遠藤平和科学研究所
リーフ「遠藤博士はどうしたの?」
ラン「台所で実験中よ。新しい非常食を作るって言ってたわ」
ダイーダ「なるほどね、栄養価が高くて長持ちする食品があればいざという時便利だものね」
豪「あんまり期待しないほうがいいよ。じいちゃん料理は下手なほうだから」
感心したように頷いていたダイーダだが、豪はすでに諦めているようにそう告げた。
そんな空気の中、昼寝をしていた飼い猫のヒットが突然何かに反応するかのように立ち上がると、大きな揺れが研究所を襲った。
豪「これって!?」
ラン「またよ!!」
リーフ「危ない!!」
ダイーダ「みんなあの中に!!」
天井からパラパラと破片が落ち家具が倒れてくる中、リーフとダイーダはそれぞれ豪とランを抱えて、部屋の隅に置いてある骨組みだけの物置のようなものに飛び込んだ。
これはただの骨組みではなく、遠藤博士が製作した免震避難所であり、この中に入っている限り地震の揺れの影響はほぼゼロになるという優れものである。
数十秒後揺れも収まり、豪とランは恐る恐る避難所から出た。
豪「ふう… 収まったみたいだね」
ラン「でもこの地震やっぱり異常よ。これで4日連続、しかも今日は朝から3回目よ」
そこに頭から小麦粉をかぶり真っ白になった遠藤博士が台所から出てきた。
遠藤「うむ、マイナスエネルギー検知器がはじめの地震で壊れてしまって修理中じゃからはっきりしたことはわからんが、これはもしかすると…」
豪「…じいちゃん、先に風呂入りなよ。決まりきらないからさ…」
一同は、研究所奥の司令室でこの4日間発生した地震の震源地と思われる場所を整理していた。
ラン「やっぱり変よ。東京湾から、こう本土に来て… 震源地が規則的に北上してるわ」
遠藤「うーむ、こうまで規則正しく正確に移動しているとは… これはただの地震ではないな。しかもこの調子じゃと、次に銀傘山の真下付近が震源地になるぞ」
豪「銀傘山って、たしか関東にある唯一の活火山だよね。もしそこで大きな地震が起きたら…」
その分析に豪は青い顔をしていた。
遠藤「うむ。そうでなくとも、近隣には多くの住民や観光客がおるじゃろう。 さすがに避難指示は出始めておるじゃろうが…」
リーフ「でも、間に合わないかもしれないよ!!」
ダイーダ「博士、私達は救援に向かいます。 パーフェクトの一味の仕業ならなおさらなんとかしないと!!」
遠藤「よし、コズミックプリキュア出動じゃ!!」
リーフ・ダイーダ「「はい!!」」
豪「よし俺も」
遠藤博士の指示に力強く返事をした二人に続いて、豪も準備をしようとしたが
ラン「あんたはダメ」
ランに止められた。
豪「なんで止めるんだよ」
ラン「あんたまたそうやって宿題サボる気でしょ。私だって恥ずかしいし、おばさんからもいろいろ言われてるのよ。今日はここで宿題やんなさい!」
きつい口調で告げたランの言葉に、豪はぐうの音もでなかった。
銀傘山 麓
震源地がこの近辺に近づいていることは世間も重々承知しており、様々な救援が向かい始めていた。
この車に乗った女医、実 京香も緊急対策本部からの要請を受け、派遣された一人である。
京香「あら、通行止めかしら…」
崖下の道を通って付近の病院に向かおうとしていたところ、前方で交通規制が行われていた。
河内「周辺の封鎖は完了したのか?」
警官「はい、もう間も無くです」
この河内警部もまた、要請を受け部下の警官とともにこの付近に来ていた。
京香「すみません。ここ通れないんですか?」
河内「申し訳ありません。土砂崩れの危険がありまして、道路封鎖をしています」
京香「しかし、ここからだとしばらく道を引き返さないと… 病院で待ってる方がいるんです」
河内「? あなた、この地震騒ぎで派遣されてきたお医者さんですか?」
京香「はい、そうです。 実 京香と申します」
河内「そうですか… よし! この警視庁の河内、責任を持って先導しましょう」
京香「よろしいんですか?」
河内「なぁに、別に通行止になっているわけじゃなし。こんな美人のためならば!! はっはっはっ」
警官A「まったく、鼻の下伸ばして」
警官B「火山が噴火するかもしれないってのに河内警部も呑気なもんだ」
緊急対策本部からの要請を受けて警視庁から派遣されたというにもかかわらずの態度に、河内警部の部下も呆れたようなため息を付いていた。
一方この付近上空にも、三冠号を操るリーフとダイーダが到着していた。
ダイーダ「一応避難指示は出てるみたいね」
リーフ「その他にもいろいろ救援は来てるみたい。とりあえず周辺の状況を調べてみるよ」
