本来は二章のプロローグだったのですが、読みかえすと一章のエピローグのように感じたので、エピローグとプロローグとさせて頂きました。申し訳ございません。
次話から完全な二章とさせて頂きます。
エピローグとプロローグ
「んー!いい天気ね~」
「そうね。つい最近まで黄巾党の後処理に追われて、落ち着く暇がなかったからな」
「ほんとほんと、もー疲れちゃった」
「雪蓮……貴方はサボってばかりだったじゃない」
「ごめんごめん。でもみんな頼りになるんだもん。仕方ないでしょ冥琳?」
「……雪蓮」
ここは雪蓮たちが暮らす館。つまりは横島が住んでいた場所でもある。
その館の中を、中庭を目指して雪蓮と冥琳が歩いていた。
黄巾党を壊滅させてから20日あまり経とうとしていた。黄巾党の数が数だけに二人、特に冥琳は戦後処理に追われており、ようやく一息つける程度に落ち着いたのだ。
なので久しぶりに二人でお茶でもしよう!となり、中庭を目指していたのだ。
「もー睨まないでよ冥琳」
「ふぅ……全く」
文句を言いながらも笑みを浮かべる冥琳に甘えるような雪蓮。端から見ればイチャイチャしてるように見えただろう。
「あら?」
ようやく中庭につき見渡すと雪蓮が何かを見つけた。
「……あれは小喬か」
冥琳の言葉通り、視線の先には中庭にある木の傍に座り込み膝を抱える小喬がいた。
「なーんか暗い顔してるわね~」
「最近はよく一人でああしているらしい」
その小喬は誰が見ても分かる程、元気をなくしていた。
冥琳は侍女たちからその様子を聞いており、仕事などはキチンとこなすがそれが終わるとああして一人、黄昏ているのだという。
原因は分かっている。小喬の元気がなくなったのは黄巾党を殲滅したその日から。
その理由を冥琳は小喬から聞いていた。
「まさか忠夫もあの戦場にいたなんてね~」
「蓮華様からも横島らしき人物に助けられたと聞いている。まず、横島なのだろう」
「霊能?だっけ。ちょっと信じれないわね」
「同意だが、あの時の小喬の取り乱し方は普通ではなかった。それに姉が殺され男に恐怖と嫌悪感を抱いていた小喬を立ち直らせたのは、間違いなく横島だ。あの時から何かあるとは思っていたが……」
「ま、本人がいないんじゃ確認しようもないけどね」
あの時、黄巾党を殲滅した日。やり残した事もないということで、軍を引き上げようとした中、着いてきていた小喬が青い顔で雪蓮の元へかけてきた。
『ど、どうしたら!雪蓮さまっ!横島が……横島が!!』
本当なら秘密にしておくはずだった横島の事。それを雪蓮に話してしまったが仕方ない事でもあった。
小喬は最近姉を亡くしており、その絶望から救ってくれたのは横島だった。
その横島が、約束していた時刻になっても現れず、軍から離れ一人待ち続けていたが結局横島が現れることはなかった。
作戦では、軍が黄巾党を倒す間に天和と地和の妹を助け連れ出す手筈になっていたのだ。
それが現れないということは何かあったということだ。
そして小喬はパニックを起こしてしまう。何かあった、つまり不足の事態が起こったということ。
不安と心配が募る中、小喬の耳に黄巾党の首領である張角の死がはいってくる。目眩に襲われた。
それもその筈、その張角こそが横島に助けを求めた人物なのだから。
その張角が死んだ?だったらその張角と一緒にいた横島は!?
小喬は再び、大事な人を失うかもしれない恐怖に襲われた。歯がカチカチとなり、震えが止まらなくなる。
忘れかけていたトラウマが蘇った。
気が付けば小喬は雪蓮に助けを求めていた。そして、当然どういうことがあったかを説明することになったのだった。
「正直認めたくはなかったが、横島は本物の天の御使いだったということか」
あのバカでナンパばかりしていた男が予言にあった天の御使いという事実に眉をひそめる冥琳。
それを見て笑みを浮かべながら雪蓮は天を見上げた。
「状況が状況だから。忠夫は死んでるかもしれないんだけど、とても死んでるとは思えないのよね~」
「……それは同意ね。あの馬鹿は殺しても死なない男だ」
「霊能とか天の御使いとか、色々聞きたいことがあるけど、無事でいてよね忠夫」
それから、この場にいない横島に祈りの言葉を捧げた。
そして、小喬は……
「早く帰って着てよ……横島!」
雪蓮と冥琳に見られていることに気がつかないまま、涙を流した。
で!!
