『外物語』   作:零崎記識

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筆者は小説投稿初心者です。
過度な期待はせずに気楽に見ていくことをお勧めします。
感想・批評は歓迎ですが暴言・悪口は炎上の原因となりますのでおやめください。



003

005

「さて、自己紹介も済んだところで我が同族よ、折り入って一つ頼みがあるのじゃが…」

 

「頼みか、まあ聞くだけ聞こう。何だ?」

 

まぁ、予想はついているけどな………。

 

「うぬの血を吸ったことで物質創造スキルなどといった一部のスキルは一応回復した。じゃが儂の力はいまだに大部分が失われておる。これは儂の手足が存在力ごと削り取られていることが原因じゃ。そこでじゃ――――――」

 

ドラマツルギー

 

エピソード

 

ギロチンカッター

 

キスショットは三人の名を告げた。

 

「この三人から儂の手足を取り戻してはくれぬか?勿論ただとは言わん。儂が完全な力を取り戻した暁にはうぬの願いを何でも一つ叶えようではないか」

 

神龍みたいなこと言うな………。

 

まぁ別に報酬がなくともやるつもりだったけれどさ………。

 

「OK、分かった。その頼み引き受けよう」

 

「うむ、頼んだ」

 

「それでキスショット、さしあたって確認しておきたいんだが、その三人は所謂ヴァンパイアハンター、ってやつでいいんだな?」

 

「そうじゃが、それがどうかしたか?」

 

うーむ………だとしたら解せないな……。

 

「いやな、お前ほどの奴が、本当に()()()()()()()()()()()()()()()に負けたのかって思ってな」

 

それがずっと疑問だった。

 

こいつが……俺が俺と同じく『例外』だと直感した程の存在が並大抵なわけがない。

 

事実こいつは俺の血を吸ってその存在を俺と同レベルのところまで昇華させた。

 

俺の血は、いわば劇薬だ。

 

肉体は一応人間のそれだが、そのスペックはまるで違う。

 

当然そんな肉体に流れている血が普通の人間と同じなわけがない。

 

そこから得られるエネルギーには天と地ほどの差があり、並大抵の吸血鬼が俺の血を吸えば急激に流れ込むエネルギーに耐え切れず破裂する。

 

こいつのように『例外』になれる素質があって初めて俺の血を受け入れてその存在を『例外』へと昇華できるのだ。

 

分かりやすく例えるならば俺の血から得られるエネルギーを海に存在する全ての水として、それを受け取る吸血鬼を器としたとき、キスショットならば地球。それ以外ならまあ、当然個体差はあるとして精々25mプール程度だろう。

 

俺の血を並みの吸血鬼が吸うことは25mプールに地球上にある全ての海水を無理やり詰め込むようなものである。

 

耐えられるはずがない。

 

故にキスショットは『例外』なのだが、そんな彼女が高々ヴァンパイアハンターごときに負けるとは思いにくいのだ。

 

俺の疑問に、キスショットは苦い顔で答える。

 

「完全に油断しておった…………うぬの言う通り、たかがヴァンパイアハンター程度、三人がかりでも儂のフルパワーをもってすれば問題なかったはずなのじゃ……」

 

「じゃあなぜ……?」

 

「理由は正直儂でも分からん。強いて言うなら油断したとしか言えん。あの時はなんだか体調も悪かったし、油断があだになったという事じゃろう」

 

釈然としないな……。

 

ん?いや待てよ()調()()()()()()…………?

 

人間じゃあるまいし、吸血鬼が体調を崩すことなんてあり得るのか………?

