※修正中。幼馴染を守っていたら、少しだけ人間卒業していたらしいです。 作:奈々歌
書き方安定しません(笑
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「彼女」は俺の恩人だ。
あの時俺は暗闇にいた。先の見えない真っ暗な深い深い闇の中に、たった一人で。
でも最初からそうだった訳ではない。皆がいた。仲間がいた。血は繋がっていなかったが、そこには家族があった。
でも失ってしまった。自分が弱かったせいで。
心も体も傷つき、苦しみ、『光』を求め、彷徨っていた。
――どうしたの? 大丈夫?
ふいに背後から声を掛けられ、見上げる。
そこには「光」があった。
それは明るくて、眩しくて、それでいて優しく温かくて。まるで皆がいた頃を思い出してしまうような……。
「彼女」から差し伸べられた柔らかく小さな手が俺の黒く汚れてしまった手を掴み、引き上げてくれた。深い闇の底から。
「杏」は俺の恩人。
きっとこれは恩返しなのだろう。
だから俺は「彼女」の為に頑張れるんだ―――。
†
桜の花弁が舞う通学路。真新しい制服で身を包んでいる新入生達。春の暖かな陽気を浴びながら、蒼一と杏は歩いていた。
「見て見て、桜が綺麗だよ蒼ちゃん!」
桜並木が続いている通学路を歩いていると、杏は蒼一より一歩先へ前に出る。そして振り返えり、目を輝かせながら桜の花たちを指差していた。
「昨日も同じこと言ってたぞ、杏」
「あれ? そうだったっけ?」
本当に覚えていないと言った表情を浮かべる杏に蒼一は苦笑する。まぁ、杏らしいと言えばらしいのかな、と。
ぽんっと杏の頭に蒼一は軽く手を乗せると、杏は笑顔を見せてくれた。それに蒼一も微笑み返し、二人は再び歩き出していた。
彼女と通学路を歩いている中、蒼一は常に「警戒」を怠らない。
普通の学生達はそこまで通学中「警戒」をすることはないだろう。流石に人混みや満員電車などでは「警戒」の色を見せるだろうけども。
周りを見ているだけでも、携帯を触りながら、好きな音楽をイヤホンをして聴きながら歩いている人学生や社会人がいるくらいだ。
そんな中でも皆が皆、交通のルールを守り行動しているから問題が起きないことが多いのだろう。だが「危険」は常に潜んでいるものだ。
だから、ちゃんと気を付けような?
(あれ、俺誰に言ってんだろ? まぁいいや。それはそれとして――)
この子、杏はそれとは何段階も次元が違う「危険」に遭う場合が多い。いや、多すぎる。
特に「水運」の「不幸」が多い気がする。今日も川、用水路、マンホール……。それらが杏を襲い、五回も家まで帰ってきたのだ。
杏は何故こんなにも「不幸」な目に遭うのだろう?
このことに気が付いたのはいつからだっただろうか――。
蒼一がそんなことを思っていると、杏が突然駆け出していた。杏は元々好奇心旺盛な部分もあり、自分の好きな物が目の前にあると、走り出してしまう癖がある。
「猫さんだ! ほら蒼ちゃん、見て、可愛いよー!」
「転ぶぞ、杏。ただでさえお前は――」
蒼一はそこまで言い掛けると、体は既に行動に移っていた。そう、杏に「危険」が迫っていたからだ。
杏を守っていく内にどうやら聴覚がやたら良くなったらしく、杏に迫る「危険」への音を聞き分けるのが上手く、とても鋭くなってしまった。
蒼一の耳に届いた「危険」が迫る音。それは杏の上空から「弾丸」が発射された音だった。
杏の上空には小さな黒い影。「弾丸」を発射――いや、投下したその影の正体は「鴉」。
(あの角度、落下速度、規模の大きさ……直撃コースだな)
蒼一の手は反射的に動き、道端に落ちていた手頃な小石を拾う。この間約コンマ三秒。「弾丸」に向かい投擲。この間約コンマ一秒。
一秒にも満たない動作で投げられた小石は音の壁を超え、微弱ながらも衝撃波を生みながら飛んで行った。
小石は見事「弾丸」に命中し、「弾丸」は近くの家の石塀に着弾。壁を白く染め、中心に小さな黒い濁点を描く。音を超えた小石は空の彼方へと消えていった。
