一章1-1
横島がこの世界に来たのは一月程前。
雪蓮が一人の女性を連れて見事に地面に刺さっている横島を発見したのがそもそもの始まり。
次の瞬間地面からガバッ!と顔を抜き、
「死ぬかと思ったー!」
と、地面に刺さっていたにも関わらずそんなすっとぼけたことを言ったことにより、興味を湧かせた雪蓮がその場で横島を連れ帰ることを内心で決意。
その後、二人の美女が傍にいることに気づきすかさず飛び掛る。
「おっねいすわぁ~ん!僕と一晩の熱い夜を過ごしませんか~!!」
が、あえなく撃沈。
何、この面白い生き物!と雪蓮の横島に対する興味は上がる。
もう一人の女性も概ね雪蓮と同じで二人して気絶した横島をお持ちかえり。
が、帰ってみると冥琳が大反対。
「そんな怪しい男を信用できるか!」
そこで雪蓮の説明。
実は空から光が落ちてきて、その場所に行って みると横島が地面に刺さっていた。と。
もしかしたらこの男は占いにでていた天の御遣いかも?そうだとしたら?
「天の御遣いとしてなら利用価値はあるでしょ」
冥琳、しぶしぶ引き下がる。
「とりあえずは話を聞いてみないと分からないわ」
そうして横島が起きるまで待つことに。
翌朝、横島起きる。冥琳それに気づく。声をかける。
横島の目の前に美人。もちろん飛び掛る。冥琳まさかの「きゃあっ」。雪蓮大うけ。
横島殺す!意気込む冥琳。止める雪蓮と女性。横島土下座。
見事な土下座に冥琳怯む。お話開始。横島どうして自分がここにいるか分からない。
プラス最近のことが思い出せない。記憶喪失であることが判明。
とりあえず天の御遣いとして此処にいてくれないか?いいっすよ。
横島、雪蓮たちと共にいることに。館には雪蓮たち意外にも美人がいっぱい。
横島うっはー!。ナンパ開始。惨敗。めげずにチャレンジ。
苦情が冥琳に。横島殺す。横島土下座。冥琳しぶしぶ許す。
以後、一月コレを繰り返す。
そして現在にいたるのである。
「ふぃ~いちち、冥琳さん最近手加減がなくなってきたな」
と、館の廊下を歩くのは赤いバンダナにジージャン、ジーパンといった格好をした男。
名前は横島忠夫。職業GS、現在はヒモ。
その横島は赤くはれた頬をさすりながらとぼとぼ歩く。
「はぁ、それにしてもまた過去に来てしまうとはなぁ……しかも今度は中国」
中庭につきまわりを見渡す。
そこは現代日本にはない風景があった。
町の周りは荒野が続き、戦のある時代。しかも昔の中国ときた。
横島はあまり動揺はしなかった。職業がらトラブルにはなれているし、
それにそのうち帰れるだろうと根拠のない自信があったからだ。
記憶喪失ではあるが忘れているのはおそらくここ数ヶ月のことだろうと予測する。
美神やキヌ、仲間のことや知り合いのことを覚えているし。
自分が『栄光の手』『サイキック・ソーサ』『霊波刀』などの力を使えることも覚えている。
自分の顔を確認してみると記憶がある頃から目に見える成長が見られないことから一年もたっていないだろうと思ったからだ。
ちなみに前回、雪蓮が横島がきてからは順調に孫呉復興が進んでいると言っていたが、横島はまったく関係なかったりする。
たまたま偶然横島がきてから戦も名が売れるのも順調にいくようになっただけで、横島は何もしていないのだ。
そもそもこの男、戦にすらでていない。
雪蓮たちの横島に対する評価というのは戦闘面においてはまったくと言っていいほど無い。
それもそのはず横島は普段からナンパばかりして、しかも雪蓮や冥琳ならまだしも、侍女にでさえのされる男だと認識されているのだ。
雪蓮も冥琳もそんな横島を兵として使うつもりはなく、見た目からして軍師向き(実は横島に一番合っている)ではないので軍師にも使えない。
流石に何も出来ない者を置いておく余裕もないので、横島自らが申し出た雑用をやってもらっている。
たかが雑用と思われるだろうが、横島は普通ではなかった。
人の何倍もの動きで雑用をせっせとこなし、その仕事に雑さはなく完璧にこなす姿は人々に好感をもたせた。
まぁ、横島の場合そこの部分だけなのだが、その働きが認められ、館にいることを許されている。
そんな状況であるため、冥琳は横島をただの丁稚と紹介し、天の御遣いとは紹介していないでいた。
当の横島、実はわざと自分の霊能力のことを雪蓮たちに言わなかった。
なざならそれは―
「戦争なんかに行ったら死んでまうやないかー!!」
である。
情けないことこの上ない。
だが、GSという仕事をしはいるが相手は妖怪や幽霊がほとんど。
人を相手にするなんて滅多になく、そもそも殺すことなんて無かった。
だから仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。
「何を叫んでおるのだお前は」
「あ、祭さんっ相変わらずお美しい」
と、横島の後ろから一人の女性が声をかける。
銀髪の長い髪に雪蓮たちにもいえる露出の高い服。
そして雪蓮、冥琳より明らかに存在感のある胸をもつ人物。
名前を黄蓋、真名を祭という雪蓮と一緒に横島を見つけた女性である。
横島は祭を見るとすぐさま駆け寄り手を取る。
その行動に祭は嫌な顔はせず苦笑することで応えた。
「それにしてもその頬、また冥琳の奴にやられたのか?」
「そうなんすよ。冥琳さん、最近手加減してくれなくて」
「お主が懲りずに此処にいる女子共に声をかけるからじゃろう?
嫌ならやめろとは言わんが控えればいいだろうに」
「それは出来ない相談ですよっ。可愛い女の子に声をかけるのは男の義務っすからね!」
「……横島。儂はお主のそういう素直なところは気に入ってはおるがもうすこし控えた方がいいぞ?
好いてくれるものも好いてはくれんようになる」
横島はその言葉に少しキョトンとしながら祭に答えた。
「これが俺ですから」
祭と別れた後、横島は一人館から外が見下ろせる場所へときていた。
「孫策に周瑜……か」
孫策に周瑜、雪蓮と冥琳のことである。
学があまりない横島でもその名前に聞き覚えがあった。
「三国志の時代にきちまったんだな」
ちなみに孫策たちが男だと伝えられているのも知っていたが、横島からすれば本当は女だったんだ~しかも美女、ラッキー。ぐらいの事でしかない。
「戦争に参加して誰かを殺すのも痛い思いすんのもゴメンだからな……。
でも、なんとかなんだろ。もしかしたら美神さ……いや、おキヌちゃんなら向こうに帰れる方法探してくれているかもしれんし」
横島の目の前にはちょうど夕日が広がって見えていた。
「うん。俺は俺らしくだ」
そう言って横島は部屋へと戻るべく背を向ける。
『俺は俺らしく』
それがここ最近の記憶を忘れた横島が唯一覚えていたことだった。
続く。