紅蓮の闘志、黄金の牡丹   作:ザキール本多

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 キャッシーちゃんは不憫可愛いと思います。もっとキャッシーちゃんの可愛さを引き出せれば……ッ!悔やまれるばかりです。


第七話 神代凌牙奪還作戦

「ええ、はい。神代くんは気を失っているようなので病院へ連絡をお願いできますか」

 

 Dパッドで教員に連絡をいれ、凌牙を病院に搬送してもらう。そして天城カイトが凌牙から奪ったナニカを取り戻すためにも天城カイトを追いかけなくてはなりませんが、相手は単独飛行が可能なため今から追うというのは現実的ではありません。ゆえに策を講じます。

 

「もしもし、こかげさん。今日は何時から予定空けれますか?できるだけ急いでもらいたいのですが……ええ、では2時間後」

 

 とりあえず情報収集も一応やっておきましょうかね……ナンバーズハンターについてといったところですか。

 

「アストラルー!」

 

 中等部1年生が数人、屋上へと突入してきて、少しするとこちらに気づき声をかけてきました。

 

「シャーク!なぁアンタ!シャークに何があったんだ?」

 

 声をかけてきた彼は以前凌牙に頼まれて様子を見た少年、九十九遊馬。凌牙はただの後輩だといっていましたが……

 

「シャーク?ああ、凌牙のことですか。侵入者……カイトと名乗る青年に襲われたんですよ。そして凌牙から何かを奪っていきました」

 

「シャーク……魂を持っていかれたのか……俺が必ず助けてやるからな!」

 

「ちょっと待ってください、魂ですって?」

 

「ああ、カイトはデュエルに勝ったときに相手から魂を抜くんだ」

 

 なるほど、以前ジンという男にも同じようなことをしていましたね。魂を抜く、ですか。そういえば以前港湾倉庫でやりあった男もそんなことを言っていましたね。

 

「なるほど、そうですか。彼のことは私も追って見ましょう。それと凌牙を迎えに教員が来るはずですので立ち去っておいたほうがいいと思いますよ。非難命令にも従わずにいたって言うのは色々と心象悪いでしょうしね」

 

「そ、そうか!じゃああとでお見舞いに行くからシャークの病室とかちゃんと教えてくれよな!」

 

「ええ、それでは」

 

 やはり、凌牙にも友人が出来たんですねぇ……感慨深いものです。さて、ナンバーズハンターの情報は……と、ハートランドに出入りする様子が度々目撃されているが、詳細は不明。といったところでしょうか。さすがにこういうところに流れている程度の情報で足取りはつかめませんか。

 

「彼が被害者かね?」

 

 おっと、教員のお出ましですか。意外に早かったですね。ほとんど九十九君たちと入れ違いじゃないですか?あれから3分と経っていませんよ。

 

「ええ、気を失っているようです。先ほどから呼びかけに応えないので危険な状態の可能性もあります。できれば救急車を呼んでいただきたいのですが」

 

「ああ、その話はすでに聞いている。あと2分ほどで駆けつけるだろう」

 

「ありがとうございます。あとはお任せしますね」

 

 ふぅ、意外とすんなり抜け出せましたね。ありがたいことです。さて、一応こかげにメール飛ばしておきましょうか。

 

 

 

「メールでも聞いたけど、この男はなんなの?」

 

「人の魂を奪うという凶悪犯ですよ。私の友人も被害にあいましてね」

 

「ん、わかった。それじゃあアタシに任せときなさい!必ず見つけ出してやるわ!」

 

 こかげはそういうと大型のPCに齧りつき、無数のデータの羅列と格闘し始めた。

 

「データ走査プログラム?サイバー警察にしては随分と法をぶち破りそうな手を使ってくるのね」

 

『バグマン!バグマン!』

 

 画面のあちらこちらを爆弾の頭部をもった子供たちがせわしなく駆け回る。

 

「ハックされてません?大丈夫です?」

 

「今、何とかしてるのよ!ああ!腹立つわっ!無駄な遊び心加えちゃって!よし、害虫駆除完了!続けていくわよ!」

 

 爆弾小僧たちがピクセルに分解され消滅していき、そこから数分と立たずに画面に次々と防犯カメラ画像が表示されていく……

 

「港湾区の辺りに潜伏しているんですかね?」

 

「そうみたいね、港湾区を重点的に探すわ」

 

