睦月型のお兄ちゃん!!!   作:アロンダイト

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皆さん、お久しブリーフ……

社畜に身をやつし、なろうとこっちを行ったり来たりしながら細々と生きてまいりました

今更投稿するか迷いました。映画の艦これ見てから自分がイメージしてた艦娘像が木っ端微塵に破壊されたのでモチベが下がったのもあります

まっ二次創作だし、関係ねっか!

ということで今更ながら投稿しました。本当は間にもう二話くらい日常回と伏線回挟む予定でしたが急遽変更、完結させるのを重視して頑張って書いてます、話の内容忘れた方は是非第一話から読み直してください(おい

二年のブランクから復帰して気がついたら元号すら変わりましたが、皆さん今後ともよろしくお願いいたします







なお、次回投稿は未定ですいつになるかもわかりません、痛いです、石は投げないで石は


逆落とし

呉鎮守府 駆逐艦寮

駆逐艦三日月の部屋

 

「という事で、神崎さんを尾行した結果、神崎さんはロリコンの可能性は拭えないですが、彼女は川内さんの可能性が高いことが発覚しました!」

 

「ウム、皐月軍曹、報告ご苦労!」

 

「ハッ!光栄であります!」

 

今日は輸送船の護衛を予定していたのだが、深海棲艦の出現により延期となり、訓練所も今は清掃で使用禁止なので突如一日休みとなった第三護衛隊は夕飯までの時間、いつものように三日月の部屋にお菓子片手に集まっていた

そこで話題に上がったのは皐月と三日月が神崎を一日付け回した結果の報告なのだが、皐月と文月が悪ふざけしながら報告をするなか三日月はチョコレートを齧りながら考えていた

 

(神崎さん……川内さんと凄い仲よさそうだったなぁ……)

あの時の様子を思い返すと脳裏をよぎるのは腕を組んで仲良く街を歩く川内と神崎の2人だ。思い返すといつもより神崎の笑顔が多かった様な気がする、なんだか身体の底がムズムズする

 

「……ーい。おーい、みっちゃーん」

 

「ハッ!?な、なに!?」

望月に呼ばれて三日月は思考の底から戻ってきた。そして後悔した

 

「このように!三日月軍曹は失恋のあまり毎日物思いに耽るあまりボーッと可愛らしい顔を晒す惨状であります!」

 

「なるほど!ますます説得力が増した!」

皐月と文月のニヤニヤ顔を見て、自分が槍衾に上げられてることを察した三日月

 

「し、失恋なんてしてないから!皐月ぃー!」

謎の羞恥心から顔を赤くし、枕を皐月に投げつける

 

「フハハッ!その程度!」

 

「このぉ!」

枕を華麗に避けた皐月だが、風評被害を受けた三日月は止まらない枕を囮に皐月の腰にタックル、そこから皐月の服の中に手を突っ込んだ

 

「嘘つきはくすぐり地獄の刑だ!」

 

「あひゃひゃひゃひゃ!!や、やめてぇ!私は、む、無実で、うひゃひゃひゃ!」

 

「これは復讐だ!乙女の尊厳は地球より重いんだ!それを嘘で傷つけられたなら、私は、さっちゃんが、泣くまで、くすぐるのを、やめない!」

三日月は手を止めるどころか更に攻勢を強める、皐月は笑いすぎて酸欠寸前だ

そんな二人をよそに望月と文月はお菓子をモソモソと食べ始める

 

「しかし噂の神崎さんの相手は川内さんかぁ」

 

「まぁ川内さんはかっこいいし、スタイルいいし、年も近そうだし、モテるはずだよねぇー」

 

「艦娘と警備隊員の道ならぬ恋、浪漫だなぁ……」

 

「神崎さんって結構規則しっかり守る固い人だと思ったけど、存外大胆だよねぇー」

 

「でも、夜戦にしか興味なさそうな発言してる川内さんも隅に置けないないよねぇ、案外やることやってんだなぁ」

 

「そうだねぇ、私としては望月の中の私の印象ってそんなだったのが意外だなぁ」

 

「だって川内さんは戦闘狂の夜戦バカだけど、意外とギャップで乙女チックな思考回ーーー」

そこで望月は思いとどまった。今、私は文月と話しているのか?

