※修正中。幼馴染を守っていたら、少しだけ人間卒業していたらしいです。   作:奈々歌

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今回は特に無し。

それではどうぞ!


少しだけ目を離しただけだったけど、案の定大変な事になっていましたね。

携帯のアラームが鳴り、蒼一は目を覚ます。今日は入学二日目―――、になるはずだった天之御船学園編入初日の朝。

 

「ふぁぁぁ………」

 

ベッドから体を起こし、洗面所で顔を洗い、軽く朝食を済ませると、階段を上り自室に戻る。そしてクローゼットに掛けている二つ並んだ学生服の片方、昨日の晩に届いた天之御船学園の制服を掴み、着替えていた。

 

「たった一日しか着てないってのも勿体無い気がするがな」

 

四つ葉の刺繍が入ったスカーフをキュッと首元で締め、鏡で制服姿を一通り確認すると、蒼一は玄関に鍵を掛け、家を後にして行く。

 

向かった先は勿論、隣に住んでいる杏の家。

 

インターホンを鳴らし、マイクから聞こえてくる杏の母親の声が聞こえてくる。もうすぐ準備が出来るとの事なので蒼一は玄関先で待っていると、制服に身を包んだ杏が姿を現した。

 

「本当に蒼ちゃんも同じ制服だ! 一緒に通えるようになるなんて、私すっごくついてるよ!」

 

昨日とは違う制服でいる蒼一の周りを嬉しそうにくるくると走り周り、終いには抱き着いて来た。これは役得、役得。

 

「あらあら、朝からお熱いこと。うふふっ」

 

玄関から杏より遅れて来た桜が微笑ましそうに二人を見ている。でもそのセリフは………。

 

「桜さん、昨日も同じこと言ってましたよ?」

 

「あら? そうだった?」

 

杏と同じでこの人もどこか抜けている所がある。まぁ、それが杏にも遺伝しているのだろうが。杏は母似なんだなとつくづく思わさせるよ。

 

(この親にしてこの子あり。ってやつかな)

 

そんなことはさておき、時間も時間だったので、蒼一は抱き着いている杏に一声掛けると、二人は桜に見送られながら学園へと歩き始める。

 

 

 

学園へと向かう通学路を歩いて行く途中、蒼一が遠くに橋が見える道を指差すと、隣にいる杏にある提案をしていた。

 

「今日は昨日見つけた近道から行ってみようか」

 

「そんな道あるの? 何だかわくわくするね!」

 

「いや、別にしないかな。ははっ」

 

昨日の帰りにたまたま見つけた通路を使おうと言うと、杏は興味深々といった表情で反応する。だが―――。

 

「あ、悪い杏。その前にちょっと忘れ物思い出したから取って来るわ」

 

「うん、分かった! じゃあここで待ってるね」

 

「すぐ戻ってくるから、ごめんな」

 

蒼一は杏に背を向け来た道を引き返す。この時、引き返した事であんなことになるなんて思いもしなかった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――、行ってきます。

 

一人の少女が誰もいない玄関へと言葉を掛けると、天之御船学園の制服を着ている少女は庭先にある身の丈ほどの大きさの門を開け、学園へと歩き出していた。

 

「確かこの道を進んで、見えてくる橋を―――」

 

まだうろ覚えの通学路を歩いて行く。学園には受験の時と昨日行われた入学式でしかまだ行ったことない。迷わなきゃいいけど………。

 

正直高校なんてどこでもよかった。どこの高校を選んでも『あの人』と一緒になんてなれないのは変わらないのだから。

 

でも、家の近くの高校に受かることが出来たのは運が良かったのかもしれない。あまり『あの人』から離れることがなくて済むし、学校が終わったら会いに行ける時間が多く取れる。

 

これから通うことになる天之御船学園。あそこは凄い名門校だと聞いているのだけれど、『変な噂』を聞いたことがある。それに私は『無理矢理』と言っても間違いではないような形で入れられたようなものだし………。

 

(これから三年間、無事に、平穏に過ごせるといいのだけど………)

 

少女はそんな事を思いつつ、道を進み、橋に差し掛かると、どこからか動物の泣き声が聞こえてきたのだった。

 

「この声は………、犬かしら? 近くから声がするけど、どこにも犬なんていないわよ、ね。気のせいかしら?」

 

だけど、声が止む様子がない。やはり近くにいるようだ。少女は「もしかして」と橋の下を覗きこむ。すると、そこには―――。

 

「い、いたぁ―――! えっ!? どうしてそんな所に!?」

 

覗いた先には橋の突き出した鉄骨に自分と同じ制服をきた子が引っかかっていた。

 

見る限り制服の襟の部分が掛かっているようで、先ほどから聞こえていた声はその少女が抱きかかえていた犬のものだったらしい。

 

「ん? あ、誰かそこにいるの?」

 

ぶら下がっている子が橋の上にいる少女に気が付いたらしく、声を掛けてくる。

 

「あ、あなた大丈夫!? どうしてそんなことに―――」

 

