「やれやれ……
十年ぶりに弟子と出会ったその弟子の故郷を訪れて、エリーザベトは少しの因縁を感じて嘆息する。
エリーザベトが十年前に駒王町に立ち寄ったのは旧友である天界の天使長に依頼されていた聖剣のメンテナンスを行っていたためである。
そして、再びこの町を訪れたのもその聖剣が絡み、天使長の依頼が理由であった。
そのことに否応にもエリーザベトは因縁を感じてしまったのである。
「全く、よりによって「見張る者」の幹部が黒幕の可能性があるのに若いエクソシスト二人だけを送り込んだだけでどうにかなると思っているのならばとんだ無茶ぶりだろうが……
「神滅具」持ちならば未だしも……」
エリーザベトは今回の件における天界側の対応を非難した。
エリーザベトは経験したことがないが、聖書三大陣営における「大戦」は最早伝説に等しく、今回の聖剣強奪事件の黒幕はその生き残りである。
その実力は少なくとも後に生まれて来た者たちよりも一線を画すのは確実である。
その事からエリーザベトは天界が送り出した戦力は明らかに力不足だと感じたのである。
「ミカエルたちの戦争を防ぎたいと言う気持ちは理解できるが……
どちらにせよ、ここでどうにかせねば起きるだろうが……」
エリーザベトは旧友が戦力を送り込まない理由を察してはいた。
それは駒王町の特異性に存在した。
この町は悪魔たちが領地としており、その領主は現魔王の一人の妹であり、加えてもう一人、現魔王の妹が住んでいる。
下手をすれば、魔王たちが苦渋の決断で肉親の仇を見逃したとしても、悪魔たちの敵対感情が爆発しその妹達に火の粉が降り注ぎそれが火種となり、三大陣営が今まで抑え込んでいた「大戦」が再び勃発する可能性がるのだ。
その為、展開は少ない戦力だけで少なくとも悪魔陣営だけでも刺激しないようにしているのだ。
また少数戦力でも「神滅具」持ちを送り込まないのも存在自体が抑止力同然の「神滅具」持ちを出せば他の二陣営も出しかねないことを警戒してのことだと言うことも理解していた。
「……いざとなれば、私一人に責任を押し付けるか……
ミカエルの奴め、この貸しは大きいぞ」
そして、エリーザベトにミカエルが依頼したこと。
それはエクソシスト二人に協力し、いざとなれば今回の主犯を暗殺することであった。
万が一、失敗したとしてもエリーザベト一人に責任を押し付け、その後三大陣営の指導者通りの裏取引で彼女を逃がすことと言った善後策も講じてもいた。
天界にとってはこれが考えられる中で最善の方法であった。
しかし、それは実行されない可能性もあった。
「まあ、その
それはエリーザベトが失敗することはないということである。
「先ずはこの町の領主に大人しくしておくことを厳守させんとな」
エリーザベトは教会からの戦士たちとの合流地点でもある駒王学園へと足を運んだ。
「イリナ、どうしたんだ?
そんな浮かない顔をして?」
「……何でもないわ……」
エリーザベトがこの町の領主である魔王の妹との会談へと向かっている最中、二人組の白いローブを纏った少女たちもエリーザベトと同じ目的地に向かおうとしていた。
そんな中、二人組の一人が相方である茶髪の少女の様子がおかしいことに気付いた。
「だが、ここはお前の大切な場所なのだろう?
なのに、どうしてそんな顔をする?」
「………………」
茶髪の少女は相棒のその指摘を受けても気が晴れるどころか、逆に気分を悪くした。
そう。この町は少女にとっては大切な場所だ。
少女にとっては輝きに満ちた思い出の地でもある。
しかし、それでも処女はこの町が自らの使命を果たす地であると理解しながらも本心ではこの町を訪れることを拒んでいた。
主よ……これも試練なんですね……
少女は自らの心を苦しめるかつての輝かしくも暖かい思い出とそれがいつの間にか奪われたことへの悲憤と喪失感、そして、それらを思い出させるこの町に来たこと、そして自分が死ぬかもしれないと言うことをを自らの信仰する神からの試練だと捉えて祈ることで自ら奮い立たせようとした。
私はまだ死ねない……!!
心の中で祈りを終えると少女は先ほどまでの敬遠な信徒としての姿から一人の少女としての決意を持った。
もう一度、一誠君に会うまで……!!
私は……!!
「……そうよね。ゼノヴィア。
確かにここは私にとっては大切な場所よ」
「そうか……では、行くぞ!」
「うん……!!」
……この町は一誠君が帰ってくる場所よ。
だから……!!
少女は戦いに赴く。
今はこの町にいないであろう少年の為にも。
それはかつて約束を交わした少年への初恋が生んだ強さであった。
少女、紫藤イリナの髪飾りにはかつて、父の許に訪れたとある女からもらったアミュレットが光を宿していた。
それはその女が少女に気紛れに贈った女がかけた