ダイーダ「ええ、頼むわ」
リーフ「チェンジハンド・タイプイエロー!!」
ダイーダが頷くと、リーフは即座に両腕を小さなロケットが装備された黄色の腕に換装した。
そしてハッチを開けると、リーフは右手をかざし、センサーアイを発射した。
リーフ「センサーアイ、発射!!」
そうして、付近の情報を調べていたリーフだったが突如顔つきが変わった。
リーフ「大変!! 倒壊した家の中に取り残された人がいるよ!!」
ダイーダ「なんですって!! 場所は? すぐに行くわよ!!」
リーフの知らせにダイーダは操縦桿を切り、三冠号を急行させた。
麓の町は、地震でかなりの家が倒壊しており、瓦礫の山と化していた。
そこに三冠号が到着するや否や、着陸させる時間も惜しいというように、即座にリーフとダイーダは飛び降りた。
リーフ「ダイーダちゃん、あの家の中だよ!! 助けてって言ってる」
普通ならば到底聞こえるはずもないほどかすかな声だったが、超高性能集音器の付いている彼女達の耳には、助けを求める声がはっきりと聞こえていた。
ダイーダ「わかってる、行くわよ」
そうして倒壊した家の中に入っていくと、倒れたタンスと崩れた天井に下敷きになっていた老夫婦がいた。
リーフ「しっかり!!」
ダイーダ「もう大丈夫ですよ!!」
おじいさん「おお、ありがとう…」
おばあさん「助かりました…」
瓦礫を持ち上げ老夫婦を助け出すと、簡単な応急処置を手早く施し、彼らを背負ってリーフ達は猛烈なスピードで走り始めた。
ダイーダ「もうちょっとだけ我慢してくださいね」
リーフ「すぐに病院まで連れて行きますからね」
背負われていた老夫婦は、そのあまりのスピードに目を丸くしていたが、あまり細かいことを尋ねる余裕はなさそうだった。
銀傘山 麓 病院
ここはこの付近で唯一の病院であり、ここ数日の地震の影響もあり、怪我人が大勢収容されていた。
京香「案内ありがとうございました。怪我人はこれからも増えて行くでしょうし… 早く手当をしてあげないと」
河内「お願いします。しかしこうまで立て続けに地震が起きるとは、何かの前兆でしょうかねぇ」
到着した京香先生と河内警部がそんなことを話し合っていると、その横を風のようなものが走り抜けていった。
河内「な、なんだ今の?」
京香「何かが通り抜けて行ったような…」
それはもちろん
リーフ「ん? ダイーダちゃん、ストーップ!!」
ダイーダ「え? 何?」
猛スピードで走っていたリーフはすれ違った人を見てつんのめるように急停止し、ダイーダにも止まるよう言った。
リーフ「今すれ違った人、確か… よかった、おばあちゃん助かりますよ」
そうしてダイーダとともに引き返していき、京香先生の前で再び急停止した。
リーフの姿を見た京香先生と河内警部は、突然目の前に現れたことよりも彼女がここにいるということに驚いた。
河内「お前らはあのジジイの所の! なんでここにいる!?」
京香「あなた、確か前に献血に来た…」
リーフ「はい、リーフと言います。あなたは確かお医者さんでしたよね、人の命を助ける仕事をしている…」
京香「え、ええ…」
戸惑いつつも頷いた京香先生を見て、リーフは良かったというように満面の笑みを浮かべた。
リーフ「やっぱり! このおばあさんたち怪我をしているんです。倒壊した家の下敷きになっていて…」
ダイーダ「応急処置はしたんですが、本格的な検査と手当をお願いします」
その言葉に、京香先生も険しい顔になった。
京香「わかったわ、すぐに手当をしましょう。おじいさんおばあさん、もう少しの辛抱ですよ。 あなたたち、この人たちを診察室まで運んであげて」
そう優しく声をかけると、腕まくりをして診察室へと向かっていった。
河内「こら、俺を無視するな!! なんで貴様らがここにいると聞いているんだ!!」
完全に無視された河内警部は大声でそう怒鳴ったが、
京香「ここは病院です!! お静かに願います!!」
一喝されてしまい、何も言えなくなってしまった。
病室
しばらくのち手当を終えた老夫婦はベッドに寝かされていた。
京香「軽い打撲と怪我で済んだみたいね。骨折をしていなかったのは幸いだわ。少し大事をとればすぐよくなりますよ。あなたたちが発見してくれたおかげよ。応急処置も完璧だったわ」
おじいさん「本当にありがとう、あなたたちのおかげです」
おばあさん「ありがとう、ありがとう」
ベッドに寝かされた老夫婦は、涙ながらにリーフ達にお礼を言っていた。
リーフ「いえ、私達よりあなたの方が立派です」
リーフはいつものどこかぼんやりした感じの微塵もない真剣な表情でそう言い放った。
