錬鉄の魔術使いと魔法使い達〜異聞〜 剣の御子の道   作:シエロティエラ

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最近統一して更新することがないですね、すみません。
では今回で食戟のソーマ編終了です。どうぞ。





剣の御子と料理人の卵たち 三ノ皿

 

 

 

「衛宮士郎って……」

 

「あの世界各地で活躍していた」

 

「最近音沙汰なかったけど……」

 

 

 突然の来訪者に生徒は愚か、年配者であるふみ緒まで動揺を隠せていない。男はぐるりと部屋の中を見渡すと、創真に目を止めた。そしてしばらくじっと見つめていると今度は剣吾に近づき、その頭に拳を落した。

 

 

「いって!? 何すんだクソ親父!!」

 

「何するんだ、だと? 俺は弟子の料理を見てほしいと頼まれたから来たのだが、何だこの状況は? 俺は一切説明を受けてないが?」

 

「あれ? 言いてなかったっけ?」

 

「……あとで母さんたちも交えてO☆HA☆NA☆SHIするか?」

 

「それだけは勘弁してくださいお願いしますこの通り!!」

 

 

 突然男に土下座をする剣吾の様子に、極星寮のメンバーはついてこれなかった。創真に至っては、師匠のみっともない姿を目の当たりにして、脳内処理が追い付いていない状態だった。

 男、衛宮士郎は一つため息をつくと、生徒たちに向き直った。

 

 

「改めて、衛宮士郎だ。まぁイリヤの書いた本とかニュースで知っていると思うが。それと幸平創真君、君の話はよく聞いている」

 

「え? 俺のっすか?」

 

 

 突然名指しをされた創真は、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。小さいころに見た覚えがあるとはいえ、ほぼほぼ初対面の相手である。そんな相手が自分の話を聞いているとなれば、驚かないのも無理がない。だが男は構わずコートを脱ぐと、手近の洗面台で手を洗い、調理室に向かった。一足遅れる形で他の面子が厨房に入ると、すでに何か作っている士郎の姿があった。

 

 

「これは……乳粥(ちちがゆ)?」

 

 

 香りを嗅いだえりなが言葉を漏らす。乳粥は苦行中の釈迦にスジャータが捧げ、命を救ったという話で有名であり、腹にも優しい料理である。なぜ急に乳粥を作り始めたか知らないが、彼の調理工程は基本的なモノばかりで、隠し味も何もしていなかった。

 

 

「あの、何故乳粥を?」

 

 

 ふみ緒の次に年配―と言っても創真たちの一つ上だが―が士郎に聞いた。すると調理の手を緩めずに、口だけを士郎は動かした。

 

 

「先程息子がアップルマフィンを作ったろう? 匂いでわかる」

 

「は、はぁ……」

 

「寝る前に何か食わせるのもなんだが、熱した乳は生き物を安心させる効果がある。成分ではなく、本能的な部分に働きかけ、母を思い起こさせて安堵するのだ。それにより、今日の疲れもあるから睡眠効果を促すのだよ」

 

「「「成る程」」」

 

 

 説明をしいている間に料理が出来上がり、全員の前に小さな椀一杯分の粥が置かれた。全員がそれを口にすると、不思議な感覚が全身に広がった。剣吾のマフィンがリンゴ園を走り回るイメージなら、彼の粥は今や遠い昔のことである、母の腕に抱かれながら子守歌で眠るイメージだった。剣吾も皆に混じって粥を口にし、非常に悔しそうな顔をしていた。

 

 

「……まだまだか」

 

「お前は和洋折衷なんでもいけるが、絞ったことはないだろう? 俺の得意分野は和食だが、まだまだ負けんよ」

 

「「「これで得意分野じゃないの!?」」」

 

 

 士郎の発言に全員が衝撃を受けた。十傑の二人の腰を抜かせ、過去に十傑の主席と次席を負かした男の一品が、実は得意分野ではなかったとくれば驚くのも当然だろう。ただふみ緒一人だけが納得顔をしていた。

 

 

「詳しい話は明日にしよう。今日は色々とあありすぎたようだからな」

 

 

 士郎の言葉を皮切りに、次々に一年生は船を漕ぎ始める。唯一の二年である一色と剣吾、そして士郎とで全員を寝室に運ぶと、一色を交えて話し合いを始めた。

 基本的に一色は中立の立場を貫き、このまま十傑に身を置くらしい。ただ陰で極星寮メンバーや他の彼らと仲のいい生徒のバックアップを行うとのこと。ただ薊の手腕は計り知れず、自分のやり方もいつばれるかわからないとのこと。

