コズミックプリキュア   作:k-suke

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第15話 「リーフとシーフ (前編)」

 

 

 

甲子市 村沢博物館

 

 

 

 

 

ここは市内にある博物館であり、何年かに一度世界的なもの展示されることでも有名な割と大きなものである。

 

 

そして今年がその年で、今回は世界の宝石展が開催されており、最大の目玉として極めて希少な赤いダイヤモンド、しかもその中でも世界最大のもの 通称「真紅のダイヤ」が展示されていた。

 

 

 

そのダイヤモンドを一目見ようと、博物館は連日押すな押すなの大盛況であり、警戒も特に厳重になっていた。

 

 

展示から数日、そこそこ人も落ち着いた中でようやく見にこれたという人達も多数いたぐらいである。

 

 

遠藤博士以下、いつものメンバーもそういう人達である。

 

 

 

ラン「うっわー!! すっごく綺麗!! ねぇみんなもそう思うでしょ!!」

 

厳重に密閉されたガラスケースに入れられ、ケースにも一定の距離から近付けないような展示方法であれども、その「真紅のダイヤ」の美しさはみるものの心を奪い、ランもまた感嘆の声をあげていた。

 

 

豪「ホント、スッゲー綺麗!! 姉ちゃん達もそう思うだろ?」

 

豪もまた感嘆の声とともに、そうリーフとダイーダに振ったが

 

 

リーフ「うんすごいね。見事な光の屈折率だわ。それに絶妙な配合でクロム原子が混じってる」

 

ダイーダ「そのバランスを見極めて、ここまで正確に光が反射するようにカットできるなんて見事な技術だわ」

 

 

その感想にランは脱力していた。

 

ラン「何その感想は? 気分壊しちゃうわ」

 

 

遠藤「ハッハッハッ。この二人に宝石の美しさはまだ理解できんようじゃな」

 

笑いながらそう語る遠藤博士に、リーフ達はキョトンとした顔で返事をした。

 

 

リーフ「いえ、別に珍しくないだけですよ。こんな炭素の結晶体なら、どこかの世界ではもっと大きなものが辺り一面に転がってますから」

 

ダイーダ「でもここまで綺麗にカットされてないけどね」

 

その言葉に遠藤博士は食いついた。

 

 

遠藤「何!? そんな世界があるのか!? 是非とも連れて行ってくれんか!! せめてこれと同じ大きさのもの一個でいいから欲しいのじゃ!! そうすれば、あんな研究やこんな研究も…」

 

 

欲望丸出しというような顔でリーフ達にすがりつく遠藤博士に、背中をポンポンと叩くものがいた。

 

 

遠藤「ええい、誰じゃ!! 今大切な話を!! ってお主は!!」

 

豪「げっ!! 河内警部!!」

 

ラン「どうしてここに!?」

 

 

河内「ここの警備の責任者を任されていてな。この俺の目が黒いうちはこのダイヤには指一本触れさせんぞ!! この盗人が!!」

 

遠藤「誰が盗人じゃ! ただちょっと欲しいと言っただけじゃ!! ごく普通の感想じゃろうが!!」

 

その人聞きの悪い言い方にカチンときた遠藤博士だったが、河内警部は聞く耳を持たなかった。

 

 

河内「ほぅ、認めたな。貴様ら全員窃盗未遂の現行犯で逮捕してやる!!」

 

そう叫んで遠藤博士達を捕まえにかかってきたのだった。

 

豪「無茶苦茶だぜ!!」

 

ラン「とにかく逃げるわよ!! ダイーダさん達も早く!!」

 

ダイーダ「えっ? 少し待ちなさい。この人は悪い人じゃ…」

 

ラン「いいから!!」

 

 

慌てて逃げる中、戸惑うダイーダの手を無理やり引っ張っていったランだったが、

 

リーフ「えっ? みんなちょっと待って… わっ!!」

 

 

リーフの方はこの騒ぎの中、人ごみに飲まれてしまい、離れ離れになってしまった。

 

 

 

 

 

 

しばらくのち、一人になってしまったリーフは、皆を探して博物館の中をうろついていた。

 

リーフ「う〜ん、困ったなぁ。あんまり人前でダイーダちゃんと通信したりマルチハンドを使うなって博士にも言われてるからなぁ… これがドラマに出てきたマイコってやつなのかな?」

 

 

