八幡くんの異世界無双記   作:カモシカ

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七話 規格外

「…………うわぁ」

 

【転移魔法】で跳んできた俺を待っていたのはモンスターの群れ。それも伝令の言葉とは違い千や二千の数ではない。だがしかしそれもそのはず。どういう原理なのかは知らないが、こうして戦場を見ている間にもモンスターは増え続けているのである。

 

「お、おい!援軍はまだか!」

「さっきハチマン様に連絡が行った。直ぐ向かってくれるそうだ」

「そうか。試験を見たときは恐ろしかったが味方なら頼もしい」

 

……えー。何これ。何で俺こんな期待されちゃってるのん?そういうのほんとやりにくい。というか王都の門の辺りまで魔物来ちゃってるし。しかもまだ一軍すら到着してないし。戦ってるのはただの門番だと思われる。

 

「……【高速思考】【並列展開】【自動防御】【自動再生】【身体強化】【武具召喚】――《神速》」

 

【高速思考】と【並列展開】を使用してスキルを多重に展開する。【身体強化】を使って身体能力を底上げし、【武具召喚】によって片手剣を二本召喚。そのまま《神速》を使って、上空から門より少し離れた位置に突っ込む。

 

「【魔法付与(エンチャント):黒氷】――《カース・オブ・フリージング》」

 

【魔法付与】を使って両手の剣に【氷結魔法】と【暗黒魔法】を付与する。《神速》によって光速となっている俺はひたすら剣を振り回す。数が多いお陰で適当に振ってても当たる。

相手の血液の一部を凍結させる魔法を【暗黒魔法】と組み合わせることで大幅に強化した。具体的には斬った相手の水分全部が凍るようにした。我ながらえげつない。

 

「お、おい!ゴブリン共がどんどん死んでってるぞ!」

「き、きっとハチマン様だ!」

「やべえ。俺の【探知】でも追えない速さで動いてるぞ。ありゃまじで悪魔かもしれんな」

「お、おい!聞こえたらどうすんだよ!」

「そうだぞ!噂では王女様方のお気に入りらしいんだ。あんまり変なこと言ってると消されるぞ!」

「あ、ああ。すまん」

 

…………聞こえてるんだよなー。後ろで何か起きたとき直ぐ駆けつけられるように【地獄耳】を展開してるから丸聞こえなんだよなー。まあ良いけど。

 

そんなこんなで約三分経過。やっと第一軍が到着。しかしそのころには魔物が生まれる速度が倍以上になっており、俺が魔物を倒す速度と新しく魔物が生まれる速度が拮抗してしまった。結果数の差が浮き彫りになる。基本的には魔物のレベルはガイル王国兵より高い。魔物としては最下級のゴブリンでさえ平均レベル15だ。しかし魔物というのは余り数も多くなく、総じて知能も低いため騎士達も戦えていたのだ。

しかしそこに来て人間側の最大の利点である数の優位性が失われたのだ。当然、騎士達の士気もだだ下がり。俺の平穏のためにもさっさと俺が倒してやろうと広域殲滅魔法を使おうとするも、良く考えたらここで俺が広域殲滅魔法を使ったら森ごと吹っ飛ぶ訳で。そうなったらガイル王国の産業にも大ダメージ。即ち俺の平穏が崩れ去ると言うわけである。よろしくない。それは大変よろしくない。ならばどうにか騎士達に戦って欲しいものだが……

 

「皆、聞いてくれ!」

 

いきなり、戦場に凛々しい声が響いた。絶望しかけていた騎士達は一斉に上を向く。しかし俺は魔物をちぎっては投げを繰り返している。まあ今俺が手を休めたら魔物が王都に雪崩れ込むからな。

 

「今、ここには大量の魔物が居る!これまで見たことも無い夥しい数だ!我々だけでは勝利は覚束ないだろう!だが思い出してくれ!我らの後ろに在るものを!守るべき者を!」

 

金髪の爽やか系イケメンにして俺が試験の時剣を受け止めた騎士、即ちガイル王国第一軍司令官。その名はハヤト・ハヤマ。俺と同じ17才でありながら一軍を率いるリア充。いや今はリア充関係ないわ。

