監獄長は愚痴りたいようです。   作:カワサギ

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 お久しぶりです

 ちょっとした心理描写をしてみましたが、やったことがないので
おかしいかもしれないのでその時は言って下さい



仕事が始まる前に仕事

 ため息をつき、鈍い痛みを発する頭を眼前のアイリス様に向け……

 

 「アイリス様、すぐにサトウカズマを処分しましょう、大丈夫、責任はお……」

 

 「だッ…駄目です!じゃなくておねがいがあって……」

 

 「いえ駄目です!!!ただでさえ老害共がアイリス様に近づこうとしてるなかで!

そんな危険を絵に描いたような人物とかかわっては……」

 

 「頼めるのは貴方しか……」

 

 涙目に上目づかいにお願いは最強だよなぁ……

俺も年をとったな、幼女に弱くなるたぁね

誤解を生みそうなのでいっておくがロリコンではない

 

 

 

 

 サトウカズマが指輪を盗んだ犯人ということを墓まで持って帰る

この事実を知った人間は抹殺すると(※いわれてません)

探そうとするやつは何とかする……か……

 

 確かにこれは最高に難しい、国王は血眼になって犯人を捜している

次期にキチガイの集まりと言える監獄管理員にも声がかかるだろう……

こいつらが大問題、キチガイだが腕は立つ、王国の精鋭たち

 

 国王すら敬遠する奴らだが、アイリス様の件となれば重い腰をあげるだろう

このキチガイども、もとい、義妹共に

に活動をおこさせない、特にアイズにはな

アイツの目は悪魔すら恐れる見通す目、そんなものを使われたら即バレ死刑

 

こればかりはアイリス様の力ではどうにもならんし俺も加担したとして

死刑なんてまっぴら御免被る

 

 しかしこちらの心も未来も視られる以上、普通にお願いしても意味がない

どうしたものか……

 

 考えながら歩いているうちに反対側からアンダーリムの眼鏡をかけた、ガタイのいい執事が俺のほうに向きながら走り、唐突な自己紹介をする

 

 「失礼いたします!監獄長ゼスト様!ワタクシ王家直属執事、ロハンと申します!!!」

 

 挨拶のような自己紹介にこちらも挨拶して返すと、せっかちなのか用件を喋り始める

聞けば俺が居候しているハルトマン家に俺宛の手紙が隣国、シャムザードから届いたらしい

重要度が高いとのことなのでどういう風の吹き回しか、王家直属執事のロハンが俺に急いで渡しに来たと言う

 

 「義父様はなんと?」

 

 手紙を届けることを依頼したであろうバーナード家の主のことを聞くと

ロハンはンンっとのどを鳴らし姿勢を再びなおしながら答える

 

 「『ゼストも人の子、フィールも同じく人の子、彼らの道は彼らが決める。

だが、しかし、孫の顔はみてみたいのぅ』と、申しておりました!」

 

 孫の顔……だと……!?いやな予感が脳裏をよぎり、冷や汗が頬をつたっていく

いや、いつかあるかもしれんとは思っていたが、それが俺とはかんがえもしなかった

ロハンは澄んだ瞳でこちらの気も知らず「如何!!!お返事いたしましょうか!!?」などと

催促してくる

 

 悪気はないのだろう、しかし空気はよんでくれ、じゃなきゃそうだな……

一発ぶん殴らせてくれ、頼む最後のお願いだから

と、心の中で思いつつ、いつものように真顔で答える

 

 「……フィールを応接間に呼んで、ロギンスを舎監室に連れて来い、義父様には善処します

と伝えておけ」

 

 「かしこまりましたゼスト様、いいえ、サナダレンミ様」

 

 なぜ言い直したのかということと、言葉のの頭に力を強める言い方をやめてくれないか

なんていう話をしたが韋駄天のごとき速さで逃げられる

 

 

 なぜだろう初対面のはずなのにすごく見知った仲のような気がする執事だった

あとで一発殴ろう

そう心に思いを秘めつつ、大問題であろう手紙を開く

 

 『(中略)つきましては、フィール・ハルトマン様、ゼスト・バーナード・ハルトマン様両名に我が息子と娘とともに開く小さな茶会への招待を――』

 

 淡々と目を通していき、『進展次第では』という一文を目にした瞬間、そっと手紙を閉じた

そっとこころの中で、クソめんどくさいことになったとぼやきながら、地下の舎監室へ向かった

 

 

 

 

 「なんで俺が、よばれたんですかねぇ」

 

 ツンツンした長めの髪を後ろで止め、私服ともいえる執事服をきた

我が愛おしき義弟、ロギンス・ハルトマンはそれはそれは不服そうな顔でまっていた

ほんとだよな、なんで俺もお前を呼んだのかわかんねぇよ

 

 「義兄さん、そんなに急ぐ用なの?家にいるときみたいな変わった服じゃなくて、

王国指定の監獄長服に帽子までつけたまんまなんてさ」

 

 そういわれれば勤務時間は終わっているのに着替えずにロギンスを呼んでしまったな

最初はこの中二臭い赤と、黒を基調とした服を嫌がったものだが慣れると何とも思わないものだな

 

 それはそうと、俺の今後を左右するこの事案を早急に対処するための相談をしなければ……

まぁ、言えることは一つで……

 

 「面倒なことになった」

 

 手紙の内容を説明すると、ロギンスの顔がさらに険しくなった

そりゃ家にとって一番の問題で一番の頼りともいえるこの俺に

 

