コズミックプリキュア   作:k-suke

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第6話 「容疑者 遠藤博士!? (後編)」

 

中央流通センター

 

 

 

様々な物品の流通の中心地であるこの建物に、マイナーを大量に引き連れたファルとゴーロが来ており、手当たり次第に暴れまくっていた。

 

 

ファル「ふん、こんな程度で生活がマヒしかねんとはな。人間などくだらないものだな、ゴーロ」

 

人間を見下したように、そう吐き捨てたファルに対して、ゴーロは下品に笑いながら返事をした。

 

 

ゴーロ「ヘッヘッヘッ。まぁいいじゃねぇか。おかげでこっちも楽できるってもんよ」

 

 

ファル「ふっ、それもそうだ」

 

 

彼ら二人はもちろん、マイナー達でさえ、普通の人間や並みの警官程度では止めることができず、様々な商品を保管している倉庫は、商品もろとも片っ端から破壊され、火災も発生していた。

 

 

消防や救急も駆けつけてはいたものの、消火やけが人の救助をマイナーに妨害されてしまい、近づくこともろくにできない有様だった。

 

 

ゴーロ「へっ、情けねぇやつらだ」

 

「一体、あなた達はなんでこんなことをするのですか!!」

 

 

建物の上で文字通り人を見下しながらそう吐き捨てたゴーロに対して、救急で来ていた一人の女医が気丈に言い放った。

 

 

ファル「ふん、自分の身もろくに守れん有象無象だ。少しは減ったほうが貴様らも気分がよかろう」

 

 

「なんてことを! どんな人にもその人にしか持ち得ないものがあります。一つの一つの命が無限の可能性です、それを!!」

 

 

「ちょっ、京香(きょうか)先生。危ないですってば」

 

(じつ)先生のおっしゃることはよくわかりますが、今はダメです」

 

 

すぐ横で救急隊員が止めるのにもかかわらず、その女医 実 京香は一歩も引こうとしなかった。

 

 

ゴーロ「けっ、ならその可能性をもうひとつ消してやるよ」

 

 

そう嘲るように言い放ち、ゴーロが建物の一部を大きく抉り取り、京香先生に向けて投げつけた。

 

 

 

 

 

 

京香「え?」

 

あまりにも現実離れした光景に、京香はとっさに反応できず、ポカンとして立ち尽くしてしまった。

 

 

そして、目の前に巨大なコンクリートの塊が迫ってきているのだと理解した時には、すでに逃げられない状況だった。

 

 

このままでは押しつぶされると覚悟を決めた瞬間、サイレン音とともに1台のパトカーが飛び込み、その塊を跳ね飛ばした。

 

 

 

ダイーダ「ゴーロにファル!  えぇい、このメガネっての戦うには視界の邪魔ね。豪、預かってて」

 

リーフ「私のもお願い」

 

 

そう告げると、二人は厚底メガネを豪に投げ渡し、パトカーから飛び降りていった。

 

 

 

ダイーダ「あんた達、これ以上勝手な真似はさせないわよ!!」

 

リーフ「多くの人を傷つけて許さない!!」

 

 

毅然とした声とともに、二人はマイナーの大群に立ち向かい、片っ端からこれをなぎ倒していった。

 

 

パトカーの中に残された豪が、外の様子を伺うと、奥の燃えている建物の三階ぐらいの窓から何人かが助けを求めているのが見えた。

 

 

豪「姉ちゃん!! 奥の方の燃えてる建物に逃げ遅れた人がいる!!」

 

ダイーダ「え?」

 

 

 

 

ファル「ちぃっ、プリキュアめ。いつもいつも」

 

舌打ちとともに苦々しく顔を歪めてファルがそう吐き捨てた。

 

 

ゴーロ「今日こそ消滅させてやるぜ!!」

 

 

その声とともに建物から飛び降りて向かってきたゴーロをいなし、うまく関節を決めながらリーフはダイータに対して叫んだ。

 

 

リーフ「こいつらは私が引き受けるから、ダイーダちゃんは逃げ遅れた人の救助を!!」

 

 

ダイーダ「わかったわ、お願いね」

 

 

リーフのことを心底信頼しているというように返事をすると、ダイーダは燃え盛る建物へと向かっていった。

 

 

 

ファル「貴様一人で戦えるか?」

 