 

少なくとも自然に悪くなるということは無いだろう。

 

とすれば………人為的に悪くなるように仕組んだ奴がいるとすれば……。

 

やれやれ……この依頼、意外と面倒かもしれねえな……。

 

「ともかく、さしあたっての標的はその三人のヴァンパイアハンターだな、居場所とか分からないのか?」

 

「分からん」

 

「そうか……だったら虱潰しにさがすしか………」

 

「いやその必要は無かろう、奴らは吸血鬼退治の専門家じゃ、夜にでも町を出歩けば向こうから光に集う羽虫のように集まってくるじゃろう」

 

「俺は正確には吸血鬼じゃないけどな」

 

「何、夜というのは最も吸血鬼の力が高まる時間じゃ。何もしなくとも吸血鬼の因子を持ったうぬなら簡単に見つかるだろうよ」

 

とにもかくにも―――――

 

「全てはうぬの働き次第じゃ。期待しておるぞ、我が同族よ」

 

そうして俺は、キスショットの部品を取り戻すため、夜を待った。

 

すっかり日が暮れ、街灯の少ない田舎の町中が闇に包まれた時間に、俺は動き出した。

 

といっても特別なことをするわけじゃない、キスショットと出逢ったあの夜のようにただ町を散策するだけである。

 

そういえば家に連絡入れてなかったな……。

 

そんなに時間をかけるつもりもないし………早ければ今夜で終わるが……まぁ一応余裕は持っておくか…。

 

俺は携帯を開いてメールを作成する。

 

文面はそうだな……。

 

『旅に出ます。探さないでください』

 

…………。

 

これは無いな。

 

ここは無難に………。

 

『ちょっと自分探しの旅に出てきます』

 

こ れ は ひ ど い。

 

却下だな、うん。何でこんなの思いついたんだろ………。

 

謎だ…………。

 

コンビニじゃねえんだぞ…………。

 

『友達と勉強会を開くため数日間外泊します』

 

これでいいか………。

 

色々と突っ込みどころがあるとは思うが無難な文面ができたと思うので送信する。

 

送信先は月火だ。

 

あいつは結構空気を読むのがうまい。俺のメールに多少穴があってもあいつなら上手く察してくれるだろう。

 

そんなことを考えていると、月火から返信が来た。

 

『分かった、お母さんたちには上手く言い訳しておく』

 

ほらな、思ったとおりだ。

 

『友達がいないお兄ちゃんがこんなメール送ってきたってことは相当切羽詰まってるんだね、何かあれば助けるから頑張ってね』

 

…………。

 

あの野郎…………。

 

いや友達はこれまで居なかったけれどさ………。

 

俺に友達がいちゃそんなに変かい…………。

 

今も羽川しかいないけれど………。

 

羽川………

 

「そういや、アイツにも連絡しないとな」

 

約束破っちまったわけだし……。

 

でもなぁ…………なんて説明するよ?

 

本当のこと………は言えるわけないし。

 

下手に嘘ついても気づかれそうだしなぁ…………。

 

嘘は言わずに本当のことを隠したとしてもアイツなまじ頭がいいから何か察してしまう可能性がデカいんだよなぁ………。

 

下手したらアイツを巻き込むことにもなりかねんし…………。

 

「あれ、これ詰んでね?」

 

打つ手がなさすぎる………。

 

どうしようもねえ…………。

 

そんな風に頭を悩ませていると、三又路に差し掛かっていた。

 

そしていつの間にか俺は囲まれていた。

 

右側正面には身の丈2mを超える巨漢。

 

筋肉の塊のような体躯に、フランベルジュと呼ばれる刃が波打つような形の大剣を二本携えている。

 

奴が………ドラマツルギーか。聞いていた通り、『吸血鬼』みたいだな。

 

あの二本のフランベルジュは物質創造能力で()()()()()()()いるのか。

 

左側正面には、線の細い男が。

 

未だ幼さが残る顔に、殺意にたぎる三白眼。身にまとう白ランが顔と相まって幼さを助長しているが片手で背負うように持った巨大なシルバーの十字架がそれを打ち消していた。

 

奴が…………エピソードか……吸血鬼と人間のハーフ……ならば外見はあてにならないかもな。

 

そして背後には、神父風のローブにハリネズミのような髪型の男。

 