 「お見合い……デスカ……」

 

 デスカの発音がおかしくなるほどショックを感じているのだろうか、

コイツ死んでくんないかな。とでも思っているのだろうか、

恐らく後者だが後者だったらあとで燃やし尽くしてやろう

 

 「俺としてはなあなあで済ましたいが、が!」

 

 「義兄さんだけじゃなくて、あのフィールか……」

 

 そう、あのフィールなのだ……今までにきた見合い話をすべて断り、その見合い相手の大半を

泣かした慈悲なき令嬢、あいつのせいで一体どれだけの男が見合いを考え直したものか……

 

 今回の相手は一言で表すと『気弱なデブ』。フィールは張り合いのない男は嫌いだし、

そもそもデブは嫌いだし、貴族が嫌いというこいつどう結婚するんだよレベルの

銀髪ロングのゴシック服に触り心地のいい肌をしたなんやかんやでデレてくれるかわいいやつ

何だよなぁ……

 

 「キモッ。」

 

 こちらの心を見透かされたようだが、いつもの真顔を貫き通し、

フィールが待っている、行こうと、ロギンスを舎監室から連れ出す

後ろでずっとうわぁ、だのないわーだのと言ってくるが気にしない

 

 なぜかって?なぁに、今にわかるよ

ちなみに、フィールはゴシックファッションの服を着ているだけで

ゴスロリではない、ちゃんとした美人であって、ロリータではない

 

 

 

 

 

 「俺だ」

 

 「名を」

 

 ドアをノックし、いつものように声をかけるが

辛辣に返されてしまった、笑っているロギンスの右小指に一瞬火をつけて、黙らし

名を名乗るとどうぞと許可をもらった

 

 「いつものように見合い話ですか?何度も言いますが私の理想の男性は……」

 

 「なぁ、姉さん、そろそろさ、父さんを安心させるために譲歩しても……」

 

 バッカお前、今横から入り込んだら……

 

 「私が話してるのはゼスト様であって貴方ではないわロギンス、

気が短いと象徴も小さくなるのね、そんなんだからアリアを満足させられないのよ、

毎回毎回、『ゼスト様やアイズ様のような方と一緒になりたかったわ……お二方ともさぞや

大きなものをお持ちなのでしょう……』なんて(とろ)けた顔で——」

 

 「わぁー!!!わーーー!!!」

 

 相変わらずエグイ攻撃だ……ロギンスが一番気にしてることを指摘しただけでなく

嫁が愚痴ってた話までだすとは……

 

 軽く引いてるとフィールがこちらに向き直る、

目の前で苛烈なやりとりがあったために言葉を失っていたが

受けたくもないお見合いに毎回行ってくれるフィールをおもって

 

 「その……なんだ……なんだかんだで家のこと考えてくれるお前だしさ、

お礼とか何でもするから……な?」

 

 「お礼ですか……」

 

 お礼という言葉にぐらついたか、不機嫌だった表情を改めてくれた

これは落着かなと思ったが

 

 「では、家族みんなでお風呂に入りましょう!

ゼスト様は髪を洗うのがお上手ですし、アイズお義兄様はお背中を流すのがお上手なので、

きっとアリア達も……」

 

 「やめておけ」

 

 こいつなんて突拍子のないこと言いやがる……

異性同士で風呂はいる提案だけでなく、ロギンスにとどめまで……

確かに数回、魔王軍だの身内のせいでこいつと一緒に風呂に入ったことがあるが

そういうのなしでいいだすとはね…

 

 「ゼスト様の下心を理解したつもりだったのですが……」

 

 余計なお世話だっつーに 

 

 「話はついたな、支度しろ、長支度ぐらいは待つ」

 

 釣れないですね、といった顔でフィールは支度をするために、更衣室に向かう

何を言おうと荷物は持ってきている、出来た義妹だ

 

 フィールの負担が少しでも減るようにと思ってと

 

 「なんかあったらいつでも俺を頼れよ、俺はお前の兄だからな」

 

 声をかけたが、

 

 「人を殺した異形の義兄(あに)……ですけれどね……」

 

 暗い顔でそのまま応接室をでていく

反論する言葉も特になく、感触のいいソファーに座る

 

 「アイツ……」

 

 いつの間にか復活していたロギンスを黙って座らせ、フィールが用意してくれたであろう

紅茶に口をつける

 

 「フィールの態度は当然だ、お前が怒ることじゃない」

 

 感触がいいはずのソファーは心地悪く、いつも甘めな紅茶は、少し苦く感じた

 

 

 

 

 「ねぇ、聞いてラクワ、またお義兄様(おにいさま)に冷たくしてしまったわ」

 

 メイドとフィールのたった二人だけの更衣室で髪を梳かしてくれているメイドに

悲しげにぼやく

 

 「兄、そうお義兄様が言っただけで反応してしまうこと、どうにかならないかしら?

怖くなって足早に出てしまったけれど……」

 

 「大丈夫です、ゼスト様はいつでも赦してくれます、フィール様が

素直になれば、自分の心に素直になれば、ゼスト様はよくいったと、抱きしめてくれます」

 

 悲しげな表情を、無理やり笑みに変えて

 

 「そう、素直になれば……赦してくれるわよね……」

 

 更衣室にはかつて黒かった銀髪を梳かす、小さな音だけが残った

 




イエスロリータ

ノータッチです

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