 

お菓子とおしゃべりに夢中で気づかなかった。くすぐられていた皐月もそれに抗議する三日月の声も聞こえてない

 

冷や汗を垂らしながら振り向くと、そこには

 

「来ちゃった♡」

 

雑誌のモデルさんのようなまばゆい笑顔を浮かべた川内がいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呉鎮守府 提督執務室

 

「さて、神崎、呼ばれた理由に心当たりはあるか?」

定期訓練の射撃訓練を終えた神崎は現在、提督に呼び出されていた

 

心当たりはある。最近鎮守府内に流れる噂の事だろう

 

「私が川内さんとお付き合いしているという噂の件でしょうか」

 

「その通りだ。艦娘は人類の存亡に関わってくる人型戦略兵器。色恋沙汰で余計な心配をかけてはならないのだ、それに警備隊に入隊した際の規則は覚えているな?」

 

「はい!鎮守府警備隊規則第三条、艦娘との不必要な接触、ならびに不純異性交遊になるような行為の禁止はよく存じております!先の噂は全くのデマであります!」

おそらく前の川内との買い物風景を鎮守府内の誰かに見られたのだろう。仲睦まじく腕を組んだところを見れば誰でも恋人と誤解するのは当たり前だ

 

だがそれはどこまで突き詰めても誤解だ。当人同士がその気が無いのに付き合っているなんて事は全くの事実無根であるのだ

 

「……悪意のある噂だ、つまり貴様は、呉鎮守府所属、川内型巡洋艦娘一番艦、川内とは恋人、またはそれに準じた関係ではないと、そう言いたいのか?」

 

「ハッ!その通りであります!」

 

「匿名で貴様と川内が仲睦まじく服屋やアクセサリーシャップを冷やかしたり、貴様がよく出入りする孤児院に一緒に居るところを見た、という報告もある、それでも違うのか?」

 

「はい!その日は川内さんとは約束した訳ではなく、たまたま非番の彼女と街で出会い、予定のなかった川内さんが私の行き先についていくという本人たっての希望であり、決して警備隊規則第三条や倫理観に反するような事はしておりません!」

 

「…………」

 

「…………」

無言が提督室を包む。藤田提督のカミソリのような鋭い眼光と見つめ合う。人斬り同士の果たし合いの果てか、銃に手を掛けたガンマンのようにお互い見つめ合った

 

「…………あらかじめ川内に聴取をした、どうやら誤解が無かったようだな」

よかった、どうやら川内も似たような答弁をしたようだ

 

ただ裏を取るだけでこの緊張感。これが日本の公僕の責任である

 

「だが、疑いが全て晴れた訳ではない。いいか艦娘、特に川内には手を出すんじゃないぞ」

 

「はい!以後、気をつけます!」

 

「今川からおおよその事情は聞いてる。貴様が馬鹿な事を考えん限り、今のままで良いと、ワシは思う。だが新米な分、貴様は思った以上に周りから注目を集めているんだ、以後は自重するように」

 

「はい!申し訳ありませんでした!」

いくら覇気があろうとも歳には勝てないのか、少し疲れたような顔で藤田提督はため息を吐き、椅子に座りなおす

 

「話は以上だ、下がって」

藤田提督がそこまで言ったその時だ

 

ウゥゥゥゥーーーーーーーー

 

「空襲警報!?」

それと同時に藤田提督の机の電話が鳴り響いた

 

「私だ、この警報は、何ぃ!?敵の侵入を許しただと!?」

藤田提督が叫ぶ、その時窓の外を何かがよぎった

 

神崎の眼に映ったのは見間違う事のない、深海棲艦の艦載機だった

 

「危ないッ!」

艦載機が通り過ぎた以上、後に来るのは機銃掃射か爆撃、この場合は後者だった

 

提督執務室を直撃した爆弾は屋根裏の防御用特殊合板で炸裂。爆発した圧力と爆風は容赦なく建物を揺さぶり執務室を粉砕した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空襲警報からの爆発音は当然駆逐艦寮にも響き渡った

 

「何!?爆発!?」

律儀に頭を守った体勢のまま皐月は叫んだ

川内からのくすぐりのお仕置きでぐったりしていた望月もここ数ヶ月で叩き込まれた軍人精神からか頭を守る体制で第二派に備えていたが、それが無いとわかると状況把握に動き始めていた

 

「いいや、空襲みたい、あの方角は……」

 

「司令部がある方……」

そのとき、部屋に備え付けられた非常用電話が鳴り響いた

部屋の代表として三日月が受話器を取った

 

「はい、駆逐艦三日月です。はい…はい、わかりました。装備を持って一番埠頭で待機します」

三日月は受話器を戻し、振り向いた

 