リーフ「できるよ! あんた達なんかに絶対負けない!」

 

小馬鹿にしたようにリーフを嘲るファルに対して、リーフは胸を張ってそう言い返した。

 

 

 

 

 

 

ダイーダ「くっ、早くしないと間に合わない」

 

建物の近くまでたどり着いたものの、火はかなりの範囲で燃えており、建物の中から回っては間に合わないと判断したダイーダは、大ジャンプして窓から飛び込んだ。

 

 

ダイーダ「大丈夫ですか? 今すぐ火を消します。チェンジハンド・タイプグリーン!!」

 

するとダイーダの両腕が、何かの噴射口のようなもののついた緑色の腕に換装された。

 

 

ダイーダ「超低温冷凍ガス噴射!!」

 

 

その掛け声とともに左腕を前に差し出すと冷凍ガスが吹き出し、たちまちのうちに火が消えた。

 

 

「おお、助かった」

 

「ありがとう」

 

ダイーダ「怪我をしてる人はいますか? 簡単な応急手当を行いますので、こちらへ」

 

 

 

 

 

 

リーフは単身、ファルとゴーロを相手に善戦していたが、その二人に加えて大量のマイナーである。

 

さすがに多勢に無勢であった。

 

 

リーフ「くっ、さすがにこの数は…」

 

悔しそうにそう呟いたリーフに対して、あざ笑うかのようにゴーロが尋ねた。

 

 

ゴーロ「さすがに…なんだ? 限界か?」

 

 

リーフ「まだまだー!!」

 

 

 

片膝をついていたリーフだったが、気合一発立ち上がった。

 

 

そんなリーフに対して一斉にマイナー達が襲い掛かった。

 

 

身構えたリーフだったが、次の瞬間マイナーの大群は蹴り飛ばされていた。

 

 

ダイーダ「よく言ったわリーフ。さすが私の相棒ね」

 

リーフ「ダイーダちゃん!! 逃げ遅れた人は?」

 

 

ダイーダ「バッチリよ。向こうにいたキューキューキューシャーのところに届けておいたわ」

 

 

 

そうして、ダイーダはゴーロ達を険しい目で睨み付けた。

 

 

ダイーダ「よくも派手にやってくれたわね! 自分達のしたことを少しは噛み締めなさい!!」

 

 

そう言い放つと、ダイーダはグリーンハンドの右腕を差し出して叫んだ。

 

ダイーダ「受けなさい! 超高熱プラズマ火炎!!」

 

 

次の瞬間、超高熱の火炎がダイーダの右手から放射され、彼女達の周辺を取り囲んでいたマイナーの大群は一瞬で消し炭になり、ファルとゴーロも火だるまになった。

 

 

ファル・ゴーロ「「ぐあああ!!!」」

 

 

ダイーダ「どうよ、少しは参ったかしら? そうならもう観念しなさい!!」

 

 

一瞬でボロボロになってしまったファルとゴーロだったが、それでもなお往生際は悪かった。

 

 

 

 

ファル「なんの…」

 

ゴーロ「誰がてめぇらなんかに…メイジャー!!」

 

 

その声に反応して、巨大なバッタのような怪物が出現し、リーフとダイーダに襲い掛かった。

 

 

ダイーダ「なっ!?」

 

その怪物の不意の攻撃をかろうじてかわした二人だったが、大きな隙を作ってしまった。

 

 

リーフ「あっ、こら!! 待ちなさい!!」

 

その隙にファルとゴーロは逃げて行ってしまった。

 

 

ダイーダ「悔しいけど、今はこいつをなんとかしないと」

 

 

せっかく後一歩まで追い詰めたのにと、リーフは歯ぎしりをしていたが、今はそれどころではないとダイーダが冷静に告げた。

 

 

ようやく被害が沈静化し出したこの場でこんな怪物が大暴れしたら元の木阿弥である。

 

リーフもそれを理解したため、怪物を止めるべく立ち向かっていった。

 

 

 

 

 

巨大なバッタの怪物と戦っていたリーフとダイーダだったが、その怪物はバッタだけあり機敏に右に左にと跳ね回り、二人の攻撃をかわしていた。

 

さらに、彼女達が変身しようとすると体当たりで妨害してきたため、変身することもできず苦戦していた。

 

 

おまけにそうやって飛び跳ねる度に、あたりの物を踏み潰すため被害は大きくなる一方だった。

 

