『外物語』   作:零崎記識

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注意
筆者は小説初投稿の初心者です。あまり過度な期待はなさらないようお願い申し上げます。
感想・批評は自由ですが暴言や悪口は炎上の原因になりますのでご遠慮下さい。



序章
終わる世界(モノガタリ) 始まる物語(セカイ)


「くだらねぇなあ………」

 

どんよりとした灰色の雲が空を覆う街の中、彼は一人、吐き捨てるようにそう呟いた。

 

彼の目に映る景色は、空を覆う雲のように灰色で全てが取るに足らない物に思えていた。

 

彼は世界に何も求めていなかった––––––––––––––––

 

彼は人間に何も期待していなかった––––––––––––––

 

彼は自分に何も感じていなかった––––––––––––––––

 

この世界の全ての存在、全ての事象、全ての現象が彼にとっては只々『下らない』

 

つまるところ、彼は生きることにうんざりしていた。

 

何をしても上手くいく。

 

何をしても失敗しない。

 

何をしても––––ままならない。

 

求められるままに搾取され、最後には世界の全てから否定された彼は、世界に絶望していた。 

 

「くだらねぇ……世界も、人間も、動物も、植物も、微生物も、炎も、水も、電気も、土も、宝石も、光も、闇も、時間も、空間も、点も、線も、平面も、立体も、雨も、風も、雪も、雲も、雷も、神も、悪魔も、現実も、幻想も、物語も――そして俺自身も、本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に―――――全くもってこの上なく『くだらねぇ』よなあ…………」

 

彼は、常に勝者だった。

 

彼は、いつも成功していた。

 

彼は、生まれながらに頂点だった。

 

だからこそ、彼は世界と相容れなかった。

 

世界にとって彼は

 

あまりにも万能で

 

あまりにも最強で

 

そしてあまりにも―――例外すぎた。

 

世界から拒絶された彼にとって、その目に映るすべてのものは皆平等に見えた。

 

皆平等に()()()()()()()

 

世界は残酷だった。

 

世界は彼を拒絶したが、彼が存在することは認めているのだった。

 

「こんなくだらねぇ世界………もうどうでもいい、だが俺ですら俺を終わらせることができねえ………誰でもいいからよぉ、終わりにしてくれねえかなぁ………」

 

こんな世界に価値などない―――彼はこの世界を見限っていた。

 

だが、彼が自分で世界から去るには彼は強すぎたのだ。

 

どのような方法をもってしても、彼は世界から去ることができなかった。

 

だからそう、彼の命が燃え尽きるまで、彼はこの灰色に染まった無価値な世界を孤独に生きなければならないのだ。

 

「だがそんな人生、俺はまっぴら御免だ」

 

そう呟くと、彼は忌々し気に曇天の空を睨んだ。

 

「(こんな世界に未練はねぇ、誰でもいい………俺が世界にとって拒絶の対象だというのなら………最後まで責任とって俺を殺してみろ………いやもういっそ、殺すとはいかなくとも、せめて別の世界に追放するなりしてみやがれ!)」

 

自暴自棄だった。

 

ある意味どんな刑罰より残酷な状況の中で、彼に蓄積されてゆくはけ口がないストレスは彼を徐々に蝕みつつあり、彼は存在しない何者かに怨念のようなその心のドロドロとした感情をぶつけた。

 

もちろん、そんなことをしてもストレスが消えるだけでなく、逆に虚しさだけが残ることにより、さらなるストレスをため込むことになるだけであった。

 

そう―――――――()()()()()

 

【オッケー分かった、じゃあ世界を終わらせよう】

「何っ――――――――――――――!?」

 

その瞬間だった。

 

『世界の終わり』についてこれを読む人はどのような状況を思い浮かべるだろうか?

