呉に舞い降りた道化   作:ちょりあん

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今回かなり駆け足な展開となってます。


1ー4

 

 

 

1-4

 

 

 

 朝、現代でいう午前10時頃。

 天和たち三姉妹が住む事務所兼自宅のすぐ隣。家というよりは小屋と言える場所が、現在の横島の住居である。そこから身支度を整えた横島が出てきた。

 心なしか、トレードマークの赤いバンダナも気合いが入っているように見える。

 

「あれ?忠夫、どっか出かけるの?」

 

「おう地和ちゃん。朝飯ぶりだな」

 

 そこへ横島を見つけ、気持ち嬉そうに駆け寄る地和。二人……というか三姉妹との関係は良好なまま右肩上がりに上がっている。

 まず流石に住む家は別々だが、すぐ隣にあるため朝食は事務所で四人一緒に食べる。

 そこでアイドル活動の事を含めた仕事の事、主に地和と交わすどつき漫才や他愛ない会話を楽しんでいたりする。

 横島にとっても、三姉妹にとっても、家族なような愛情を持ちはじめていた。

 地和、人和に関してはそれ以上の感情があるようだが、横島は気付かず、天和は暖かく見守っていたりする。

 

「へへっ昨日言ったろ?デートだって」

 

「あっそういえば……でもそれって桂花様を助けるためなんでしょ?」

 

「ふっ、例えそうだとしてもデートはデート!人類にとっては小さな事でも俺にとっては大きな一歩なんやー!!」

 

 右手を突き上げて吠える横島に引く地和。だが、昨夜話を聞いて一番怒りを見せたのは他でもない地和である。

 夕食時、桂花とのデートの事を話した横島。デートの意味が分からず天和が聞き、意味を知ると地和が吠え横島につっかかったのだ。

 

『なんでちーを一番にでぇとに誘わないのよー!!』

 

 ハリセンでバカスカ叩く地和を宥める為に理由を話す。霊能を知っている三姉妹に隠す必要もないと考えてのことだ。

 一応の納得をした地和だったが、その表情が拗ねていたことに横島は気付いていなかったが。

 

「まぁ精々頑張んなさい。……それと、ちーたちが助けて貰った手前、やめてなんて言えないけど……怪我だけはしないでね」

 

「おう!サンキューな」

 

「そ・れ・か・ら!」

 

 両手を後ろで組み、見上げるように上目遣いで横島を見る。短めのスカートがふわりと揺れサイドテールも左右に揺れた。

 

「今日の事が終わったら、ちーとでぇとだからね!決定事項だから約束よ!」

 

「お、おう!ってデート!?地和ちゃんが俺を誘って!?」

 

「光栄に思いなさい。ちーが誘ってあげるなんて滅多にないんだからっ」

 

「そ、それはその後二人でくんずほぐれずしようって誘いってことだな!ち、地和ちゃーん!!」

 

「なんであんたはそうやって空気を壊す事ばかりするのよー!!」

 

「ばだんっ!?」

 

 ハリセンでおもいっきり殴りつけ横島の頭を地面にめり込ませる。ギャグ空間のみ使える必殺技である。

 それから暫く頬を膨らませ、ピクピクする横島を見ていたが、ため息をついた後、事務所へと歩きだす。

 その途中、一度だけ振り返り顔を赤らめ告げる。

 

「……でぇと、楽しみにしてるからね」

 

 それだけ!っと走って事務所に戻る地和。その後、地面から顔を出した横島は照れたように頬を指でかいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『「遅いっ!!」』

 

 待ち合わせ場所に着いた横島を出迎えたのは二人の罵声だった。アイは桂花の肩に捕まる形で憑いてきており、桂花の中には入っていない。

 

「いや、そこは『待った?』『ううん、今来たとこ♪』とかやるところだぜ荀イクちゃん」

 

「知らないわよ、そんなバカみたいなやりとり!誘ったあんたが先に来てるべきことでしょ!!」

 

『……というか本当に遅いぞ、少しとはいえ遅れてくるとはやっぱり男は殺すべき!』

 

