活動報告でも書かせてもらいましたが、この作品は厨二成分多目です。
しかし、だからこそ頑張りたいと思います!
Li〇ht作品とか大好きなので。
「いっせい。恐らくだが、今のお前は両親に会うことはできない」
「……え」
エリーザベトは冷酷な事実をいっせいに打ち明けた。
いっせいはそれを受けて、覚悟していたと言っても失望や絶望、悲嘆に包まれた。
「……なんで?」
いっせいはそれが信じられず、いや、幼いながらも頭で理解しながらもそれでも悲しかった。
なぜ自分が両親と会うことが出来ないのかと訴えた。
「……そうだな。
それはある意味、お前とお前のお父さんとお母さんのためとしか言い様がないな」
そのいっせいの悲痛な訴えを見てエリーザベトもまたこうなることは理解していたし、予見出来ていたとはいえ何とも言えない感情を抱いてしまった。
エリーザベトは聡いなどと言う言葉が彼女にとっての侮辱になる程の智の結晶である。
しかし、彼女は「心」を持ち、「情」を理解できるが故に人の不幸を告げることには抵抗があるのだ。
「……え?なんで……」
なぜ自分が両親と会えないことが、いや、引き離されることが自分と両親の為になるのか理解できず泣きそうになった。
(やれやれ……難儀なことだな……)
エリーザベトは何と答えるべきかと悩むも
「……お前を殺しかけた奴はお前の偽者……いや、お前の名前や居場所を奪ってお前のお父さんやお母さんを騙しているんだ。
もし、そこに本物のお前が現れたらどうなる?」
「……え?」
事実をそのままぶつけるしかない考えた。
「一度、お前を殺そうとした奴だ。
もし、お前が生きていると知り両親もお前が本物で偽者が偽者だと知ったらどうなる?」
「……どうなるの?」
エリーザベトは分かり易く説明したつもりだったがいっせいは答えに辿りつくことが出来なかった。
それは仕方のないことだった。
いっせいはまだ小学校低学年の子供だ。
刑事ドラマを見る訳でもないし、推理小説を読むわけでもない。
他人の具現化した「悪意」もそれによって生まれる「犯罪」の意味と存在すらも知らないのだ。
知っているとしてもそれは同年代の児童のいじめ位だろう。
しかし、仮令狡猾ないじめを行う卑怯な悪童たちも覚悟や狂気は「悪意」のままに、いや、「悪意」やその他諸々の「狂気」のままに動く人間には及ばないだろう。
まだいっせいは人の「悪意」や「狂気」とは無関係であり、無知な、いや、無垢な少年なのだ。
だからこそエリーザベトの言っている意味が分からないのだ。
それはエデンの園においてアダムとイブが知恵の実を食べる前の時と同じように。
「……お前とお前の両親すら殺す可能性もあるんだ……」
「え!?」
エリーザベトはいっせいにその事実、いや、可能性を語った。
「そいつがなんでお前のことを殺そうしたのかは分からん……
だが、殺したはずのお前が生きていて、両親の許へと帰ってみろ……
今度こそ、お前を殺そうとするだろうし下手をすれば今回のことを知ったお前の両親すらも殺しかねん」
「そんな……!」
エリーザベトはいっせいが両親の許へ帰った場合からの未来を思考した。
先ず簡単に考えられる結果はいっせいのみを殺す可能性。
当然、これは最初に起こり得るものであり確定事項である。
しかし、問題はそこから起きる分岐した未来である。
一つ目に考えられるのは両親に暗示をかけて何事もなかったようにすること。
「赤龍帝」を奪った相手なのだからそう言ったことが出来る可能性も十分、あり得る。
だが、それよりもマズいことがエリーザベトの脳裏を過ぎったのだ。
それこそが二つ目のいっせいの両親さえも殺すと言う結果だった。
いっせいのことを殺すことに躊躇しなかった相手である。
となると他の人間も自分の邪魔になれば殺すことも十分考えられたのだ。
「……!そうだ、エリーゼさんが―――!!」