 

隕石の落下

 

大噴火

 

大洪水

 

大地震

 

疫病の蔓延etcetc……

 

様々な『世界の終わり』を思い浮かべるでしょうが、この瞬間その全てが一度に一瞬にして起こり、最後には宇宙がまるでビッグバンの逆再生のように刹那にして消滅した。

 

こうして、彼、『零崎無闇』の世界はあっけなく消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いってぇな…………体中が痛ぇ………クッソ……何だってんだよまったく」

 

【何って、君のお望みどおりに世界を終わらせてあげたんじゃないか】

 

「――――――誰だてめえ!」

 

ありとあらゆる災害に一度に飲み込まれ、意識を失った無闇が全身の倦怠感と鈍痛を感じながら目を覚ますと、そこは何もない『無』の空間だった。

 

ノロノロと体を起こしながら呟きに返答したのは、世界が終わる前に無闇が聞いた声だった。

 

その声の主を言葉にすることは、無闇には難しかった。

 

無理やりにでもその存在を形容するならば『無』という言葉が一番しっくりくる気がした。

 

存在が希薄で

 

輪郭が曖昧で

 

形が不定形な

 

そんな存在が無闇の前にいた。

『無』は無闇が起き上がるのを確認するように間をあけると、その希薄で曖昧で不定形な姿を人型のようなものに変えていった。

 

人型もどきになった『無』は言った。

 

【やあ、『例外』】

 

「お前……何者だ?」

 

【通りすがりの仮面ライd………じゃないよ違う違う………仕切り直そう、えーと確か最初は……】

 

気の抜けるような『無』の振る舞いだが、無闇は警戒心を最大にしたままじっと『無』を見つめていた。

 

「(得体の知れないやつだ………いったい何が目的かわからない以上警戒は最大にしておかねーと)」

 

無闇が警戒心MAXで『無』を観察していいると、『無』は大仰な仕草をつけて語りだした。

 

【私は、君たちが『神』とよぶ存在、あるいは『世界』、あるいは『宇宙』、あるいは『真理』、あるいは『全』、あるいは『一』………そして、私は『君』で、私は『傍観者』であり、『観測者』だ」

 

「あぁ?結局なんだってんだよ?お前の正体は一体『何』なんだ?」

 

【俺に『正体』なんてものはないよ、君が好きに決めるといい】

 

「得体の知れないやつだな…………名前とかはないのかよ?」

 

【無いね、でもまあ便宜上僕を表す記号がないと話しづらいって言うならそうだな…じゃあ『観測者(オブザーバー)』とでも呼ぶといいよ】

 

「なら単刀直入に聞くぞ『観測者(オブザーバー)』、お前の目的はなんだ?」

 

【目的?何それ?オイシイノ?】

 

「とぼけるな、わざわざ俺の世界を滅ぼして俺をここに連れてきたのはどういうつもりだと聞いているんだ」

 

【どういうつもりも何も、君が世界の終わりを望んだからその願いを叶えてあげただけって最初に言ったじゃないか】

 

「なぜだ?なぜ俺の願いを叶えた?別にお前にメリットがあるわけでも無いだろう」

 

【メリットがなきゃ叶えちゃダメなのかい?そんなのカラスの勝手でしょうに」

 

飄々とした態度の『観測者(オブザーバー)』に無闇はイラつきを隠し切れずに顔を顰めた。

 

【おーおー怖い顔しちゃって、でもまあぶっちゃけた話メリットはなくとも目的はある】

 

「何………?それはなんだ?」

 

【俺の目的は君だよ零崎無闇君】

 

「俺だと……?」

 

【別の世界に行ってみたいって思ってたでしょ?だからその願い私が叶えてあげようと思ってさ……だから零崎君にはちょっと、異世界に行ってもらうよ】

 

「は?」

 

そんな「ちょっとコンビニにお使い行ってきて」みたいな調子で突拍子もないことを言われた無闇は不覚にも拍子抜けしてしまった。

 

「それが………お前の目的?何でそんなことを…」

 

【君が『例外』だからだよ、その身に余るほどの例外性を持て余ていた君を、異世界に送り込めば一体どんな『物語』が生まれるのか……ってね】

 

「物語だと?」

 

【そう………………物語だ】

 

観測者(オブザーバー)』が腕をひろげたように見えた瞬間真っ白な空間が突然がらりと一変した。

 

そこは漆黒の空間に無数のシャボン玉のような球体が浮かぶ場所で、球体には様々な景色が映し出されていた。

 

「ここは………」

 

【ここは観測界だ】

 

「『観測界』?一体何を観測するんだ?」

 

【『物語』さ】

 

「物語?」

 

【そう、世界には様々な『物語』が存在する……映画やドラマ、漫画やアニメ、小説や音楽、絵画といった人間の創作物に限らず、生きとし生けるものたちの一生すらも物語になりうる、そこに主人公がいて、登場人物がいればそれがフィクションでもノンフィクションでも、それは『物語』として成立し『世界』として独立する】

