『外物語』   作:零崎記識

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筆者は小説投稿初心者です。
過度な期待はせずに気楽に見ていくことをお勧めします。
感想・批評は歓迎ですが暴言・悪口は炎上の原因となりますのでおやめください。



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009

 

詳しい事情は明日の夜に話すことを羽川に約束し、彼女には一旦帰ってもらうことにした。

 

戦闘で荒れたグラウンドを元通りにし(十分もかからなかった。吸血鬼のスキルマジ万能である)俺はキスショットが待つ学習塾跡へと戻った。

 

「おぉ戻ったか我が同族よ、結果は…まぁ聞く必要もないじゃろうて」

 

「フルボッコだドン!とだけ言っておこう」

 

もう一回遊べるぜ。

 

「うむ、よくやった。流石は儂の同族じゃ、まぁ心配はしておらなんだよ。儂と同等の存在であるうぬにとってはドラマツルギーごとき、どうやっても敵にはなりえまい」

 

だだのカカシじゃな――と彼女は笑った。

 

「あぁ、奴が潔い性格で助かったよ」

 

そのおかげで手間が省けたからな………引き際を心得て勝てないと分かったらすぐに撤退したあたり、流石はプロってところか。

 

「まぁドラマツルギーは三人の中では一番物分かりの良い奴じゃからのう、他の二人ではこうはいかんじゃろう」

 

「同感だな」

 

ドラマツルギーはいかにも『仕事人』って感じだったからな。仕事はしっかりやるけれど絶対に無理はしない―――そういう奴なのだろう。

 

寧ろそういう奴だから、初戦の相手になったのかもしれないな。

 

他の二人は一筋縄ではいかないだろう。

 

エピソードは面倒臭そうだし

 

ギロチンカッターは厄介そうだ

 

ま、俺が負けることはないがな。

 

「とはいえお手柄じゃな、礼を言うぞ我が同族よ」

 

「どーいたしましてってな」

 

「して、儂は以前、うぬに全ての手足を取り戻した暁には何でも望みを叶えることを約束したが、うぬには何か望みはあるか?何なら世界の半分でも用意できるが」

 

魔王かお前は。

 

まぁお前が力を取り戻せば容易なことなんだろうけれどな。

 

でも実際世界の半分ってふわっとしすぎて全く要らないと思うのは俺だけなのだろうか

 

所詮魔物だから人間の欲しがるものを知らないんだろうな。

 

人型で美人なモンスター娘とかのハーレムとかの方が堕ちる奴は多い気がする。

 

「まぁ、それは全部の手足が戻った時に話すさ」

 

実は既に考えてあったりする

 

が、今は秘密だ。

 

「かかっ……では楽しみにしておくわい」

 

「おう、楽しみにしておいてくれ」

 

そんな会話の後、雑談をして暇を潰しているうちに忍野が帰ってきた。

 

しっかしアイツ、いつもアロハだよな。

 

なんか思い入れでもあるのかってぐらいアロハに拘るのは……マジで何なのだろう。

 

しかも相変わらず小汚い。

 

洗濯とかしているのだろうか?

 

それに引き換え――

 

俺は目線をキスショットにやる。

 

「そういや、物質創造能力ってマジで便利だよな、お前のそのドレスも能力で作っているんだろ?」

 

「そうじゃな、吸血鬼にとっては服は体の一部のようなものじゃ、応用によってはどのような状態にもできる」

 

「全物理学者がマジ泣きするな、それ」

 

まぁそれも仕方ないか……。

 

怪異とはそういうものだ。

 

不合理で不条理で―――不思議なモノ。

 

それが怪異なのだから。

 

それはさておき。

 

「帰ったか、忍野」

 

「帰ったよ~阿良々木君」

 

そんな間の抜けた調子で答える忍野の手にはボストンバッグが提げられていた。

 

恐らく……アレがキスショットの右脚なのだろう。

 

「いやー阿良々木君、圧倒的って感じだったね」

 

「あれでもかなり手加減してたんだがな………勢いで殺してしまわないようにするのにかなり苦労したよ全く」

 

「はっはー言うねぇ」

 

「つーか見ていたんなら部外者が入ってこないようにしておけよ」

 

