レッドハンドの怪力に大きく投げ飛ばされ、叩きつけられた瓦礫の中から何とか這い出して来たリリーフとダイダーだったが、今更ながらにマルチハンドの性能の高さに驚いていた。
ダイダー「敵に使われて初めてマルチハンドの性能がすごいってわかったわ」
リリーフ「ホント、博士って天才なんだね」
ゴーロ「まだまだ行くぜ、今度はこいつだ。凍り付け!!」
ゴーロは次にグリーンハンドを装着すると、左手をかざし超低温冷凍ガスを噴射してきた。
リリーフ「うあ…」
ダイダー「あ…」
その真っ白い超低温のガスをまともに浴びてしまった二人は、たちまちのうちに全身が凍りつき、身動きが取れなくなってしまった。
ファル「おやおや。プリキュア、ずいぶん寒そうだな。おい、今度は温めてやれ」
凍りついた二人を見て意地の悪そうにファルが言うと、ゴーロもその尻馬に乗った。
ゴーロ「おうそうしてやろう。俺は優しいからな、ありがたく思え」
するとゴーロは続けてグリーンハンドの右手をかざし、超高熱のプラズマ火炎を発射してきた。
リリーフ・ダイダー「「ギャアアアア!!!」」
その火炎で確かに二人の氷は一瞬で溶けたものの、全身が火だるまになってしまい、のたうちまわった。
ファル「遊びは終わりだ。メイジャーこいつらを片付けてしまえ!!」
そのファルの呼びかけに応えるように、蜘蛛・蜂合体メイジャーは雄叫びをあげて蜘蛛の巣を口から吐き出し、リリーフとダイダーを絡め取ってしまった。
リリーフ「うわっ!!」
ダイダー「くっ、動けない!!」
身動きが取れなくなってしまった二人に、蜘蛛・蜂合体メイジャーはとどめをささんとお尻の部分の特大の針を向けた。
豪「あっ、姉ちゃん達が…」
河内「くそう、銃は弾切れ… ん、そうだ小僧。さっきの銃を貸せ!!」
豪「えっ、あっ、うん。って、大丈夫なの?」
河内「なめるな、俺は警察官。銃のプロだ!!」
豪から手渡されたアンチマイナーガンを構えた河内警部は、そう力強く言い放った。
そしてその言葉通り、放たれたビームは的確にゴーロとファル、そして蜘蛛・蜂合体メイジャーに直撃し、一時的にだが動きを止めることに成功した。
ゴーロ「グア…」
ファル「くそ、これはこないだの…」
ゴーロとファル、そして蜘蛛・蜂合体メイジャーまでもが全身が麻痺してしまい動けなくなったのを見たリリーフとダイダーは、その隙になんとか拘束を解いて大ジャンプして距離をとった。
ダイダー「頼んだわよ!!」
リリーフ「オッケー!! チェンジハンド・タイプイエロー!!」
その掛け声とともに、リリーフの両腕が小さなロケットが装備された黄色の腕に変わった。
全身の痺れがとけて動けるようになったゴーロとファルだったが、イエローハンドを装着しているリリーフを見てせせら笑った。
ファル「馬鹿が。そんなもので何ができる」
ゴーロ「とうとうヤキが回ったらしいな」
しかし、そんな彼らをDr.フライは叱責した。
Dr.フライ「こりゃ!! あいつらの腕は必ず全部奪えと言うたじゃろうが!!」
ゴーロ「けっ、いちいちやかましいんだよテメェは」
ファル「あんなレーダー、あってもなくてもどうでもいいだろ」
自分達への注意がそれたその一瞬をリリーフは見逃さず、すかさず右手をかざした。
リリーフ「センサーアイ、発射!!」
勢いよく発射されたセンサーアイは、ゴーロ達の足元に命中した。
そして次の瞬間
ゴーロ「ぐおおおおおっ!!」
ファル「がああああっ!!」
打ち込まれたセンサーアイは大爆発を起こし、ゴーロとファルを大きく吹き飛ばし大ダメージを与えていた。
ファル「く、くそったれ… あれが小型ミサイルだったとは…」
