アニーのアトリエ~レギオスの錬金術士~   作:Flagile

9 / 15
第三話 覚悟

 翌日、早速カリアンが動いたのだろう。錬金科長を筆頭に錬金科から数名、武芸長であるヴァンゼ、そして私とレイフォン、それにハーレイが呼び出された。錬金科の生徒は前回のアイデア募集で実現性も兼ね備えた優秀なプランを提出した生徒らしい。正直に言えば17小隊のメンバーだけが若干浮いているのが判る。

 

「それで何でこのメンバーなのかね?」

 

 会議が始まるとその疑問を練金科長が代表して質問する。

 

「まず、状況を共有しよう」

 

 質問に直接は答えずにカリアンが始める。

 

「ツェルニの進路上に汚染獣らしき存在が確認されている」

 

 端的に事実を告げ、理解が広がるのを一瞬待つ。理解が広がるにつれざわめき出す室内。

 

「そしてその対処をレイフォン君に一任しようと思っている」

 

 さきほどと負けず劣らずのざわめきが室内を満たす。

 そのざわめきに押し出されるように錬金科長が再び問う。

 

「なぜレイフォン君なのかね?確かに強いことは認めるが新入生に任せる事じゃないと思うが」

「……君たちには知る権利があるだろう。レイフォン君は武芸大会に勝つために私が用意した一流の武芸者だ。もちろん実戦もくぐり抜けている。その彼が一人で戦う方が勝率が高いと判断したのだ」

 

 一流の武芸者と聞き先程までとは別種の驚きが室内を満たす。

 

「……そしてここだけの話だが前回の汚染獣の襲撃の際に彼が居なければ勝利は覚束なかったという厳然たる事実がある。この事実を前に素人集団である私たちはその判断を尊重すべきだろう」

 

 衝撃的な事実を前に言葉を失う練金科の生徒達、その衝撃的な事実をヴァンゼ武芸長が否定しないのを見て事実なのだと理解する。

 

「さて、状況は理解できたと思う。彼が如何に戦いやすい状態で送り出せるか、それが今回の議題だ」

 

 そこからはカリアンの目論見通り議論が円滑に進んでいった。

 あれからさらに数日後

 

「う~ん、材料が足りないなぁ」

 

 レイフォンのため、引いては自分のためにいろいろなアイテムを調合しているのだが、どうにも店売りの素材では行き詰まっているように感じていた。

 

「よしっ、錬金科長に相談してみよう」

 

 そう思い、錬金科の実験棟に向かうことにする。何人かに錬金科長がどこにいるのか聞いて回ると自分の研究室にいるのではないかと言うのでそこを訪ねる。

 

「こんにちは~、錬金科長さんいらっしゃいますか?」

「ん?アニー君か、よく来たね。おもてなしはできないけどそこら辺に座りなさい……それでどうしたんだね?」

 

 錬金科長に進められるままに椅子に座り、自分の要望を伝える。

 

「実は店で売っている素材では行き詰まってまして、自分で森に入って素材を採取したいのですけど、どこかから許可とる必要はありますか?」

「ふむ採取か、それなら練金科で管理している薬草園がある。そこなら申請書類を出してもらえれば自由に採取して良いぞ、そこでも足りないとなると他学科に協力を要請しないといけないから難しいな」

 

 薬草園!そんな物があったのは全く知らなかった。これで新しい素材が手に入れば何かレイフォンの役に立つものも作れるかもしれない。

 

「へー、そんなところがあったんですね、ありがとうございます、とりあえずその薬草園に行ってみますね」

「ああ、助けになれて良かったよ。また何か困ったら遠慮なく来なさい」

「はいっ、ありがとうございます」

 

 錬金科長にお礼を言って早速薬草園に向かうことにする。

 薬草園に併設された管理小屋で申請書類に記入し、薬草園に入る。

 

「わぁー、いろんな薬草が生えてる。あっあれは忘却の傷無し草だ!薬作るのに便利なのよね、ハニーメロンもあるわ、高いのよね、これ。取って良いのかしら?……ここの群青の土も使えそうね。嘘、金とげの実じゃない!すごい珍しいものもあるのね」

 

 そんな感じで持ってきたカゴいっぱいに採取してしまった。帰りに採取したものを確認した管理人さんに呆れられてしまった、全て取り尽くさないように注意されていなければもっと取ってしまっていただろう。

 

 薬草園の素材も使用して調合を行った結果、なかなか満足のいく栄養補給用のゼリー、その名も明晰ゼリーができたので早速レイフォンに届けに行くことにした。

 

