※修正中。幼馴染を守っていたら、少しだけ人間卒業していたらしいです。   作:奈々歌

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他の更新も頑張ります(笑

それではどうぞ!


入学初日から転校したんだけど、多分相当珍しいと思うのは俺だけなのだろうかね。

先の出来事もあり、杏と蒼一は瑠璃も合わせて学園へ向かうことになった。向かう途中、瑠璃は隣を歩く杏にある事を尋ねる。

 

「そういえばあなた、名前聞いてなかったわね。何て言うのかしら?」

 

「あ、私、『花小泉 杏』って言います! 中学校の頃は杏って呼ばれることが多かったかな?」

 

ビシッと敬礼のように頭に手を当てながら杏は名乗っていた。だが瑠璃はその名前を聞いてから何かを考えるように思案顔を見せる。そして―――。

 

「そう。………、じゃあよろしく、『はなこ』」

 

「『はなこ』? んん?」

 

杏はどうしてそう呼ばれたのか分からない、といった顔を見せながら蒼一の方を見てくるが、蒼一も小首を傾げていた。

 

(ちょっと、意地悪だったかしら………)

 

気づいてくれない二人の様子に、瑠璃は少し恥ずかしくなったのか薄く頬を赤らめながら理由を話し出す。

 

「わ、私がヒバリになるんだったら、あなたははなこでいいでしょ?」

 

「ああ、なるほど。花小泉の最初を取って、は・な・こ。な?」

 

「あ、そっか!」

 

瑠璃の説明で蒼一は納得がいったようでポンッと手を叩く。蒼一が強調してくれたおかげか杏もやっと気が付いたようだった。

 

「可愛いね、はなこ! ありがと、ヒバリちゃん!」

 

「別にそんな喜ぶようなことしたつもりなかったんだけど………」

 

瑠璃の手を握り、満面の笑みを浮かべる杏。まさかこんなにも喜ばれるとは思っていなかった為、瑠璃は戸惑っている様子だ。

 

「杏はいつもこんなんだから気にしなくてもいいからな?」

 

蒼一は微笑しながら戸惑っている瑠璃に話掛けていた。

 

杏の調子に瑠璃のような反応をされるのは初対面の場合だとよくあることなので蒼一は見慣れている。自分もそうだったから。

 

「え、ええ。分かったわ。ところであなたの名前は?」

 

これがこの子の標準なんだなと思いつつ、瑠璃は蒼一にも名前を聞いていた。そう言われ、蒼一は思い出したように口を開く。

 

「俺? ああ、そう言えば教えてなかったな。俺は『千歳 蒼一』」

 

「じゃあ、千歳君でいいかしら?」

 

「何でもいいよ。よろしくなヒバリ」

 

「あなたもそう呼ぶのね。まぁいいけど………」

 

瑠璃は口篭もった声で何を呟いていたようだったが、何と言ったかまでは聞こえなかった。だけど瑠璃は視線を蒼一から逸らす。なんか顔が赤いような? 気のせいか。

 

「ねぇねぇヒバリちゃん、蒼ちゃん。何か聞こえない?」

 

杏に言われ二人は気が付く。鐘の音が聞こえてくることに。ああ、確かこの鐘は学園の―――。んん? 予鈴だったよな?

 

「まずいな」

 

「まずいわね」

 

入学早々に遅刻は流石に不味い。急げばまだ間に合うかもしれない距離だ。

 

「杏、ヒバリ、急ぐぞ!」

 

「言われなくても分かってるわよ!」

 

蒼一は杏の手を引き、駆け出す。その後ろを瑠璃が追う。橋での出来事に時間を取られすぎた。こんなことがあるから普段から早めに家を出ているというのに………。

 

「駄目だな、このペースだとギリギリ間に合わない。仕方ないか、杏」

 

「『あれ』だね、分かった!」

 

走りながら通りかかった公園の柱時計を確認すると、このまま走っても五分ほど遅れてしまいそうだった。蒼一はこんな時に中学の頃からよく使っていた手を使用することを杏に伝える。

 

杏はその一言で理解したようで、立ち止まり、しゃがんだ蒼一の背中におぶさった。

 

目の前の状況に理解が追いついていない様子の瑠璃を蒼一は杏をしっかりと背負った後、お姫様抱っこする。

 

「ちょっ!?」

 

「悪いな、非常事態だから許して頂戴ね」

 

いきなりの事で瑠璃は無意識に蒼一の胸元にしがみつく。ああ、後で怒られそうだなと思いつつも、その状態で蒼一は駆け出していた。既に定番と化した屋根伝いで。

 

この二人、軽いな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、間に合った………」

 

息を荒げている蒼一。楽しそうにしている杏。未だ頬を赤らめている瑠璃。どうにか遅刻せずに三人は学園へ入ることが出来ていた。

 

杏と瑠璃は二人で教室へと歩いて行く。蒼一は編入生ということなので、一旦職員室に向かうと昇降口で別れていた。

 

(信じられない。ありえない。こんなこと………)

 

小中学校と品行方正で通ってきた私がいきなり遅刻ギリギリで登校なんてありえないわ。それに男の子にあんなことをされながらなんて―――。

 

それに加えて………。

 

「ヒバリちゃん、私と同じクラスだったんだね!」

 