ゴーロ「しかもなんて威力だ…」
倒れ伏し立ち上がることもできないほどのダメージを負ったゴーロとファルを見て、Dr.フライは怒鳴りつけた。
Dr.フライ「アホどもが!! 何があるかわからんから全てを奪えといったのじゃ!!」
リリーフ「よーし、もう一発」
リリーフは続けて左手をかざし、左手にセットされたセンサーアイを蜘蛛・蜂合体メイジャーに向けて発射した。
打ち込まれたセンサーアイは同じく大爆発を起こし、蜘蛛・蜂合体メイジャーは土手っ腹を抉り取られるような格好になってしまい、苦しそうな雄叫びと共に倒れこんでしまった。
このイエローハンドは、広範囲の被災地の様子を正確に把握することを目的に作られたものであるが、その際に発見した即座に向かえないような遠隔地の瓦礫等で埋まってしまった場所を撤去できるようになっており、この機能はそのためのものである。
リリーフ「これで撃ち尽くしちゃっただけど、うまくいったよ」
ただし、欠点として当然ながら両腕の分二発で打ち止めである。そのため弾切れという心配のないプルーハンドの存在もあり、普段これを武器として使わないのである。
ダイダー「これで十分よ。行くわよゴーロ!!」
センサーアイを撃ち尽くしたリリーフだったが、これで十分というようにダイダーは光のスティックのようなものを取り出した。
ダイダー「受けなさい。プリキュア・シャイニングスイング!!」
そう叫びながら、ダイダーはスティックを野球のスイングのように一振りした。
すると光の斬撃が飛んでいき、ゴーロに直撃しその体を切り裂いた。
ゴーロ「ぐああああっ!!」
それに続いて、リリーフは大きく振りかぶり虹色の玉を手に輝かせ始めた。
リリーフ「くらえファル!! プリキュア・レインボール!!」
そうしてリリーフは、ようやく片膝をついてなんとか立ち上がろうとしていたファル目掛けて、虹色の玉を亜音速で投げつけた。
ファル「ぎゃあああ!!!」
リリーフの投げつけた虹色の玉は、ファルの土手っ腹を貫通し駄目押しとでもいうべきダメージを与えた。
二人の必殺技の直撃をゴーロとファルはそのショックでメカニックの一部が故障したらしく、奪い取ったマルチハンドが飛び出していた。
リリーフ「しめた!! チェンジハンド・タイプブルー!!」
ダイダー「チェンジハンド・タイプレッド!! 続けてグリーン!!」
それを見た二人はすかさず、マルチハンドを奪い返した。
ダイダー「よし、異常なしっと」
リリーフ「やっぱりこうでなくっちゃ」
Dr.フライ「ううっ、まずい。ここは撤退じゃ」
旗色が悪いことを悟ったDr.フライは、ひとりこそこそと逃げ出そうとしていたが、その前に河内警部が立ちはだかった。
河内「どこに行く気だ、Dr.フライ。この河内が逃がしはせんぞ!!」
Dr.フライ「ええいどけ!! わしを誰だと思っとるか!!」
河内「ただの世界的テロリストだ!! この場で逮捕してくれる!!」
Dr.フライ「く、くそう… わしの偉大さをわからんアホめが…」
いつものセリフを一蹴されたDr.フライは、なんとか逃げ出そうとしていたが、それを見逃す河内警部ではなかった。
河内「おかしな動きをするな。さもなくば撃つぞ」
アンチマイナーガンを構えた河内警部だったが、それを見たDr.フライは笑い始めた。
Dr.フライ「ん? ぶひゃひゃひゃ!! その銃で撃つのか? そいつはマイナーやあのポンコツどもには効果があっても、物理的破壊力や殺傷力はないな」
河内「何ぃ!?」
豪「クゥッ、あいつそれを一目で…」
確かにDr.フライの言う通り、このアンチマイナーガンはマイナスエネルギーを浄化するものであり、反動がなく豪のような子供でも容易く扱えるものの、物理的破壊力は皆無である。
