錬鉄の魔術使いと魔法使い達〜異聞〜 剣の御子の道   作:シエロティエラ

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久しぶりにこちらの小説を更新しようと思います。今回はこの小説ではあまりしない、剣吾の一人称視点で話を進めていきます。
更に今回はあのキャラを登場させようと思います。そして今悩んでいるのは、この短編集の最終回、どうしようということ。

それではどうぞ。





剣の御子と新たなる時代の産声

 

 

 

 この街の名前は「風都」、その名に違わぬ心地の良い風の吹く街である。表での仕事のために一応私立探偵業をやっている俺は、とある調査のためにこの街を訪れていた。なんでも最近妙なものがこの街で出回っているらしく、俺に依頼に来た少女も自身の知り合いが巻き込まれたと来たものだ。胡散臭いことこの上ない。

 

 この街に来て聞き込みを始めて一週間、何度か奇々怪々な場面に出くわした。魔術師として活動する都合上、どうしても死徒やら人外との戦いは避けることが出来ない。だがそれらとは全くの異質、まるで後天的に何かの道具で一時的に怪物になったかのような奴らと戦闘をした。いずれの怪人も逃げ出して捉えることが出いなかったが、警察の発砲による銃弾を受けても火花とちょっとしたダメージだけで済んだのだ、並みの攻撃ではどうにもすることが出来ない。

 

 

「しかし、この風麺というのは美味いな。昨日食べた饅頭も美味かったし、チビ達への土産に買っていこう」

 

 

 とある屋台にて昼飯にラーメンを食べていたのだが、これがなかなかうまい。でっかい風車を模したナルトが乗っているんだが、見た目の奇抜さも合わさっていける。無心で麺を啜っていると、近くで大きな爆発が起こった。この一週間で何度か耳にした音であり、目にしたことである。最後の一口を腹に収め、料金を払い、強化した体で急いで現場に向かうと、予想通りそこにはこの一週間で繰り返し見た怪人がいた。

 だが昨日まで違うことが一つあった。怪人の前には一人の男が佇んでおり、腰に妙なベルトを撒いていた。

 

 

≪SKULL!!≫

 

 

 そして何やらUSBメモリのようなもののボタンを押すとベルトに差し込み、何やら変身した。それは数年前、とある世界で共闘した仮面の戦士たちに意匠が似通っていた。『仮面ライダー』と呼ばれていた彼らに。

 

 

『さあ、お前の罪を数えろ』

 

 

 骸骨の様な仮面の騎士はそう言うと、怪人に向かっていった。どうやらあの怪人はこの戦士の攻撃を食らうらしく、銃や打撃の応酬に苦しんでいた。戦場は街中からどこかの広い土地へと移動し、怪人はトラックの上に、戦士は専用車両の上に乗って一騎打ちの形となった。

 

 

≪SKULL!! MAXIMUM DRIVE!!≫

 

 

 何やら戦士がメモリを操作して銃に装填すると、高密度のエネルギー弾を数発トラックに撃った。その結果トラックは横転し、怪人はトレーラーの下敷きになった。その後、トレーラーの爆発に巻き込まれる形で怪物は消え、その場には破損したUSBメモリのようなものと、不快感を誘発する肉の焼ける匂いが充満した。

 

 

「お前さん、誰だ?」

 

 

 その時、変身を解除しただろう壮年の男性が俺に近づき、話しかけてきた。そして彼はいつでも俺を排除できるよう、警戒を解いていない。

 

 

「初めまして。風都の隣町、冬木にて私立探偵を営んでいる(つるぎ)(まもる)です。今回は事務所に依頼された案件のために、この風都に訪れたのですが」

 

 

 俺はここで言葉を切る。ついでに言えば「剣衛」というのは偽名だ、本名は「衛宮剣吾」である。男は暫く疑い深そうに俺を見ていたが、やがて俺に「鳴海壮吉」と名乗ってきた。これは俺と異なり、どうやら本名らしい。

 鳴海の話によると、どうやらUSBは「ガイアメモリ」と呼ばれるものらしく、非常に危険な代物らしい。「地球の記憶」と言うものをメモリという入れ物に収め、相性の高いものを体に入れると相応の力を持てる「ドーパント」となる反面、毒素で最終的には廃人、死に至るらしい。鳴海自身も、「ロストドライバー」というものを介して使わない限り、体がメモリの毒素でやられてしまうようだ。

 

 

「それで、君は何の調査でここに?」

 

「依頼した人の知人がこの街で消息不明になっていましてね。捜索はしていたんですが、今しがた亡くなったあの怪人の様でした」

 

 

 そう、今回捜索対象だった人物は、たった今死んだ怪人だった女性だ。どうやらガイアメモリに手を出し、彼によって引導を渡されたらしい。これでは依頼は失敗と判断するほかないだろう。