 

ダイーダ「くっ、早く倒さないと!!」

 

リーフ「でもこれじゃ変身できないから、マイナスエネルギーの浄化ができない。まずいよ」

 

 

焦れば焦るほど、リーフとダイーダはバッタ怪物に追い詰められていっていた。

 

 

豪「このままじゃ姉ちゃん達が… そうだ!!」

 

二人が苦戦しているのを見ていた豪はふとあることを思いつきパトカーから飛び出していった。

 

 

 

豪「えーい、これでもくらえ!!」

 

豪は飛び跳ねているバッタ怪物が着地する瞬間を狙って、その足元に何かを投げつけた。

 

 

 

すると、途端にバッタ怪物の足が止まってしまった。

 

 

リーフ「え?」

 

ダイーダ「今のは?」

 

 

豪「やった!! じいちゃんの発明が役に立った!!」

 

 

豪が投げつけたのは、先ほど遠藤博士が発明した接着剤のチューブであり、バッタ怪物は必死に飛び跳ねようともがくも、文字通り地面に足が張り付いたように動けなくなってしまった。

 

 

ダイーダ「今よ!!」

 

リーフ「うん!!」

 

それを理解した二人は今がチャンスとばかりにトンボを切った。

 

 

リーフ・ダイーダ「「ゴー!!」」

 

 

その掛け声とともに二人の体は光に包まれ、着地した時には変身完了していた。

 

ショートカットだったリーフは、ボリュームのある濃いピンクの髪に変化し、着用している服も、ごく普通の服からフリルのついた赤を基調にしたドレスのようなものになっていた。

 

 

ダイーダのポニーテールは、一本から五本にまで増え、背中にかかるかかからないかだったそれも、腰まで伸びて金色になっていた。

 

そしてリーフ同様のデザインの純白を基調にしたフリルのついたドレスを着用していた。

 

 

 

 

 

リリーフ「闇を吹き消す光の使者 キュア・リリーフ!!」

 

ダイダー「悪を蹴散らす光の使者 キュア・ダイダー!!」

 

 

リリーフ・ダイダー「「ピンチ一発、大逆転! コズミックプリキュア!!」」

 

 

ダイダー「速攻で決めるわよ!!」

 

リリーフ「うん!!」

 

ダイダーは光のスティックを取り出しリリーフにそう促すと、リリーフの方も大きく振りかぶり手の中に虹色の光の玉が輝かせ始めた。

 

 

 

ダイダー「プリキュア・シャイニングスイング!!」

 

リリーフ「プリキュア・レインボール!!」

 

 

 

その二人の叫びとともに、光の斬撃と虹色の玉がバッタ怪物に向かって放たれ、見事命中した。

 

 

リリーフ・ダイダー「「ゲームセット!!」」

 

 

 

その声とともに怪物の全身から黒い靄のようなものが溢れ出し、バッタ怪物は悲痛な叫びとともに大爆発した。

 

 

 

その爆発が収まった後には一匹のバッタがいたが、すでに息絶え絶えになっておりそのまま死んでしまった。

 

 

 

リリーフ「あいつら命を弄んで… 絶対に許さない!!」

 

 

リリーフは地面に拳を叩きつけ、悔しそうにそう叫んだ。

 

 

 

 

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

 

パトカーに乗り、帰宅したリーフ達三人を遠藤博士は笑顔で出迎えた。

 

 

遠藤「うむ、皆よくやってくれた。あの程度の被害で済んだのもお主らのおかげじゃ」

 

 

しかし、遠藤博士の明るい様子と裏腹に、リーフとダイーダは浮かない顔をしていた。

 

 

ラン「どうしたのリーフさん?」

 

そんなリーフにランが心配そうに尋ねた。

 

 

リーフ「…私はあいつらに利用された命を助けられませんでした。褒めてもらえるようなことはしてません」

 

うつむいたまま暗い顔でそうリーフはつぶやいた。

 

 

遠藤(何があった?)