 

【故に物語は無数に存在し、世界は無限に増え続ける】

 

【しかし物語とは、観測されなければ物語足りえない】

 

【私は無数の物語を観測する『観測者(オブザーバー)』として、数多くの物語を見てきたんだ】

 

【そして君を見つけたんだ】

 

【これまで見てきた物語のなかでも類を見ないほどこれほどまでに不条理で、理不尽で、例外的な存在に俺の好奇心は掻き立てられた】

 

【だってそうだろう?物語は無数といえども()()()()()()()()()()()()()()()()()存在なんて見たことも聞いたこともない】

 

【僕は感動すら覚えたね】

 

【でも、それ以上に惜しいと思った】

 

【これほどまでに例外的な存在が何もなさずに物語を終わらせるなんて冗談じゃない】

 

【でも君は世界に拒絶されていた】

 

【あの世界では君はどのような物語にも関与できない状態だった】

 

【だから………滅ぼした】

 

【僕は君を排斥したあの世界への興味を失った】

 

【『観測者(オブザーバー)』の僕が興味を失った時点であの世界の滅びは決定されていたんだ】

 

【私はそれを速めただけのこと】

 

【でも、僕自身君が生き残るとはまさか思ってもみなかった】

 

【期待以上の例外だよ君は】

 

【あとは簡単な話さ、異世界に行きたい君と君の物語が見たい俺】

 

【利害は完全に一致している】

 

【あとは……君の意思だけだ】

 

【君を受け入れてくれる世界を探す旅に出てみないかい?】

 

【もちろん無理強いはしない】

 

【YESならば私は君を異世界に連れて行こう】

 

【NOならばあの世界に限りなく近い世界に君を連れて行こう】

 

【選んで、零崎無闇】

 

【この権利を行使するか破棄するか、選択するんだ】

 

【さぁ――――――どっちを選ぶ?】

 

無闇は瞑目し、ゆっくりと口を開いた。

 

「俺は…俺の答えは言うまでもねえよ………………『YES』だ。異世界なりどこへなりと連れていけ、そこに俺が望む世界があるのならな」

 

表情のない『観測者(オブザーバー)』の顔がニッと笑ったような気がした。

 

【そうこなくっちゃね】

 

「ところで、俺はどこの世界へ行くんだ?」

 

【それはね―――――】

 

観測者(オブザーバー)』が手を一振りした瞬間、無数にあった球体が消え、一つの大きな球体が残った。

 

【この世界が、君の最初の異世界だ】

 

【君はこの世界の主人公に成り代わって物語を紡ぐんだ】

 

【君の魂と肉体はそのままに、この物語の主人公になるんだ】

 

【この世界が何の世界かは自分で確かめるといい、そのほうが面白いでしょ?】

 

「ああ、お気遣いどうもな」

 

【あぁそれと――――――君が全力で暴れるとこの世界が壊れる可能性があるから能力を制限させてもらうよ?この世界で君が出せる力は限界でも君の全力の1%まで、この世界で得た力に関してはその限りじゃないけどね、Ok?】

 

「OK、異論はないぜ」

 

【うん、じゃ……………行ってらっしゃい】

 

観測者(オブザーバー)』がそう言った瞬間、球体に大きな黒い扉が現れた。

 

扉はゆっくりと開いていき、その奥は暗闇に満ちた空間が広がっていた。

 

無闇は扉に歩み寄ると、『観測者(オブザーバー)』に向き直った。

 

【それじゃ、いい物語を】

 

「あぁ、せいぜい暴れまわってやるから覚悟しておけよ」

 

無闇はそれだけ言い残すと、扉の奥の暗闇に身を投じた。

 

 

 

序章は終わり、例外の例外による例外的な異世界冒険譚が今幕を開けた。

 




どうも、零崎記識です。今回はこの作品を最後までお読みいただき誠にありがとうございました。小説投稿サイトへの投稿はこれが初めてで、読み苦しい点があったかと思いますがコメント欄にてご指摘を受け付けておりますので具体的な改善点と改善策を書き込んでいただければ参考にしたうえで改善努力をしていきますのでよろしくお願いいたします。

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