「落ち着きなさいアイ。たく、何かあった……の……」

 

 昨夜、二人きりで話をしただろう二人は少し打ち解けているようだった。昨日とは違う気安さがそこにはある。

 それはそうと遅れて来た横島に理由を問おうとして桂花は動きを止めた。

 

「……ねぇ、横島。その頬っぺたの赤い腫れは一体何?まさかとは思うけど約束しておいて遅れた理由が街で他の女に声をかけていたとかじゃないわよね?」

 

「え?いや、あはは……すんませんでしたー!!本能に逆らえずにナンパしてましたーー!!!」

 

「バカじゃないの!?あんたバカじゃないの!?目的を忘れてるんじゃないでしょうね!?アイを見て見なさい!」

 

『やっぱり男殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す』

 

「男の良さじゃなく悪さを示してどうするのよ!!これじゃ成仏どころか悪霊ってのになっちゃうじゃない!!!」

 

 見事な土下座をかます横島を足で蹴りながら桂花が騒ぎ、アイが黒いオーラを撒き散らす。何ともカオスな空間が出来上がっていた。

 ちなみにこの待ち合わせ場所は、街中の人通りの少ない場所であったが、皆無という訳ではなく、騒ぐ二人(アイは見えないので)は人々から避けられていた。

 

 

 

 

「ほんっとうにすいませんでした」

 

「ねぇ横島、あんたのせいで男に対しての殺意がまた生まれてきてるんだけど、今は抑えなくてもいいわよね?ていうか死になさいよ」

 

 今にも暴れだしそうなアイを何とか抑え、横島は今、桂花の前で正座をさせられていた。

 これからデートをしようとしている二人とは誰にも思えない光景であろう。

 

「……もういいわ。悔しいけど今回はあんたに頼らなくちゃいけないし……何で男なんかに頼んなくちゃならないのよ」

 

 苦虫を噛み潰した顔の桂花。デートの意味を知り強く反対したのはアイではなく桂花の方であった。

 アイのように憎しみや殺意はないが、嫌悪感が強いのは桂花である。同性愛者である桂花にとって男とデートなど拷問に他ならない。それでも、華琳の側にいるために、涙をのみデートに了承したのだ。

 

「……はぁ、さっさと行くわよ」

 

「おう。っと、今日は髪結ってんだなアイちゃん」

 

『時間通りに来てその言葉が来てたら評価を上げていたかもしれないが、もう遅い』

 

「ぐっ」

 

 桂花はいつも通りの猫耳フードだったが、アイは長い黒髪を結っていた。少しは意識しているという証拠なのかもしれない。

 しかしそれもナンパで遅刻してきた横島のせいで台無しである。自業自得という他ないだろう。

 

「ほらアイ、入りなさいよ」

 

『わかった』

 

 桂花の言葉を合図にアイがスルリと体の中に入り込む、ビクンと体を揺らした後、桂花が目をあける。

 

「では私に男の良さを教えて貰おうか?横島」

 

 しかし、目をあけた桂花は桂花でなく、取り憑いたアイであった。

 

「おう、任せろ!……出きればナイスバディのアイちゃんとデートしたかったけどな」

 

「『聞こえてるのよ!変態バカ!!』」

 

「だんかんっ!?」

 

 意識を奪われた訳ではない桂花が、体を動かし横島をしばく。何ともグダグダなデートの始まりであった。

 

 

 

 

 で、肝心のデートはというと、不安な感じで始まりはしたが意外と上手くいっていたりした。

 

「これは何だ?」

 

「おう、これは……」

 

 街のお店を見て回ったり、横島にしてら奮発したお店で昼食をとったりと普通のデートを楽しむ。

 アニメで言えばキャラソンが流れ、デート場面をダイジェストで流しているシーンであるだろう。

 