「今日は野戦グラウンドの方で訓練してるって話だけどまだやってるかしら?」

 

 野戦グラウンドに着くとそこではレイフォンが空を舞っていた。見たこともないような大剣を手に空を跳ぶ。振り回した時の反動を利用して自在に滑空方向を操作し跳び回る姿は芸術的とすら言えた。

 

「すごいわね」

 

 それしか言葉は出なかった。隣にいるハーレイやカリアン・フェリも同じ気分なのだろう。なんというか呆然とした気配を感じる。

 

「なんかもう……なんてコメントすればいいのかわからないね」

 

 そうハーレイが呟く。

 

「どうだい、感触は?」

 

 気を取り直したのかハーレイがレイフォンに尋ねている。それに素直にコメントしているレイフォン。

 

「レイフォン、武器の限界のことはちゃんと伝えた?」

「ああ、聞いたよ、もう驚いたよ。全力を出したら爆発しちゃうなんて聞いたこともないんだから」

 

 ハーレイがそう答える。ちゃんと伝えていたらしい。

 

「それでハーレイ先輩、どうにかできそうですか?」

「う~ん、完璧にどうにかできるかはわからないけど、今開発してるこの複合錬金鋼(アダマンダイト)はだいぶ限界が高いと思うよ。それにその話を聞いて限界を高める方向で配合を見直してみたからその効果もあると思う」

 

 それを聞いて少し安心する。確実にレイフォンに生き残ってもらうための準備が整いつつあった。

 

 それから明晰ゼリーの試食をしてもらったりして、しばらく話をした後、カリアンの奢りでフェリとレイフォンと夕食を一緒にすることになるのだった。

 そして、数日後レイフォンを万全の状態で送り出すために調合をしている時の事だった。

 

「アニーいるか?」

「あら、珍しいわね、ナルキいらっしゃい」

 

 珍しくナルキがアトリエにやってきた。郊外にあるせいか、私がミィフィ達のマンションに行くことはよくあるがその逆はなかなかないのだ。何か連絡がある場合も電話ですませてしまうことがほとんどなのだ。

 

「ああ、実は洗剤を切らしてな、ランニングがてら買いにきたんだ」

「なるほどね、洗剤ってことは中和剤(青)ね、シャンプーは大丈夫?」

 

 意外に思うかもしれないが、中和剤(青)は洗剤、中和剤(緑)はシャンプーになるのだ。ヨルテムにいた頃から中和剤はアトリエの看板商品だった。もちろんナルキやミィフィ、メイシェンも中和剤を使っている。特に中和剤(緑)は口コミを通して今ツェルニで話題沸騰中の人気商品になりつつあるのだ。メイシェン達の髪艶がいいことが良い宣伝になっているようだ。

 

「そっちは大丈夫だ。そう言えばアニー、最近レイフォンが忙しそうなんだが何か知ってるか?」

 

 今、レイフォンは忙しい。なぜなら汚染獣対策であっちこっちからひっぱりだこだからだ。17小隊付きの私なら何か知っているだろうと踏んでの質問だろう。もちろん知っている。だが、汚染獣の事は機密事項だ。

 

「知ってるけど、秘密よ、知らない方が良いわ」

「むっ、そう言われると追求しにくいんだが……」

 

 ごまかしてもバレることが分かっているから正面から答えられないと返事をする。正直絶対に隠し通す気はないが、自分から積極的に言うつもりもない。

 

「追求して欲しくないんだもの、教えられることはないし」

「そこを何とか」

「ダメよ、私は公私ははっきり分ける女なの」

 

 そうやって正面からバッサリ切り捨てていると、新たに客がやってくる。アトリエが郊外にあるため客が来ることはかなり珍しいのだが、今日は二人もやってきたようだ。客は金髪の女性、隊長だった。

 

「アニー、この前の栄養剤が欲しいんだが、すぐに用意できるか?」

 

 いつも通り姿勢正しいのだが、ナルキには全く頓着せずに私にそう尋ねてくる。

 

「スカッシュティーですね、大丈夫ですよ」

「あの栄養剤を飲むと調子がよくてな」

「代金はいつも通り、小隊の予算からで大丈夫ですか?」

「いや、今回は私のポケットマネーから出す」

「?そうですか、分かりました」

 

 スカッシュティーの在庫を渡し、代金を受け取ると挨拶もそこそこにニーナは去っていく。

 

「隊長さん、あんなだったか?」

「ちょっと追い詰められてるのよ、そっとしておくしかないと思うわ」

「そうか……私もそろそろお暇させてもらうよ、じゃあまた明日アニー」

「ナルキもまた明日ね」

 