「人間が潜伏しているのなら、他の建物と比べて消費電力量とか多いんじゃないですかね?」

 

「そうね、そのセンで行くのはアリだと思うわ!ネットワーム出動よ!」

 

 データの羅列がウネウネと動き出したかと思うと画面に表示された港湾区のマップの建物にムカデのような動きで吸い込まれていきます。

 

「んー、港湾区第4埠頭倉庫の消費電力量が異常な上に権利者はハートランドシティで詳細情報がSSSシークレット指定されているわ。これはとんでもなくキナ臭いわね」

 

「分かりました、第4埠頭ですね」

 

「こっちはセキュリティのブチ抜きを試みてみるわ。お姉ちゃんが被害に遭う前に頑張ってきなさいよ!」

 

 ああ、珍しくこかげがやる気を出したかと思えばやはりそういうことでしたか。本当にお姉ちゃんっ子ですねぇ。

 

 

 

「さてと、第3埠頭……第4埠頭っと、ここですね」

 

 何故か海上に円形の土台を埋め立て、そこに建てられた倉庫群、埠頭倉庫。一応閉じられている門扉を飛び越えて内部へ踏み込むと、そこには先ほどの中等部組の姿がありました。

 

「どうしてここにいるんです?」

 

「あ、アンタはさっきの!クソ、ここのゲートが開かないんだよ!」

 

「ゲートの開錠ですか。こかげ、どうなっていますか?」

 

 Dパッドの通話を繋げっぱなしにしていたこかげに確認をとる。

 

『ネットワームを圧縮処理して侵入させてあるわ。コンソールでevolanihって入力したら解凍できるわ』

 

「了解です。ささっとやってしまいますよ」

 

 コンソールに指定されたパスワードを入力しているだけですが、中等部の面々のキラキラした視線が痛いです。

 

「さぁ、開きました。とっとと天城カイトから凌牙の魂を返していただきましょう」

 

 倉庫の扉が重苦しく開く。入り口付近はカムフラージュのためか雑多な荷物が積まれ、埃を被っていた。そして暗がりの中から2つの影が現れる。一つは多脚型のロボット、もう一つは二足歩行ではあるが5メートルはあろうかという大型のロボットであった。

 

「おやおや、大歓迎ですね。行きますよ!」

 

 まずは多脚型の足に一回転の回し蹴りを叩き込み、体勢を崩します。そして二足歩行型の拳を多脚型へ逸らし、被弾の回避と敵へのダメージを両立。さらに放置されていた鉄パイプを握りこんで動きが止まった二足歩行型のアイカメラを破壊します。

 

「そういえばこかげ、ミントちゃんはこういうの好きですっけ?」

 

『嫌いだよ、大嫌い』

 

「じゃあ別にスクラップで大丈夫ですね」

 

 そのまま鉄パイプでゴリゴリと頭部の内側の配線を掻き乱し、二足歩行型を行動不能に追い込み、多脚型のほうはそもそも二足歩行型の拳でフレームがひしゃげたためかうまく動けないようです。別にたいしたことしてないんですからそんなキラキラした目で見ないで下さいよ。

 

「さぁ、先を急ぎましょう」

 

「強くてかっこよくて綺麗で……すごいです!」

 

「とどのつまり、憧れます!」

 

 憧れるとか直接言われると中々照れますねぇ……などと考えながら異様に広い倉庫の地下空間を走っていると、通路の前後で隔壁が降り四足歩行のロボットが前後に2体ずつ計4体で私たちを取り囲みます。

 

「っ!ここは私が引き受けます!前方のコンソールからネットワームプログラムの解凍処理を行えば、この区画のシステムをハックして隔壁を開けられるはずです!」

 

「任せてください!」

 

 さて、先ほどとは違いこの空間に武器となるものはありません。この状況をどう攻略したものでしょうかねぇ……

 

 鋭い爪がぼたん目掛けて振り下ろされる。だがしかしその爪は空を切り、床材を浅く切り裂く。前方からの爪攻撃を後ろとびにかわしたぼたんの胴を食いちぎらんと後方に控えていた機械犬が動きを見せるが、ぼたんは下あごを蹴り飛ばして床に着地、片手で一瞬全体重を支えた後、スライディングに移行し噛み付かんとした機械犬の後ろ足を蹴りぬく。

 

