいな。
あーでも確かに……。
「あの猫耳は可愛かっt―(無言の腹パン)ンナフッ!?って何しやがるキスショット!」
「さあな」(▼皿▼)
「あの……キスショットさん?キスショット女史?何故に汝は怒りたもうているのでせうか?」
「怒ってなどおらぬ」
「いやその顔は絶対怒っ…てないですねすいませんでしたハイ」
「猫耳程度儂だって生やせるのに……」
「え、何でお前が猫耳生やすの?」
「番外編(ボソッ」
「それはマジでやめろぉッ‼いややめてくださいお願いしますッ!」
「うぬはアレじゃな、難聴系でこそないものの鈍感系主人公じゃな」
「本当に何の話!?」
「…………ぬおっ!ビックリしたぁ……」
翌朝。
春休みに俺達が使用していたリフォーム済みの教室内のベッドで目を覚ました俺は、いきなり視界一杯に飛び込んできたキスショットの顔のドアップに驚かされることになった。
「何で別々のベッドで寝ていた筈なのにすぐ横にいるんだよ……」
寝相が悪いってレベルじゃねぇぞ。
そう心の中で呟きつつ、俺はキスショットの頭を撫でる。
絹を通り越して最早液体なんじゃないのかと疑いたくなるくらいサラサラな金髪に触れる俺の指は何の抵抗もなくスルリと通っていく。
僅かにキスショットの寝顔が綻び、つられて俺も頬が緩む。
何故俺達がここで寝ているのかというと、昨日俺達は『羽川の様子を確認する』という本来のタスクは紆余曲折あったものの無事……とは言い難いものの達成したので俺達は再び夜空を飛んで学習塾跡まで戻った。
俺としてはさっさと羽川の事を忍野に報告して帰りたかったのだが、肝心の忍野がまだ猫の墓荒らしから戻ってきてなかった。
取り敢えず忍野が戻るまで待つことにしたのだが、そうしているうちにキスショットが飽きて寝てしまったのだ。
仕方なく俺はキスショットをベッドまで運び、俺の方も夜中だけあって非常に眠かったので家族にメールだけして俺もここで寝ることにしたという訳である。
ああそれと、羽川の両親については救急車を呼んで適当に目立つ場所に放置しておいた。
まぁ今頃は病院にいるだろう。
仮にまだあそこで倒れているのだとしても俺にはどうでもいい。
知ったことじゃない。
というか、俺的にはあの場でぶち殺しておいても良かったくらいだ。
とは言え、義理とはいえ娘を本気でぶん殴る様な糞親父とそれを助けようともせず黙って見ているだけの糞婆でもいなくなったらいなくなったで色々面倒だ。
先ず真っ先に羽川に疑いの目が向けられることは想像に難くない。
そうなれば羽川家の家庭事情は警察の手によって暴かれることになるだろう。
今まで羽川が必死に隠してきた問題、自分の出生やその後の生い立ち、羽川家での生活のことまで全てが衆目に晒される。
そしてそれに虫のようにうじゃうじゃとマスコミ共が群がって事は大きくなる。
望まれない誕生から盥回しの幼少期、ネグレクトやDVと、いかにもマスコミが好みそうな悲劇的なネタのオンパレードだ。
羽川の両親は勿論、羽川の血縁上の父親、ネグレクトに気が付かない行政が無関係な奴らから散々非難され、羽川自身は悲劇のヒロインとして望んでもいないのに勝手に祭り上げられ、欲しくもない同情と憐憫を集めることになる。
『可哀想な娘』のレッテルを貼られることになる。
あまり他人の人格について断定するようなことは言いたくないが、羽川はそれを望まないことだけは確実だ。
扉を開けて誰かが教室に入ってくる。
「やぁ阿良々木君、こんな昼過ぎまで美女と同衾して熟睡とは羨ましいね」
教室のドアを開けて入ってきた忍野は開口一番にそう言った。
「昼過ぎ?ちょっと待て今何時だ?」
携帯を出して確認すると12:15と表示されていた。
「ほんとに昼過ぎだ……」