「鎮守府にいる艦娘全員に出撃命令です。通常武装で一番埠頭にて待機との事です」

 

「敵が浸透してきたのかい?」

 

「詳細は不明ですがそのようです。それと海上での指揮は川内さん、あなたに一任すると、提督も後から合流するそうです」

 

「……オッケー、任せて。十分後には一番埠頭に集合!別れぇ!」

 

「「「「了解!」」」」

さっきまで女子会で戯れていた雰囲気は無くなり、凛々しい軍人の顔つきで四人は川内に敬礼した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぐぅ、くそっ……」

神崎は両腕が奇跡的にある事を確認し、続いて胴体、両足も無事なのを確認し、痛む身体を慎重に起こした

 

「好き勝手やりやがったな……」

辺りを見渡すとアンティーク調のお洒落な洋室はすっかり瓦礫の山と化していた

 

「提督ッ!しっかりしてください!」

そんな瓦礫の山に藤田提督が埋もれているのに気づいた神崎はすぐさまかけより、提督の上の木材をどかした

 

「ワシは、大丈夫だ……」

額から血を流しつつも、藤田提督はさらに眼光を鋭くさせ、神崎を睨んだ

 

「早くここを離れましょう、第二派が来る前に」

藤田提督に肩を貸し、瓦礫をかき分けながら部屋から廊下と思われる空間に出る

 

崩壊した廊下から眺める限り、爆撃を受けたのは鎮守府司令部の他に海自のレーダー施設や艦艇が中心のようだ

 

そしてはるか遠く、第一埠頭の側の海面に六人の少女が立っているのが見えた

 

(三日月!)

一瞬だが、軍事施設には似つかわしくないセーラー服のような服と何より海の上に立つなどという非日常的な光景だけで艦娘というのがわかった

 

(無事だったか……よかった)

心の中で安堵しつつ、提督を医務室へ運ぶ

 

たどり着いた医務室は既に怪我人でいっぱいだった

 

「木下軍医!提督を頼む!」

 

「わかった!」

木下軍医に提督を預け、窓の外を見るが第一埠頭は見えなかった

 

「離せ!ワシは平気だ!」

 

「ダメです提督!それほどの血を流しては、治療も無しに動かないでください!」

窓から目を離すと木下軍医と藤田提督がもみ合っていた

 

「艦娘には人間の指揮が必要なのだ!でないと戦闘どころではない!ワシが、行かねば、ぐぅ!」

木下軍医を振りほどこうとした矢先、貧血か、それともそれ以外の要因か、藤田提督が片膝をついた

 

「無茶です!この身体では指揮所に着く前に死んでしまいます!」

木下軍医を手伝うように神崎も藤田提督を抑える

 

「指揮を……誰かが、導いて……羅針盤を……回、し……」

そこで藤田提督の力が抜けた

 

「提督、提督!?」

 

「落ち着け、脈はある。意識を失っただけだ、オペ室に急げ!」

 

「よかった」

手術室に運ばれる藤田提督を眺め、神崎は安堵の息を吐いた

 

気持ちを切り替えた神崎はすぐさま動き出した。野戦病院のようになりつつある医務室を飛び出して埠頭へ走る

 

(藤田提督は言っていた。艦娘を導くと、艦娘は単体では何らかしらの不都合があるんだ!)

そうでなかったら藤田提督も重傷を押して立ち上がろうとしなかっただろう、つまり藤田提督が治療も受けずに戦場に行こうとしたのにはそれなりの理由があると言うことだ

 

そして先程出撃する三日月達の姿を見た、今日の鎮守府はメンテナンスと長距離遠征が殆どであり、残っているのは予定が急遽空いた第三護衛隊と秘書艦のみ、つまり

 

(なんてこった、顔見知りが全員鉄火場の中かよ!)