感情の読めない糸目にほかの二人と比べおとなしい雰囲気をまとっている。

 

しかし、俺にはこの男が一番危険のように思えた。

 

奴が………ギロチンカッター…………おとなしめの雰囲気といい、目に見える武器がないことといい…………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことといい……得体のしれない危険さを感じるな………。

 

おいおい………マジかよ…………。

 

こいつら―――――――――

 

こいつらが―――――キスショットの部品を奪ったっていうのか

 

そうだとしたらこいつら―――――

 

こいつらは―――――――

 

こいつらは()()()()()()()()()()

 

この程度の相手にキスショットが負けたのか………。

 

あり得ない……どう考えてもあり得ない。

 

断言する、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

やはり今回の件、敵はこの三人だけじゃない。

 

誰にも気づかれず……キスショットにすらも気づかれずにキスショットを弱体化した存在がいることは間違いねえな。

 

まあいい、今はこいつらから部品を取り戻すのが先だ。

 

俺は両手を握ったり開いたりしながらコンディションを確認する。

 

よし……問題ない。

 

俺が取り込んだ吸血鬼のスキルは、『()()()()()()()()

 

今の俺は………おそらく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の強さだ。

 

この程度の奴ら……瞬殺できる。

 

―――――これが彼、零崎無闇の例外性の一端。

 

―――――『最適最高化』――――――

 

その能力は読んで字のごとく――――――

 

―――――ありとあらゆる事柄を習熟し、極めるまでの時間の最速化

 

―――――どんなことでも、一度習得した能力や技術ならば、ものの一時間で習熟度が最高レベルまで到達させることができる。

 

――――どんなスポーツや学問も、基礎さえ理解してしまえば大体約一時間でその道のプロフェッショナルの人間と同等になれる。

 

――――さらに30分後には、その能力、技術の真髄に至る。

 

――――彼が世界に拒絶された理由の半分を占める例外性である。

 

さて、俺の方は準備万端だ、いつでもこいつらを瞬殺する準備は整っている。

 

ならば………あとはタイミングだ。

 

戦いが始まった瞬間……片を付ける。

 

そう思ってタイミングを伺っていると、三人のヴァンパイアハンターはじりじりと追い詰めるように迫ってくる。

 

そんな中、エピソードが口を開いた。

 

「あー?んんだよ。超ウケる」

 

見た目通りの乱雑な口調だった。

 

「ハートアンダーブレードじゃねーじゃねーか――――誰だこいつは?」

 

「【にわかには信じがたいが、恐らくはハートアンダーブレードの眷属だろう】」

 

次に口を開いたのは、ドラマツルギーだった。しかしその言葉は、異国のものだった。

 

「いけませんよ、ドラマツルギーさん」

 

俺の後ろでギロチンカッターが穏やかにドラマツルギーを窘める。

 

「現地の仕事は現地の言葉で。基本です」

 

俺を挟んで会話しているというのに、彼らはまるで俺のことが眼中にないような態度だった。

 

「まぁしかし、確かにあなたの言う通りでしょう、ドラマツルギーさん。恐らくは、いえ間違いなく、この少年、ハートアンダーブレードさんの眷属なのでしょうね―――」

 

「マジかよ………あの吸血鬼は眷属を造らないのが主義なんじゃねえのか?」

 

「昔、一人だけ造ったとも聞いていますがね」

 

「【推測だが】……大方、私たちに追い詰められ……やむを得ず、手足代わりになる部下を造ったという事だろう」

 

全く的外れのことを議論する三人。

 

まあでも、俺とキスショットのことは本当に例外的な出来事だから、それも無理はないか。

 

まさか俺もキスショットも最早吸血鬼ですらなくなっていることなんて予想できるはずもないしな。

 

そうだったらそもそもこいつらはここに現れることもないし。

 

こいつらが今――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

こいつらの実力は吸血鬼を相手取る分には申し分ないが、俺という『例外』を相手にするには、足元にも及ばない。

 

「ってえことは何かい?」

 