肝心の横島はというと……。
「ねーねー彼女、今からあの茶屋で二人のこれからを話会わない?」
呑気にナンパに勤しんでいた。まぁ、成果は言うまでもなく惨敗であるが。
「寝言は寝ていいな童貞!」
ぺっ!と地面に唾をはき、去る美女(巨乳)に肩をおとすが、横島は直ぐ様別の美女(巨乳)を見つけ声をかける。
「あっ、お姉さ「少しはこりなさいよっ!!」ぶがばっ!?」
が、寸前のところで少女に頭をハリセン(横島専用)でどつかれて地面に沈む。
「いきなりなにすんじゃー!せっかく美人のねーちゃんとランデブーできるとこだったのにー!!」
「いや、明らかに無理だったじゃない。地面に唾はかれてたじゃない」
「わかってねぇな~、あれは駆け引きなんだって地和(貧乳)ちゃん「(貧乳)ってなによ!!」んごっ!?」
そして、横島にツッコミを入れるのは黄巾党の首領、張角の妹である地和である。
「大体今はそんなことしてる余裕なんてないでしょ!ちーたちにとって大事な舞台が待ってるんだから!」
「仕方ないんやー!抑えきれないリビドーがワイを狂わせるー!!」
地面に転がり子供みたいにジタバタと暴れる横島にドン引きする地和。周りの人々も二人を避けるように歩いていた。
と、そこに一人の少女が二人に近ずく。
「やっぱりここにいたのね。地和姉さん、忠夫さん」
「あ、人和!ちょっと人和もこの馬鹿に何か言ってやってよ!」
「おう人和ちゃん、お疲れさん」
地和の妹、人和だ。
「大丈夫ですか、忠夫さん?」
「お、サンキュー」
差し出された手を掴み立ち上がる横島。その際人和の手の柔らかさに頬をだらしなく緩ませる。
その事に人和も気づいていたが、何も言わず笑みを深めた。
「そっちは終わったの?人和」
「ええ、天和姉さんが途中で駄々をこねて大変だったけど」
「もー天和姉さんったら。で、その姉さんは?」
「今は事務所でシュウマイを食べてるわ」
「シュウマイ!ちーのは残ってるのよね!?」
「ええ、ちゃんと取ってあるわ」
「よかったー人和大好き!」
抱きついてくる姉を嬉しそうに抱き返す。それを見て横島も笑みを浮かべた。
ちなみに人和が取っておいたシュウマイは見事に天和に食べられており、この後、天和と地和の姉妹喧嘩が発生するのだが割愛する。
「それで地和姉さんの方はどうだったんですか?」
「ちーは終わったわ。問題はこいつよ、こ!い!つ!」
「いでっ!いだだだ!地和ちゃん、やめ、やめてー!!」
ペシッペシッとハリセンで横島を叩く地和。色々と鬱憤が溜まっていたのだろう。
それを笑いながらも人和が止める。
「それでどれくらい終わったんですか、忠夫さん」
「うっ、すまん人和ちゃん……実はほとんど」
「ほら聞いた?せっかくちーたち『数え役満姉妹(しすたーず)』の初舞台だっていうのに、この馬鹿は!」
そう、今横島たちは天和たち三姉妹によるユニット『数え役満姉妹』の初コンサートのチケットを売って回っているのだ。
まだ、この街に来てまもない横島たち。もちろん三姉妹も有名どころか誰にも知られていない。
なのでコンサートではあるがチケットは無料に近いほど安く。まずは知ってもらうところから始めているのだ。
「文句を言っても仕方ないわ、今度はちゃんとしてくれますか、忠夫さん」
「お、おう!任せろ!」
「ありがとう。やっぱり忠夫さんは頼りになりますね」
「い、いやーでへへ」
両手で横島の手を握り微笑む。そんな人和に再びだらしなく顔をゆるめた。
「じゃあ、追加でこれもお願いしますね」
「……え?」
気が付けば横島は手に大量のチケットを握らされていた。恐る恐る人和を見るがにっこりと笑うだけで何も言ってはくれない。
「あの……最初に渡された量の倍くらいあんだけど……?」
「大丈夫。忠夫さんなら出来るはずです」
「ち、地和ちゃん?」
「ふふん、自業自得よ忠夫」
「じ、冗談だよな」
「「「…………」」」
だっ!と、横島は走り出す。涙を流しながら。
「ちくしょ~!!絶対後で天和ちゃんの乳をもんでやるからなー!!」
「なんでそこでちーじゃなくて天和姉さんなのよ馬鹿ー!!」
ばかばーか!と喚く姉を見ながら人和は幸せそうに笑った。その笑顔は本来の彼女の笑顔。太平妖術に犯されていない本物の笑顔だ。
「地和姉さん」
「何、人和?」
「幸せですね」
「……うんっ!」
「償わないといけない罪はあるけれど、許しを乞わないといけない人もいるけれど、それでも私は生きていたい。姉さんたちと一緒に」
ついでに忠夫さんも。と、聞こえないように呟く。
「きっと辛いことはたくさんある。けど、私たちなら大丈夫……なんだよね」
「当たり前よ。三人揃えば怖いものなんてないわ」
「……うん!」
自然と手を繋ぎ、天和が待つ事務所へと歩きだす。足取りは軽い。明日に向かって歩く一歩である。
この場所、曹操が治めるここ陳留で三姉妹は新しく人生を歩き出していた。
続く!!
一章エピローグ、そして二章プロローグでした。
そして次回から
二章・魏に転がり込んだ道化
が、始まります。
また読んでくれると嬉しいです。
いつも感想、評価ありがとうございます。ではまた明日。