とまぁ、時と場合にもよるにもかかわらず遠藤博士の言いつけを律儀に守っているリーフは、すぐに皆を探せる方法を持っていながらそれを使おうともしなかったため、本当の「迷子」になっていた。

 

 

リーフ「ふぅ。さてと、どうしようかな… あれ?」

 

これからのことを考えていると、近くにあるトイレの中で妙な話し声がした。

 

なんとなく気になったリーフはそちらへと足を運んだ。

 

そこが男子トイレだというのにもかかわらず…

 

 

 

 

「ニグのアニキ、これで俺達も貧乏生活からオサラバっすね」

 

その小柄な若い男は嬉しそうにそう語りかけた。

 

「おうよ。警備員の配置に加えて監視カメラの位置も全部把握したからな。これであの真紅のダイヤは明日の晩には俺達のもんだ」

 

ニグのアニキと呼ばれたサングラスの男は自信たっぶりにそう答えた。

 

 

「これで溜まった家賃が払えますから、アパートを追い出されずに済みますね」

 

「馬鹿野郎サブ! みみっちいこと言うな!! 牛丼の特盛りに卵と味噌汁だってつけられるんだぜ!!」

 

 

そんないかにも小物臭漂う会話をしているところに、リーフは話しかけた。

 

リーフ「あのう〜」

 

 

ニグ「なんだよ! ってお前、ここは男子トイレ!! …じゃねぇ、今の話聞いたな?」

 

 

リーフ「はい、全部聞こえました」

 

いつものようにどこかのほほんとした口調で話すリーフだったが、この二人はかなり慌てていた。

 

 

サブ「あ、アニキ〜どうしよ〜」

 

ニグ「な、情けねぇ声を出すな!! おう、テメェ! ちょっとばかし可愛いと思ってナメんじゃねぇぞ。話を聞かれたからには二つに一つ。俺達の仲間になるか、それとも…」

 

そう必死に強がろうとしながら、懐から果物ナイフを取り出してリーフに向けた。

 

 

リーフ「ぶーっ! ダメですよ!! 刃物を人に向けちゃ危ないですよ!!」

 

そう言いながら、リーフはあっさりとナイフを折り曲げてしまい、その光景にニグは目が点になった。

 

 

ニグ「な、なんだこいつ…?」

 

サブ「アニキ、どうしましょう〜」

 

予想外のことにどうしていいかわからず混乱していたニグとサブだったが、次の瞬間ニグの頭に何かが閃いた。

 

 

 

ニグ「す、すまねぇ。じつは会社を首になっちまって、再就職の当てもなく、どうしたらいいかわからなくなって、つい思い余ってこんなことを…」

 

ニグは地面に手をついて頭を下げながら無理やり悲しそうな声でそう言った。

 

 

サブ「田舎にいる、去年亡くなった病気の両親にせめてうまいもんでも食わせてやろうと思いまして…」

 

それを見ていたサブも同じように地面に手をついて、大根丸出しのような棒読みでそう言った。

 

ニグ・サブ「「どうか哀れと思って見逃してやってください」」

 

 

 

それを聞いたリーフは、本気で気の毒そうな顔をして優しく二人の方に手を置いた。

 

 

リーフ「それはお気の毒に。よくわかりませんけど、私にできることなら力になりますから」

 

ニグ・サブ「「へっ?」」

 

 

リーフ「ダイーダちゃんはあんまりこの世界の人に関わるなっていうけど、困ってる人は見過ごせないですから」

 

リーフはにっこりと笑ってそう言った。

 

 

サブ(こんな泣き落としに引っかかるなんて、珍しいやつですね)

 

ニグ(ばーか、俺の演技力の勝利よ)

 

そんなリーフを見て二人はひそひそと感想を漏らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

アナウンス『遠藤平和科学研究所よりお越しの、遠藤リーフ様。お連れ様がお待ちです。1階正面玄関までお越しください』

 

 

 

豪「来ないねー、リーフ姉ちゃん」

 

ラン「リーフさん、一体どうしたのかしら?」

 

遠藤「まったく、どこをほっつき歩いとる」

 

 

ようやく河内警部を振り切った一同だったが、リーフとはぐれてしまった事に気付き、案内アナウンスを入れてもらっていた。

 

 

ダイーダ「仕方ないわ。博士、緊急回線でリーフと連絡を取ってみます」

 