 

 

「成程、彼女だったのか。だがすまない、彼女はこの街を泣かせていた故、私も容赦が出来なかった」

 

「お気になさらず、どうやら俺ではこの怪人に対する対処法は、まだまだ少ない。専門家に任せるのが早いでしょう」

 

「わかった。私も依頼を達成したばかりだ、よければ何か御馳走しよう」

 

 

 せっかくの誘いを断るのも憚られたため、彼の事務作業を待った後、とあるイタリアンレストランに赴くことになった。なんでもそこの店は食事もコーヒーも格別に上手いらしく、実際に食べると彼の評価に違わぬおいしさであった。

 食事を終え、家族への土産も少量購入すると、俺は風都を発つ準備をした。そして荷物を持って帰途についていると、一人の小さな少年が目に入った。どうにも普通じゃない。服は汚れ、顔も多少煤けている。放っておけなかった俺はその少年に近寄った。

 

 

「坊主、何をしてる」

 

「……なんでもねぇ」

 

「そうか。余計なお世話かもしれんが、家には帰らんのか?」

 

「……家には誰もいねぇ。親父もお袋も、ドーパントに殺された」

 

「そうか」

 

 

 この少年はドーパント事件の被害者、両親がいないということは孤児なのだろう。そして孤児院にもいかず、親戚の許にもいかず、こうして隠れて生きているというわけか。

 

 

「お前さん、これからどうするんだ?」

 

「分かんねぇ。でも俺はこの街が、風都が好きだ。仮令両親が殺されても、この街に生まれたんだ」

 

「そうか。ならこの街に巣食う悲しみがあるとしよう、どうしたい?」

 

 

 俺の問いかけに少年は顔を上げ、汚れた身なりとは対照的に綺麗に輝く目を俺に向けた。

 

 

「決まってる。この街を泣かせるのは許さねぇ。仮令何年かかろうと、俺はこの街を泣かせる悲しみを断ち切る!! 親父たちがそう願ったように、俺は俺のやり方で!!」

 

 

 その目は絶望してなかった。この年齢、恐らく小学生ほどの少年が、両親の死に直面しても耐え忍び、寧ろ同じ目にあう者達を減らそうという希望を携えていた。

 一言で言おう、俺はこの少年が気に入った。

 

 

「そうか。だが今のままでは無理だ」

 

「うるせぇ!」

 

「だからこそ、俺が少しだけ鍛えてやる。どうだ? 一時的にこの街を離れることになるが、その代わりお前は『力』を手にすることが出来る」

 

 

 そう、「力」は「力」でしかない。手に入れた「力」をどのように振るうか、それが一番重要なのだ。

 

 

「本当に、本当にあんたについていけば、俺は『力』を貰えるのか?」

 

「どのように使うかは君次第になるがな」

 

「その力で、俺の故郷を護れるようになるのか?」

 

「それも君次第だ」

 

 

 さぁ、どうする?

 

 

「……決めた、あんたに付いていく」

 

「そうか、なら必要なものを揃えろ。すぐに行くぞ」

 

「おう!!」

 

 

 少年は元気よく返事をすると、本当に必要なものだけを持ってきた。どうやら衣類何着かと、やはり小学生だからか勉強道具を持ってきた。まぁ彼もそれが大切だからだと思い、持ってきたのだろう。それを俺は否定しない。ついでに家に電話をかけ、妻子に養子を引き取る旨を伝えた。妻は快く承諾し、娘は弟が出来ると喜んでいるそうだ。

 そして少年が自分の家で風呂などの身支度を整えた後、養子縁組の申請を済ませるために先に風都の役所に向かうことになった。荷物は申請後に調節電車に乗るために俺が手に持っている。

 

 

「そうだ少年、大切なことを忘れていた」

 

「あん? なんだ?」

 

「少年、君の名前は?」

 

「俺か? 俺は左翔太郎、将来風都を泣かせない男になる!!」

 

「良い夢だ。俺は衛宮剣吾、公には剣衛と名乗っている。そして俺は……」

 

 

 ――俺は、魔術使いなんだ。

 

 ――へぇ、すごいな

 

 

 

 






 はい、ここまでです。
 ゲストとして出演したのは鳴海壮吉、そして左翔太郎の二名でした。数年剣吾の下で修業した後、彼は風都で鳴海壮吉の許に弟子入りして、原作「仮面ライダーW」通りの展開になる予定です。
 さて、今現在新しい小説のプロットが出来上がってしまっています。書くかどうかは分かりませんが、一応活動記録に設定を乗せようと思います。

それでは皆さま、またいずれかの小説でお会いしましょう。



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