IS 生徒会にてちょっと   作:ネコ削ぎ

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オリ主なんだけどちょっと

 転生者はここにいる。

 IS学園の中にいる。

 女子によって包囲されている。

 戦術的撤退は不可能と察するに力が抜けて、宛がわれた座席で大人しくするしかない。

 織斑一夏が羨ましいと思っていました。

 現実見なくてすみませんでした。

 見世物の気分が味わっています。

 ヒロインの一人である更識簪に声をかけてみたいけど無理。

 精神汚染で死滅しそうだ。

 授業の時は何とかなる。

 幸いにして集中するタイプなのだ。

 しかしながら、授業が終わると現実に直面してしまう。家庭ギスギスのお父さんか俺は。

 唯一の救いは一夏が先陣切ったことで、多少なりとも女子たちが慣れているということだ。

 よくわからない腫物みたいな雰囲気はない。

 この空間に慣れるのに何日要る。最短コースで慣れたい。慣れて織斑一夏みたいにヒロインとイチャイチャしたい。

 慣れろ、慣れろ俺。

 こんなもん慣れたら勝ちだわ。

 誰に勝ったかは置いておくとしてな。

 転生したんだから謳歌するぞ。

 人生は楽しんだもん勝ちなんだからな。

 もう一度言うが、誰に勝ったかは置いておくぞ。

 一日の授業の終わりに学園内を散策する。

 軽い説明を受けただけでまだうろ覚えなんだ。明日の教室移動に差し支えたら不味い。

 IS学園の特徴は広いの一言に尽きる。

 案内役がいないと迷子になりそうだ。

 こういう時に一夏が居てくれればいいんだけど。アイツはヒロインたちに攫われていったからな。可哀そうに、もう戻れないぞ。

 誰でもいいから助けてくれればいいのに、みんなそれぞれに生活スタイルがあるせいか、俺に構って自分の流れを乱す奇特な人はいない。

 絆ポイントの不足を感じる。

 神様助けて。

 念じて助けてくれるような神様ではなかった気がする。

 

 

 

 転生時に神様に出会った。

 幼女だったり土下座する美女だったり人格者みたいな爺さんだったりが神様だと思っていた。ネットだとそうじゃん。

 でも、出てきた神様は幼女でも土下座する美女でも爺さんでもなかった。更に言えば快楽主義者なはた迷惑な奴でもなかった。

 妙に人間味のない女性だった。

 神様には人間味があるものなのかは疑問だけど。

 病気かと疑いたくなるような青白い肌に真っ青な髪に底冷えするような青い瞳。

 纏う着物は青一色の巫女装束。もはや巫女装束なのかも判断つかないほどに青い。

 神様は青かった。

 宇宙飛行士が見たのってコイツじゃねえの。

 転生ならば続いてくるのは――

「すみません間違って死なせてしまいました」

「おわびに好きな世界に転生させてあげます」

「特典でなにか力を授けましょう」

 というテンプレだ。

 神様が口を開く

「アナタの願いをかなえましょう」

 神様は瞳と同じく声音にも感情の欠片も籠っていない。機械的に話しているようだ。

「どんな願いもかなえましょう」

 ゆっくりと俺の頬に手を当てて撫でてくる女性。表情も仮面のように無表情を貫いている。

「アナタの願いは何でしょう?」

 それは違和感だらけの状況なのに不思議と全てを受け入れられた。

 テンプレだとかそんなことぶっ飛んだ。

「どんな想いも応えましょう」

 ああ、絶対に叶いそうだ。

「全ては私がかなえましょう」

 その言葉が終わるなり、俺は願いを叶えてもらったんだ。

「それがアナタの願いなら」

 結果としてIS学園へと入学した。

 

 

 

 あの神様、転生特典とかなかった。

 チートとかチートとかチートとか。

 おかげさまで二回目の人生なのに苦労した。

 運動オンチじゃないけれどスポーツ万能でもない。

 頭も決して悪いわけじゃないけど特別優れているわけでもない。

 世の転生オリ主が羨ましい。

 愚痴言ったって改善するわけでもないけど。

 だから、学園内を散策してから寮へと帰還。

 一人部屋だ。

 原作通りに一夏とシャルが一緒の部屋で、あぶれた独り男な俺は個室をゲットした。

 静かに勉強でもしていよう。

 IS学園の授業はレベルが高い。

 ちょっと前まで一般人だった身としては、ISに関する科目を頭に入れるのは容易じゃない。一夏は一週間で分厚い参考書を頭に突っ込んだっていうんだから、アレもなかなかに勉強ができる奴だ。あれ、一週間で突っ込んでたっけ?