 桂花に取り憑いたアイも、時間と共に笑顔が増えている。桂花本人だけは、たまにつっこんだり騒いだりしていたが、概ね楽しい時間が過ぎていく。

 ただ、街中には桂花の事を知っている人間がもちろんいる。普段華琳の前以外では笑顔など見せない桂花が、笑顔を見せながら男と歩いている。

 そんな姿を見られたことが、後に少し騒ぎになるのだが、今の桂花はそんなことになるとは露程にも思っていなかった。

 

「あ……」

 

 露店が集まる広場、そこに来た二人がゆっくりと見て回る。そこでアイが一つの露店で足を止めた。

 

「どうしたアイちゃん?」

 

「あ、いや……これが」

 

「お、花の髪飾りか~綺麗だな」

 

「ああ……綺麗だな」

 

 そう言って小さく微笑むアイ。その柔らかな笑顔に横島は見とれ、アイが手に取った小さな花の髪飾りを奪い取る。

 

「おっちゃん、これ頂戴」

 

「あ……」

 

「あいよ!可愛い彼女で羨ましいねぇ」

 

『誰が彼女よ!?』

 

 桂花の叫びを流しながら店主から髪飾りを受け取りアイに向き直る。

 

「ほら」

 

「あ、いや、私はそんなつもりで……!」

 

「気にすんなってデートの記念みたいなもんだ」

 

「……ならせっかくだ、つけてくれないか?」

 

「え?……マジで?」

 

「ほら、早く」

 

『ちょっとアイ!まさかそのバカに私の尊い髪を触らせる気!?やめて、妊娠しちゃうじゃない!!』

 

 セクハラやナンパは良くする横島だが、こういうことは経験が少なく緊張してしまう。

 そんな横島をみて笑みを深めたアイが、早く早くと顔を近づけた。

 ここまで横島がアイにセクハラや飛びかかったりしなかったのは体が桂花のものだったからであるが、それでも女性に触れることに緊張しないわけではない。

 恐る恐る髪に触れ、右側、耳の少し上に髪飾りをつけてあげた。

 

「ん……どうだ?」

 

「……すっげぇ似合ってるぜ、アイちゃん」

 

 照れながら言う横島。その表情、その言葉に今日一番の笑顔をアイは浮かべた。

 

 

 

 

 

「本当はな横島」

 

「ん?」

 

 夕方が近づく時間帯。デートも終わりに差し掛かり、二人は余韻に浸るように街をゆっくりと歩く。

 

「男が全て憎いだなんて思ってないんだ」

 

『はぁ?どういうことよ!』

 

「アイちゃん?」

 

「いや、憎いと思っていた。それは違いない。だが、その頃は不透明で意識がハッキリとしてなくて……あったのは男に対して裏切られたという悔しさだった。幽霊になり、さ迷いながら男を見る度に全ての男が憎くなっていった。猫ちゃんに取り憑いてからもハッキリとした意識はなく、居心地の良さに身を任せていた」

 

「…………」

 

「だが横島に猫ちゃんから追い出されてから、少しずつ忘れていた何かを思い出していった。ふふ、最初名前を聞かれた時につまったのは……忘れていたからなんだ、自分の名前を。それからはどんどんどんどん思い出してくる。生きていた頃の自分、生い立ち、過ごしてきた時間」

 

 大きな店の前で足を止めるアイ。アイはそこを見つめていた。

 

「横島、すまない」

 

「……何がだよ?」

 

「八つ当たりだったんだ、男全員を怨み憎んでいたのは……」

 

『アイ?』

 

「猫ちゃんすまない……私が怨んでいたのは……憎んでいたのは」

 

 そのお店の中から小綺麗な服を来た男が出てくる。恐らく店主であろう。

 にこやかに来店している客と話している。

 

 アイはその男を見て、黒く暗い笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

「あの男だった」

 

 

 

 

 

 

続く。

 

 

 

 

 

 




桂花編の後の話が書きたすぎて、桂花編は五話構成にしました。その結果凄く駆け足な展開になりました。
なので、次で桂花編終了です。
暇が出来たら加筆するかも……

いつも感想、評価ありがとうございます。
また明日見てくれると嬉しいです。
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