 とりあえずナルキの追求を拒絶したが、当然問題がそれでなくなるはずもなく、翌日の昼休憩。いつも通りレイフォンも含めたみんなでメイシェンのお弁当を食べているとミィフィが追及を始める。

 

「な~んか、ここ最近忙しげ?」

「え?そうかな?」

「だよ」

「……うん」

 

 ミィフィにかぶさるようにメイシェンまで頷く。

 

「訓練終わった後に遊びに誘おうと思っても、レイフォンいなかったりするもん。バイトのシフトがない時狙ってるのに」

「次の対抗試合が近づいているからな。忙しいんだろう?」

「え~、でも訓練外だよ。おかしいって」

 

 ナルキの言葉をミィフィが否定する。レイフォンの退路を断つために敢えてやっているのだろう。私から言うつもりはないがレイフォンが漏らしてしまうのを防ぐほどの事ではないだろうと思い。すました顔で弁当をつつく。

 

「で、なんで?」

「対抗試合の準備。機密事項?」

 

 レイフォンがあからさまな嘘をつく。レイフォンは自分が嘘をつけない人間だと理解したほうがいいと思う。当然ミィフィも分かるので追及は続く。

 

「どうして疑問形なのよ?」

「さあ、なんでだろ?」

「ふざけてる」

「ふざけてないよ、真面目だって」

「ふうん」

 

 そこで一旦追及を止め、ねめつけるようにミィフィはレイフォンを見る。そしてこれ以上追求しても仕方ないと判断したのだろう。別の追い詰め方を始める。

 

「女ができた?」

「……なんでそういう結論?」

「そういえばここ最近、ロス先輩と一緒にいるところ、よく目撃されてるみたいじゃない?そういうことなの?先輩目立つからね、隠しても無駄よん」

 

 ふむ、そういう攻め手で来たか、違うと半ば分かっている事実を使ってでっち上げることで自分から話させようと言うのだろう。見る間に真っ青になるメイシェンがなかなかいい援護っぷりだ。

 

「いや、違うから」

 

 焦ったようにぶんぶんと首を振るレイフォン。

 

「先輩とは、帰る方向が一緒だから」

「ただ帰る方向が一緒なだけで、頻繁に夕飯一緒の店で済ませちゃうわけ?」

「……なんでそんなことまで知ってんの?」

 

 ほう、まんざら嘘ではないという事だろうか。ただまぁ大方この前のように生徒会長が絡んでいるのだろうと思う。それにしてもそろそろ助け時だろうか?メイシェンが真っ青で今にも倒れそうだ。

 

「ミィちゃんの情報網を舐めないでよね」

「いや、本当にただの偶然だから」

「はいはい、そこまで!メイが倒れちゃうわよ……今レイフォンは生徒会長の依頼で極秘任務中なの、フェリ先輩との夕食もその関係で生徒会長におごってもらっているだけでしょ?」

「う、うん、そう。ってアニー秘密にしなくちゃ!」

「別に絶対に秘密にしなくちゃならない事じゃないでしょ、どういう類の秘密かぐらいはバラさないとミィが収まらないわよ」

「で、その秘密の任務ってなんなわけ?」

「秘密なんだからバラすわけないじゃない」

「ぶ~、ケチィ」

 

 それ以上言う気はないと明確に示すとミィフィは最後には諦めたのか弁当を持って立ち上がる。

 

「つ~まんない、つ~まんないからわたしは一人で食べます。んじゃっ!」

「まったく……子供っぽくむくれなくてもよかろうに」

 

 やれやれと言わんばかりにナルキも立ち上がる。ミィフィのフォローに行こうというのだ。

 

「ん~ナッキ、ミィフィは任せるね」

「ああ、任せておけ……悪いな、気を悪くしないでくれよ」

「いや、きっと僕が悪いんだよ」

「そうだな……おそらくそうなんだが、それはきっと無理を言ってるんだろうな」

 

 ナルキは肩をすくめると、まだ落ち着かない様子のメイシェンを見て言う。

 

「あたしはミイに付いてるから、メイを頼むよ」

「任せなさい」

 

 とは言ったものの、ここはメイシェンとレイフォンを二人っきりにしてあげた方が良かっただろうか?流れ的に私がミィフィのフォローに行くのはおかしいのだが。

 

「ごめんなさい」

 

 レイフォンがメイシェンに謝る。

 