「今のうちだ!行け!委員長!」

 

 2匹を同時に相手取ったぼたんに対し機械犬たちの警戒度が上がった隙を見逃さず、委員長と呼ばれた少年はコンソールにたどり着く。無論、少年を委員長と呼んだ恰幅のいい少年もただ叫んだわけではない。機械犬の胴に体当たりをかまし、大きく体勢を崩すことに成功しているのだ。だが、相手は機械。いくら攻撃しても人の力では板金の皮膚に大きなダメージを与えることはできない。一方、人間は被弾イコール死、とまではいわなくても骨折以上の大怪我は間違いないだろう。確実に全ての攻撃を回避しなくてはならないという状況は死線を潜ってきたぼたんには平気でも、一般人である他の面々の精神を確実に蝕んでいた。

 

「クソッ!デュエルならこんな奴らに負けねぇのによ!」

 

『デュエル』

『デュエル』

『デュエル』

『デュエル』

 

 4体のロボットが恰幅のよい少年の悪態に反応して変形を始める。

 

『『『『デュエルモード、スタンバイ。侵入者をデュエルによって排除します』』』』

 

「へへっ!デュエルなら負けねぇぜ!」

 

「キャット、遊馬のためならがんばれるんだから」

 

「受けてたってやるぜ!」

 

 皆が口々に闘志を示す、やる気は十全のようだ。

 

「いえ、遊馬君は先に行ってください」

 

「何でだよ、委員長!」

 

「遊馬君のデュエルはナンバーズ頼りです。アストラルがいないときはナンバーズが無いんですよね?」

 

「ああ、そうだぜ?」

 

 委員長の言いたいことを理解できずに返事を返す遊馬。

 

「だから!今の遊馬君じゃコイツらに勝てないってことですよ!分かったらさっさとアストラルを迎えに行ってください!」

 

 委員長はトンと遊馬を突き放すが、その言葉の裏に隠された意味を理解し遊馬は駆け出した。

 

「分かったぜ、委員長。鉄男、キャットちゃん、負けるなよ!」

 

 ああ、青春していますねぇ……素晴らしい友情です。っと、感動してないで目の前のコレを片付けちゃいましょうか。

 

「『決闘!』」

 

 オービタル4

  LP 4000 手札5

 

 澱姫 ぼたん

  LP 4000

   手札

    〈アテナ〉

    〈トレード・イン〉

    〈ワン・フォー・ワン〉

    〈堕天使スペルビア〉

    〈堕天使テスカトリポカ〉

 

 おっと、恐ろしく恵まれた初期手札ですねぇ。素晴らしい引きです。

 

『こちらの先攻、ドロー。〈A・O・J サウザント・アームズ〉を召喚。永続魔法〈機甲部隊の最前線〉〈マシン・デベロッパー〉を発動。〈マシン・デベロッパー〉の効果、機械族モンスターの攻撃力が200ポイントアップ。ターンを終了』

 

 〈A・O・J サウザント・アームズ〉攻撃力 1700→1900

 

 ふむ、A・O・Jデッキですか。光属性メタデッキですが、幸いサウザント・アームズは全ての光属性モンスターに攻撃するだけです。アテナの攻撃力に届いていない以上、私のデッキにとって障害ではありません。

 

「私のターン、ドロー。スタンバイフェイズの処理はなし」

 

 ドローカードは〈堕天使ユコバック〉なんて素晴らしい引きなんでしょう。今日はツイてますねぇ!

 

「メインフェイズ、私は〈トレード・イン〉を発動、手札の〈堕天使スペルビア〉を墓地に送りカードを二枚ドローします」

 

 ドローカードは〈神の居城―ヴァルハラ―〉と〈堕天使ルシフェル〉。これはすばらしい手札です。

 

「〈神の居城―ヴァルハラ―〉を発動。効果により手札より〈アテナ〉を特殊召喚します。そして〈ワン・フォー・ワン〉を発動。手札の〈堕天使テスカトリポカ〉を墓地へ送り、デッキから〈天帝従騎イデア〉を特殊召喚。〈天帝従騎イデア〉の特殊召喚時効果によりデッキから攻撃力1000、守備力800のモンスター一体を守備表示で特殊召喚します。私が選択するのは〈冥帝従騎エイドス〉、〈冥帝従騎エイドス〉の特殊召喚時効果によって、私はこのターン通常召喚とは別にアドバンス召喚する権利を得ます。私は〈堕天使ユコバック〉を召喚、〈堕天使ユコバック〉の効果によって私はデッキから〈堕天使の戒壇〉を墓地へ送ります」