「無茶なこと言うなよ阿良々木君、僕みたいなおっさんにピチピチの女子高生に声を掛けろだなんてできるわけないじゃないか、そんなことをすれば即警察のお世話になっちゃうじゃないか」

 

「まぁその恰好じゃあな」

 

実体験の可能性が濃厚だ。

 

「それに僕も一応対策はしていた筈なんだけれどねぇ……流石阿良々木君の友達ってことなのかな、あの娘も只者じゃないね」

 

「それは認めるがな」

 

「何にせよ、見られちゃった以上はちゃんと説明しておくべきだろうね―――特にあの娘は賢そうだし、下手な嘘や誤魔化しは通じないだろうね」

 

「確かにな……まぁ見られてしまった時点でそのつもりではあったよ。あいつには『全て』を話すつもりでいる」

 

「でもまぁ、打ち明けることが必ずしも良いこととは限らないけれどね、打ち明けるということは相手を否応なく巻き込むことになる。そうなるぐらいなら突き放す……って言うのも一つの手だよ」

 

「お前も見ていたんなら知ってるだろ、あいつに『突き放す』なんて手は通じない」

 

「そうだね、ま、気を遣って遣いすぎるということもないだろうね。特に相手が女子の時はね」

 

「性別別にこの際関係ないと思うが?」

 

「おやおや、随分と自覚が足りないじゃないか、男子なんて女子とちがってダンスの一つも創作できないんだろう?」

 

「…いや確かにその言い方だとあたかも女子の方がクリエイティブなセンスに恵まれているようだが、それは単純に女子の体育の授業に創作ダンスがあるってだけの話だろうが」

 

そんなことで創造性を測らないでもらいたい。

 

それにダンス程度俺に掛かれば余裕で創作できるし。

 

俺のダンスなめんなよ?

 

マジでキレッキレだからな?

 

キレッキレすぎて『カッター少年』って呼ばれてたこともあるくらいだからな?

 

「しかし阿良々木君、もしも僕たちの日常がアニメ化された際、踊ることができずにあたふたするのは阿良々木君なんだぜ?」

 

「二次創作がアニメ化なんてされるか!」

 

残念ながらアニメ化はもうされている。

 

opでいろんなキャラが踊ったりしていたけれど、結局男連中が躍ることは無かったしな。

 

所詮野郎はお呼びではないのだ。

 

我が末妹の『白金ディスコ』とかは大人気らしいけれどな。

 

「ドラマCDも、もう出ちゃったしね」

 

「おい、話題が危ない方向に行ってるぞ」

 

もうすでに危ないが。

 

「良いじゃないか阿良々木君、メタな話は二次創作の伝統芸みたいなものだろう?いやむしろ、二次創作ならではの特権というべきかな、本家の方でも結構メタい話は出てきてたからこれはもう積極的にやれというフリだね」

 

「そんなわけあるかい」

 

「でも冗談で言ってたアニメ化云々が本当になっちゃってご本家さんはどういう気分だったんだろうね。これぞまさしくND――――」

 

「おいバカやめろ!」

 

ちょ、おま……原作者様を煽るとか何考えてんだ!?

 

原作者様はこの作品書いてるゴミ(零崎記識)とは比べ物にならないくらい凄い人なんだから、冗談でもそういう事は言うな。

 

下手すりゃ垢BANだぞ……。

 

「おい」

 

ここにきてようやくキスショットが突っ込んだ。

 

「雑談は終わったかの?」

 

「ん?あぁ―――はっはー、ハートアンダーブレード、君もなかなか元気良いなぁ、何か良いことでもあったのかい?まぁあったんだろうね」

 

忍野は笑いながら、ボストンバッグのジッパーを開ける。

 

そしてその中に手を突っ込んで――

 

そのまま、キスショットの右脚を取り出した。

 

うん、良い脚線美だ……じゃなくて!

