※修正中。幼馴染を守っていたら、少しだけ人間卒業していたらしいです。 作:奈々歌
読みずらい場所があるかもしれませんが、どうかよろしくお願いします_(._.)_
それではどうぞ!
「不幸」について考えたことはあるだろうか?
「不幸」とは簡単に言えば「幸福」ではないことをそう呼ぶだろう。
不幸には明確な定義や形、存在などはなく、不幸を感じるのは時と場合、そして人それぞれの物差しで決まることが多い。
大きな不幸を経験した人が他の人の小さな不幸を聞いたり、見たりしても「それくらい」と不幸として感じることがないように。
そしてこの世の中には二種類の人間がいる。
一つは多大なる「幸」を受け、優秀な功績や社会的な大成功を収める人。もう一つは反対に「幸」ではなく「不幸」を背負い、せっかくの才能を発揮出来ないでいる人。あなたはどちらに入るでしょうか?
彼は後者を選びました。いえ、選ばされた、の方があっているかもしれないですね。でも、彼は後悔していません。彼女達の笑顔が見られるのなら――。
これは「負の業」を持つ少女達と出会い、救う為。奮闘する普通な少年のお話――。かな?
†
春先のまだ少し肌寒い早朝。少年の一日の始まりは大体いつも同じだ。
枕元に充電器を挿したまま放置している携帯から起床用に設定していたアラームではなく、着信を知らせるメロディ音が鳴り出す。
少年は寝ぼけ眼を擦りながら、手探りで携帯を探し出すと、着信画面に照らし出されている相手の名前を確認することなく電話に出ていた。
確認なんてしなくてもこんな朝っぱらに電話を掛けてくる人物なんて『あの子』しかいない。そう思いながら少年は彼女の名前を口にしていた。
「今、何時だと思う? 杏」
「おはよう、蒼ちゃん! 今日もいい天気だね!」
「杏、俺の話聞いているのかな?」
寝起きのため、ガラガラの低い声で電話に出ていた少年とは対照的に、電話の向こうからは可愛らしく、曇りのないよく通った元気な少女の声。
現時刻は五時。まだ日も昇り始めて間もない早朝だというのに、テンションの高いこの子は俺の家の隣に住んでいる「花小泉 杏」。小学校からの幼馴染だ。
そして蒼ちゃんと呼ばれていた少年の名前は「千歳 蒼一」。低血圧のため、杏の朝のテンションが少し辛いです。
蒼一は寝癖がついている頭をぽりぽりと掻きながら苦笑を浮かべていると、彼女が早起きだった理由に大方の検討がついていたからか、杏に尋ねていた。
「今日は随分と早起きだな。やっぱり初日、だからか?」
季節は春。春と言ったら入学式。ということで今日から俺も杏も高校生となる。学校は別々だけれど。
「うん! 私、今日すっごく楽しみだったから目が覚めちゃったみたいなの。だから早く登校してみようかなって。それで今日は私一人で行ってみるから安心してっていうことで電話したんだけど………」
中学に入学した時も杏は張り切っていて、今みたいに早起きしていた。あの時は早く行こうと手を引かれ、道に迷い、遅刻ギリギリだったのはいい思い出だ。
「そかそか。杏も立派になったな。じゃあ俺はお言葉に甘えて二度寝するからよ」
「うん、お休み! あ、でも学校に遅刻しないようにね? それじゃ、私は行ってきます!」
「あいよー。『気を付けて』、な」
「はーい!」
蒼一の強調した言葉の意味を理解しているのかしていないのか分からなかったが、杏の元気な返事を耳に残しながら通話は終了した。
携帯を枕元に再び放り投げた後、二度寝すると言っていたはずの蒼一はベッドから起き出し、体を伸ばす。そして大きな欠伸を一つしつつ、自室を後にする。
「さてと、身支度しますか………。三十分くらいしたら杏の母親から電話来るだろうし………」