 

 〈アテナ〉     攻撃力 2600

 〈堕天使ユコバック〉攻撃力 700

 〈天帝従騎イデア〉 攻撃力 1000

 〈冥帝従騎エイドス〉守備力 800

 

「すげぇ、あっという間にモンスターが4体も……」

 

「デュエルも強いなんてますます憧れます!」

 

「そして追加された召喚権で〈天帝従騎イデア〉〈冥帝従騎エイドス〉の二体をリリースし〈堕天使ルシフェル〉をアドバンス召喚。〈堕天使ルシフェル〉のアドバンス召喚時、手札、デッキから「堕天使」モンスター一体を特殊召喚できます。私は〈堕天使マスティマ〉を選択。天使族モンスターが特殊召喚されたことによって〈アテナ〉の効果が発動。600ポイントのダメージを相手プレイヤーに与えます。〈アテナ〉の効果を発動し、〈堕天使ユコバック〉をリリースして墓地の〈堕天使スペルビア〉を特殊召喚。〈アテナ〉の効果で600ポイントのダメージを与え、〈堕天使スペルビア〉の効果によって〈堕天使テスカトリポカ〉を特殊召喚。もう一度〈アテナ〉の効果が発動し、600ポイントダメージを与えます」

 

 〈堕天使ルシフェル〉  攻撃力 3000

 〈堕天使マスティマ〉  攻撃力 2600

 〈堕天使スペルビア〉  攻撃力 2900

 〈堕天使テスカトリポカ〉攻撃力 2800

 

 オービタル4 LP 4000→2200

 

「フィールドに最上級モンスターが5体も!?」

 

「壮観ね……」

 

「しかも相手のライフを半分近くまで削っています!」

 

「〈堕天使ルシフェル〉の効果を発動、フィールド上の「堕天使」モンスターの数だけデッキを上から墓地に送り、その中の「堕天使」カードの枚数分だけライフポイントを500回復します」

 

 墓地へ送られたカード

 〈背徳の堕天使〉

 〈カオス・ソルジャー―開闢の使者―〉

 〈帝王の烈旋〉

 〈堕天使ディザイア〉

 

 うっ、ディザイアが落ちましたか。出来ればこのターンで決めたいですねぇ。

 

「「堕天使」カードは2枚、よってライフを1000回復します。バトルフェイズへ移行、〈堕天使マスティマ〉で〈A・O・J サウザント・アームズ〉を攻撃」

 

 澱姫 ぼたん LP4000→5000

 

『〈A・O・J サウザント・アームズ〉効果発動。光属性以外のモンスターとの戦闘時、このカードはダメージ計算を行わず破壊される』 

 

 よし、自壊効果のおかげで〈機甲部隊の最前線〉の効果で後続を呼ばれることもありません。いっきに片をつけてしまいましょう。

 

「〈アテナ〉〈堕天使ルシフェル〉〈堕天使テスカトリポカ〉〈堕天使スペルビア〉で直接攻撃」

 

 オービタル4 LP 2200→-8100

 

 Win 澱姫 ぼたん

 

 敗北したロボットはクレーンでどこかへ運ばれていきました。まさかデュエルだけで切り抜けられるとは……そういえば宝石店のショーケースも暗号とか鍵とかじゃなくて詰めデュエルらしいですし、ほんとこの世の中はデュエルで解決できることが多すぎです。まぁ解決できない物事もあるんですけどね。

 

 

 

『最重要ブロックへの侵入者を確認。機密保全のため爆破します』

 

 ビーッ、ビーッという警告音とともに照明が赤く明滅しながらアラートメッセージがスピーカーから垂れ流されます。

 

「くそっ!まだ遊馬が戻ってきてねぇぜ!?」

 

「でも逃げなければ僕たちも危ないですよ!?」

 

「遊馬を見捨てて逃げたら女が廃るわ」

 

 中等部の少年少女が口々に口論する。今はそんなときでないというのは分かっているのでしょうが、それにしても優先順位を間違えすぎです。

 

「九十九君を信じましょう。こういうものは大体脱出口があると相場が決まっています。それに九十九君が生き残ったときに貴方たちは九十九君をひとりにしてしまうつもりですか?」