 

 

「それでいい。生徒のスキル上げや保護は俺たちで行うから、君は少しづつ奴の情報を俺たちに教えてくれ」

 

「監視とかあると思いますよ? 大丈夫なんですか?」

 

「俺たちの仕事柄、諜報は普通でね。君の情報と俺と息子の調査、そして城一郎たちの情報があればなんとかなる」

 

「気を付けなよ? 薊が何をしてくるかわからないからね。アンタらはまだ若いんだから、死ぬようなことになれば……」

 

「心配はないよ、ふみ緒さん。そこらのチンピラやヤクザ、ギャング程度なら拘束されない限り俺たちはどうとでもなる」

 

 

 まるで銃器で狙われても問題ないとでもいう言い様に、ふみ緒は少しばかり呆れた。だが彼らのことを見るとそれが本当に思えてくるため、ふふみ緒は苦笑を漏らした。今後の方針も決まったため、衛宮親子は客室をあてがわれて就寝した。

 

 次の日からの特訓は阿鼻叫喚の地獄絵図だった。創真もゲテモノ新作を作る余裕もなく、えりなを含めた各人がそれぞれの得意分野のプライドをへし折られた。特訓参加者の郁美やアルディーニ兄弟、薙切アリスや黒木場もその例外ではなく、次々と衛宮親子によってプライドをへし折られた。

 

 

「おいおい、そんな調子だったら切り捨てられるぞ?」

 

「もう少しやれると思っていたが、いやはや、まだまだ子供の集まりの様だ。期待して損したか」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

 

 しかしへばっているところを親子に指摘され、更に神経を逆なでするような発現に反応する生徒たち。特に創真と黒木場は、衛宮士郎の声が葉山にそっくりであることも加え、敵意をむき出しにして立ち上がった。その様子に親子がしたり顔をしていることなど露知らずに。

 

 

「上等だぁ!! 手前ェに嫌というほど俺の料理を味わわせてやる!! 今に手前ェの口から謝罪を言わせてやるよ!!」

 

「やってみろ、世界の広さを知らない小僧どもが」

 

「ーーーッ!!」

 

「意気込むことはいいが、調理前に手を洗え。床を触った手で食材に触れる気か、愚か者が」

 

「今からやるところだ!!」

 

 

 反抗したり自分なりに美味しい料理を作ってもあしらわれ、折れそうになったら挑発される。その繰り返しで生徒たちは疲れ果てても動かされていた。因みに作った料理は全て一人分のため、小分けして皆で食べれば満腹にはそうそうならない。そのため食座や料理が捨てられるようなことはない。

 新体制発足から一日、彼らは少しづつ自分たちの実力が上がっていっている実感がわかないまま過ぎ去っていった。

 

 

 






 新体制発足から暫くして、薊側と反逆側による連帯食戟が行われた。薊側も手駒を育てていたらしく、勝負は伯仲した。しかし最後は創真とえりなのタッグによって勝利を収め、薊の新体制は崩された。結果薊反対派である生徒や先生から創真たちは感謝され、その功績と実力を讃えて創真とえりな、アルディーニ兄弟と恵、アリスとリョウとそれに加えた葉山は次期十傑入りが確定した。

 しかし今までの遠月の方針に問題があったのも事実であり、総帥に戻った仙座衛門は方針の修正を発表。今後不合格となった生徒は退学ではなく留年且つ特別講師による特訓という方針に変えた。その結果、退学後未だ転校先を見つけきれなかった生徒は再度編入試験を受けて入学し、再度遠月生として過ごすことになった。

 ただこの特別講師、一度受けた学生によると、退学になったほうが何千倍何万倍もマシという評価を受けているらしい。そのおかげか、不合格になる輩が劇的に減ったようだ。
 失礼な、基礎を疎かにしている奴に基礎の大切さを教え、更に独創性とは何かを説いただけなのに、この評価は酷い。それに特訓を受ける奴は客に料理を捌いたことのない小僧小娘ばかり。遠月に入っただけで天狗になった鼻をへし折って何が悪い。
 ま、こちらとしては臨時収入が入るから別にいいのだが。俺ももうすぐ家庭を持つ身、探偵業と魔術師という不安定な職業柄、貯えがあったほうがいいからな。


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