神崎は走る速度を上げる。たどり着いた埠頭は海自の船の多くが撃沈されているが、その中でも一隻、提督専用の哨戒艇が残っていた

 

「よし、これで……」

 

「止まれ!」

船に乗り込もうとした直後、静止の掛け声と共に響く金属音、それはアサルトライフル、それも鎮守府陸戦警備隊の正式採用するライフルのコッキング音と非常に似ていた

 

「……島本」

 

「神崎、どこに行く気だ、その船で何をする気だ?」

険しい顔でライフルを油断なく構え、こちらを睨み付ける島本、神崎は一触即発の島本を刺激しないように両手をあげた

 

「ちょっと海釣りにでも行こうかな、と」

 

「しばくぞ」

 

「……第三護衛隊を援護してくる、見逃してくれ」

 

「ハッ!俺に見逃せってのか!?提督の船を無断でパクって、なおかつ命令違反に任務放棄、俺たちの仕事は艦娘のケツ追い回すんじゃなくて、瓦礫の下敷きになってる人間を助けることじゃないのかよ!いい加減にしやがれよ!」

島本は本気の怒鳴り声を上げた

 

「艦娘は世界を深海棲艦から救う切り札だ!俺たち人間に出る幕は無いって言ったよな!お前みたいなやつが出向いても、魚の晩飯が増えるだけだ!いい加減現実見やがれボケ!」

それだけ一息で言うと島本は肩で息をしながらライフルを改めて構え直した

 

「今なら見なかったことにしてやる、誰にも言わない。だから、船から、降りやがれ」

一言一言、怒気を孕ませながら喋る島本、安全装置はとっくの昔に解除済み、引き金を後数ミリ押し込むだけで放たれた7.62mm弾頭は正確に神崎の身体を貫くだろう

 

「…………」

 

「なぁ、おい。口を落としたまったのか、石化の呪いでも食らったのかよ、早く降りて任務に戻るって言いやがれ!」

 

「…………島本」

 

「あぁ?」

 

「お前、いいやつだな」

 

「なんだ気色悪りぃ」

 

「お前はいいやつだ。できればずっと友達でいたかった。お前が相棒でよかった、だからこそ、お前は今すぐここから去ってくれ」

 

「なに眠たいこと言ってんだよ」

 

「鎮守府を爆撃した飛行機、あれは東京湾決戦で見たことある。あれはいわば観測機だ、深海棲艦の戦艦や重巡が発射する観測機、アレに爆装したタイプだった」

 

「だから何だってんだよ!」

 

「近くに戦艦か重巡がいるってことだ」

 

「憶測だ、見間違いだろ」

 

「島本聞いてくれ、提督は艦娘を導くと言っていた。瀕死の重傷を負いながらも、艦娘達のところへ行こうとしていたんだ、つまり艦娘には外部からの力が必要なんだ!」

 

「うるせぇ!そんなの俺たちに関係あるかよ!」

 

「島本!ここが落ちたらそれこそまた東京湾決戦の大惨事が」

直後、火薬の弾ける音と共に神崎の右頬を弾丸が掠めていった

 

「今のは相棒だったからサービスした、次はねぇぞ!神崎ぃ!」

ACOGサイト越しに正確に神崎の頭を狙う島本、その目は本気だ。たとえ相棒でも次は眉間を狙って撃つだろう

 

「島本……」

 

「……お前は人間だよな、そんなにあいつらのことが大事か?あの艦娘が!世界を守るのは俺たちの仕事だった!なのにそれを横から現れたよくわからんメスガキどもが奪っていった!悔しく無いのか!神崎!」

島本の悲鳴は悲痛だった、それは世界中の軍人が抱えるわだかまり。喉に刺さった魚の骨と同じ、ほっといても害はないが、ほっとくといつか骨が脊髄に達して死を招く、その死は軍人としての自分のプライド、仁義、いきなり自分が無力になったことの絶望感、様々だ

 

「……悔しい悔しくない以前に、俺は、誰にも死んで欲しくない。三日月ちゃんにも、川内さんにも、島本、お前にもだ」

 

「だからテメェは行くのかよ、話聞いてなかったのかよ!」

 

「それでもだ!お前は艦娘が居なかったら、同じ理由で武器をおろしたか!?諦めたか!?」

その言葉に島本は揺れた。彼の中の軍人としてのプライドはまだ燻っていた

 

「自分の半分も行ってない歳の女の子に武器持たせて、戦わせて、自分達は後方で現実逃避して仲間割れ!恥ずかしくないのか!?」

 

「黙れッ!俺だって、俺だってなぁ!」

銃を握る力が強いのか、島本の手が震えだした

 

「俺は艦娘達が勝つのを信じてる!だから俺に飛んでくる弾はない!あるはずがない!」

 

「うぅるぅせぇえええええ!!!」

ついに堪忍袋の尾が切れた島本はライフルの引き金を引いた

雷管を叩かれ、燃焼したガンパウダーは弾頭を押し出し、ライフリングにより加速された銃弾は人間の目には不可視の速度で神崎へ向けて飛翔

 