そんなことを一人呟きながら、一階へと続く階段を降りて行く。朝食にと適当に見繕ったパンや昨日の夕食の残りなどを食べると、食器を流し台に置き、洗面所で寝癖を直していた。
蒼一が学校の制服に着替え、最後に鞄の中身を確認し出した頃。ベッドに置いたままにしていた携帯が音を鳴らし小刻みに震え出した。手に取り着信画面を確認すると、表示されていた件名は「花小泉家」。
「あれ、意外と早かったな。まだ二十分しか経ってないけど―――」
窓際の縁にある小さな置時計で時刻を確認すると、杏が「行ってきます!」と出て行った報告の電話からまだそんなに時間は経っていない。
入学式の日からある意味絶好調だな、と内心思いながら、蒼一は電話に出ていた。
「おはよう、蒼君。杏ったらもう五回も戻って来ちゃって………。いつも通り、お願い出来るかしら?」
「予想はしていたので、今から向かいます」
電話の向こうは杏の母親。「いつも通り」と言っていたのには訳がある。
俺と杏が知り合ったのは、俺が隣に越してきた小学校の頃。確か五年生の半ば位だったはず――。その頃から俺は杏と一緒に学校に通うのが当たり前だった。
何故かと言うと………。まぁ、後々理解して頂けるだろう。
携帯を制服のポケットにしまうと、玄関のドアを施錠し、蒼一は家を出たのだった。
†
隣の家まで来ると、表札の下にあるインターホンを鳴らす。
「はーい! 今行くねー!」
インターホンに内蔵されているマイクから元気な声が聞こえてくる。この声は杏だ。
暫くして、玄関のドアが開くと、少し黄色がかった金髪の毛先が肩にかかるか位まで伸ばし、後ろでお団子のように髪をまとめている小柄な少女、杏が姿を見せた。
その後ろには杏の母親「花小泉 桜」さんの姿も見える。
「やっぱりダメだったか?」
「うん、ごめんね蒼ちゃん。高校は別々になっちゃったから、あんまり蒼ちゃんに迷惑かけたくなくて頑張ってみたんだけど……」
「――杏」
申し訳なさそうに落ち込んでいる杏の頭に蒼一は手を乗せ、名前を呼ぶと、優しく撫で始めた。どうしてなのか分からないと言いたげな表情で杏が見上げてくる。
「別に迷惑なんて思ってないから、んな顔すんなよ。お前には似合わねーぞ?」
杏は笑顔が似合う子だ。まだ幼さを残す顔に天真爛漫な性格、そんな彼女だから今の俺がいるようなものだ。昔の俺は今とは違ったからな……。
「ありがとう、蒼ちゃん!」
蒼一の笑顔に、杏の表情も次第に笑顔に戻っていく。そして蒼一に抱き着いていた。
「あらあら、朝からお熱いこと」
「からかわないで下さいよ、桜さん」
口元に手をあて、ふふっと微笑を浮かべる杏の母に苦笑いを返す蒼一。杏との身長差的に周りから見たら俺達は兄妹ぐらいにしか見えないだろう。
「ほら、杏。もう行くぞ。俺が遅れる」
未だに抱き着いている杏にそう声を掛けると、杏は少し残念そうに離れた。
杏の学校はここから歩いて二十分もあれば到着するが、蒼一の学校は杏の学校から更に歩いて一時間は掛かる場所にあるのだ。
現時刻は立ち話もあり、もうすぐ六時。八時半には入学式が始まるため、八時には学校に着いておきたい。なんでそんなに早いのかは知らないが……。
(杏の学校は九時からって、言っていたのになぁ……)
同じ学校に通えていたらもう少し寝ていられたかもしれないが、これは杏の「安全」の為だ、頑張ろう。それと朝一の抱擁は役得だったしな。
「じゃあ、おかーさん、行ってきます!」
杏は大きく手を振り、母に見送られながら二人は並んで歩きだす。
さて「今日も」頑張りますか。
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