とあるハンターとギアノスの奇妙な関係 作:いちごの入った大福
「倒さねばならない敵」である、と。
雪が降り積もり、凍てつく風が肌を刺す、人々の間では単純に「雪山」と呼ばれる山地。
そのとある場所にある洞窟で、激しい戦闘音が鳴り響いていた。
「はぁぁぁぁ!!」
「ガァァァァ!!」
対峙するは、新米ハンターの少年と一匹の比較的小さなギアノス。互いに疲労しているのか、動きは荒削りであった。
少年が片手剣を振るって飛びかかる。ギアノスはそれを紙一重で避け(全力で避けた結果)、距離を取る。これを反撃のチャンスと見たのか、今度はギアノスが噛みつこうと飛びかかる。それに気づいた少年が、盾と体全体を使って受け流し、再び離れる。
実力が完全に均衡しているのか、まったく勝負がつかずにいた。
敗北が死に直結するこの状況。かれこれ一時間は戦い、互いに極限状態となっているため、その戦いは壮絶であった。
しかし終わりは訪れる。互いに大きく距離を取った一人と一匹は、自分の体力から次が最期の一撃になる事を悟った。
「ハァ、ハァ……」
「グルル……」
少年は片手剣を構え、大きく深呼吸をする。ギアノスは体勢を下げ、いつでも飛びかかれるように構える。
互いの息遣いと外の風の音が響く。一分とも一時間とも一瞬とも取れる空白の時間。
どこかで水滴がピチョンと落ちたのが合図になったのであろうか。
「せやぁぁぁぁ!!」
「ガァァァァァ!!」
一人と一匹は、同時に走り出した。
周囲を雪山で囲まれた「ポッケ村」。ここのとある一軒家で、一人の少年がベッドで寝ていた。
「………」
包帯が巻かれている腕を掲げ見る。他にも全身に包帯が巻いてあり、重傷であることが伺えた。数日前、とあるギアノスと死闘を繰り広げた結果、負った傷だ。
その腕を見ながら、少年は力不足を実感していた。
「……このままじゃだめだ」
少年が呟く。そして全身に力を込め、飛び起きる。
「僕はもっと強くなる!そして、あいつにリベンジしてやるんだ!」
自分に言い聞かせるように、他人に表明するように宣言する。その目には燃え上がる熱意が、その胸にははっきりとした決意があった。
とある雪山の中腹。一匹のギアノスが歩いていた。あの少年と死闘を繰り広げていたギアノスである。
その証拠に、背中には大きな傷跡があった。
「グルル……」
結局あの死闘は、両者痛み分け…「引き分け」で終わっていた。このギアノスも一時は負傷と疲労で動けないほど弱っていたが、貯めていた食糧と野生の生命力で、既に傷跡を気にせず動けるようになるまで回復していた。
彼女は群れを失った、いわゆる「はぐれ」であった。それでも生き残ってこられたのは、単独で狩りが出来るほど優れていたからであろう。
しかし、あの少年には勝利を得る事が出来なかった。
「ガァァァァ!!!」
次こそは勝つ。そう言っているかのような、力強い雄叫びであっった。
こうして、幾度となく剣と牙を交える一人と一匹の奇妙な関係が始まったのである。
中編予定