対する神崎は人知れず賭けに出ていた。島本が叫んだ時点でしゃがみ、最初の三連射を回避していた

島本が持ってるのは八九式小銃改、セレクターは3点バーストだったのはコッキング後の微細な操作で確認済みだった

 

島本は元海上保安官、対する神崎は元陸上自衛隊の特殊部隊、眉間に銃を突きつけられたときの対処法というのは神崎の方が一枚上手だったのだ

 

しゃがみ、左へそのまま転がる、照準を調整した島本が追いかけるように三連射、理不尽な怒りと溜まっていたフラストレーションのストレスからか、狙いは非常にお粗末だった

 

太腿のホルスターから抜いた拳銃を転がりながら乱射。銃弾のほとんどはあらぬ方向へ飛んでいったが一発は島本の脇腹、もう一発は八九式小銃改に命中した

 

「……ぐぅお!」

射撃が止み、島本が崩れ落ちた

 

「島本ッ!」

 

「来るんじゃねえ!クソが!」

壊れた小銃を杖に、島本は立ち上がり、腰にぶら下げた救急キットが入ったポーチを引っ張り出す

 

「こんな、重傷じゃ…盗難された、船なんて、追えねぇな!くそったれ!」

 

「島本、お前……」

 

「……神崎、俺は、間違ってたのかな。俺は国民を守るヒーローになりたいわけじゃなかった。でもこの命は日本国民に、捧げる覚悟はあった、それを、横から艦娘に、盗られて……」

島本は泣いていた。銃創の痛みもさることながら、自身の不甲斐なさや使命感、あらゆるものに板挟みになりながらまるで可愛がられていたのにある日突然捨てられた子犬のようにビクビクしながら静かに泣いていた

 

「……お前やっぱいいやつだよ。クソ真面目」

 

「……うるせぇロリコン」

 

「ロリコンじゃねえ!」

 

「黙れ!いいからちゃっちゃっと片付けて戻ってこい!そしたら……飲みにでもいこうや」

 

「おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皐月、右!」

 

「はいよぉ!」

三日月の掛け声と共に皐月は水上で高速ターンを決め、後ろから忍び寄った深海棲艦に主砲を向けた

 

「沈んじゃえッ!」

自己暗示のように叫び、放たれた砲弾はイ級駆逐艦の顔と思しき部分に直撃した

 

「ナイスだよ!」

そこへ颯爽と現れたのは川内と望月、文月の三人。相対していたイ級駆逐艦を撃滅し、援護に駆けつけたのだ

 

「一斉射撃!テェッ!」

 

「当たって!」

 

「うおりゃ!」

川内、文月、望月の順に叩き込まれた砲弾はイ級のボディに次々と命中、爆発と共にイ級の身体に大穴を開け、ついには爆発し海の底へ燃えながら沈んでいった

 

「やったあ!」

 

「これでひと段落だね」

川内がため息を吐き、辺りを見渡す

 

会敵したのはイ級三隻、立ち上る煙は三つ、敵は全滅しただろう

 

(イ級は空爆用の航空機を持たない、ならばあの爆撃を行った艦は別にいるのか……厄介だな)

 

「三日月…平気……?」

 

「だ、大丈夫、まだやれます」

弥生に手を貸してもらい、何とか持ち直した三日月。彼女はイ級の待ち伏せを受け、駆逐艦三日月は序盤に直撃弾を喰らっていたのだ。服や艤装の一部に被害が出ていた

 

「無茶だけはしないでね、自己診断プログラムの状態は?」

 

「小破判定が出ました、まだやれます」

 

「そう、じゃあ後は進む方角だけど……」

 

「提督、遅い……」

そう彼女達は提督の到着を待っていたのだ

 

艦娘と提督は絶対に共に戦場に立たねばならない、そうでなければ広大な海の上で深海棲艦と戦うなぞ不可能なのだ

 

「とにかく待ってみよう。あの藤田のオヤジが来ないはずないもん」

 

「そうですね、来ないはずがない」

三日月が言い聞かせるようにそう言った

 

「これは提督の奢りでパフェかな」

 

「あたしゃステーキがいいな」

 

「もっちー太るよそんなじゃ!」

 

「太りませーん!艦娘は永遠に太らないでーす!」

 

「そう考えてる時点で乙女として終わってるよ!」

皐月と望月がじゃれ合う中、双眼鏡で鎮守府の方を覗いていた文月が

 

「提督の船が来たよ!」

 

喜ばしいニュースを伝えた




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