瑠璃が自分の教室へと入ると杏も同じ教室だったらしく声を掛けてきた。席も隣のようだ。一学年七クラスもあるはずなのに、なんて確率。

 

「これからよろしくね、ヒバリちゃん!」

 

「え、ええ。そうね………。よろしく、はなこ」

 

いきなりこんな変な子と知り合うなんて………。さっきの千歳って男の子もそうだし。

 

ここの学園生活がいきなり平穏ではなくなりそうな予感がしてきた瑠璃は、杏の嬉しそうな屈託のない笑みにぎこちない笑みで返していた。

 

「私、この学園に受かることが出来るなんて思ってもなかったんだよね。一緒に受けた蒼ちゃんの方が受かりそうだったんだけど………」

 

「私も同じよ。別に勉強が得意って訳でも運動が出来る訳でもないし………。ましてや何か秀でている才能なんてある訳ないし―――」

 

文武両道。各人の才能を飛躍させることを目的としたこの天之御船学園。一体どうして私もはなこもあっさりと受かったのだろうか?

 

「ねぇねぇ、ヒバリちゃん。ヒバリちゃんが好きなのって何かな?」

 

「私の好きな人は………、って、いきなり何を聞いて来るのよ!?」

 

瑠璃は何かを言い掛けると、自分が口走ってしまったことに気が付いたようで、ボンッと一気に顔を火照らせる。

 

「もしかしたら好きな物が受かった理由になる事があるのかなーって思ったから………」

 

「そ、そういうことね。わ、私は趣味で料理はよくするけど―――、あなたは?」

 

どこかホッとした様子で胸を撫で下ろした瑠璃。そして今度は瑠璃が杏に聞き返していた。

 

「私は動物さんが好きなんだー! 色んな動物さんがね、私を見ると走って寄って来てくれるの! 今朝のワンちゃんみたいに甘噛みしてくれる子もいるから可愛いんだぁー」

 

「今朝のって………、あれ思いっきり噛まれてたじゃない! あれのどこが甘噛みなのよ!?」

 

杏の手に巻かれている白いハンカチをビシッっと指差しながら、瑠璃はツッコミを入れる。甘噛みであんなに出血するはずがない。どう考えても本気の噛みでしょうと。

 

二人がそんな会話をしていて声が大きくなっていたのか、瑠璃の前の席に座っていた少女がくすくすと小さな笑みをこぼしながら振り返ってくる。

 

「ふふっ、すみません。お二人の会話が面白いものでしたのでつい」

 

少女は淡い桃色の長髪を三つ編みで結い、左右に腰まで垂らしている。眼鏡をかけており、御淑やかな雰囲気をしているのが印象的だ。

 

「すみません、私のような気持ち悪い女がお二人の会話を盗み聞ぎしてしまって………。さぞ気分を害されたでしょう………」

 

「別にそんなことないけど………」

 

先程受けた印象からは考えられない自虐的なことを話してきたので、瑠璃は若干引き気味だったが、否定しておいていた。御淑やか?

 

「まぁ、なんてお優しい方なのでしょうか。まるで天使のよう………。いえ、女神様ですね!」

 

少女は両手を胸の前で合わせ目を細める。そんなに嬉しかったのかしら?

 

「は、はぁ………? 別にそんな大げさに表現しなくても―――」

 

「ねぇねぇ、名前は何て言うの?」

 

対応に困っている瑠璃とは変わって、杏は名前を尋ねていた。それには少女も嬉しそうに答える。

 

「私は『久米川 牡丹』と申します。病気で貧弱で皆さんにご迷惑ばかりかけてしまう先しか見えませんが、どうか宜しくお願いいたします」

 

牡丹と名乗った少女は二人に手を差し出していた。杏と瑠璃も手を出すと、瑠璃は遠慮気味にそっと軽い程度で握手を交わす。

 

(あんまりよろしくしたくないわね………、平穏に三年間過ごしたいし)

 

「よろしくね、ぼたんちゃん!」

 

杏の方は瑠璃とは違い、おもっいきり握り返していた。すると、バキッっとまるで骨が折れたような音が聞こえてくる。

 

「何、今の音は………」

 

最初に反応したのは瑠璃だった。予想はつくが、まさか―――。

 

「すみません、手の甲に少々ヒビが入っただけですので、お気になさらず………」

 

「気にするわよ!? 大丈夫なの!?」

 

「はい、元々ちょっとしたことで折れてしまいますので慣れています。貧血などにもなりやすいので道端で倒れたりも―――」

 

病弱、貧弱と言ってはいたが限度って物があるでしょう、と内心思う瑠璃。あの杏でさえ、どうしていいか分からずあたふたしているくらいだし………。

 

(何でこんなにも変な子ばかり入学早々知り合うのよ!)

 

学園に来る前、平穏に過ごしたいと思っていたはずなのにどんどん平穏から離れていってる気がしてきた瑠璃。もう遅いような気もするが。

 

「このクラスは一体なんなのよ………」

 

瑠璃がそう呟いた時、教室の扉が開く。時間は既に朝のホームルームの時間だった。開かれた扉からは先生と思われる人物が姿を現す。

 

「はいはい、皆さん。席について下さい。皆さんが入学しての最初のホームルームを始めますよ」

 

ああ、この先どんな学園生活が待っているのだろうか、と気が重くなっていく瑠璃なのであった。

 




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