 

豪(実は…)

 

 

落ち込んでいる二人に何があったのかヒソヒソと尋ねた遠藤博士は、小さく咳払いをして諭すように二人に言った。

 

 

遠藤「リーフ、ダイーダ。そんなに落ち込むでない。確かに救えなかった命があったのは悲しいことじゃ。じゃがな、何もかもを助けられるなどというのは思い上がりじゃぞ」

 

 

リーフ「え?」

 

 

遠藤「そんなことができるとすれば、それは本物の神様じゃ。じゃが、わしらはそんなものになれんし、お主らにもそうなって欲しいとは思わん。わしらはわしら自身の手でできる限りの事をしていきたい。お主達にはそれの手伝いをして欲しいのじゃ」

 

 

ダイーダ「遠藤博士… はい!」

 

リーフ「ありがとうございます!!」

 

遠藤博士の言葉に二人は心の底から安堵に満ちた表情をした。

 

 

遠藤「うんうん」

 

 

ラン(優しすぎるのも問題よね)

 

豪(助けられなかった命ったってバッタ一匹だぜ。ちょっと大げさだよな)

 

 

 

 

 

そんな大団円のような空気の中、怒鳴り声が響いた。

 

 

河内「コラー貴様ら!! 人のパトカーを勝手に乗りまわしやがって!! 逮捕してやるからな!!」

 

 

豪「あれ? 河内警部まだいたの?」

 

 

遠藤「ほう、こいつらを逮捕するのか? しかしそうなるとパトカーのドアをロックもせず、エンジンをかけっぱなしだったお前さんの責任問題にもなるがよいのか?」

 

 

実際はそういうわけではないのだが、効果はてきめんだったようで反論できないまま河内警部は押し黙ってしまった。

 

 

 

 

河内「えぇいわかった、それに関しては大目に見てやる。それより、この手はいつになったら取れるんだ!? もうとっくに6時間経ってるだろうが!?」

 

 

 

河内警部の言う通り、遠藤博士が言っていた時間はとっくに過ぎているのだが、未だに手は木から剥がれる様子が微塵もなかった。

 

 

遠藤「ふーむ、試作品じゃから接着力は多少弱めにしたつもりじゃったが、これは想像以上に強力なものになっているのかもしれんな」

 

 

河内「どういうことだ、それは?」

 

 

遠藤「つまりじゃ、もう永久に剥がれんということじゃ」

 

 

得意そうに語った遠藤博士だったが、その言葉は河内警部の神経を逆撫でした。

 

 

 

河内「ふざけるなイカサマジジィ!! この木を切り倒してでもなんとかしろ!!」

 

 

遠藤「この木はここまで育つのに、お主の年より長い時間がかかっとるんじゃ!! そんなつまらんもんのために切り倒せると思うか!!」

 

 

河内「馬鹿野郎!! じゃあ俺がどうなってもいいってのか!? え!?」

 

 

遠藤博士を力の限り罵る河内警部だったが、その言葉に機嫌を悪くした人間がいた。

 

 

 

ラン「あーっ、なによその態度。おじいちゃんをバカにして!! さすがに可哀想だと思って夕飯のサンドイッチ用意してあげたのに!!」

 

 

そう言うとランは皿に乗せたサンドイッチを河内警部に見せた。

 

 

河内「えっ、あのちょっと、ごめん。おじょーちゃーん!!」

 

ラン「知らない! これは私達の朝ごはんよ」

 

 

すでに6時間身動きが取れず怒鳴りっぱなしだった河内警部は、相当な空腹だった。

 

すがるようにランに手を伸ばすも、ヘソを曲げたランはサンドイッチを持っていってしまった。

 

 

 

 

 

遠藤「ははは、まぁ安心せい。中和剤を作ってやるからしばらく辛抱しとれ」

 

 

河内「それを作るのにどれぐらいかかるんだ!! …いや、かかるのでしょうか?」

 

 

強い口調で尋ねようとした河内警部だったが、現状を思い出し、止むを得ず下手に出た。

 

 

遠藤「まぁ明日の朝にはできるじゃろう」

 

 

そう答えた遠藤博士だったが、そこにリーフ達が口を挟んだ。

 

 

ダイーダ「博士、中和剤を作ろうにも、原料になるものを全部使い切ってます」

 

リーフ「今から注文したとしても、流通センターがあの有様ですから、しばらくかかりそうですよ」

 

 

 

遠藤「えっ? あっそうか。なら仕方ない、文句は流通センターを襲った奴等に言え」

 

 

河内「そんな〜!!!」

 

 

 

河内警部の悲痛なその叫びが一帯に響いたのだった。

 

 

 

第6話  終

 

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