「うぅ……クッソ、こんな事になるんならギルドで手頃な住み込みのバイト紹介して貰えばよかった……昼間の俺のバカ……。」
俺は、一人綺麗な夜空の下で昼間の自分に対して悪態をついていた。
実は俺は今ほとんど文無しに近い状態なのだ……。
そして、そもそもの事の発端は十時間ほど前に遡る。
ーーー【十時間前】ーーー
「っあー!くそぉ!なんで冒険者にしかなれねーんだよ!魔法作成の才能が特典って言うなら魔法使い適性も上げとけよっ!」
アクセルの街に来てから一時間も経たない間に現実を見せつけられた俺が、少し捻くれた心境で街を歩いていると…
目の前にある屋台があった。
その屋台の看板には、『魔道パズル 挑戦者求む!』と書いてある。
魔道パズル?なんか楽しそうだな?
「おっちゃん!一回やってみたいんだけど、ルールが分かんないからさ、ルール説明お願いしてもいいかな?」
俺が話し掛けると屋台のおっちゃんは、心良く説明してくれた。
おっちゃんの説明を聞いて見るとルールは非常に簡単なモノだった、
【ルールその一、制限時間は三十分】
【ルールその二、挑戦者側の勝利条件はパズルを解くこと】
【ルールその三、挑戦前の二十分や挑戦中の魔法の使用は認めない】
【ルールその四、このパズルには魔法が掛かっており、注意が逸れると、どこをどの様にどこまで解いたかが全く分からなくなるがこれは、違反ではない】
【ルールその五、屋台側には開始五分後から、言葉でのみ挑戦者側の注意を逸らす権利が与えられる】
【ルールその六、挑戦者側は挑戦前に初級パズルなら千エリス、中級パズルなら五千エリス、上級パズルなら一万エリスの挑戦料を払う】
【ルールその七、屋台側が負けた場合、初級パズルなら五千エリス、中級パズルなら二万五千エリス、上級パズルなら売り上げの全額を挑戦者に賞金として差しだす】
……このルールなら問題ないな、確実に大勝ちできる。
俺は、心の中で勝ちを確信した。
理由は、俺が生まれ持った才能の様なモノにある。
俺のそれは、『異常なまでに集中力を高める』と言うものだった。
最初の頃は、これを使いこなせずに自己嫌悪に陥ることもあったが、今ではそれも昔の話である。
ハッキリ言ってこれは危険だ、だがうまく使えばこの様なゲームではチート級の武器になる。
「さぁ!では、お客さん!パズルを始めましょうかね!初級、中級、上級どれにしますかね」
「じゃあ中級で」
俺は、迷わず即答した。
ーーー【一時間後】ーーー
「お客さん!あんたには完敗だ!ホレ、屋台の売り上げ、総額 五十六万エリス!持って行きな!」
屋台のおっちゃんが感心した様子で店の売り上げを全て渡してくる。
そう、俺は中級パズルをクリアした後、上級パズルに挑みおっちゃんに圧勝したのだ。
クリアした後、『少しおっちゃんに悪いことしたかも』と思ったがおっちゃんの様子を見るに、本業が別にあるのか、このくらいは気にしない程度の貯蓄があるのかするのだろう。
だから、しっかり丸々貰う事にした。
「しっかし、儲かったなー!やっぱこの金で今日の内に武器や防具を買っとくか!」
俺が先程とは打って変わって嬉々とした様子で歩いていると目の前に武具屋があった。
「お、さっそく武具屋を発見!よし、俺もこれからこの世界で冒険者として過ごすんだし武器やらを買っておくかな!おっちゃん!駆け出しでも使いやすいそこそこ良い剣はないかな?」
「おう、らっしゃい!駆け出しでも使いやすいか…、にーちゃん駆け出し冒険者なのかい?」
しかしこの街は明るい人ばっかだな、治安もいいみたいだし…。
強面の人がやや多いけど。
「ああ、俺が熟練の冒険者に見えるか?」
「いや一般人に見えてかなわねぇな!
