呉に舞い降りた道化   作:ちょりあん

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本日の更新です。
今回の更新でで小喬編は終わりです。


1―7

 

 

 

 

1-7

 

 

 

 

 

 

 

 

『やだっやだぁ!!お姉ちゃんも一緒にっ……!』

 

『誰もいないと家の中を探されて見つかるかもしれないけど、私が見つかればきっと他の場所は……少なくても見つかりにくいこの場所はみつからないから』

 

『そうじゃないよっ!一緒に隠れよう?ね!』

 

『私、お姉ちゃんだもん。だから小喬ちゃんを守るの』

 

『いや……いやだよぉ!』

 

『もう……小喬ちゃんがそんなんじゃ、私心配だよ』

 

『だ、だったら一緒にいてよっ』

 

『……ごめんね』

 

『お姉ちゃんっ!』

 

『小喬ちゃん……約束して――』

 

 その言葉を口にして大喬は優しく微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私がお姉ちゃんを成仏させる……?」

 

 それは言葉を変えただけで姉を殺すことではないのだろうか?そう小喬は考える。

 

「大喬ちゃんの未練は小喬ちゃんだ。小喬ちゃんが心配でこの世にとどまってる。だから安心させてやるんだ。大喬ちゃんがいなくても大丈夫って」

 

 無理だ。

 

「無理よ」

 

 即座に否定する。そんなこと出来るはずがなかった。

 

「だってお姉ちゃんが目の前にいるのに……こんなに近くにいるのにっ!もう会えないって思ってたのに会えたんだよ!?それなのに、また会えなくなるなんて嫌よっ!!」

 

「小喬ちゃん……」

 

 当たり前だ、と横島は思う。小喬の言葉は当たり前のことだと。当然の主張だと。

 

 でも、それでも横島はどちらか片方でなく両方を助けたかった。

 

「クスッ」

 

「っ!?」

 

 後ろから聞こえた笑い声に振り向く。その先には三度横島たちに襲い来る机があった!

 

 いつもなら避けられた。だが此処は動くには狭い部屋。

 

 間に合わないと判断すると、横島は小喬を庇うように立ち、飛来する机に背を向けた。

 

「――がぁっ!?」

 

「横島っ!?」

 

 鋭い衝撃が背中を襲うが何とか横島は倒れる事無く踏みとどまる。眼前には心配そうにこちらを見る小喬。

 

 横島は好意には鈍感であるが敵意や嫌悪には敏感である。まぁ横島自身の行動が元で大体嫌われたりするのだが……。

 だから横島は理解していた。小喬が自分を嫌っていることを。

 

 それなのに今こうして小喬は横島を心配している……。横島はそれが嬉しかった。

 

「俺は……女の子が大好きだ!」

 

「……へ?」

 

「女の子が綺麗な姉ちゃんなら力の限り助ける。そのかわり乳とか揉ましてもらうけど……。将来有望な美少女でも何としてでも助ける。数年後にデートして貰うけど……。ちなみに乳揉みもデートも成功したこたねぇけどな」

 

「さっきから何言って……」

 

「それでも俺は女の子が大好きだからな。だから俺は将来有望な小喬ちゃんも、大喬ちゃんも助けたいっ!」

 

「っ!」

 

「でも俺じゃ駄目なんだ……。大喬ちゃんには小喬ちゃんじゃなきゃ駄目なんだ。残酷なこと言ってんのは分かる。でもこのまま放っておくほうが駄目なんだ!」

 

 横島は悔しかった。

 GSなんて仕事をやってたくせに女の子二人助けられないことが……。

 横島は悔しかった。

 

「ちゃんとした話なんて出来なかったけど……見てただけで分かるよ、大喬ちゃんがどんだけいい子だってことが。そんな子が下衆な野郎に殺されて、なんの罪もないのに尚且つ悪霊になっちまう……そんなの絶対間違ってんだろ!?」

 

 だから横島は決めたのだ。二人を助けることを手伝おうと。

 

「だから小喬ちゃん――」

 

 横島はそこで言葉を止めた。言わなくても小喬には伝わったと思ったから。

 

 横島は大喬へと向き直る。その時点で大喬は次の行動へ出ていた。

 一番最初に小喬に放ったガラスの破片……再びソレが飛来してきていた!