 

「えーまさかのむき出しかよ……」

 

勝手な想像だが、俺は右脚は何かに包まれて保存されているものだとばかり思っていた。ケースに入れられているとか、ビニールに包まれているとか、もしかしたらホルマリン漬けにでもされているかと思っていたが、まさか裸のまま保管されていたとは少し予想外だった。

 

しかし思いの外ぞんざいに扱われていたにもかかわらず、右脚は出血もしていなければ腐ってもいない、世の女性が羨むほどの美しさをそのまま保っていた。

 

しかし……アレだな。

 

この状況、傍から見れば猟奇殺人だ。

 

コ〇ン君とかが出張ってくるレベル。

 

恐怖!吸血鬼バラバラ殺人

 

彼の名探偵もこれは流石に迷宮入りだな。

 

別にどうでもいいがな。

 

「ちゃんと返してくれたんだな、安心したぜ」

 

「そのための交渉人だよ。それくらいは信頼してくれないと困るなぁ―――向こうは吸血鬼退治の専門家かもしれないけれど、こっちだって一応はプロなんだ。プロとして、そういう債務不履行は起こさせないさ」

 

仕事だからね―――そう言いながら忍野は右脚を持ち主に手渡した。

 

受け取るキスショット。

 

うん……何だこの状況。

 

シュールすぎるだろ。

 

「なぁキスショット……それやっぱり―――」

 

「うむ、()()するのじゃ」

 

そう言いながらキスショットは自らの右脚を口の中へと運び、そのまま鵜呑みにした。

 

そしておいしそうに咀嚼する。

 

自分の脚を

 

だから……何だこの画。

 

これを映像化したっていうのかよ……。

 

実際に見た立場として言わせてもらうがな…….

 

すっげぇエグイ。

 

「なぁ、忍野……」

 

「僕たちは外に出ていようか」

 

別にこの程度で参ってしまうようなヤワな神経はしていないが、しかし、好き好んで見続けていたい光景という訳でも無かったので、俺たちは廊下で待つことにした。

 

「しかし……手足を存在力ごと切り離す―――か、そこまでしないと、人類はキスショットには勝てないとはねぇ」

 

「あの子は貴重種だからね阿良々木君。尋常な手段を使ってはどうやっても勝ち目はないよ」

 

「だからこそ―――尋常()()()()手段を使う必要がある……ってことか」

 

「そう易々と使える手段じゃないけれどね」

 

「連中は決闘の最中に使ってくると思うか?」

 

「いや、無理だね。不可能とまでは断言しないけれど、あの手法は3人がかりで準備を行う必要があるし、かなり時間もかかる、阿良々木君が既に一人を退けた時点で連中があの手法を使ってくることはまずないだろうね」

 

「まさに()()()()()()()()()の手法ってわけだ」

 

「まぁ確かにね、手足を存在力ごと切り離して奪い取り、それを保管しておくことで手足の消滅を禁じ、同時に再生をも禁じる―――何て、全くもってまどろっこしい真似だけれど、考えてみれば()()()()()()としては中々にうってつけの作戦と言える」

 

「そういや次の相手は誰になるんだ?」

 

「順番を決めるのは向こうだから、まだ断定はできないけれど、まぁ多分エピソードになるんじゃないかな」

 

「だろうな、俺もそんな気がしてた」

 

俺の予想だとギロチンカッターは最後に出てくるはずだ。何せ吸血鬼のドラマツルギーや半吸血鬼のエピソードとは違って、ギロチンカッターは『普通の人間』だ、つまり、能力的に見ればあの三人の中で()()()()筈なんだ。だからこそ、奴は策を用いて俺を狩ろうとするだろう。そのためには俺の能力や実力をできる限り知っておく必要がある。となれば奴は他の二人を先に俺と戦わせて俺の実力を見極めた後対策を練ってくるだろう。なら後は消去法だ。次の相手はエピソードになる可能性が高い。

 

キスショットにエピソードのことを聞いておくか……。

 

「さて、そろそろ食事は終わったかな」

 

「だといいがな」

 

俺たちはドアを開け、教室へと戻った。

 

010

 

「―――え?阿良々木君って吸血鬼になった訳じゃないの?」

 

羽川が拍子抜けしたような調子でそう言った。

 

4月1日の日没直後。

 

俺は羽川を学習塾廃墟に招き入れた。

 

別に日中活動しても俺自身は問題ないのだが、ヴァンパイアハンター共と吸血鬼として戦っている以上日中活動しているところを見られるわけにはいかず、しかし幾ら友達とはいえ女子である羽川を夜遅くに呼び出すわけにもいかなかったのでこんな中途半端な時間になってしまった。

 

ちなみにキスショットは寝ている。

 