一種の安全装置であるのだが、それを一目で見抜いたDr.フライの眼力も敵ながら天晴れなものであった。
河内「でぇい、くそ!!」
豪の様子を見て、Dr.フライの言葉が真実だと悟った河内警部はヤケクソ気味に引き金を引き、Dr.フライに向けてビームを撃った。
Dr.フライ「ギャアアアア!!」
河内「あん?」
するとなぜか直撃を受けたDr.フライはダメージを受けてしまい、全身が麻痺して倒れこんでしまった。
豪「えっ!? なんで?」
その様子に豪は驚いていたが、一番混乱していたのはDr.フライだった。
Dr.フライ「な、なぜじゃ…?」
リリーフ「ライナージェット、カノンモードスタンバイ!!」
ダイダー「ターゲットロック!! プラスエネルギーチャージ!!」
リリーフとダイダーはライナージェットを呼び出すと、カノンモードで保持し、合体メイジャーと未だまともに動けないゴーロとファルに照準をセットし、自分達のプラスエネルギーをチャージしていった。
リリーフ・ダイダー「「プリキュア・ウォークオフ・ブラスター!! ファイヤー!!!!」」
その掛け声とともに、ライナージェットから光の奔流とでもいうかのような、眩しくそして温かいエネルギー波が発射された。
しかし合体メイジャーは最後の力を振り絞るように、ゴーロとファルの盾になるように倒れこんだ。
ファル「くっ、撤退するぞ…」
ゴーロ「おう…」
苦痛に顔を歪ませながら、浄化されまいとばかりにゴーロとファルは撤退していった。
河内「Dr.フライ、このまま逮捕して連行してやる!!」
全身が麻痺してしまってしたDr.フライに馬乗りになり胸ぐらを掴みながらそう吠えた河内警部に、Dr.フライは怒鳴り散らした。
Dr.フライ「黙らんか!! わしこそがこの世界を暗黒に変え、君臨する大天才の…」
全く懲りもせず同じことを喚くDr.フライに、節子が吐き捨てるように言った。
節子「いいかげんにしろってのよ!! この大嘘つきが!!」
Dr.フライ「なんじゃと!? もう一度言ってみろ!!」
節子「何度でも言ってやるわよ!! あんたは大嘘つきのペテン師よ!!」
Dr.フライ「貴様、誰に向かって…」
節子「それはこっちが聞きたいわよ!! あんたは一体誰よ!?」
おきまりのセリフを遮るように節子は尋ねた。
Dr.フライ「あん? どういうことじゃ?」
ぽかんとしたDr.フライに節子は言い聞かせるように語り始めた。
節子「いろいろ調べさせてもらったわよ。Dr.フライ、本名フライ=ストラクアウト。 20年前同じ研究室の同僚の研究を盗用した咎で学会を追放。その後は強盗や詐欺まがいのことをして糊口をしのぎつつ、密かに研究を続けていた」
節子は、復興中のアメリカで仕入れてきた情報を次々と告げた。
節子「しかしそんなある日、根城にしていた廃工場で実験に失敗、爆発事故を起こした。その結果、その爆発に巻き込まれたことと崩れた工場の下敷きとなり…」
節子「死亡」
河内「なっ!?」
豪「えっ!? そ、それ本当!?」
節子の言葉に河内警部も豪も凍りついてしまい、豪は必死に絞り出すように尋ねた。
節子「間違いないわ。身元不明の死体として処理されていたし顔もかなり崩れていたけれど、当時の写真をコンピューター解析して復元してもらったら、まちがいなくそいつの顔だったわ!!」
節子はDr.フライを指差してそう叫んだ。
節子「さぁ答えなさい!! あんたは誰よ!! 何の目的でそいつになりすましてるの!?」
豪や河内警部も節子の言葉に驚愕していたが、一番驚いていたのはもちろん本人であった。
