呉に舞い降りた道化   作:ちょりあん

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初投稿なのでドキドキしてましたが、評価やお気に入りにしてくれた方がいてくれて嬉しいです。
では、本日の更新分読んでくれると嬉しいです。


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 叫んでいた。心の中で、喉が枯れる程、悲痛に。

 

 それを見てアイツらは笑う。嗤う。

 愉しそうに。愉快そうに。

 

 壊されていく、汚されていく、私の一番の大切。

 

 力のない私には見ているだけしか出来なくて。

 それなのにその人は優しく微笑んで私を見る。

 

 とても、綺麗な綺麗な人。

 汚されても、穢されても、変わらずに美しい人。

 

 温かくて、私が支えてたつもりがいつも私を護っていてくれた。

 大切な、大切な、大好きな……。

 

 

 

 

『だからね、約束して―』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雪蓮さまと冥琳さまに拾われ、この館に来て十日たった。

 来た当初は取り乱したり意気消沈していたけど、ここの人たちが良くしてくれて何とか落ち着くことは出来、今は侍女の見習いとして此処で働かせてもらっている。

 

 でも、すぐに思い出してしまう。

 あの時のあの光景を……。

 

「……うっ!」

 

「っ大丈夫!?」

 

 口を押さえて蹲った私に隣にいた侍女の人が声をかけてくれる。

 

「……大丈夫……です」

 

「本当に大丈夫?無理しちゃだめよ?」

 

「はい、あいがとうございます」

 

 心配かけないように何とか笑顔を作る。

 ただでさえ普段から心配をかけているのに、これ以上心配をかけたくない。

 

 と、その時だ。

 

「横島、また侍女の着替えを覗いて……少しは懲りんかーーー!!!」

 

「ぶぎゅらばぁーー!!?」

 

 冥琳さまの怒鳴り声と共に一人の男が叫び声を上げて、私がいる近くの壁へと吹き飛んだ。

 

 その男は、仕方ないんや~着替えを除くのは男のロマンなんや~とか言いながら目を回している。

 

 頭に赤い鉢巻(バンダナというみたい)を巻き、変わった格好をした男。

 この館で私が一番嫌いな人だ。

 

「もう、横島さんまた着替えを覗いたんですか?」

 

「いや~つい出来心で」

 

 隣の侍女さんが苦笑しながら男……横島(こんな男、呼び捨てで十分だ)に声をかける。

 なんで着替えを覗いていたのに同じ女であるこの人は怒っていないんだろう?

 いや、この人だけじゃない。館にいる人全員がこの男の奇行を大概は笑って許している。

 と、その男が私の方へと顔を向けた。

 

「よう、恥ずかしいとこ見られちまったな」

 

「ひっ」

 

 声をかけられた瞬間私は小さく悲鳴を上げ侍女さんの後ろに隠れる。

 男は恐い。男は醜い。男は残酷だ。

 

「こらっ横島さん、怖がらせちゃダメじゃないですか」

 

「えっ、ちゃうちゃう!ワイはそんなつもりは……」

 

「ほう、だがその子には近づくなと言っておいたはずだが?」

 

 そこでこの男が飛んで来た方向から一人の女性が現れる。

 その人は私を助けてくれた人の一人、冥琳さまだ。

 

「あんたが蹴ったからでしょーが!!って、ひいっすんませんっしたー!!」

 

「謝罪はいらんよ、横島。お前には一度ゆっくりと話し合いをしなければならんと思っていたからな」

 

「いや~もう十分反省しましたんで、そんな必要は……」

 

「残念だがお前の意見は聞いていない。行くぞ」

 

「め、冥琳さ~ん。勘弁してーーーー!!」

 

 そう言って、冥琳さまは横島の襟を掴み引きずっていった。

 本当はあの男が冥琳さまの真名を呼ぶこと自体納得いかないけれど、あの情けない姿を見れて一応は満足だ。

 

 私は去って行く冥琳さまに頭を下げて見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、相当嫌われているみたいっすねー俺」

 

「まぁあの子の場合仕方ないだろう、男を嫌うのは。

お前の場合は普段の行動が原因だろうとは思うがな」

 

 此処は冥琳の部屋。そこで横島と冥琳はさき程の少女のことを話ていた。

 

「忠夫はスケベだからね~」

 

「違いますよ雪蓮さん!俺がスケベなんじゃないんです!

男という生き物はみなすべからずスケベなんす!!」

 

「あはは、本当に素直だね忠夫は」

 

 その部屋にいた雪蓮がニコニコと笑う。

 

「笑いごとじゃないわ雪蓮。流石にずっと男が怖いままじゃいけないでしょう?

ここにも男はたくさん働いているのだから」

 

「……あの子が男が怖くなった原因ってやっぱり」

 

「まぁ十中八九あの戦が原因よ。あれは……酷かったわ」

 

 雪蓮が珍しく真剣に顔を歪ませる。

 その表情には悔しさと怒りの色があった。

 

「所詮は獣……。やることも下衆の所業……か」

 

 冥琳も静かに零す。その言葉にも怒りが感じられた。

 横島は一応同じ男がしたことであり、気まずそうに頬をかく。

 

「ま、だから今回は仕方ないけど忠夫もあの子に近づかないでね。

しばらくは無理だろうし」

 

「私もお前を飛ばす時は気をつけよう。

なぜかいつもあの子のいる場所にお前が飛んでいく。

まさか……わざとではないな?」

 

「まさかまさかっ!俺にそんなこと出来ねぇっすよ!?」

 

 慌てて否定するも図星を指されて横島は内心慌てる。

 だが、今までの行動によりそれは無いかと冥琳はすぐに疑いを解く。

 

「じゃ、じゃあ俺まだ残りの雑用があるんで」

 

「ん、頑張ってね~」

 

「今度覗きをしたらどうなるか……分かっているな」

 

 冥琳の言葉に冷や汗を流しながら、なんとか言葉を濁して横島は部屋から出る。

 

 残りの仕事を片付けるために廊下を歩きながら横島は心の中で雪蓮に謝る。

 

「近づくなっていうのは聞けそうにないっす、雪蓮さん」

 

 それから横島は遠くにいる少女を見つめる。

 

「もう、あんまり時間もないみたいっすから……」

 

 そう呟いて、横島は歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

続く。

 

 

 

 

 

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