どこに落ちようが知ったことではない。杏を守ることが出来たのだからな。俺は悪くないぞ。うん。
「ん? 蒼ちゃん、何してるの?」
どうやら杏は猫に逃げられたようで残念そうに戻って来ていた。すると、投げ終わった格好でいる蒼一を見て不思議に思ったのか、そう尋ねてきた。
「ああ、何でもない………。って、また噛まれたのか」
杏の指からは少しだが血が出ているのが見えていた。手を出したら噛まれてしまったのだろう。蒼一は鞄から小さな箱を取り出す。「水にも衝撃にも強い丈夫な絆創膏」と書かれた杏の為の常備品の一つだ。
「ほら、見せろ。絆創膏貼ってやるから」
「えへへ、ありがと、蒼ちゃん」
一緒に出しておいた消毒液で処置をしながら、杏の指にくるくると絆創膏を巻いていく。
「可愛いからって噛まれない保証はないんだからな?」
「でも、可愛くって、つい――」
「相変わらずの動物好きだな……」
杏は大の動物好きなのだが、何故か好かれない。これも彼女の「不運」の一つなのだろうか? 二人は通学路に戻り、杏の学園へと歩いて行く。
この後にマンホールに落ちかけた。柵が壊れて川に落ちかけた。等々、様々あったが今は置いておこう。きりがないからな……。
暫くして――。
何回か杏を「危険」から守ること数十分。
杏の通うことになる学園の校門へと到着していた。学園の名前は「天之御船学園」。学問、運動で超がつくほどの名門高校との評判らしい。
「やっぱり蒼ちゃんと一緒だと一回で学校に行けるね!」
「まぁな。でも朝の頑張りは偉かったぞ。成長したな、杏」
よしよしと頭を撫でてあげると、杏は嬉しそうに目を細める。この子は気が付いていないんだろうな。アニメや漫画に出てくるお前くらいのポジションの子だと反応は違うぞ?
「えへへ、褒められた!」
「そこは普通「子供扱いしないでよ!」とか言う所じゃない?」
大体はこう返されるはず。
というか、少し期待している自分がいる。
「ほぇ?」
ある意味期待通り、杏は小首を傾げていた。
「聞いた俺が間違ってたよ。んじゃ、俺は自分の学校に行くからな」
そんな杏に一つ息をつくと、蒼一は手を上げ、校門を後にして行く。
「うん、終わったら連絡するね!」
「はいよー」
蒼一の返事を聞いた後、手を振りながら杏は学園の昇降口へと駆けて行く。転ばなきゃいいけど……。あ、転んだ。すぐに立てたから大丈夫、かな?
さてさて、俺の方は時間がないので屋根伝いに行きますか――。え? 何かおかしい? いやいやそんなことありませんよ。普通です、普通。はい。
†
『えー、春の麗らかな―――』
体育館に備え付けられている大きなスピーカーから、蒼一が通うことになる学校の校長の声が鳴っている。
(長い、怠い、眠たい。そして杏は大丈夫だろうか?)
入学式では何故こうも話の長い人が多いのだろうか。この場にいる新入生の大半はそう思っているに違いない。
必要で大事なことは分かる。だが、とにかく長い。腰が痛い。パイプ椅子超痛い。
まだうろ覚えの校歌を歌う時、立ち上がれば腰から音が鳴る。俺ももうそんなに若くないのかな? いやいやまだ十代ですぜ。
本日は入学式が終われば解散となっている。他にしておかなければならない事といえば自分のクラスが張り出されている校門付近にあった掲示板を見て行くぐらいだ。
早く終わって欲しいなぁ、杏の学園へ行かねばならないからな。でも早く行ってもあっちが終わってなかったらあんまり意味ないのだが――。
長い話の末、うとうとと船を漕ぎ出す新入生が見え始めた頃。
『以上で、入学式を閉会します』
体育館の大きなスピーカーから校長のおっさん声ではなく、綺麗なまだ歳の若そうな女性の声が鳴り、入学式の終了を知らせる合図が掛かる。
最後は新入生の皆で席を立ち、礼をして退場していった。
「さて、杏の学園に向かいますか」
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