「はっはー、まあ昨日は色々あったからね。阿良々木君も疲れていたんだよきっと」
「吸血鬼の再生力で疲労とは無縁のはずだが…」
「普段ならそうだろうけれど、相手は『障り猫』だからね、無理もないよ」
「羽川が関係あるのか?」
「それが障り猫が『障り猫』、と呼ばれている所以だよ。障り猫に触られた者は障りを受けて生命力を吸い取られてしまうのさ」
「エナジードレインか……」
「阿良々木君やハートアンダーブレードみたいな吸血鬼が行なうソレとは意味合いが異なるけれどね。吸血鬼にとってエナジードレインは『食事』だけれど、障り猫のソレは『呪い』だ。障り猫に『触る』若しくは『触られる』ことで勝手に発動する条件反射、性質みたいなものさ」
「あれ…だけど俺いつ羽川に触ったんだっけ?」
「心当たりが無いのかい?」
「いや…羽川に会ってからの記憶がなくてな……」
「オイオイしっかりしてくれよ、その歳でもう呆け始めたのかい?」
「気が付いたらキスショットに担がれてたからなんか知ってると思うんだけれど……」
「ふぅん……」
忍野は何かを察したのかキスショットに意味ありげな視線を送ると、軽薄に笑った。
「はっはー、阿良々木君、委員長ちゃんの事に躍起になるのもいいけれど、ハートアンダーブレードの事もちゃんと気にかけてやらないとダメだぜ?」
「そんなのお前に言われるまでもないが…」
「ま、それならそれでいいのだけれど、ハーレムを作る気苦労何て、僕には縁のない話だし」
「いやだから…キスショットにも言ったがそんなものを作る気はさらさらないんだが…」
「そうかい?でも僕にはなぜか君が、具体的には5人もの女の子を攻略して『阿良々木ハーレム』を作るって僕が初期メンバーになる予感がするんだけれどなぁ……」
「つっこみどころが多いから順番にツッコませてもらうが…まず俺はそんな悪趣味な集団を組織するつもりはないし、5人とか言うやけに具体的な数字がどこから出てきたのか謎だし、仮にそんな組織が将来できたとして何でハーレムなのにお前がメンバーなんだよ!俺に男色の趣味は断じてないぞ!」
こよ×メメだのメメ×こよには絶対ならないから!
「『呪い』……『障り』ねぇ…つまり今の羽川も障り猫に取り憑かれている状態……ってか?だがあれはどう見ても
「肉体変異を伴う怪異であることは確かだけれど、でもわからんね。その辺りは、これから調べてみるしかない」
「どちらにせよ、『手遅れ』であることには変わりないがな」
「阿良々木君に教えてもらった、猫ちゃんのお墓を軽く荒らしてみたけれどさ――
「……そうかい、んじゃ、俺はお役御免だな」
「そうだね、ここからは僕の領分だ。でも妙に落ち着いてるじゃないか阿良々木君、この前委員長ちゃんがさらわれた時は鬼みたいに怒ってたのに」
「まぁ、これでも俺はお前の専門家としての仕事の腕は評価してるんだぜ?お前がいれば本当に最悪な事態になる前に収拾をつけてくれるってな。どうしてもダメな場合は俺が動いて強引に解決することもできるしな。何より、羽川が人間だろうと怪異になろうと俺が羽川の友達であることには変わらない。障り猫が羽川の人格を乗っ取って本来の羽川を消してしまうとかだったら俺も焦るけどよ、どうも
「ふーんそうかい、ま、信頼して任せてくれるというならそれに越したことはない。僕は僕で仕事に専念するだけだからね。怪異が怪異の事を解決するって言うのはバランスが悪いのも確かだ」
「あぁ、任せた」
「任された」
「無闇だぜー」
【作者だよー】
「あ、何だ蘇ったのか」
【蘇ったのかじゃないよ!原子レベルまで爆破されて木端微塵にするとかバイオレンスにも程が無い!?】
「本編を最後に投稿した日を言ってみろ」
【2、2018年3月22日……】
「このあとがきを書いてる日を言ってみろ」