彼女も最早吸血鬼ではないがこればかりは習慣という事だろう。

 

この学習塾跡には忍野曰く、『結界』が張ってあるらしい。

 

そう『結界』だ。

 

中二病患者大歓喜のあの結界である。

 

しかも結構本格的な奴。

 

結界といえばバリアのように外からの霊的な脅威から内部のものを護るのが主流だが、この結界はむしろ内部のものを封じ込める役割を持っている。

 

この結界は『守護』というよりも『隠蔽』の結界のようだ。

 

キスショットと俺の気配を結界内に封じ込め、ヴァンパイアハンターから隠蔽する効果があり、同時に場所を分かり難くし、案内なしではたどり着けないようにする効果がある。

 

土地勘のない余所者の奴らだけではたどりつくことは不可能に等しい。

 

それは心強い限りではあるが、困ったことにこの結界の効果は誰にでも有効らしく、ヴァンパイアハンター以外の人間も同じようにここにたどり着くことは難しくなっているのだ。

 

当然羽川もその例外じゃなく、俺は日が沈んでから学習塾跡付近で待ち合わせをしている羽川を迎えに行く必要があった。

 

「よぉ」

 

「や」

 

俺は羽川と短い挨拶を交わした後、学習塾跡へと向かった。

 

羽川は、出合った時と何も変わらない態度で俺に接してきてくれた。

 

ありがたいねぇ全く。

 

しかし同時にそれは、羽川の異常性でもあった。

 

『私有地につき立入禁止』

 

そんな看板が貼り付けてあるフェンスを潜り抜け(廃墟になってからかなりの時間が経っているためか、フェンスはあちこちが虫食い状態だ。この廃墟が長いこと放置状態であることがうかがえる)建物の内部へ入る。

 

「暗いから足元注意しろよ」

 

そう言って俺は能力で作った懐中電灯を羽川に渡す。

 

「うん、ありがと。でもすごいね吸血鬼って、何でも作り出せるんだ」

 

「まぁな」

 

しかもノーリスクでだ、どっかの錬金術師兄弟が知ったらマジギレ不可避である。

 

等価交換がなんぼのもんじゃい。

 

石でも真理でも人造人間(ホムンクルス)でも持ってこいやァ…

 

そんなくだらないことを考えながら俺は羽川をキスショットのいる教室へと案内した。

 

正直、元とはいえ吸血鬼の所へ人間である羽川を連れて行くのはどうかとも思ったが、今回の当事者であるキスショットを羽川に見せておきたかったのである。

 

それに、もし何かあっても俺が対処するから羽川には傷一つつけさせない。

 

まぁキスショット自身「ただの人間には興味ありません」って感じだし、大丈夫だとは思うが。

 

多分宇宙人、未来人、異世界人、超能力者を連れて行ったところで同じだろう。

 

彼女にとって人間は最早食料ですらない。

 

完全に家畜以下の路傍の石だ。

 

やったね人類!脅威が減ったよ!

 

路傍の石扱いされてここまでありがたいことって他にないよな……。

 

「ここだ」

 

俺はそう言って教室のドアを開けた。

 

「えっ……?阿良々木君、これって………」

 

教室の内部を見た羽川が驚愕する。

 

まぁ驚くのも無理はない。

 

何故ならそこにあったのは廃墟となった学習塾の教室ではなく、真っ白で罅割れ一つない綺麗な壁と、高級そうなカーペットが敷かれた()()()()()()()だったのだから。

 

まさに『劇的!ビフォーアフター』である。

 

部分的だけれどね。

 

『何という事でしょう!』って言ってくれてもええんやで?

 

「まさか……阿良々木君これも能力で?」

 

Exactly(その通りでございます)!」

 

鋭いなさすが羽川するどい。

 

はい、今回の(犯人)は何を隠そうこの俺である。

 

いやだって、埃だらけであちこち罅割れてる廃墟の部屋なんて誰が住みたがるのよ。

 

そう思った俺は物質創造能力やらを使ってこの教室だけ人が住める状態にリフォームしたのだ。

 

キスショットもちょっとだけ協力してくれた。

 

いま彼女が寝ているベッドも彼女が自分で作ったものである。

 

うん、どこの王族だよってくらい豪華なベッドである。

 

いやー物質創造能力様様だな。

 

能力の無駄遣い?