 とにかく勉強だ。

 来てしまった以上は頑張る。

 男として女には負けられない。

 それは嘘だけど。

 ただ何もしないで恥かくのが嫌なだけだ。

 足掻いた結果で何か言われることには理不尽でも納得できる。

 やるだけやるものさ。

 明日に差し支えないギリギリまで勉強して寝る。

 

 

 

 転入二日目はつつがなく。

 なんとか授業には喰らいつくことができた。

 だけど頭はパンク寸前。

 IS関連は地獄だ。

 住めば都と言うけれど。

 空き教室には人がいない。

 放課後はみんな部活なりISの訓練なりで教室に残る人は少ない。

 空き教室を見つけてすぐさま入り込む。

 覗かれないようにきちんと扉を閉めて深く深呼吸。

「疲れた。マジで疲れた。勉強だけで死ぬ。高校生活ってこんなにハードだったか。そんで一夏たちは今からISの練習だろ。もたねーよ体が。あと四日くらい経たないと放課後の活動は無理だな。せっかくだから箒や鈴、セシリアとかを生で見てみたい。ぜってー可愛いもんな。なんとかしてお近づきになりたい。いいや、でもまずは自分のことだよな。俺だったらイベントを解決する力なんてないしな。強くなってオリ主最強みたく猛威を振るってみたい」

 駄目だ。疲れて欲望の吐露が止まらない。

 たった二日にして気持ちが止まらない。自分でも何を口走っているかは分からないけど。

 せっかく物語の世界に転生したのに身に降りかかることが現実的過ぎて辛い。

 最後まで言いたいことを吐き出して、終わりに深呼吸を一回。

 クールになろう。こんなこと聞かれてしまえば、頭のおかしい電波野郎だと勘違いされてしまう。いいや、転生とか言っている段階で電波だ。

 でも、口にするとスッキリした。環境に慣れるまでは定期的に発散が必要かもしれん。

 今日も放課後は勉強漬け。

 身を翻すと近くの机にぶつかってしまった。思ったよりも痛くてしばらくうずくまってしまった。

 机が定位置からずれたのが気になって手を伸ばす。

 いたずら書きがされている。仮にもエリート学園なんだから学校の備品を汚すな。

 机のいたずら書きを消そうと消しゴムを取り出そうとした時に気がついた。いたずら書きの内容に。

 

『このラクガキを見てうしろをふり向』

 

 一瞬時間が止まった。背筋が凍る。

 いきなり身に降りかかってきたものが非現実的過ぎて辛い。

 途中までしか書かれていないけど、ふり向いたが最後だ。亜空間に放り込まれて死ぬ。

 どうする。どうする。どうする。

 一秒が十秒にも十分にも感じられる。十分は言い過ぎだけど。

 背後には人の気配がない。たぶん誰もいないはずだ。

 俺がたまたまぶつかった机に、たまたまこんなネタが仕込まれているなんて都合良すぎだ。

 だからこそ困る。

 心霊現象か。

 そんなわけない。

 そう思いたいんだけど、転生した俺がオカルト否定などできはしない。

 ふり向けばいい。行動一つで解決する。

「おらぁ!!」

 気合入れてふり向く。

 そして誰もいなかった。

「や……やったか?」

「やってないぞ、守落くん」

 背後を急いでふり向くと女子がいた。さっきまでいなかったぞ。マジックか。

 女子は美少女だった。

「誰さん?」

「生徒会の人」

「せ、生徒会!?」

 知らねーぞ。生徒会は更識楯無、布仏姉妹の三人しかいないんじゃないか。

 というか。

「何時からここに?」

「疲れた。マジで疲れた。勉強だけで死ぬ。高校生活ってこんなにハードだったか。そんで一夏たちは今からISの練習だろ。もたねーよ体が。あと四日くらい経たないと放課後の活動は無理だな。せっかくだから箒や鈴、セシリアとかを生で見てみたい。ぜってー可愛いもんな。なんとかしてお近づきになりたい。いいや、でもまずは自分のことだよな。俺だったらイベントを解決する力なんてないしな。強くなってオリ主最強みたく猛威を振るってみたい……ってところから」

「最初からじゃあねぇか!?」

「電波だなぁ。たしかにアニメみたいな展開だけど、のめり込みすぎ」

 美少女の憐れむ視線。けっこう致命的なダメージを受けました。

 勘違いしているのか美少女は俺がけっこう不味い発言していたのに、アニメの見過ぎとばっさりだ。おかげで転生者バレしていない。

 美少女が教室に入ってきたことこそ察知できなかったが助かった。

 扉を開ける音も足音も聞こえなかった。気配も声かけられるまでなかった。流石、生徒会。

 あれ、いたずら書きはどうやったんだ。

「ええと、俺になんの用……ですか先輩」

 美少女のリボンの色を見た。二年生だ。

「二人目の男子の存在が気になってな」

「見た感想をどうぞ」

「まあまあ」

「手厳しい限りで」

「現実はそんなもんだよ」

「そんなものですかね」

「おうさ。じゃあ邪魔したな。色物少年」

 美少女先輩は片手をあげて教室から出て行ってしまった。

 追いかけて教室から飛び出すと、目に見える範囲に美少女先輩の姿はなかった。

 ほんの僅かな差で飛び出したのにいない。走るような音も聞こえなかった。

「ゆーれいじゃないよな」

 恐怖体験のおかげで今日は勉強が捗った。

 現実逃避とも言う。

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