錬鉄の魔術使いと魔法使い達〜異聞〜 剣の御子の道   作:シエロティエラ

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皆さま、お久しぶりです。
テストもレポートもひと段落したので更新を再開しようと思います。手始めにリハビリとして、こちらの短編集を更新しようと思います。

いやはやそれにしてもあれですね。ガチャとかリアル事情とか、いいことが起これば悪いことも起こるもの。
最上レアが出にくいFGOですが、なんと十連で二体一気に出たんですよ。セミラミスとルーラージャンヌをお迎えした私ですが、その前日に車に引かれました。

いやはや、運とは怖いものです。





剣の御子と夢見る乙女たち

 

 

 

 

 母が今度出版する本について編集者と話をするとかで、オレは母について東京まで来ている。紅葉は冬木で他の人と留守番しているが。まぁ父さんは今海外にいるし、凛ねえは新しい命がお腹にいるとかで飛行機には乗れないしで、結構うちの家族は好き勝手にやってる気がする。

 そんな考え事をしていると母が戻ってきた。満足そうな顔から察するに、どうやら希望通りの内容になったらしい。母は今回ギリシャ神話を書き直していたようだけど、この前内容をみたらヘラクレスの話ばかりだった。というかヘラクレスの話で一冊分作り上げてしまってた。まぁそれでも編集者が了解を出したのは、その内容が良かったからだろう。

 

 

「さぁ、ご飯食べて帰りましょうか。剣吾は何食べたい?」

 

「ん~……」

 

「あ、何でもいいは無しね♪」

 

「……」

 

 

 さて、そう言われると本格的に迷ってしまう。さて、どうしようか。ラーメンは昨日食べたし、東京で有名なもの。今新宿にいるから新宿で有名なものを食べたいというのは、子供だろうが大人だろうが同じだろう。まぁうちの家族は父さんがあらゆる分野の一流シェフと同等の腕を持っているせいか、ちょっと舌が肥えている傾向がある。そんな舌を満足させ得る店となると。

 

 

「……あっ」

 

「どうしたの?」

 

「駅の近くでケバブ売ってた」

 

「ああ、そういえばそうね。そこにしましょうか」

 

「ん」

 

 

 そう、食べ歩きの様な形になるけど、新宿駅の近くにケバブ屋があるのだ。見た感じと香りからして、美味しいと直感が告げていた。母もオレの意見には賛成の様で、そこで食べてから電車で帰ることになった。

 今回の東京訪問は、自分にとって初めての経験だった。新宿しか今回は行動していないが、もう少し大きくなったら自分でいろいろと散策しよう。

 そう考えながら歩いていると、母の携帯に電話がかかってきた。どうも原稿に何かあったらしく急遽来てほしいとのことだそうだ。ただ現行の紛失とかそういったものではなく、担当編集とその上を交えた話らしい。

 流石に仕方がないと思ったのか、母は本社に足を向けた。オレは近くの公園で待つことになり、一人ベンチに座って他の遊ぶ子供たちを眺めていた。まぁ一応俺ならそこらの暴漢程度は軽くあしらえるため、母も信用して一人にさせたんだろう。しかしいくら八歳とはいえ、流石に魔術使用込みで大人以上の力を使うなど、傍から見れば異様の一言かもしれない。魔術の使用は控えるか。

 

 なにもせぬまま、ただただぼうっと目の前を眺める。手に持つ水筒の中身もなくなり、本格的にすることがなくなった。目の前で遊ぶ子供たちも親に連れられ、今いるのは小さな女の子とその弟だけである。女の子のほうはもしかしたら、紅葉と同年代かもしれない。そのうち弟のほうが駆け出し、公園からでた。姉らしきほうもそれを追うように公園から出ていくが……嫌な予感がする。

 二人の後を追うように公園を出ると成程、予感通り車が猛スピードで走るのが見える。その向かう先には先程の小さな少年。姉のほうは車に気付いているが、弟のほうは気づいていない。このままだと少年は助からないだろう。

 ……仕方がないか。

 

 

「――強化開始(ドライブ・ワン)、――属性噴射(エンチャント・ブースト)

 

 

 魔術回路が起動し、全身に魔力が張り巡らされる。足の裏から風が渦を巻き、背中から風が噴射される。それによってオレは爆発的にスピードが上がり、他の人から見ればオレが一瞬で少年の許に移動したように見えるだろう。車の運転手も同様に見えているはずだ。