エピソードが薄ら笑いを浮かべて言った。

 

「存在力を失って、非常に探しにくくなっているハートアンダーブレードの行方は、このガキの身体に訊けば分かるってことかい?」

 

「そういう事になりますね」

 

「この少年を退治すれば、その褒賞はハートアンダーブレードとは別にもらえるんだろうな?」

 

皮算用のようなことを言うドラマツルギー。

 

「ふむ、とするとどうしますか?エピソードの言う通り、この少年からハートアンダーブレードさんの行方を聞き出そうというのなら、ちょとばかり手間をかけなければなりませんが」

 

「俺に任せろや、言い出しっぺだしなあ」

 

エピソードが笑いながら答える。

 

「後遺症が残らない程度に殺してやるよ」

 

「いや、私がやろう」

 

ドラマツルギーも答える。

 

「そういう仕事に一番向いているのがこの私だ。吸血鬼と一番分かり合えるのは、この私だ」

 

「別に僕がやってもいいんですけれどねえ」

 

最後にギロチンカッターが穏やかに答えた。

 

「お二人ともお疲れでしょう」

 

「――――つーかさあ」

 

突然口を開いた俺の言葉に、三人の会話が途切れる

 

「何でお前ら俺に勝つ前提で話してんの?」

 

俺は視線を三人にぐるりと回して不敵に笑った。

 

「3人がかりで襲ったのにも関わらず仕留め損なった獲物の眷属を前にノコノコ現れてペラペラと皮算用とか…本当にやる気あるんですかぁ?」

 

嘲笑を浮かべながら煽るような口調で言う。

 

しかし本当に謎だ…。

 

何故こいつらは、獲物を前にして呑気におしゃべりをしているのだろう?

 

吸血鬼狩りのプロフェッショナルとはいえ、仮にもこちとら怪異の王の眷属のはずだろ?奴らの中では。

 

しかもあいつらは3人がかりと言う数的有利にも関わらず一度討伐に失敗している。

 

普通もっと警戒して慎重になるはずだよな?

 

にも関わらず何故奴らは無警戒にも敵の前でぺちゃくちゃと喋っているのだろうか?

 

何故未だ健在の敵を前にして取らぬ狸の皮算用しているのだろうか?

 

所詮なりたての吸血鬼とナメている?

 

それともそう見せかけてあえて隙だらけに見せることで、罠にかけようとしている?

 

イマイチ判断がつかなかったので、取り敢えずその意図を探るため喋らせておいたのだが…。

 

あぁ、こいつら単純にナメてるだけだわ。

 

喋ってる間におよそ万を超える回数こっそり仕掛けてみたが、特に気づいたそぶりもなかった。

 

割とあともう少しで殺せるってところまで際どい感じに仕掛けたが、全く気づいてない。

 

そこで俺は悟った訳だ。

 

あ、こいつらザコだわ。

 

3人がかりで襲ってきたところで100%俺が勝つ。

 

仮に手足縛って目隠ししても圧勝できるレベルで弱い。

 

とすると何故これしきの相手にキスショットともあろう者が瀕死に追い込まれたのかと言う点だけが不可解だが、コレ以上喋らせておいたところで有益な情報は聞けそうにない。

 

とっとと始末してしまおう。

 

そう思って、俺は不毛な会話を終わらせ、とっとと向こうから仕掛けさせるために奴らを挑発した。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

静寂が訪れた。

 

「ならばいつものやり方だ」

 

ドラマツルギーが口火を切った。

 

「オッケ。早い者勝ちってことだな」

 

エピソードがそれに続いた。

 

「いいでしょう。平等なる競争は、互いのスキルアップに繋がりますからね」

 

最後にギロチンカッターがそう締めくくった瞬間、三人はほとんど同時に飛び掛かってくる()()()()()

 

「――――――だからさあ、言っただろ?」

 

三人が俺に飛び掛かる瞬間、三人の足元の影に三人の身体が底なし沼に嵌った時のように沈み、次の瞬間には影によって身体を縛りあげられ、次の瞬間にはその首が影で形成された断頭台にかけられていた。

 

次の瞬間、俺はパチン!っと指を鳴らし、砂嵐が吹き荒れた。

 

「これで霧化も封じたはずだ。つまりお前らにそこから逃げ出す術はない」

 

まあ、逃げても問題ないんだけどね?