「……レイとんは悪くないですよ?」

「いや、でもやっぱり僕が悪いんだと思うよ」

「……でも、言えないことなんですよね?」

「……うん」

「もう、二人共そこまで!言えないものは言えないんだし、気にしても仕方ないでしょ!」

「うっ、そうなんだけど、やっぱり僕が悪いのかなって」

「そこは開き直りなさい!メイも気になるだろうけどそこは信じてあげなさい」

「で、でもレイフォンの悩みを解決してあげられたらって……」

「え?」

「あれ?」

 

 ちょっと勘違いしていたかも知れない。私の認識ではレイフォンには隠し事はあっても悩み事ではないはずだ。

 

「レイフォン、何か悩み事があるの?」

「……ああ、いや、うん……あはは……なんだそっちか……」

「え?え?」

「ミイが変なこと言うから勘違いした」

「ええ!?」

「レイとん、メイが大変なことになりそうだからそろそろちゃんと説明して」

「え?あ、うん。ようするに僕が気になっていたのは隊長のことなんだ」

「隊長のこと?そう言えば様子が変だったわね」

 

 昨日、スカッシュティーを買いに来たときも様子がおかしかったのを思い出す。試合に負けたからだと単純に考えていたがもっと深い問題があるのだろうか。その点を問おうと思った時、ミィフィたちが戻ってくる。

 

「あら、ミィおかえり」

「ただいま~、って何話してたの?」

「レイフォンの困り事についてよ」

「困りごと?隠しごととは違うの?」

「そ、私も勘違いしてたわ」

「ふ~ん、まぁいいや私にも教えてよ」

 

「ふうん、隊長さんが、なんだか様子が変と……レイとんはそれが気になってるんだ?」

「そう」

「それで、なんとかしてあげたいと」

「できるなら」

「なんで?」

 

 ミィフィが単純に気になったのだろうそう問う。

 

「なんでって……?」

「おんなじ十七小隊だから?レイとんは対抗試合とかの小隊のことなんてやる気がないんでしょう?だったら隊長さんの様子が変でも別に問題ないんじゃない?」

「……ミィ」

 

 メイシェンがミィフィを止めようと声を出すが、ナルキとミィフィを見るも、両者とも止める気がない事が一目で分かる。メイシェンもすぐにこれは止まらないと諦めたように首を振った。

 

「それは、そんなに難しい問いが必要なことなのかな?」

「難しいかどうかなんて、レイとんがどういう答えを出すかじゃないか?」

 

 黙っていたナルキが答えた。

 

「かもしれない」

 

 レイフォンが頷く、これは思いもかけず重要な問いになってしまったのではないだろうか。私はレイフォンがどんな答えを出すのか見守る。

 

「いまだって、別に対抗試合とかはどうでもいいんだ。これは本当に……ただ、少しだけ考えが変わったのも本当。次の武芸大会が終わるまでは、小隊に居続けようとは思ってる」

「それはなんで?」

 

 レイフォンが自分の中のものに整理をつけるのを助けるために私は問う。

 

「ここがなくなると困るんだ。行く場所がなくなる。グレンダンには帰れないんだ。僕はこの六年でなにかの技術なりなんなり身に付けて卒業しないとよその都市に移って食べていけない。卒業してまで武芸を続ける気はないんだから」

「グレンダンに帰らないの?」

 

 メイシェンの問いにレイフォンは首を振った。

 

「……もう気づいてるかもしれないけど、僕の武芸の技は片手間じゃない」

「レイフォン……」

 

 それ以上言って良いのか?自分を晒す覚悟があるのかそんな気持ちを込めてレイフォンの名を呼ぶ。その言葉がきっかけになったのだろうかそれまでどこか迷いを感じさせていたレイフォンから力が抜ける。

 

「……大丈夫、僕は……グレンダンで天剣授受者と呼ばれていた」

 

 そして語りだす。

 私にとっては二度目のレイフォンの過去、果たしてメイシェンは受け止めきれるだろうか?友人としては受け止めてやれると断言してあげたいところだがいまいち不安だ。今は一緒にいてやることしかできない。

 

 話が闇試合に関わったところまで進むとナルキが動揺したのが気配で伝わってくる。正義感が強いナルキには衝撃的な話なのだろう。だが、最終的にナルキは受け入れると思う。レイフォンの孤児を助けたいという根源が理解できるはずだからだ。そう信じる。

 

「……それで、どうなったの?」

 

 メイシェンが勇気を絞り出すようにして聞いた。

 

「ばれたよ。それで天剣を剥奪されて都市外退去を命じられた。猶予期間をくれたり、財産を没収されなかったのは陛下の慈悲だね。おかげで園にお金を残すことができた」

「……それで、ここに?」

 