京香「立派だなんて、そんな…」
リーフ「いえ、私はあなたを心から尊敬します。人の命を助けることに自分の人生をかけた人を私は尊敬します」
突然の言葉に、京香先生は照れながら返事をした。
京香「そんな、人を助けることを一生懸命やっている人ならあの刑事さんだってそうよ」
ダイーダ「ええ、私はあの人の方が気に入ってるわ。もちろんあなたもね」
リーフ「私もだよ。この人も河内警部もだーい好き!!」
そんな二人を見て、京香先生は嬉しそうに微笑んだ。
しかし次の瞬間
ダイーダ「!! また」
京香「えっ? キャア!」
再び大きな揺れが病院を襲い、病室内にあった棚が京香先生に向かって倒れかかってきたのだ。
京香先生は下敷きになるのを覚悟したが、いつまで待っても衝撃が襲いかかって来ず、恐る恐る目を開けた。
すると
リーフ「大丈夫でしたか?」
にっこりと笑ったリーフが間一髪棚を受け止めていた。
京香「え、ええ。ありがとう。しかしあなたすごい力ね」
倒れた棚を片手で受けとめていたリーフを見て、京香先生はそう漏らした。
リーフ「いえ、これぐらい… ん!?」
ダイーダ「この音は…」
突然険しい顔をしたリーフとダイーダは床に耳を当てて物音を聞き始めた。
京香「えっ、どうしたの? いったい何を…」
突然のことに戸惑っていると、そこに河内警部が飛び込んできた。
河内「みんな!! 大丈夫だったか!?」
中の患者の状態を心配していた河内警部だったが
リーフ「静かに!!」
ダイーダ「聞こえなくなるから!!」
河内「おう、すまん。 ってお前らは何をやっとる?」
リーフ「…何か巨大なものが地中を移動してる」
ダイーダ「ええ、この数日の地震も今の地震もおそらくこいつの仕業。それにこの音からすると…火口付近に向かってるわ。こうしちゃいられない!!」
危険を察知すると、河内警部に向かってダイーダは真剣な顔で告げた。
ダイーダ「河内警部、この付近の人達を至急避難させてください。火山が噴火させられる可能性があります」
河内「はぁ? お前らは何を?」
突然のことに混乱していた河内警部に対して、ダイーダは頭を下げて告げた。
ダイーダ「お願いします。このままでは多くの人が傷つきかねません」
そんなダイーダの態度に何か感じるものがあったか、河内警部は真剣な顔で頷いた。
河内「よしわかった。 この病院や付近の住民は俺が責任を持って避難させる」
ダイーダ「よろしくお願いします。リーフ行くわよ!!」
リーフ「オッケー!!」
そうしてリーフとダイーダは猛スピードで病室から飛び出していった。
河内「…なんだろうな。デタラメを言ってるように思えんし、自分達だけ逃げた訳でもなさそうだ…」
京香「ええ、不思議な子達ですね」
河内「おっといかん、避難を行わないと。先生手伝っていただけますか?」
京香「はい!!」
その返事と共に、河内警部と京香先生はすぐさま病院の患者を含む周辺の住民の避難をし始めた。
銀傘山付近 地底
地下数百メートルにある空洞で、巨大な生物が地面に幾度となく前足を叩きつけていた。
この生物はナマズに機械の足を取り付けたような姿をしており、普通の生き物でないことは火を見るより明らかであった。
そして、ナマズ怪物の頭の上では苦い顔をしたファルが腕組みをして立っていた。
ファル「ちっ、これでもう4日目だってのにいつになったら火山が噴火するんだ」
そうやって愚痴をこぼしたファルに通信が入った。
Dr.フライ『文句ばかり言っとらんでもっとメイジャーを活発に活動させろ。 この銀傘山は現在もっとも噴火の可能性の高い活火山じゃ。地下のマグマ層に刺激を与え続ければ大噴火は間違いない。 地上を暗黒に染めるための盛大な花火じゃ!!』
興奮気味のDr.フライだったが、ファルは冷めたものだった。
ファル「けっ、前に失敗した作戦の焼き直しだろうが。もう少しましなことを考え付かないのか、大天才様よ」
Dr.フライ『黙れ!! 同じ失敗は繰り返さん!! 今度はこうして地上の火山を目標にしたのじゃ。しかも見つからんように地下から侵攻するようにしておる。とっと地震を起こして火山噴火を誘発させろ!!』
ファル「いちいち怒鳴るな。大体ここまでやってもいっこうに噴火する気配もないところを見るに、そもそも根本的に作戦に問題があるんじゃないのか?」
Dr.フライ『やかましい!! 貴様のやり方に問題があるのじゃ!! 地中でダメなら直接火口を刺激しろ!!』
ファル「ちっ、わかったわかった」
舌打ちをしながらそう告げると、ファルはナマズ型メイジャーを地上へと這い出させた。
第21話 終