少女は焦りながらも、その声に返答する。そして理由を聞いていた。どうしたらそうなるのか見当も付かない。

 

「んとね、このワンちゃんが橋から落ちそうだったの。それで何かこうなっちゃったみたい。えへへ」

 

「えへへ、じゃないわよ!」

 

自分の状況が分かっているのか分からない様子にツッコミをいれつつ、少女は平穏に過ごしたいと思っていた矢先、なんでこんなことに遭遇してしまったのだろうと心の中で嘆く。

 

「だ、誰か助けを―――、いや、そんな時間………。ああ、もう!」

 

辺りを見回しても誰も通り掛かる様子がない。ここは一応学園への通学路になっているから生徒の一人位通ってもおかしくないのだが………。

 

どこかに探しにいきたい所だが、引っかかっている制服が破けるのが先になってしまいそうだった。心なしか風も強くなっているような気もするし、最悪な状況になりつつある。

 

「今助けるからじっとしてて!」

 

少女はそう呼びかけると橋の柵の間から手を伸ばす。だが届かない。仕方がないと少女はヒール型の靴を脱ぎ、柵をまたいで、引き上げようとする。

 

柵を手すり代わりにしながら近づいていく。その時少女は気が付いた。この子がぶら下がっている鉄骨の色が左右の物と違うことに。

 

(この色、もしかして腐ってる!?)

 

よく見ると、鉄骨は色も違えば所々穴が開いている。

 

引き上げた時、急に折れて自分も引っ張られてしまうことを想像してしまった少女は一瞬躊躇してしまっていると、ふいに声が聞こえてくる。

 

「ねぇ! 名前教えて貰えないかな?」

 

「いきなりなんで―――、瑠璃よ! 雲雀丘瑠璃!」

 

呑気な質問に対して、疑問を持ちながらも少女は『雲雀丘 瑠璃』と名乗っていた。

 

「じゃあ、ヒバリちゃんだね! この子のことお願い!」

 

ヒバリちゃんと呼ばれると、抱えていた犬が瑠璃の胸元に飛んでくる。瑠璃は驚きながらもしっかりと受け止めていた。

 

「ちょ、あなたはどうするのよ!」

 

「大丈夫だから心配しないで!」

 

大丈夫と言いながらも支えていた鉄骨が先の行動で限界がきたようで、バキッっと音を立てて折れてしまう。

 

このままでは下の川に落ちてしまう。

 

「きゃあああああ!!」

 

瑠璃の悲鳴が響く中、水が大きく巻き上がるような音が川岸からしてきた。

 

「声が聞こえたから急いで来てみれば………。さすが杏だな」

 

水面を走ってくる人影が一つ。そう、音を出したのは蒼一だった。

 

蒼一は杏の落下地点に向け、大きな水しぶきを上げながら水面を蹴ると、空中で接近し、見事杏をお姫様抱っこの形でキャッチしていた。そしてそのまま対岸へと着地する。

 

「少し目を離せばこれだ。まぁ、忘れ物した俺が悪いんだけど………」

 

抱っこしている杏を降ろし一息つく蒼一。珍しく焦って来たのか息が上がっていた。

 

「ありがと蒼ちゃん、助かったよ! やっぱり今日の私はついてるね!」

 

「杏は本当に前向きって言うのか、何と言えばいいのか………」

 

襟元が乱れてしまっている杏の制服を直してあげながら、苦笑いをしつつ、そんなことを呟く。そんな二人の所に瑠璃が走って来た。

 

「ちょっと、あなた大丈夫?」

 

橋の上にいた為、杏がヒバリと呼んでいた少女の姿を杏初めて見る。蒼一も。瑠璃はさらりとした鮮やかな紺色の髪が腰までかかり、翡翠色の瞳をした少女だった。

 

「あ、ヒバリちゃん。ワンコ大丈夫だった?」

 

手を振りながら元気に名前を呼んでくる杏に瑠璃はホッと胸をなで下ろす。

 

「さっきの犬ならもう逃げちゃったわよ。それより怪我は?」

 

「大丈夫だよ、蒼ちゃんが来たからどこもぶつけてないし」

 

「でも、杏。手からまた血出てるぞ?」

 

蒼一に指差され、杏は犬を抱えていた方の手から血が出ているのに気が付く。

 

「あ、本当だ。ワンコに噛まれてた所かな?」

 

その様子に二人共小さくため息を漏らすと、蒼一が鞄から常備品である絆創膏を出そうとする。だが、先に瑠璃の方がポケットから白いハンカチを取り出しており、杏の怪我をしている手を掴んでいた。

 

「はい、これで我慢して頂戴」

 

「えっ!? これ、いいの?」

 

杏の手には白いハンカチが巻かれていた。それを見た蒼一は手にしていた絆創膏をそっとしまう。目の前の光景が微笑ましかったからかな?

 

「杏、やっぱり今日はついてるのかもな」

 

「うん!」

 

蒼一は杏に微笑むと、杏は満面の笑みで返す。

 

「………?」

 

瑠璃は二人の会話に首を傾げていたのだった。

 




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