 

そのまま襲ってくれば返り討ちにできるし

 

逃げるなら逃げ出した瞬間には捕まえられるし

 

つまり、こいつらは所謂『詰み(チェックメイト)』ってやつだ。

俺と出逢った瞬間からな。

 

「で?俺を倒してどうのこうのって吠えてたみたいだけどさ、こんなにあっさりしてやられて今どんな気分よ?」

 

俺はドラマツルギーのほうへ歩きながら言った。

 

「馬鹿だよなあ……お前らほんっと馬鹿だよ」

 

俺は断頭台にかけられたドラマツルギーの顔を覗き込む。

 

「態々出てきてベラベラ喋ってないで奇襲でもかければよかったのにな」

 

まあそれでも俺に勝てるというわけでも無いが。

 

「そうすれば少なくとも何もできずにこうして手玉に取られることもなかっただろうに。あーあなっさけないなあ……」

 

そういいながら俺は今度はエピソードの元へ歩く。

 

「実力差も理解しないでなめ腐った結果がこのザマだ、ホント無様だな」

 

俺はとびっきりの嘲笑を浮かべてエピソードの顔を覗き込む。

 

()()()()

 

と言って、ギロチンカッターのほうへ向かう。

 

「でさ、面倒だけど一応聞いておこうか、キスショットの手足はどこだ?」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

ふむ……まあそうだよな。

 

この程度で口を割るわけないか。

 

「……あっそ、答える気はないのな、まあ分かってたけどさ…じゃ、お前らには用はないんでさっさと死んでくれや」

 

そう言って、俺が三人を殺そうとした時だった。

 

「――――――誰だッ!」

 

突如として背中に気配を感じ、俺はその気配の主を影で拘束した。

 

気配のほうへ振り返れば、そこにはアロハ服の浮浪者のように小汚いおっさんがいた。

 

「はっはー、やれやれ困ったね。まさか気づかれるとは思わなかったよ」

 

軽薄な笑いを浮かべるアロハ。

 

それが余裕なのか虚勢なのか、無闇にも分からなかった。

 

「はっはー、君ってばさあ、こおんな住宅街のど真ん中で三人の男をギロチンにかけようとしたり無害なおっさんを縛ったり物騒なこと言ったり、君は本当に元気がいいなあ」

 

軽佻浮薄な態度を崩さずにアロハは言った。

 

「―――――――何か良いことでもあったのかい?」

 

006

 

「――――で、お前は一体何者なんだよ」

 

あれから数分後、二人きりになった俺は突如現れた謎の中年浮浪者に尋ねた。

 

あの後、俺に拘束されたアロハはこともあろうに三人のヴァンパイアハンターの解放を要求してきたのだ。

 

勿論、俺がそんな要求に応じる理由はないので俺はさっさと三人を殺そうとしたのだが、そこでアロハがこんな提案をしてきた。

 

「彼らを解放してくれれば僕が君と彼らの間に立って君に確実にハートアンダーブレードの手足が戻るように交渉しようじゃないか」

 

こんなことを言われてしまえば応じざるを得ない。

 

俺の目的はキスショットの手足の奪還であって殺しではないのだ。

 

正直、ここで要求に応じずにさっさと三人を殺してしまってから自力で手足を探すという手も俺にはあった。

 

三人はどう見てもこの町に最近入ってきたばかりのよそ者だったし、土地勘のない者が物を隠す場所を絞り込んで探せば恐らく見つかっただろうが、俺としてもそれは少々面倒だった。

 