いっせいは藁にも縋るようにエリーザベトに助けを求めた。
死にかけた自分を助けた人間であり、何よりも彼にとっては「魔法使い」と言う絵本の中から出て来たような万能の存在に思えたからである。
彼女ならば或いはと考えたが
「……いや、私では無理だ」
「―――え」
それは不可能だとエリーザベトは断じた。
「お前から偽者が奪った「赤龍帝」の力はな……
私も何度か戦ったことがあるが戦う度に苦戦を強いられた相手だ。
それにドライグから聞かせてもらったが、そいつの実力は厄介なことに歴代でも最強……
いや、そんな言葉すらも生温いほどのものだ。
私では勝てんよ」
「そ、そんな……」
ドライグから聞かされたいっせいから「赤龍帝」の力を奪った下種の実力を知り、エリーザベトは自分では勝てないと理解したのである。
そして、同時にエリーザベトはこう断じた。
その「赤龍帝」は「歴代最強最悪の存在」だと。
「ただ例外として」
しかし、それは「歴代最強最悪の存在」の相手でも一つの例外を除いた場合の話であるが。
「私が命を落とすことを前提で戦うのならば倒せるがな」
「……え」
その例外とはエリーザベトが奥の手を使う場合に限られる。
しかし、それはエリーザベト自身が命と引き替えにすることである。
「……尤も今回、助けただけのお前をそこまでしてやる義理はない。
私の
さらにエリーザベトは残酷な意思を突きつけた。
エリーザベトは500年を生きる存在であるが、それでも、それだからこそ「生」に、「死」の在り方に執着する。
つまり、いっせいを助けることは死ぬことに値しないと言ったのである。
(まあ……助ける手段は用意してあるがな……)
と言っても、エリーザベトはそこまで薄情ではない。
いっせいには施しは与えないが、
何れにせよいっせいからは恨み言が来ると身構えていた。
「……エリーゼさん、死んじゃうの?」
「……?」
しかし、返って来たのは問いであった。
「あ、ああ……そうだが。
だから、私は―――」
当初、エリーザベトはいっせいが言葉の意味が理解できていないと考えていた。
だから、改めてそれを理解させようとしたが
「……それじゃあ、仕方ないよ」
「―――何?」
いっせいはそれを善しと言ったのであった。
エリーザベトは一瞬、いっせいが何を言っているのか分からなくなった。
「ま、待て……
今、私はお前のことを助けられるのに『助けない』と言ったのだぞ?
それをお前は何とも思わないのか?」
エリーザベトは戸惑ってしまった。
エリーザベトは何度も他者を救ってきた。
しかし、その度に救えなかった人々から怨嗟や罵倒を投げつけられてきた。
そして、何時しか彼女はこう思った。
『師の名前を出すのを辞めよう』と。
その名が己を万能と思わせ、人を必ず救わねばならない宿命を課し、人々に希望と絶望を与えるからである。
勿論、エリーザベトには「奥の手」があった。
それさえ使えば自分の命と引き替えに「奇跡」を起こせるのである。
しかし、エリーザベトはそれを使わなかった。
断じて自分の終わりはそんなものの為にあるのではないと自分の意思があったからである。
そして、何よりもエリーザベトには果たしたい「約束」があった。
故にエリーザベトにとっては己の生涯は何よりも大切なものであったのだ。
そんな己は他者に罵倒されるものだと思っていたのだ。
「だって、それだと
「……
それはエリーザベトにとっては予想外過ぎる答えだった。
エリーザベトはいっせいが何を言っているのか理解できなかった。
「エリーゼさんが死ぬなんて俺、嫌だもん」
「……何だと?」
いっせいはただ「エリーザベトが死ぬ」。
たったそれだけのことでそれは仕方ないと割り切ったのである。
「待て、いっせい。私はお前にとっては赤の他人だぞ!?
それなのにお前はそんな私が死ぬから嫌だと?
