ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
「花丸ちゃん、さっきのアレですぐに戦えるか?」
俺は隣に立ってる茶髪の後輩にそう聞くと、彼女は横に頭を振った。
「あの機体はまだ最後の調整が……5分もあればなんとかなるずら」
「5分か……」
正直言うと、一人でそれだけの時間を稼ぐとなると普通に厳しいと思った。一人はU15の世界大会優勝者、そしてもう一人はかの世界大会で優勝候補の一人をサポートしてた男。片方だけならばまだしも二人ともとなると敗北は必死だ。
「ならば僕がその時間を稼ぎましょう」
「緒川さん!?」
と、ならばと声を出してきた秘書の緒川さんが眼鏡を外しながらそう言った。
「実力はそこまでですが、少なくともあのナイン・バルトを足止めするぐらいなら……」
そう言って緒川さんは懐から自らのガンプラが入ってるであろうケースを取り出した。まさかガンプラバトルを遊戯と言ってる人の秘書がやってるとは思わなかったが。
「……良いですよね、ボス?」
「構わん、娘を助けるためだからな」
つっけんどんに言ってるが、恐らく心配してるのだろう源十郎さんの目はかなり鋭く尖っていた。
「……ならナインバルトの相手は任せても?」
「お任せください」
そう言って俺達はフィールドの前に立ち、それぞれの機体をフィールドに乗せ、部屋にプラフスキー粒子が満ちた。
今回は機体に『ハイマニューバ2型』のシールドを追加で左手に装備させる。そうでなければ恐らくバスターライフルの一撃は防げないだろうという個人的な判断だ
「天ノ川昴、『ジン・AHM』……出るぞ!!」
フィールドはどうやら白い煙に包まれたデブリ帯の中だった。
「緒川さん、聞こえますか」
『はい、通信は大丈夫です』
隣に並走する黒いNストライク……『シノビストライク』からの声に安堵する。一見なにも装備してなさそうに見えるのだが、緒川さん曰く、どうやらアーマーシュナイダーを格納してる部分に手持ち武器を内蔵してるだけだという。
しかしなんというか……
「『ストライク』と『ジン』が並んで戦うのも妙な話ですよね」
『まぁ……原作を見てる方なら確かにそうかもしれませんね』
まぁ別にこんなことはガンプラバトルでは日常茶飯事だし……と言ってるそばからレーダーが警告を鳴らした。
すぐさま散開すると、真正面から緑色のビームが連続して細かく飛んできた。
「これはバスターライフルのビームじゃない……てことは!!」
俺はそう言いながら肩のビーム砲を展開して発射する。途中デブリを貫通するが、流石に回避されたのか手応えはない。
「とりあえず、姿を見せて貰おうか!!」
スラスターを目一杯に吹かせて接近し、その姿をモニター越しに視認した俺は舌打ちを禁じ得なかった。
全身を真っ黒に染め、腹部にビーム砲と背中に特徴的な二つの砲門、さらに手は連装ビーム砲となっているが、その機体の姿と名は――
「『ハイペリオン』か!!面倒な!!」
ハイペリオンガンダム……『SEED MSV X ASTRAY』に登場する連合のMS。絶対防御と吟われたアルテミスの光学シールドをMSに転用できないかということで開発され、『カナード・パルス』によって運用されたMSだ。
その強みは内からは通し、外からは遮断するという特殊光学防御兵装『アルミューレ・リュミエール』だろう。その防御性能はGNフィールドとほぼ互角と考えて良いほどに高い。
そして同時に、ガンプラバトルでそれを……『アルミューレ・リュミエール』を使いこなせるパイロットは数が少ない。俺が知ってるのでもプロ以外ならダイヤさんだけだ。
『そうだ、この『ハイペリオン・ミラージュ』を簡単に倒せるなどと思うなよ!!』
『なら僕が相手をさせてもらいましょう!!』