だからまあ、俺としては面倒な手間が省けるなら別にいいかと思いこのアロハの要求を吞むことにしたのだ。

 

それに――――俺にすらも直前まで気づかせずに俺に忍び寄った手腕といい、俺はこのアロハに得体のしれないものを感じていた。

 

こいつの目的が一体何なのか探るためにも俺はこいつの申し出を承諾した。

 

俺の問いに、アロハは相変わらず軽薄な笑いを浮かべて言った。

 

「僕かい?ある時は謎の風来坊、ある時は謎の旅人、ある時は謎の放浪者、ある時は謎の吟遊詩人、ある時は謎の高等遊民」

 

「全部謎じゃねえか」

 

まあ確かに不審者っぽくはあるけれども。

 

「ある時は女声の最低音域」

 

「ある時はアルト………って駄洒落じゃねえか」

 

それに大して面白くもなかった。

 

フツーにつまらない。

 

「ある時はある、ないときはない」

 

「開き直んな、つかはぐらかすな、お前は一体何者なんだよ」

 

「僕はただの……通りすがりのおっさんだよ」

 

つまりただのホームレスだった。

 

納得。

 

俺の見立ては間違ってなかったか………。

 

忍野メメ――――――そう呼んでくれとアロハは言った。

 

何つーか……クッソ似合わねえ名前だな。

 

「それで―――――君の名前はなんて言うのかな?」

 

「あ?」

 

「おいおい、僕にだけ質問するなんて不公平じゃないか、名乗られたら名乗り返すのが最低限の礼儀というものだよ」

 

ホームレスの不審者に礼儀を説かれた。

 

確かに正論ではあるのだが………何だろう

 

お前にだけは言われたくねえよと無性に言い返したくなった。

 

「…………阿良々木暦だ」

 

そんな釈然としない気持ちをグッと堪え、俺は渋々名乗った。

 

「阿良々木暦か――――いかにも波乱万丈って名前だね」

 

「ほっとけ」

 

「さて、自己紹介も済んだところで、行こうか阿良々木君」

 

「何処にだ?」

 

「あの学習塾の廃墟だよ、今は君たちが塒にしているみたいだけど、あそこは僕も目をつけていたんだ」

 

それから、俺たちは学習塾跡へと雑談をしつつ向かった。

 

いや、マジでただの雑談なんだよこれが。

 

「最近の映画業界何でも実写化しすぎ説」

 

とか

 

「最近のアニメはとりあえず美少女だしときゃいいって思ってる説」

 

とか

 

今この状況で話すことかよ………。

 

クッソどうでもいいんだが……。

 

まあそんな話を並べ立てる忍野を適当に相手して(学習塾跡近くに来たときは最早「あー」とか「ほー」みたいな感じになってた)俺たちは学習塾跡へ戻ってきた。

 

「おお!帰ったか」

 

学習塾跡へ戻った俺を迎えたのは喜色満面のキスショットだった。

たぶんこの顔を写真にとって売ればかなりの値になるんじゃないだろうか。

 

しかし、そんな芸術品レベルの笑顔を浮かべていたのも束の間、キスショットは俺の背後にいた忍野に気づいて怪訝な顔をする。

 

「我が同族よ、後ろにいるその人間は誰じゃ?」

 

「ああこいつは只のホームレスだよ。少なくとも敵ではない…と思う」

 

酷い紹介だ。だが的を射ているとも思った。

 

「初めましてハートアンダーブレード、僕は忍野メメ、しがない『専門家』さ」

 

「専門家とな?なんじゃそれは」

 

「一言で言うならば『妖怪変化』または『魑魅魍魎』、『異類異形』なんて呼ばれることもあるけど、まあ所謂『怪異』を相手に中立の立場で交渉を請け負っているのさ」

 

だけど―――――

 

と、忍野はキスショットを観察し、微妙な表情を浮かべたかと思うと、肩をすくめてお手上げのジェスチャーをした。

 