 ナルキが呟くように問う。

 

「そう……僕は間違った選択をしたのかもしれない。でもそれによって救えた人がいる限り後悔はしないって決めたんだ」

「レイフォン……」

 

 レイフォンは全てを言い尽くしたのかこちらの反応を待っている。

 

「……わ」

 

 口を開いたのはメイシェンだった。

 

「わたしは……」

 

 震えながら声を絞り出したメイシェンが、そこで言葉を止めた。

 

「わたしは……レイとんのことを信じたいです」

「メイシェン……」

 

 そこで黙り込んでしまったメイシェンを見て私は思う。信じたい、か。信じるではなく信じたい。まだメイシェンには判断がつかないのだろう。その判断をするには時間が考えをまとめる時間が必要なのだろう。

 

 次に口を開いたのはナルキだった。

 

「レイフォンの過去、重いな……正直あたしはどう受け止めて良いのか分からない……だが、そんな過去を話してくれたことは嬉しく思う。私達を信じてくれたってことだからな」

「ナルキ……」

 

 ナルキが引っかかっているのは闇試合に出たことだろう。彼女の正義感がそれを許容できないのだ。だが、そこを認められなくともレイフォンを受け入れようとしてることは分かる。

 

「わたしは別に問題ないと思うよ、それより天剣授受者について詳しく教えてね」

「ミィフィ……」

 

 ミィフィがあっけらかんと言い切る。ミィフィは闇試合に関わったこと自体問題とも思っていないようだ。

 

「この前も言ったけど私は間違っているとは思わないわ。だって、必死に生きた結果なんだもの、誰にも努力だけは否定できないわ」

「アニー……」

「みんな……ありがとう」

 

 レイフォンが泣きそうな顔でそう言う。

 

「それより!アニー知ってたんでしょ!ずるいよ!」

「えっ、今そこ気にする?」

「当然!」

 

 ずるいずるいと騒ぎ出すミィフィをなだめている内にいつも通りの雰囲気になっていくのを感じる。もしそれを狙ってやっているのであればミィフィに感謝しなくてはいけないだろう……まぁ、そうじゃないと思うのだが。

 

 ミィフィをなだめて、話を本筋に戻す。レイフォンの過去の話は重要な話ではあったが今日の本題ではなかったからだ。

 

「それでニーナ隊長の事だけど……」

「……なんで隊長の様子が変なことが気になってるか、だったよね……けっこう、気に入ってるんだ、小隊の連中のこと、だから、なにかあるんなら手伝いたいと思ってる」

 

 レイフォンがちょっぴり恥ずかしげに心の中をさらけ出す。

 

「……そういうのなら、別に文句ないんだけど」

 

 本当にそれだけ?という言葉が聞こえてきそうな感じでミィフィが言う。

 

「まぁ、あたしは最初から手伝えることがあるならするつもりだったがな。渋ってるのはミィ一人だ」

「うわっ、ナッキずっこい!」

「あたしは少しも疑っていないからな」

「うっそだぁ!ナッキだって気にしてたじゃん」

「あたしが気にしていることと、ミィが気にしていることは違うよ」

「一緒だよ」

「違うな」

「一緒!」

「違う」

「いいや、ナッキだってそっちは絶対に気にしてたね、絶対、絶対の絶対、レイとんがあの隊長さんとかフェリ先輩とかあの手紙の子とか……あっ」

「……ミ~ィ~?」

 

 珍しくメイシェンが本気で怒っている。

 

「あわわっ、ごめん……でも気になるじゃない」

「そりゃ気になるけど……」

「でしょ、良い機会だし教えてもらおうよ!っと言うわけでリーリンさんについて教えて!」

「えっ?リーリン?」

 

 話がどんどん飛び火していく。その様をしばらく見守った後、流石に話が飛びすぎだと口を出す。リーリンというのはレイフォンの幼馴染で文通の相手だとか言う人の事だろう。

 

「はいはい、それぐらいにして本筋に戻りましょ」

「ぶー、アニーのまじめちん」

「良いわよ、まじめちんで、今はニーナ隊長でしょ」

「うー……それでどうするのよ、様子が変だってことしか分かってないんでしょ」

「直接聞いてみるか?」

「う~ん、それで話してくれるかな」

「じゃあ、尾ける?」

 

 結局しばらく話し合ってもこの2つ以上の案は出ず、尾行することが決定してしまう。放課後すぐに訓練が始まるので尾行は訓練が終わった後からということに決まりその場は解散する。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。