 

「うっ、それは……」

 

「今は信じましょう、彼のことを。急いで脱出しますよ」

 

 そう言って、入り口を目指そうとすると灰髪の少女が奥のほうへ向かって駆けていく。

 

「私は、後悔したくないから!あのとき遊馬を助けに行っていたらなんて後から後悔したくないから!だから!」

 

「分かりました。では皆さんは脱出していてください」

 

「貴女はどうするんですか!?」

 

 委員長と呼ばれていた少年が驚愕する。

 

「彼女と一緒に限界まで捜索します。ですが、これ以上は危険だと判断すれば有無を言わさず連れ出します、よろしいですね?」

 

「キャット!遊馬を必ずつれて帰ってくるわ!」

 

「ッ!任せたぜ!」

 

「鉄男君!それでもいいの!?」

 

「俺だって遊馬を見捨てるようなことはしたくねぇよ!だけどよ、しかたねぇじゃねえか……」

 

「鉄男君……」

 

『あと5分で爆破シーケンスを起動します』

 

「しんみりしてる暇はありませんよ。急ぎなさい」

 

 

 

「遊馬!遊馬!」

 

『爆破シーケンス起動まであと3分。至急退避してください』

 

 必死に遊馬の名を叫び、奥へ奥へとひた走るキャッシー。

 

「これ以上は危険です、戻りますよ!」

 

「でも!まだ遊馬が!」

 

 パシン!鋭い音が倉庫の廊下に響く。ぼたんがキャッシーの横っ面を張ったのだ。

 

「いいかげんになさい!」

 

「ヒウッ!」

 

「私が宣言し、貴女は受け入れました。ですからここは私に従いなさい。分かりますね」

 

「っで、でもぉ!」

 

 大粒の涙を溢しながらぼたんに抗議するキャッシー。だが、ぼたんは彼女の手を取り入り口のほうへ向かって移動を始めている。

 

『爆破シーケンス起動。重要ブロックより、順次爆破します』

 

「うひいいいいい!やべぇよアストラル!」

 

「ッ!遊馬!」

 

 通路の奥から悲鳴とともに駆け抜けてくる青髪にピンクの前髪の少年、九十九遊馬だ。

 

「出来れば使いたくありませんでしたが、事が事です。来なさい!」

 

 一枚のカードを手にそう叫ぶとぼたんの右手に紅の模様が浮かび上がり、床を割って厳格な顔つきのケンタウロスが現れた。

 

「な、何だ!?」

 

「早く乗りなさい!急いで脱出しますよ!」

 

「お、おう!?」

 

 ドォン、ドォンとゆっくりと爆音が近づいてくる中を威厳に溢れたケンタウロスが走り抜けていく。

 

「そういえば、凌牙の魂はどうなったんですか!」

 

「コイツは返しておくって言って手放したから多分シャークのところに帰ってるはず」

 

「ならよかったです」

 

 

 

 倉庫のあちらこちらから煙が噴出し、もういつ倒壊してもおかしくない。

 

「遊馬……」

 

「クソッ……やっぱり、探しに行くか?」

 

「いえ、遊馬君を、キャッシーを、信じましょう」

 

 倉庫の中から「飛びますよ」という言葉が反響して、数瞬のちにぼたんとキャッシーを抱えた遊馬が飛び出し、直後に爆炎が巻き起こり倉庫が炎上。一瞬でも脱出が遅れていれば3人は焼死していただろうほどにギリギリのタイミングであった。

 

 機械の翼を広げ、海上を飛び去っていく影が一つ。

 

「天城カイト……次こそは潰します」

 

 影はぼたんを見据えたのち、何も言わずに飛び去っていった。

 




ぼたん「今日の対戦相手のデッキは【A・O・J】でしたね。全体的に光属性メタの色合いが濃すぎて扱いづらいという印象でしょうか。〈リミッター解除〉と〈A・O・J アンリミッター〉の同時使用で攻撃力4倍とかロマンはありますがなんというか使いづらいです。シンクロモンスターは優秀なんですが……素材指定が無いのでエクストラデッキに挿してあげると時々活躍するかもしれませんよ?〈A・O・J カタストル〉なんかはグッドスタッフ的な扱いをうけていましたしね。それではこのあたりで」
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