「やれやれまさかこんなことになってるとはね………阿良々木君と出会ったときから変だと思ってはいたけれど、ここにきてやっと確信を持ったよ。いや、言い逃れできなくなったと言ったほうが正しいか、まさかハートアンダーブレードが吸血鬼どころか()()()()()()()()()()()()なんて予想外もいいところだよまったく………例外も―――――イレギュラーも甚だしいね」

 

相も変わらずの軽佻浮薄な口調だが、どこか戸惑っているように見えた。

 

「さて、そうなると話は少しややこしくなるね……とりあえず、今の君たちが一体『何』でどんな関係なのか教えてくれないかな?」

 

忍野は真っ直ぐと俺とキスショットを見据えた。

 

下手な嘘誤魔化しは見破られるだろう。

 

「簡潔に言うなら俺たちは『例外』だ。関係としてはまあ一言で言い表すのは中々困難だが最も近い意味の言葉として当てはまるのは『同族』ってところだ」

 

「『例外』に『同族』………ねえ」

 

俺の言葉を繰り返し咀嚼するように呟くと、忍野は瞑目し深く熟考した。

 

数十秒後、忍野はゆっくりと目を開けた。

 

「オッケー、完全には理解できないけれど、とりあえずそこは棚に上げておいて、ここからは――――――『仕事』の話をしよう」

 

「『間に立つ』ってやつか?」

 

「その通り、僕が連中に頭を下げてお願いする、で、阿良々木君は彼らと1対1でゲームをしてもらう。キスショットの手足を賭けてね」

 

「ゲームだぁ?何だ、ジャンケンでもしようってのか?」

 

「はっはー、まあ僕としてはそれでもいいのだけれどね、彼らがそれで納得してくれればの話だけれど」

 

「何だ、結局バトル展開かよ」

 

「まだそうなると決まった訳じゃないけれど、恐らくそうなるだろうね」

 

「それなら別に三人同時にやっても大して変わらないんじゃないか?」

 

「ハンデだよ阿良々木君。君の実力の程は見させてもらったけれど、3人同時じゃあどうやったって君には勝てないだろう?」

 

「それは逆じゃないか?1対1より1対3の方が明らかに勝率は高いだろう?」

 

「ところがどっこい、そういうわけでも無いのさこれが、ハートアンダーブレードなら分かるだろう?」

 

「うむ、ヴァンパイアハンターのような連中は基本つるむということをあまりしないのじゃ、奴らが吸血鬼を狩る理由からしてすでにバラバラじゃしな、今回儂を襲ったあの3人とて全員が全員違う理由で吸血鬼を狩っておる。故に奴らには協調性というものが無い。むろん、互いが互いの邪魔にならない程度に立ち回る術くらいは心得ておろうがのう、それはチームプレイとは言わん」

 

ああそういえば………あいつら『早い者勝ち』がいつもの手段みたいなこと言ってたな。

 

「それに付け足すなら、ヴァンパイアハンターってのは一種の『職業』だからね、基本その報酬はターゲットを仕留めた者に払われるから、互いが互いの商売敵って言うのも理由の一つに入るね」

 

「世知辛いのう」

 

「まあそんな感じで、ヴァンパイアハンターが3人も共闘しているっていう状況は結構珍しいケースに入るのさ、そのあたりが今回のターゲットであるハートアンダーブレードがどれほど例外的な吸血鬼だったのかを如実に表しているといえるね」

 

「当然のことじゃろう、言われるまでもないわ」

 

キスショットがエッヘンとでも言わんばかりに胸を張った。

 

「そう言った理由で、むしろ彼らは一人で戦ったほうが実力が出せるのさ。それをしないで態々ハートアンダーブレードを3人で奇襲したのは多分、連携はできなくとも3人同時の連続攻撃を仕掛けることで短期決戦にするつもりだったからだろうね。自分より強い敵を相手にするときにその実力を出される前に畳みかけるっていう常套手段だ。まあ結局不慣れな連携もどきをやったせいで結果的にハートアンダーブレードには逃げられちゃったんだけれどね」