ガハハハハハハハ!ちなみに剣の話なんだが、金は大丈夫か?そこそこ良い剣だったらどの剣でも多少値が張るが…。」
「おう!金は大丈夫!…だと思う!どんなのがいいかな?」
この後この世界の服や防具なんかも買いたいし無駄使いはできないけど…。
「うーん、どんなのがいいかねぇ…。俺としては全部買ってくれたらありがてぇんだが、にーちゃんはどんな剣が良いんだ?」
「えーと、片手で扱える長めの直剣とかないかな?出来ればあんま重く無いのが良いんだけど…。」
俺の注文を聞いた武具屋のおっちゃんは少し考えると思い出したように話し出した。
「そういえば、最近その条件に該当しそうな珍しい剣を仕入れたんだが…少し素振りしてみるか?それだったら駆け出しでも扱えるはずだ。」
「へぇ、是非頼む。」
俺がそう言うとおっちゃんは少し待ってろと言って店の奥に入っていった。
しばらくしておっちゃんが戻ってくると、その手にはまさしく俺の求めていたの長めの剣が鞘に納められた状態で握られていた。
「これなんだが、長さと重さはこのくらいで良いか?」
言いながら手渡してくれるおっちゃんにありがとうと告げるとそれを受け取る。
「おお!まさしく求めてた長さと重さだ!少し鞘から出して見ていいか?」
「ああ、かまわんぞ。」
よし!おっちゃんの了承は得た!さぁ、どんな剣なんだ⁉︎
俺が逸る心を抑えながらゆっくりと剣を抜くと、そこには黒く光る刃があった。
「どうだ?綺麗な黒だろ?そいつは黒鋼鉄と言う珍しい素材で出来ていてな、かなりの業物だぞ!その分少し値は張るがな。」
「へぇ、確かに綺麗な黒色だ。よし、これを貰う。あとは防具なんだが…剣に結構使っちまいそうだし駆け出し冒険者がよく使う装備とか無いかな?」
「ああ、それなら…」
結局この調子で使い過ぎて昼食を食べた辺りからほとんど文無しである。
そして今…俺は、月や星が綺麗な夜に馬小屋の外で寝転がっている。
夕方頃、ギルドで新米冒険者は馬小屋での寝泊りが普通と聞いて急いで牧場に向かったが、既に馬小屋は満室だった上にバイトもして無い文無し新米冒険者を住まわせてやる理由が無いと断られた。
どうしよう、まだ十時だしギルドも空いてるだろうから、酒場に行って気を紛らせてこようかな……。
そういえばあの剣素振りしてなかったな。
あまりの暇にそんな取り留めのないことを考えながら馬小屋の前でゴロゴロしていると、どこからともなく一人の男が現れ声を掛けてきた。
「よーう!こんなとこで何してんだ?俺か?俺はなー、昔住んでた馬小屋の様子を見に来たんだよ」
その男は俺にここにいる理由を聞いたかと思ったら、いきなりの自分語りを始めた。
よく見ると顔が赤い…恐らく彼は、酔っ払った冒険者だ。
歳は、俺と同じくらいか少し上?
「ん?どーした?俺の顔になんか付いてるか?なんか付いてんなら教えてくんな……」ドサッ‼︎
そこまで喋って彼は倒れた。
「え…お、おい!おいっ‼︎アンタ‼︎しっかりしろ!おいっ‼︎」
俺は、突然倒れた男に必死に呼びかける。
すると、
「すかー…すかー…」
男は寝息を立てて気持ち良さそうに眠っていた…
…コイツ起きそうにねーな、はぁ……しょおがねぇなぁ‼︎
俺は男を背に抱えると荷物を持ってギルドに向かった。
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ギルドにつくと近くに居たくすんだ金髪の戦士風の男に声をかける。
「なぁアンタ、コイツの家か宿しらない?」
俺が声を掛けるとその男は驚いた様に声を荒げた。
「ん⁉︎そいつ、カズマじゃねーか‼︎どーしたんだ⁉︎」
カズマ?コイツが⁉︎あの魔王を倒したって言う⁉︎案外冴えない顔してるんだな。
まぁ、知り合いの様なのでとりあえずコイツに押し付けるか…。
そんな考えが浮かびもう一度目の前の男に話し掛けようとすると、今度は男の方が先に話し掛けて来た。
「あぁ、アンタはカズマの家が知りたいんだったな。そいつの家は街外れの屋敷だ。きっと今頃、紅魔族の爆裂娘が心配してる。出来るだけ早く連れてっていってやってくれ」
俺が連れていく事に決まった様です……
ってか街外れって微妙に遠いじゃねーか!
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「はぁ…はぁ…、っやっと…着いた…」
冒険者になったとはいえレベル1の俺には、男をおんぶして街外れまで行くのは、苦行に等しい行為である…。
しかもこいつ魔王を倒しただけあって見た目の割に筋肉があるから重いんだよな。
コンコン
俺が目の前の大きな屋敷のドアを強めにノックすると、さほど経たずに玄関が開き屋敷の中から幻想的な紅い目をした女の子が出たきた、そう、俺が今日の昼前に道を聞いた彼女が。
「遅いですよ!カズマ‼︎もう少しで閉め出すとこでしたよ‼︎ってあれ?」
「や、やあ…」