 

「家族を!友を!恋人を!故郷を!失う訳には行かない!さあ、剣を持て!杖を掲げろ!弓を弾け!馬を駆れ!我らが力を、見せつけろ!」

 

落ち込んだ戦意を回復させるため、ハヤマが行った演説。その内容は単純で、噂に聞く彼の理知的な雰囲気とはかけ離れる。しかし単純だからこそ、心に響くものがあるわけで……

 

「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉお!」」」」」

 

けっ、アホらし。全く、何でそんなことで熱くなれるのかねぇ。俺にはまったく理解できそうに無い。むしろ嫌悪するし悪寒がする。

……だが、まあ。異世界で位、バカやったって良いだろ。こっちでは今んとこ腐らなきゃいけねーよーな。そんなつまらんことはされてない。だから、まあ。受けた恩の分は働くというか。まだどうにも素直になれねぇが、まあ。―――いっちょやるか。

 

「おい!ハヤマ!」

 

ゴブリンどもが来れないように森全体を【土石魔法】を使って壁で覆い、【飛行】を使って最短距離でハヤマの元へ向かう。

 

「ヒキガヤ!……さん」

「ヒキガヤで良い。それより、俺が兵を増やす!それなら魔物達(クソども)殲滅できるな!?」

「あ、ああ。後一万五千ほど……いや、一万居れば勝てる。だがそんなことが出来るのか?」

「愚問だな。俺はお前より強いんだぜ?お前こそ俺の兵に功績奪われるなよ」

「はっ、愚問だな。俺は君より指揮は出来るんだ」

 

ハヤマとの打ち合わせもそこそこに。俺は図書館で学んだ知識、【土石魔法】の魔法使いが使うゴーレム。それの改造版を用意する。

 

「【魔力強化】【魔力自動回復】【詠唱破棄】【魔具召喚:魔核石】――《クリエイトゴーレム:沈黙の土石兵団》」

 

【土石魔法】魔法使いは己の魔力を大地に注ぎ込み、周囲の岩石を操ってゴーレムを作ると言う。だがそれには魔力が届く範囲である必要がある。ここに今回のミソがあるのだ。俺の【魔具召喚】は魔力を持つか、何らかの魔法やスキルが組み込まれた物を召喚するスキルである。そして今回召喚したのは術者の魔力を貯めておける『魔核石』という魔具である。ゴーレムが魔力で動くなら、この『魔核石』を核にしてやれば動くのではないか。実戦でははじめて使うが、ミニチュアサイズのゴーレムでやったら動いたので大丈夫だろう。

第一軍の兵数は一万二千。対して魔物共は報告された数を大きく上回り現在二万程。ハヤマは一万で何とかするとかほざいてたが無理だろ。というわけでゴーレムを三万体ほど創った。結構ごっそり魔力が持ってかれた気がする。まあ回復するんですけどね。

 

「ふぅ。これで行けるか、ハヤマ」

「………………………」

「カシャッ……ハヤマ?」

「……はっ!」

 

ぽかーんとしていたハヤマの顔を【魔具召喚】で召喚した記録石で撮影してからもう一度声をかける。写真は後で王都で売りさばく。

 

「ヒ、ヒキガヤ。俺はどうやら疲れているようだ。なんせゴーレムが大量に見えるんだから。あはは、三万くらい見えるよ。こりゃ本格的にまいってるな」

「安心しろ、ハヤマ。あれ全部俺の創ったやつだから」

「……本気で言ってるのか君は!!!」

「うぉっ」

 

いきなりハヤマが喚き出した。レベル差が七、八十はあるはずの俺をがくがく揺さぶっている。

 

「あれだけのっ!数のっ!ゴーレムなどっ!世界中の魔法使いをっ!集めてもっ!創れるわけがっ!無いだろうっ!」

「んなっ、ことっ、言われてっ、もっ……つーか、離……せっ!」

 

強引にハヤマの腕を振りほどく。あいつほんとはレベル八十くらいじゃねえの……

まあともかく。殲滅、開始。




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