【2019年1月5日……】
「2018年以内に投稿した話数を言ってみろ」
【番外編含めて3話デス……】
「ギルティ‼」
【くらうんっ!?】
「あーもうこれは許されないわ、俺でもフォローできないほどのサボりだわ」
【いや、フォローしてもらったこととか一回m……】
「だまらっしゃい‼」
【言論統制っ!?】
「お前さぁ……これはないよ、幾ら元々読み専だったとはいえこれは無い、前々からフラグ立ててきた悪ノリがなかなか思いつかなかったからってこれは無い、キスショットの存在で原作乖離が目立ってきてオリジナル要素出さなきゃいけないからってこれは無い」
【うわぁぁぁぁぁぁフォローと見せかけた裏話の暴露で私をネチネチと攻撃するのをやめろぉぉ!!!】
「いやーそれにしたって約10ヵ月も投稿しないのはもう学生だからとか不定期更新だとかの言い訳じゃあ擁護できないわ、完全にサボってるとしか言えないわ」
【正直申し訳ないと思ってますハイ...】
「お前そんなんだから日に日に評価者数が減っていくことになるんだぞ」
【あぁ地味に気にしてたことをいわないでくれぇ‼︎】
「ホントやる気あるのか?」
【やる気はあるんですよやる気は……ただノリと勢いが足らんのです……本当は色々と書いてみたい小説があるんデス…アイデアだけは沢山あるんですよアイデアだけは】
「例えば?」
【例外シリーズの2作目以降とか…無闇君にはもっといろんな世界で暴れてもらいたかったりするんです。ダンまちとかSAOとかデアラとかハイスクールD×DとかRE;CREATORSとか……あとストライクウィッチーズ×艦これ×ガルパンで空陸海のクロスオーバーとか…例外シリーズ以外だと俺ガイルの八幡性格改変とかハリポタの主人公最強ものとかジョジョのクロスも書いてみたいし東方とかも実はオリ主案6人も作っちゃうほどだしラブライブ×バンドリとかも興味あるしヤンデレも書いてみたいしああああああもう書きたいものが多すぎるううう!!!】
「マジでアイデアだけは豊富だな……だったら一つくらい書けばいいじゃねぇか」
【そ れ が で き た ら 苦 労 し な い よ !】
「お、おう」
【確かに書きたい衝動的に書いてしまいたい、でもね無闇君考えても見てくれよ……ただでさえこの更新頻度の遅さだよ?衝動的に書いた新作の方にかまけていたらこの先さらに外物語の更新が遅れること間違いなしだよ!あぁぁぁ時間もやる気も圧倒的に足りないいいいい】
「いや時間はともかくとしてもやる気はお前次第じゃねえか!」
【兎に角本当は書きたくて書きたくてたまらないけれどそれをやったら全部が中途半端でグダグダになりそうだから我慢するしかないんだぁ!】
「まぁ現に暇つぶし用に書いたマイクラ小説は全く更新されないもんな」
【アレは本当の本当に気分がノッた時にノリだけで書くための小説だから作者の中では扱いが少し違うのだけど……まぁそういうことだよ】
「複数の作品を両立して投稿してる作者だって一杯いるんだけどな。結局はやる気と文才が足りないってだけじゃねぇか」
【そうともいう】
次回予告
「次回は原作008~009までの予定だ」
【羽川さんのお宅訪問(不法侵入)とかファイアーシスターズとの添い寝とか】
「次回は頼むから年内に投稿してくれよ……投稿話数に比例してどんどん間隔があいてるような気がするぞ……」
【ハイ、ガンバリマス…】
「生存報告もこまめに上げるべきだな」
【うーん生存報告と雑談用にツイッターでもやろうかなぁ…】
「次回、『つばさファミリーその肆』!」
【質問・意見はコメント欄へどうぞ】
「コメント・評価・お気に入り登録してくれた方々とその他この作品を読んでいただいている読者の方々、どうもありがとうございます」
【「ではまた次回」】