 

寧ろこれ以上ないほど有意義な使い方ですが?

 

それは兎も角。

 

俺と羽川は部屋の中へと入り、フカフカのカーペットの上に向かい合って座った。

 

「それじゃ羽川、最初から話すからよく聞いて欲しい」

 

「分かった」

 

羽川は首肯する。

 

「俺が吸血鬼になったと言ったな、あれは嘘だ」

 

そしてこの章の冒頭へと戻る。

 

「―――つまり阿良々木君も、そこで寝ているハートアンダーブレードさんも、吸血鬼じゃないってことね」

 

「そうだ」

 

「じゃあ今の阿良々木君ってどういう存在なの?」

 

「詳しく説明するのは難しいが……そうだな、俺の場合はベースは人間で、吸血鬼の持ってる異能とか身体能力とか再生能力とかを抽出して取り込んだ……ってところだな」

 

「ハートアンダーブレードさんの方は?」

 

「キスショットは俺とは逆にベースは吸血鬼で人間のようにこの世界に対して実体を持ったってところだろう。だから人間に語られなくなっても存在が薄くなることは無いし、人間を食わなくとも餓死はしなくなった」

 

「うーん……複雑な状況なんだね。吸血鬼の弱点とかはどうなったの?」

 

「消滅した。俺もキスショットも『吸血鬼』と『人間』という二つの要素を掛け合わせて全く新しい存在になっちまったからな。吸血鬼ならばともかく、別の存在になった今、太陽も聖水もニンニクも弱点にはなり得ない」

 

「まさに無敵って訳だ」

 

「寧ろ『例外』だな」

 

分かりづらければ究極生命体にでもなったと思っといてくれ。

 

まぁ別に宇宙に放り出されたって戻ってこれるけど。

 

「––––私のせい…なのかもね」

 

「何がだ」

 

「阿良々木君がハートアンダーブレードさんに遭遇したのって」

 

「………」

 

ど う し て そ う な っ た

 

い、言えねぇ……。

 

黒歴史作って悶絶したから紛らわすために外に出たら遭遇したなんて言えねぇ……。

 

というかそのことは言ってないはずなのに…。

 

何故バレたし。

 

悟りか?

 

悟りなのか?

 

小五ロリなのかこの娘……。

 

そんなくだらない俺の焦りはどうやら的外れだったようで

 

「噂をすれば影が差すって言うじゃない?」

 

あぁなんだ……そういうことか。

 

「あの諺って怪異なんかでは割と有効な話でね、()()()()()怪異って言うのは向こうの方から寄ってくるんだって」

 

確かにそうだ、怪異というのは人々の人口に膾炙することで存在を強めている。

 

噂されればされるほどに、その存在力は高まり、現実世界に顕現しやすくなる。

 

吸血鬼が怪異の中では頂点といっていいほど強力な力を有するのは、世界中で吸血鬼の話が語られているからだ。

 

つまり噂をすれば怪異と遭遇しやすくなるというのは一定の理があるのだ。

 

だが…………。

 

「確かに、お前の言う通りかもしれないが、別にそこまで深刻に思い詰める必要はないさ」

 

「何で?……だって阿良々木君は私のせいで……」

 

「俺がキスショットと遭って後悔してるって一言でも言ったか?」

 

「それは……」

 

「確かにキスショットと出逢ったことだけはお前から吸血鬼の話を聞いていたことが切欠かもしれない、だが、俺が今こうしていることは………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()で選び取った選択の結果だ。あの夜そう言っただろう?」

 

そう、だから羽川が気に病む必要などないのだ。

 

「ともかく俺がこうなったことにお前の責任は一切ない。責任はすべて俺のものだ」

 

誰にも渡したりなどするものか。

 

「分かった、阿良々木君がそう言うのならこの話は終わりにする」

 

「それがいい」

 

的外れな負い目ほど持たれて面倒なものはない。

 

「それは兎も角、羽川こそあの夜、寧ろ自分から吸血鬼を探して歩いていたよな、それに加えてあの時俺にあの質問をした―――ってことはつまり()()()()()だよな」

 

「あはは……()()は流石に露骨すぎたね、勘付かれちゃったか………」

 