お前は両親の許に帰れるのだぞ?」
エリーザベトはうろたえた。
自分は目の前の少年を冷たくあしらったつもりだった。
それなのに少年はそんな自分が死ぬのが嫌だと言ったのだ。
たったそれだけの理由で目の前のエリーザベトを許したのである。
「うん……
本当は帰りたいけどそれでもエリーゼさんが死ぬのは嫌だ」
「なっ!?」
いっせいは己の考えを曲げなかった。
これは紛れもないいっせいの本心なのである。
そして、エリーザベトは自らの才能で彼が嘘を言っていないことも理解させられた。
「魂の錬金術師」と言う肩書が表す彼女の才能によって。
『ほう?珍しいな。
あのエリーザベトがここまで動揺するとは……
「
「ドライグ……貴様が
エリーザベトはドライグがとある人物を示唆した瞬間に怒りを漂わせた。
『ほう?どうやら、図星らしいな……
お前が今、抱いているのは明らかにお前が初めて
ドライグはそれでも構わず話を続けようした瞬間であった。
「黙れ!!よりにもよって貴様が
赤だか、白だか知らんが貴様らの下らん因縁に巻き込まれた
「エリーゼさん……?」
エリーザベトは激昂した。
エリーザベトが目に宿す物。それは憎悪であった。
エリーザベトはドライグを嫌悪していないが誰よりも「赤龍帝」と「白龍皇」の因縁を憎悪している。
『―――……そうだな。
だが、
ドライグはエリザベートの怒りと憎悪、そして嘆きは尤もだと理解していた。
そして、ドライグにとっても件の人物は未だに残る禍根であった。
「ああ、あの馬鹿のことだ!!
力がなくとも私を守るために自分のことを顧みないだろうな……!!」
「エリーゼさん……」
エリザベートは嘆きながら未だに二度と返って来ない勝手に去っていった在りし日の輝きに焦がれた。
(よりにもよって「赤龍帝の籠手」を下種に奪われるとは……!)
そして、エリザベートは言い様のない無念さを感じた。
エリザベートにとっては「赤龍帝の籠手」は複雑なものであった。
憎むべき運命であり、時に壊すべき存在であり、見守るべき物であり、そして、憧れし光輝であった。
それを盗人同然の下種に奪われたのだ。
故に偽者の存在を許せないのである。
「ドライグ……私との契約を忘れるなよ?」
『ああ……わかっているさ……
まあ、たまにはこう言う生も悪くない』
「……?」
エリザベートは忌々し気にドライグに確認を求めた。
そして、ドライグがそれを渋々、いや、今回の生もそれもまた善しと受け取った。
「そうか……いっせい。一つ訊いていいか?」
ドライグが約束を違えないことを知ると、エリザベートは今度はいっせいの方へと顔を向けた。
「……なに?」
いっせいはエリザベートのその並々ならぬ顔を見て子どもながらに気構えた。
少年の目に映った彼女の目は真摯なものであったからだ。
「お前はやはり、両親を……いや、「ひょうどう いっせい」と言う
エリザベートは改めて少年の願いが確かなものであるかを知ろうとした。
「……うん。」
少年は迷いなくそう強く頷いた。
だが、ここまではまだ当たり前の答えである。
言うなれば、これは高い所にある木の実を求める獣と同じものである。
届かないがそれはとても美味しそうだ。
だから、食べたい。
と言う誰もが抱く感想である。
「……では、そのためにどんなことでもする気はあるか?」
ここからがエリザベートが知りたかったことである。
高いところにある木の実がある。
しかし、今の自分では届かない。
ならば、その木の実に手が届くように己が変わる気があるのか。
飛ぶために翼を生やす気があるのか。
木に登れる様に前脚を腕に変える気があるのか。
木の実を落とすために知恵を働かせる気があるのか。
木そのものを倒す気があるのか。
そう言った覚悟が少年にあるのかをエリザベートは少年に問いたかったのである。
それに対していっせいは
「うん」
変わらない揺るがない意思を貫いた。
「そうか……」
それを見てエリザベートは既に決めていたが己の迷いも捨てた。
ここに黄金は赤を導くを決めたのである。
これにてプロローグは終わりです。
次回から、原作第一話に突入と言っても……
何か、直ぐに終わりそうです。うん。
そもそも本格的に原作に介入するのはエクスカリバー編からですので。