自信満々に言うナイン・バルトに、後ろからビームの刃を展開させたアーマーシュナイダーを構える『シノビストライク』が接近戦を仕掛ける。
『甘いぞ!!』
だがそれも承知とでも言うように、ビーム砲となっている指先からビームサーベルを両手3本ずつ、計6本展開すると、それをぶつけ合う。
『く、やはりそちらの方が作り込みが高い!!』
『脆そうな短剣のビームサーベルで互角か……!!』
すぐに距離を取ったストライクを、指からの連続ビームで追い討ちする所を俺はアサルトライフルを抜こうとする。が、
『昴さんは早く善子さんを!!こちらは作戦通り僕がなんとかします!!』
「ッ!!分かりました!!」
本来の目的である足止めのをするという緒川さんの言葉に、俺はすぐにその場を離れる。恐らく善子もすぐ近くに……
「!?高エネルギーアラート!?」
すぐに射線から離れようとスラスターを目一杯吹かすが、次の瞬間、まるで狙ったように巨大なオレンジの光……バスターライフルのビーム砲が飛んできた。だが、
「想像よりデカイだと!?」
まるでMAサイズの砲撃かと錯覚するほどの出力に驚きながら回避運動を続ける。若干鶏冠の部分に掠りかけたが、なんとか前進すると、撃った張本人である津島善子の機体が……なに?
「『ウィングガンダム0シフェル』……じゃない?」
そう、想定していた機体……津島善子の『ウィングガンダム0シフェル』の姿とは違う機体がそこには浮いていた。確かにそれも『ウィングガンダム0(EW)』をベースにしてるのはなんとなく分かる。だが細部が違いすぎた。
『ウィングガンダム0シフェル』は黒く塗られた『ウィング0(EW)』の特徴ともいえる翼に、右手に長砲身のバスターライフルと、左手のビームサイズを装備した超高火力型機体だった。
だがそこにいたのは、翼が作為的にボロボロの状態に加工され、禍々しく毒々しいペイントをされた『ウィング0(TV)』ツインバスターライフルを握ったガンプラの姿がそこにあった。
「なんだ……あのガンプラは!?」
体を襲う圧倒的な威圧感……いや、恐怖に呼吸が薄ら寒くなってくる。それほどまでに異常な姿だった。
見てくれはただのボロボロになっただけなはずだというのに、寧ろ何を仕掛けてくるか検討がつかないという矛盾が体を縛ってくる。
『……そんな羽虫みたいなガンプラで、私に勝てると思ってるわけ』
通信越しに聞こえる声に、漸く現実に引き戻された感覚で睨み付けるが、ヨハネはまるで気にしないとでも言うように無表情だ。
「そっちこそ、自分の愛機を使わないで俺に勝てるとでも思ってるのか?」
『……私の愛機が何かは分からないけど、この『ロストウィングガンダム』に恐怖してた人が勝てるわけないわよ』
「言ってくれる……な!!」
不意打ちとばかりに肩のビーム砲を発射するが、まるで意に介さないとでも言わんばかりに、まるでステップを踏むような動きで躱してくる。
「ち!!やっぱり動きが見えてやがるのか!!」
本人から聞いたこととはいえ、自分が実際に相手をするとなるだけでかなり辛い。射撃戦はアサルトライフルの連射ですら完全に避けるだろうと考えると、自分の手札が半分近く減らされる。そのうえ
(『アシムレイト』を発動できないのも最悪だな)
俺のアシムレイトは、味方や対戦相手すら強制的にアシムレイト化させる。だが今回の場合、それをすれば津島善子……今はヨハネか?それの粒子が見えることと組み合わせて手を付けられない状況になる。
これが味方なら二の句も告げずに発動してるのだが、時間稼ぎをしなければならない状況でそれは完全に悪手、最悪疑似『ゼロシステム』状態何てことになって詰む可能性が少なくない。
「たく、今年の一年は厄介すぎるんだよ……」
やれやれと俺は呟きながら、目の前の後輩であり強者に突撃をするのだった。
機体紹介は次の昴&花丸回で行いたいと思います