 

確かに一理ある………が、そんな戦法を取ったところであの3人がキスショットを瀕死に追い込めるとは思えないんだよなぁ……どんなに群れたところでアリが象に勝てるわけがないのと一緒で、キスショットが本気を出せなくともあの3人なら余裕だと思うんだが…。

 

やはり今回の件、敵はヴァンパイアハンターの三人だけじゃない……。

 

「それにだ、一回勝負にするより三回勝負にしたほうが後に出てくる奴にとっては勝率が高いだろう?これらの事を交渉材料(カード)に彼らと交渉する」

 

「そんなことするより、俺たちが吸血鬼じゃないことを言ったらどうだ?そうすればあいつらと俺たちが戦う理由がなくなるだろ」

 

「そこが今回の件をややこしくしているところなんだけれどね、阿良々木君、君とハートアンダーブレードの間に起こったことは本当に例外的なことなんだよ。僕だってここにきて君から話を聞くまで半信半疑だった。こんなことが起こりうるなんて僕の知る限り『先輩』ぐらいしか予想もできないことなのさ、僕は君たちと実際に会って話を聞いたから何とか信じられるのであってこんな話彼らからすれば荒唐無稽な作り話以外の何物でもないのさ、それでも説得しろって言うならできなくはないけれど、すごく時間がかかる上に完全に彼らを納得させるのは僕には無理だ。それで手足を取り戻したとしてもその後も彼らに余計なちょっかいを出される可能性が高い。それなら君は吸血鬼ってことにしてゲームで決着をつけたほうが後腐れもないし、手足を返すことを彼らが渋った場合の交渉材料(カード)としてそれを使えば交渉をスムーズに進められるのさ」

 

「成程、結果的にゲームをしたほうがメリットは多いというわけか」

 

「そういう事」

 

「キスショット、どうする?俺はこいつに任せてもいいと思っているのだが………」

 

「構わんぞ、此度のことはうぬに一任しておるからのう」

 

「だ、そうだ忍野、依頼料はいくらだ?『専門家』ってなら勿論無料ってわけじゃないんだろ」

 

「そうだねえ………これまでにないケースだけれど、とりあえず今回は吸血鬼ってことにして200万円でいいよ」

 

200万か……まあ()()()()()()()なら普通に返せるか。

 

「今は持ち合わせが無いが、後払いでいいか?期限は?」

 

「ま、そんなに焦らなくともある時払いでいいよ、催促もなしだ」

 

「それはまた随分と気前がいいな、まあ早目に返すようにはしよう、それで交渉成立だ」

 

「じゃ、決っまり~。はっはー、まいどあり~なんつって」

 

忍野は軽薄な口調でおどけるように言った。

 

こうして俺は、忍野の仲介の下、学園異能バトルをすることになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、零崎記識です。
お待たせいたしました。
私のような初心者の作品をお気に入り登録していただいたり、評価してくださり誠にありがとうございます。これを励みに頑張っていきたいと思います。

ここで補足
遂に無闇君の特異性が一つ明らかになりましたね。
『最適最高化』は分かりやすく言えば物事の上達が滅茶苦茶早くなる成長補正です。
ジャンル問わず、学問、スポーツ、芸術等々、人間にできることは全て対象です。

はい、チートですね。ええ
勘の良い人ならばここでなぜ無闇君がプロローグのようになっていたのか想像つくのではしょうか?
まあ無闇君のカコバナはまだ当分先になりますがここでヒント
俺ガイルの雪ノ下雪乃
はがないの柏崎星奈
戯言シリーズの想影真心
以上のようなキャラを思い浮かべていただければ大体推測はつくと思います。
どんなことでも一時間程度でプロ級になれる人物……。
現実にいたら異常すぎますよね。
そういう事です。

さて次回からは無双編に突入です!
バトルシーン……不安しかないですが何とか描き切って見せます。

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ではまた次回。
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