 だがそれでも少し遅かったみたいだ。オレが少年の許についた時には、彼を抱えて離脱するするには遅すぎた。このままではオレは助かってもこの子は助からない。そしてこの子の姉に消えない傷をつけてしまうかもしれない。

 だからオレが取れる方法はこれしかないわけで。

 

 

「――鋼の重鎧(メタル・アーマー)、――限界突破(マキシマムドライブ)!!」

 

 

 全身を限界を超えて強化し、更に鋼で強化に補正をかける。紅葉以外の家族全員からこの魔術は禁止されているが、今は緊急時ということで目を瞑ってほしい。両足を踏ん張り、ブレーキを掛けない車を両手で支え、その勢いを完全に殺す。道路に少し足がめり込み、車のフロントがへこんだが。まぁちょっとした犠牲だろう。そこでようやく気付いたのか、車はエンジンを止め、中から運転手が出てくる。如何にも都会のヤンキーという風貌だが成程、携帯で電話しながら運転していたのか。

 

 

「おいガキ、お前人の車に何してくれてんだ?」

 

「……よそ見していたのはあんただろう。そのせいで人の命が一つなくなるところだったんだぞ?」

 

「はぁ? 正義の味方気取りかよガキ。あ~あ、こりゃ弁償もんだな。どうしてくれんだよ」

 

「知らん。少年、大丈夫か? 怪我はないか?」

 

 

 オレは運転手から目を話し、後ろにいる子供に話しかけた。姉のほうもようやく追いつき、今は少年を抱きしめている。

 

 

「う、うん。大丈夫……だよ」

 

「お兄さんの……その……足が……」

 

 

 姉のほうが自分の足を見て顔を青ざめさせている。ああ成程、オレの足がおかしなことになっていると思ってしまったのか。心配ご無用、こう見えて道路に刺さってるだけで中身はどうにもなっていない。オレはそのまま足を引き抜き、道路に立った。そこでようやく安心したのか姉弟の顔色は戻ったが、また恐怖に染まる。視線の先は運転手のヤンキー、まだ何やら騒いでいる。

 

 

「ガキぃ!! 無視してんじゃねぇぞ!! つべこべ言わずに弁償しろや、親でもなんでも、借金でもしてなあ」

 

「……阿呆が」

 

「あん?」

 

「君たちは早く帰るといい。これはこちらの問題だからな」

 

 

 少年たちに帰るよう促し、改めてヤンキーに向き直る。なるほど、見れば見る程何も考えていないことがうかがえる。現に周りに野次馬がいることも気づいていないし、何人かが携帯を操作しているのも確認できる。

 何よりも一つの命を奪うところだったというのを理解していない。それが一番オレの怒りを誘った。

 

 

「おい、聞いてんのかガキィ!!」

 

「……オレに絡むのもいいですが、周りを見ましょうよ」

 

「んだとぉ? ……あ?」

 

「今の状況はどう見てもあなたが加害者ですし、それにオレがどうにかしなかったらあなたは殺人罪も加わってましたよ。道路交通法違反以外にね。携帯で話しながら運転って何を考えてるんですか?」

 

「……てめぇ」

 

「そもそもこのような事態になったのはあんたに原因があるでしょう? オレ達が責められる謂れはないですよ」

 

「……生意気言ってんじゃねぇ!! 覚悟しろやクソガキ!!」

 

 

 俺も生意気言いすぎたのか、目の前のヤンキーが腕を振り上げる。近くで悲鳴が上がる。どうやら先ほどの少女たちはまだ帰っておらず、こちらの様子を伺っていたようだ。はやく帰れば嫌な光景を見なくて良かったのに。そんなことを考えているとヤンキーの姿が目の前から消え、代わりに地面で何かが呻く声が聞こえた。勿論俺は何もしていない。

 

 

「全く、トラブル体質なのはシロウ譲りかしら? 剣吾、説明してくれる?」

 

 

 ヤンキーを倒したのは我が愛すべき母。本人は戦闘は不得意と言ってるけど、最低限自衛するために合気道を修めているというとんでも母親。オレはその母親に促されるままにこうなった原因を話した。ただし魔術を使ったところはぼかしてだけど。