「正直初めてお前と会話した時から薄々察してた」

 

ばつが悪そうにはにかむ羽川。

 

「何ていうか―――さ、私も何だか行き詰まててさ……生活に変化を望んだって感じ」

 

生活に変化を望んだ――か

 

なんてことは無い、俺たちのような世代の人間なら皆普通に考えるようなことだ。

 

つまらない日常を破壊してくれる非日常

 

普通の若者なら、誰しもが考えること。

 

なんてことのないありきたりな願いだ。

 

だが、羽川は()()()()()()

 

羽川が望むソレは、普通の一般人が望むソレとは事情が異なる。

 

いや、本質的には同じかもしれないけれど規模が大きく異なる。

 

何より、望んでいる本人が持っている資質に天と地の差がある。

 

羽川が行き詰まり、羽川が変化を望む、羽川のプライベート。

 

きっと尋常じゃないモノであることは想像に難くない。

 

羽川……お前はほんとに俺を助けている余裕なんてあるのか?

 

真っ先に助けなきゃいけない存在を、お前は忘れているんじゃないか?

 

あるいは……もうお前の力でもどうしようもないほどなのか?

 

「現実逃避なんだよね……結局」

 

「逃避か……別にいいんじゃないか、それでも。お前が理不尽な現実に立ち向かわなければいけない道理なんてないだろ。辛い現実からは逃げちまえよ。そうやって心に余裕持ってないとストレスがたまる一方だぞ」

 

ストレスってのはマジでバカにできないからな。

 

現代日本でどれだけの人間がそれのせいで死に追いやられたかっつー話だ。

 

それに、俺は逃避を否定するつもりはない。

 

そうしているうちに時間が問題を解決してくれることもあるし

 

そうでなくても問題から一旦離れて一歩引いて考えることで解決策が浮かぶかもしれない

 

あるいは問題そのものが客観的に見れば意外と大したことじゃないことに気づくこともあるかもしれない。

 

そう考えれば逃避することだって一つの手段だ。

 

俺が今ここにいることも現実逃避の結果と言えなくもないしな。

 

「そうなんだろうね……やっぱり、私って不器用なのかな」

 

「あぁお前はかなり不器用だ」

 

「ストレートだね阿良々木君は」

 

「このほうが気が楽なんだろ?」

 

「あはは……そう言えばそんなことも言ったね」

 

苦笑する羽川。

 

「阿良々木君はさ、もし私が困ってて、自分じゃどうしようもなくなっていたら……その時は……阿良々木君は私を助けてくれる?」

 

「愚問だな、聞くまでもないことだ」

 

助けないわけがない。

 

というか例え拒絶されようと無理やりにでも助ける。

 

友達だからな。

 

「とはいえ今は阿良々木君の問題に集中しなくちゃね、といっても私ができることは何もなさそうだけれど」

 

「そんなこともないさ」

 

お前が変わらずに俺の友達でいてくれるだけで、十分助かってるっての。

 

「そういえば阿良々木君」

 

「ん?どうした?」

 

「阿良々木君の身体…やけに清潔じゃない?」

 

「あぁそれはだな―――」

 

「むにゃむにゃ」

 

不意に、キスショットが目を覚ましたようだ。

 

「風呂などに入る必要など無いわい、吸血鬼の再生能力は肉体を常に最も健康的な状態に保とうとするからのう」

 

「あ、おいキスショット」

 

「ぐぅ」

 

眠りやがった。

 

言うだけ言って寝やがった。

 

起きてるんだか寝てるんだか………。

 

「んーと、まぁつまりそういう事だ。今キスショットが言ってたみたいに吸血鬼の再生能力があれば風呂に入る必要がないってこと。爪も伸びないし、髪だって切る必要は無い」

 

「便利だねー吸血鬼の能力って」

 

羽川は感心したように言った。

 

「ハートアンダーブレードさん―――」

 

「ん?」

 

「噂どおりすごい美人だね」

 

「500歳らしいけれどな」

 

本人に訊いたらそう言ってた。

 

「私の事……目に入ってない感じ」

 

「目を付けられるよりはマシだろ」

 

「それはそうだね」

 

「これで少しは報われたか?」

 

「どうだろう……まだ分からないや」

 

「だろうな」

 

もしお前が、俺があの時直感した通りに俺の『同類』なのだとすれば、この程度のことがお前の望みな訳がない。

 

お前の望みはきっと――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ハーメルンよ、私は帰ってきた!!