 

「へっ何のためにわざわざ痛い思いして机を受け止めたと思ってんだ……」

 

 飛んでくるガラスに不適に笑い、横島は自分にぶつかっていた机を抱え――

 

「こうするためだっ、だらぁーーー!!」

 

 そのまま机をガラスに向かって投げつけた!

 

「しゃあっ!漢横島っ行っきま~す!!」

 

 それから横島は大喬へと突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃんを……成仏させる」

 

 小喬は呟く。それは姉を殺すのではなく救うことだと……横島はそう言いたかったんだろう。

 そしてそのことを小喬は先程のやりとりで理解した。

 

「お姉ちゃんを……」

 

 あの日、姉が死んでから……雪蓮たちと一緒に姉を埋葬してから、ずっと……もう一度会いたいと思っていた。

 

 それが今、目の前にいる。だけど目の前にいる姉は正気ではなく、それどころか幽霊で悪霊になりかけているという。

 このままでは人に害をなすと言う。

 

 あの優しい姉が誰かを傷つける?

 そんなことさせたくない。

 

 だがさせないためには姉を成仏させるしかない。だって……大喬は既に死んでいるのだから。

 

 死人は生き返らない。そんなこと小喬は分かっている。

 

 横島の言う通り成仏させるのが大喬のためであり、これからこの世を生きる小喬のためであることは分かっている。

 

 それでも……。

 

 それでも…………。

 

「できない……できないよぉ!」

 

 小喬の瞳から涙が溢れ出す。

 

「お姉ちゃんがここにいるのに……そんなことできないよぉっ!」

 

「わひっ!のわっ!……小喬ちゃ――っ!?」

 

 注意を引き付けた大喬の攻撃を避けていた横島が小喬の様子に気づき、視線をそらした時だ。

 大喬はその隙を見逃さなかった。

 

「うがぁっ!!?」

 

 大喬はすかさず部屋にあった小物類を勢い良く横島へと投擲し、横島はそれをまともに喰らい壁へと激突した。

 

「横島っ!――っ!!」

 

 小喬が横島に駆け寄ろうと腰を浮かすが、小喬はその動きを途中で止めた。

 

 なぜなら横島という障害物がなくなった大喬が、小喬の目の前に立っていたからだ。

 

「お姉ちゃん……」

 

 近くで見て改めて思う。この人は自分の姉だと。

 

 悪霊になりかけているのかもしれない。でも、まぎれもない自分の姉の大喬だと。

 

「わたし……わたしねっ」

 

「……小喬チャン」

 

 小喬を遮るように大喬が口を開く。それと同時に手を小喬に指し伸ばす。

 

 少し発音のおかしい言葉、だが紛れも無い大喬の言葉。

 

「一緒ニ……行コウ」

 

「ぁ……」

 

 その言葉に小喬の瞳が揺れる。

 

「駄目だ!小喬ちゃんっ!!」

 

 横島の叫びは小喬には聞こえない。小喬の意識は完全に大喬だけに向いていた。

 

「また……一緒に居られる?」

 

「ウン」

 

「もう……寂しくない?」

 

「ウン」

 

 頷く姉を見て小喬は思う。

 

 ならいいんじゃないか?と。

 

 大好きな姉が一緒なら、死んでもいいんじゃないか?

 ずっと寂しい思いをするなら、死んでもいいんじゃないか?

 

「だったら……私は――」

 

「小喬ちゃん!!」

 

 横島の叫び空しく、小喬は大喬に手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く。

 

 

 

 

 

 

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