遠藤「うむ。ん? いや待った」

 

やむを得ないと、ダイーダがリーフと通信をしようとしたが遠藤博士はそれを制止した。

 

 

豪「じいちゃん、なんで止めるんだよ?」

 

ラン「リーフさんを探さないと」

 

 

遠藤「いや、これはいい機会かもしれん。リーフには自力で帰らせよう。可愛い子には旅をさせよじゃ」

 

その言葉にダイーダも納得した。

 

 

ダイーダ「そうね。あの子ぼんやりしてる事が多いから、苦労すれば少しはしっかりするでしょう。 じゃあ帰りましょう」

 

 

ラン「えっ? で、でも…」

 

豪「う〜… まぁ、リーフ姉ちゃんがどうこうされる危険はないだろうけど…」

 

 

釈然としないものを感じながらも、豪とランもリーフを放って帰る事になってしまった。

 

 

 

 

その頃

 

 

 

 

サブ「お前名前なんていうんだ?」

 

リーフ「はい、遠藤リーフという事になってます」

 

リーフを連れたニグとサブが憮然としながら自宅のアパートへと向かっていたが

 

 

ニグ「リーフ… 葉っぱちゃんね。年はいくつだ?」

 

リーフ「年? 今年は20XX年ですよ」

 

ニグ「そうじゃねぇ! お前が生まれたのはいつだって聞いてんだよ」

 

リーフ「ああ! それだったらこの世界の時間で48日と19時間30分前です」

 

ニグ・サブ「「はぁ!?」」

 

 

どこかチンプンカンプンな言動を繰り返すリーフに二人は戸惑っていた。

 

サブ(アニキ、こいつちょっとおかしいですよ)

 

ニグ(頭が弱いのかもしれねぇな… まぁそれならうまく言いくるめりゃ、誘拐犯扱いにだけはならねぇだろう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海底 Dr.フライ秘密研究所

 

 

Dr.フライ「ついに見つけたぞ。この絶妙なクロム原子の配合率、完璧なカットによる光の屈折率。この真紅のダイヤを使えば史上最強のレーザー砲を作ることができる」

 

件の真紅のダイヤのニュース映像を見ていたDr.フライが歓喜の叫びをあげていた。

 

 

ゴーロ「けっ! まーた一人で盛り上がってやがる」

 

ファル「学習能力のない天才様だな」

 

 

そんな自分を冷ややかな目で見ていたファルとゴーロに、Dr.フライは噛み付いた。

 

Dr.フライ「黙れ!! これを使って作ったレーザー砲なら地上を簡単に焼き尽くすこともできる。暗黒の世界を作り上げられるということじゃ!!」

 

ゴーロ「へぇ〜、割と派手で面白そうじゃねぇか」

 

興味が出てきたようにゴーロがそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

もうすぐ夕飯という時間にもかかわらず、未だに帰ってこないリーフにランと豪は心配という文字をデカデカと顔に貼り付けていた。

 

 

豪「じゃあそろそろ俺は帰るけどさ、姉ちゃんが帰ってきたら連絡入れてくれよな」

 

ラン「うんわかったわ」

 

 

遠藤「心配することはない。必ずリーフは戻ってくる」

 

ダイーダ「そうよ、あの子だって特別警備隊員としての称号、プリキュアを名乗ってるんだから」

 

口ではそう言いながらも、遠藤博士もダイーダもかなり挙動不審であり足をカタカタと言わせていた。

 

豪(姉ちゃん、みんな心配してるんだぜ。どこにいるんだよ)

 

 

 

 

 

 

その頃、ニグとサブの住んでいるかなり年季の入ったアパートにてリーフが夕食の支度をしていた。

 

ニグ「変な奴仲間にしちまったな〜」

 

サブ「でも、いい子ですよ。それに部屋の中に華があっていいじゃないすっか」

 

備え付けの台所で料理をしているリーフを見て、嬉しそうにそういうサブをニグはたしなめるように怒鳴った。

 

ニグ「馬鹿! 泥棒しようって奴らがいいやつ仲間にしてどうするんだよ!」

 

 

そうこうしていると、リーフが微笑みながら鍋を持ってきた。

 

リーフ「さぁできましたよ。いっぱい食べてくださいね♪」

 

その笑みに少しドキリとしながらも、ニグとサブは喜びに打ち震えていた。

 

 