 母もオレが魔術を使ったのを察したのか、その場とヤンキーそして野次馬と件の姉弟と視線を移していく。そして最後にヤンキーに目を戻す。ヤンキーは母を見て何やら怯えているようだ。まぁ仕方がないだろう、今の母は父さんが逃げ出すほど怖い状態だから。

 その後、警察も交えてお話をし、結局ヤンキーはお縄になった。どうやらそのヤンキーは以前にも別のトラブルを起こしていたらしく、今回で完全に積んでしまったらしい。まぁ悪いことはするべきではないな。

 因みにあの姉弟は家族と共にオレ達にお礼を言い、次に東京に来ることがあったら案内すると言われた。姉弟とも互いに自己紹介をし、連絡先も交換することになった。まぁ正確に言えば、連絡先を聞かれたから教えただけだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなことがあったのが十年前、そんなこともあったと思い出しながら目の前を見る。

 ここは東京のとある繁華街。少し個人的な用事のために、この電気やゲーム系のものがたくさん売っているこの街を訪れたのだが、目の前にいる人物たちから話しかけられたのだ。そこにはモジモジしながらせわしなく視線を動かす少女と、その隣に少女に似た少年が立っていた。彼女らの風貌は幼さが残るものの、あの頃から成長している様子がうかがえる。

 

 

「……あの」

 

 

 おっと少年に話しかけられた。意識を戻さねば。

 

 

「……オレ達のこと、覚えてますか?」

 

 

 ああ。

 

 

「……覚えているとも、あの時は怪我がなくて良かったな。優君」

 

「ッ!? はい!!」

 

「それに君も、あの時と比べて綺麗になった。好きな歌でも有名になっているみたいだしな、千早さん」

 

「あ……はい!!」

 

 

 本当に大きくなった。まぁまさかここで会うとは思わなかったが、恐らく姉のほうは休みなのだろう。彼女は確か、今はアイドルとして活動していたはずだからな。彼女の名前は今やテレビでは聞かない日がない、トップアイドルと言っても過言ではないだろう。あの事件以降ちょくちょく連絡は取り合っていたが、こうして顔を合わせるのは初めてだったはず。

 

 

「……それにしても、よくオレを覚えていたな」

 

「命の恩人ですから」

 

「弟の恩人ですから」

 

「……そうか」

 

 

 あのときは後先を考えずに行動したが、その結果救われた者がいるのも事実か。なんだか少しだけこそばゆい。思えばオレが率先して誰かを助けたのも、あれが初めてだった気がするな。

 

 

「あの!!」

 

「ん? どうしたんだ、千早さん」

 

「千早でいいです。あの、この後時間はありますか?」

 

「用事は終わらせたから特にないぞ」

 

「なら……この後オレ達と一緒に食事はどうですか?」

 

「久しぶりで……いろいろとお話ししたいですし」

 

 

 さて、食事の誘いか。まぁ用事はもう終わっているし、特に急にやることもないから大丈夫だろう。早く帰らなければならない理由もないし、受験も早々に終わって特にやることもないしな。ここは彼女らの厚意に甘えるとしようか。

 

 

「……ああ、ご一緒させていただこう」

 

「はい!! よろしくお願いします!!」

 

「おいおい、こちらがお願いしているのに」

 

 

 余りにも堅く緊張している姉、千早に弟の優と共に苦笑を漏らす。まぁ電話やスカ〇プ越しに話しても、けっこう礼儀正しいというか堅い感じがあったからな。生で顔合わせたらそりゃ緊張するか。オレ達は苦笑したまま、如月姉弟先導の許、繁華街に繰り出していった。

 

 

 余談だが、道中彼女の同期に何人も出くわし、その度に彼女は揶揄われて顔を真っ赤にしていたことを記そう。その顔がちょっと可愛かったことも。

 

 

 

 






 はい、ここまでです。
 今回の車のシーンですが、ウルトラマンの映画である「超ウルトラ八兄弟」と、仮面ライダードライブの映画「サプライズフューチャー」を基にしました。そして新宿駅のケバブですが、実在する店です。ただ駅構内ではなく、駅近くの道に開いているお店で、本当に食べ歩きするような感じです。味は値段以上のものですね。
 さて、今回はデレマスではなくアイマスに絡ませました。次回はこの話の直接の続きを書こうと思います。
 そして告知ですが、この小説もあと数話で終わらせるつもりでいます。

 それではみなさん、またいずれかの小説で。



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