Dr.フライ「わしが死んでいた… 馬鹿な… しかしわしはこうして…」
誰もが動けないでいた中、不快感を感じる嫌な風が吹き始めた。
河内「ん? 何だこの風は?」
その風に一瞬気を取られた時、Dr.フライの姿は忽然と消えていた。
遠藤平和科学研究所
遠藤「ぬぅわにぃ!!?? フライの奴が死んどったじゃと!?」
ラン「豪!! それ本当なの!?」
あの後、河内警部と節子を三冠号で送り届けた後研究所に帰還した豪は、聞いた話を全て話した。
豪「うん、間違いないって。 その時の死亡診断書もあるって言ってた」
京香「本当みたいです。見てください、今臨時ニュースでやっています」
京香先生の言う通り、テレビでは節子が改めて会見を開き、豪に語った話を再度語っていた。
ラン「で、でもDr.フライが本当に死んでたんなら、じゃあ、あいつは誰なの?」
豪「バカ言え、誰かがあいつのふりしてるんだよ。なんでかわかんないけど…」
遠藤「いや、あやつは間違いなくDr.フライ本人じゃ。わしが見間違えるはずはない!!」
ラン「じゃ、じゃあ、もしかして幽霊!?」
皆が色々言い合っていると、考え込んでいたリーフとダイーダがおもむろに口を開いた。
リーフ「生きている死体… もしかすると…」
ダイーダ「考えられるわね… あの男の単調な言動から察するに…」
京香「どういうことなの? 何か心当たりが?」
リーフ「はい、おそらくあいつは…」
海底 Dr.フライ秘密研究所
Dr.フライ「パーフェクト!! わしが死んでいたとはどういうことじゃ!?」
海底の秘密研究所に帰還したDr.フライはパーフェクトに対してそう叫んだ。
パーフェクト「ほう、ようやく気がついたか。どうもこうもないそういうことだ」
Dr.フライ「それで納得がいくか!! ん? まさか貴様が!?」
パーフェクトの答えにある推測を立てたDr.フライに対して、ファルとゴーロがせせら笑いながら答えた。
ゴーロ「そういうことだ。テメェはとっくに死んでんだよ」
ファル「死体となっていた貴様にパーフェクト様がマイナスエネルギーを取り付けて蘇らせたのさ。この世界の時間で5年前にな。 いわば貴様は死体メイジャーだ」
自分の推論が当たっていたとはいえ、その言葉にDr.フライは愕然とした。
Dr.フライ「ば、馬鹿な… なぜそんなことを?」
パーフェクト「決まっている。この世界に進行するにあたって水先案内人が必要だったのだ。貴様の死体には死してなお高濃度のマイナスエネルギーが蓄積していた。それに目をつけ貴様を蘇らせ、この基地やそいつらのボディを作らせたのだ」
Dr.フライ「なぁっ!?」
ゴーロ「そういうことだ。テメェはハナからそのための存在だ」
ファル「せいぜいこれからも役に立て、大天才様。自分を事あるごとに大天才というのもメイジャー化した影響だ。もっともその自慢の頭もパーフェクト様のおかげだがな」
そうしてゴーロとファルはDr.フライを見下して嘲笑ったが、Dr.フライはやがて小刻みに震えだした。
ファル「ん? どうした」
Dr.フライ「フハハハハハハ!!! 愉快じゃ!! 実に愉快じゃ!!」
ゴーロ「ん? ついにおかしくなったか」
突然笑い始めたDr.フライに首を傾げたゴーロだったが、当のDr.フライは堂々と言い放った。
Dr.フライ「これが笑わずにいられようか。死してなお、この世界への復讐をやり遂げられるとはな。そしてその思いある限りわしは不死身ではないか。感謝するぞパーフェクト!! ヒャーッハッハッハッ!!!」
ゴーロやファルが戸惑いの表情を向ける中、Dr.フライは一人満足そうに笑い続けた。
第37話 終