ニグ「うっうっ…女の子の手料理だ」

 

サブ「インスタントじゃない飯なんて何年ぶりかなぁ…」

 

 

鍋から器によそい、声を合わせて嬉しそうに叫んだ。

 

 

ニグ・サブ「「いただきまーす!!」」

 

 

そして箸を一口つけた途端、彼らの顔色が変わった。

 

ニグ「うっ!!」

 

サブ「これは…」

 

そしてそのままトイレへと駆け込み、胃の中のものをありったけ吐いていた。

 

 

ニグ「おぇ〜、なんだあれ? 料理かよ?」

 

サブ「信じられないまずさっす。 何をどうしたらあんな味がでるんすか?」

 

 

そんな二人の会話を聞いて、リーフは味見をすると不思議そうな顔をしていた。

 

リーフ「あっれ〜おっかしいな〜? 栄養素の配合はミリグラム単位で完璧なのにな…」

 

 

 

 

 

そんなこんなで夜も更け、また日が昇ってしばらくして

 

 

 

 

 

ニグ「う、うん…朝か… あれ?」

 

一応リーフに気を使って布団を譲り、毛布に包まって部屋の隅で寝ていたニグだったが、リーフが部屋の中にいないことに気がついたのだ。

 

 

ニグ「おい! 起きろサブ!! あの女はどこだ!?」

 

慌てて隣で同じように寝ていたサブを叩き起こして、リーフの居場所を尋ねた。

 

サブ「ふぁ〜あ。アニキおはよう」

 

 

ニグ「おはようじゃねぇ! あの女がいねぇんだよ!!」

 

サブ「散歩かなんかじゃないんすか〜」

 

焦っているニグとは対照的に、緊張感なく欠伸をしながらサブはそう言った。

 

 

ニグ「馬鹿野郎!! 逃げたに決まってんだろ!! 今頃サツに俺達のことタレこんでるぜ」

 

その言葉に、寝ぼけ眼だったサブの目も一発で覚めた。

 

 

サブ「ええー!! そんな、俺達まだ何にもしてないのに」

 

 

二人は逃げ出すべく慌てて荷造りを始めながら、リーフを罵っていた。

 

ニグ「くそったれ!! 可愛い顔してやってくれるぜ! これだから女ってやつは!!」

 

サブ「あいつ、はじめっから逃げるつもりだったんすね」

 

 

 

リーフ「ただ〜いま〜」

 

そんな中、実に暢気な声とともにリーフが荷物を抱えて部屋に入ってきた。

 

 

ニグ・サブ「「へっ?」」

 

 

リーフ「わぁ、朝からお掃除ですか? 頑張ってくださいね♪ 私も力のつくものを作りますから」

 

 

戸惑う二人をよそにリーフはニコニコと笑って台所に向かった。

 

 

ニグ「オメェ逃げたんじゃねぇのか?」

 

リーフ「逃げる? 朝ごはんの材料を買いに行っただけですよ」

 

 

サブ「な、なんだ…びっくりした…」

 

ホッとしたようにへたり込んでしまったニグとサブだが、そこではたと気がついた。

 

 

ニグ「ん? 朝ごはん?」

 

二人は顔を見合わせると、昨夜の劇物のことを思い出した。

 

 

 

リーフ「さ〜て、栄養満点のものを作りますからね♪」

 

そんな二人をよそにやる気満々というように腕まくりをしたリーフだったが、ニグとサブに大慌てで羽交い締めにされた。

 

 

ニグ「いや、飯は俺達が作るから」

 

サブ「お客さんはゆっくりと座っててください」

 

 

 

リーフ「はあ…」

 

そんな二人の必死さにリーフは首を傾げていた。

 

 

 

 

 

 

その頃、朝一番で遠藤平和科学研究所に入れた豪は、未だにリーフが帰ってきていないということを聞き、ランとともに村沢博物館へと向かっていた。

 

 

豪「一晩中連絡がないなんて、絶対何かあったんだ。なんの手がかりもないけどまずここから探してみないと。 でもダイーダ姉ちゃんはどうしたんだよ?」

 

ラン「リーフさんがどうにかなってればわかるっていうのよ。なんの返事もないなら無事な証拠だって。 かなり心配そうな口調でそう言ってたわ」

 

 

豪「しゃあねぇ。とにかく行くぞ」

 

 

 

第15話 終

 

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