どうも、零崎記識です。

えーと……あの……

何と申しましょうか……

その……

マジでスイマセンでしたァ!m(TAT)m

いやー前回盛大に勘違いぶっこいて次回はエピソード戦とか言っちゃいましたがまさかの説明回というね

お気づきの方もいるともいますがこの作品は原作の本の内容に沿って毎回二章ずつの区切りとなっておりまして

前回まで筆者は説明回は一章で終わって次の章ではもうエピソード戦になっているっていう原作持ってるのにも関わらずあり得ない勘違いをしていまして………

それで前話を投稿し終わった後に

さーて次に書く章を確認しておこうかなぁー

ペラ……ペラ(原作を読んでいるところ)

Σ( ゚Д゚)ファッ!?エピソード戦じゃねぇじゃねーか!?

(;^ω^)ヤベェヨヤベェヨドウスルヨコレ…

ってなことがありまして色々考えた結果

(`・ω・´)ヨシッ、次回のあとがきで謝るしかない。

となりましてこの場で謝らせていただく次第です。

次こそは本当にエピソード戦なので安心してください。

(φωφ)フフフさてどうボコボコにしてやろうか……

あ、バサ姉さんは無事です。

原作通りの展開になっちゃうと無闇君がエピソード君をぬっ殺しちゃうので

でもギロチンカッター戦は……

血祭りにあげてやるぅ(ブロリー的な意味で)

残酷な描写タグが仕事をするときも近い……。

てなわけで戦闘描写が盛り上がらない作品ではありますが今後とも読んで下さると幸いです。

新しく感想をくださった匿名希望の魔王さん、夕凪さん。

ありがとうございました。

返信はしてないけれどしっかり読んでます。

いやぁ書く側の立場として読者に「面白い」って言ってもらえることはうれしい限りです。

筆者なんか感想来ているのを確認するたびに内心

キタ――――――――(≧▽≦)――――――

って感じですからね?(聞いてない)

しかもそれからしばらくはニヤニヤが止まらないんですわ(キモイ)

という訳で筆者感想は常時ウェルカムです(露骨な催促)

勿論、批判やご指摘も改善点と改善策を書き込んでいただければしっかり受け止めます。

ここからは補足

無闇君のネタ発言について。

作中の無闇君のネタ発言(主に自重しない筆者の悪ノリのせい)が多々ありますが、だからと言って無闇君が他作品の原作知識があるのかといえばそうでもないです。

彼のネタ発言は原作知識とは一切無関係なモノです。

えぇそうですよ、彼自身はネタとかじゃなく素でアノ発言をしてるんです。

でも彼は至って真面目なんだ!

決してふざけているわけじゃないんだ!

全部零崎記識とかいう必ず一回はふざけないと筆が進まない病にかかった作者の所為なんだ!

シリアスになり切れなくてすんませんマジで。

無闇君とバサ姉の会話について

皆さんもう分かっていると思いますがそうです、あの二人の意味深な会話は全部伏線です。

全然伏せてねえじゃねぇか!

というツッコミが聞こえてきますね、えぇ。

で、何に対しての伏線かと申しますと『猫物語(黒)』に対しての伏線です。

なので『傷物語』ではこのように露骨な伏線(矛盾)が今後も乱立するかもしれないですが『傷物語』では回収しないのでスルーしていただいても結構です。

はぁーもっと上手に伏線張りたいなぁ……。

筆者の未熟な腕では到底無理ですけれど。

そもそも結構行き当たりばったりでその場の思い付きとかノリで小説書いてる時点で到底無理な芸当ですがね。

プロットなんてないです。

強いて言うなら原作がプロットです(キリッ

まぁそれは置いといて

次回予告

ドラマツルギーを退けてキスショットの手足を賭けた決闘は中盤戦に突入!

次の相手は人間と吸血鬼の間に生まれた子供。

ヴァンパイア・ハーフのエピソード!

吸血鬼を憎む彼の戦術とは――――

それでは次回でまた会いましょう!

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感想への返信は各物語の終わりにまとめて返信します。

ではまた次回。




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