転生者はここにいる。
IS学園の中にいる。
女子によってボコボコにされている。
それは我々の業界でもご褒美にはなりません。なるわけがない。俺はその手の生き物じゃないんだから。
鍛えるって難しい。
スポーツを追求してきたことは一度としてなかった。だからこそ前世含めてもこの過酷な練習は初めてだ。
立ち上がって向かっていくのだが、軽くあしらわれて畳にゴロン。単純に痛い。
呼吸も乱れて身体に酸素行き渡っていないダルさに気持ち悪くなる。
それでもと立ち上がる。意地だ。なけなしの意地でしかないが、頼んだのはこっちなんだから、せめて駄目になるまで鍛えてもらうしかない。
足はがくがくで、手は握ることもできないほどに力が入らない。
授業でもここまできつくなかった。今が一番だ。
来る学年別トーナメントに向けての訓練。
状況を知っている人間からしてみればトーナメントで爪痕残す為に頑張っているとしか映らないのだろう。
だけど、転生者の俺には別に側面がある。
二次創作の中ではイベントの度にオリ主も巻き込まれてなんやかんやで解決したりするものが多い。
俺の場合もあり得ることだ。だから鍛えている。
現実だから。だから鍛えている。
本当に創作の世界ならばご都合主義なんて素敵な言葉もあるんだろうけど、この世に生まれてはや15年。現実であることを受け入れるだけの時間があったんだ。今さら二次だから、オリ主だから絶対になんとかなるなんて馬鹿なこと考えてらんない。
本当はヒロイン達とちょっとでも仲良くなりたいとは思うんだけど。
もう構わない。
ボコボコにされて痛みに呻いてそれでも立ち上がって。
ラブコメを逃してる。
上等だ。
残った力を振り絞って飛び蹴りをかます。
しかし、その勢い任せの攻撃も簡単に受け止められる。
「お~、ちょっとまだまだかな~」
のんびりとした口調の布仏本音ことのほほんさんは俺の渾身の蹴りを掴む。
「どっこいしょ~」
身体が重力に逆らう様に持ち上がったかと思うと、急速落下してまた叩きつけられる。
背中から畳に叩きつけられて一瞬呼吸が止まった。
知ってるか、この世界ののほほんさんは怪力の持ち主なんだぜ。原作織斑千冬みたいにIS用の武器を軽々持ち上げるんだぜ。そのくせ整備とか細かい作業とかもお手の物なんだぜ。
「し、死ぬぅ」
「って言っているうちは大丈夫ですよ」
布仏虚こと虚さんが鞭打ってくる。それもクールに言ってくるものだから血が通ってないんじゃないか。
ちなみにさっきまでは虚さんと戦っていた。圧倒的な実力差の前になす術なかったんだけど。
というか虚さん、顔や心臓とかえげつない場所ばかり狙ってくるんだよ。俺がなんかしたんですか。
「休憩にしましょう。十分くらい」
虚さんは腕時計で時間を確認して正座する。
のほほんさんはぐてーっとだらしなく寝転がった。和む。あの見た目と言動をぶち壊す男一人を軽々振り回した事実があっても和む。
そして、生徒会長の楯無さんともう一人の生徒会役員の美少女先輩(名前を聞いていないし、聞く機会を逃してしまったので便宜上)はこの場にいない。
曰く、大事な用事があるとのことだ。
聞いてみたいものだ、俺の訓練に勝る大事な懸案とやらを。いっぱいあるな。
「な、なんでこんなに強いんですか」
原作知っているからなんとなく予想はつく。
つくけど、ここまで強い描写はなかったはずだ……描写?
「趣味です」
ケロッと言いやがった。
「学園の性質を考えれば不思議でないと思いますが」
「暗に馬鹿って言ってます?」
「察しが悪いとは言っていますよ」
「何この人」
「お姉ちゃんなのだ~」
「本音さんからしてみればね。俺からしてみれば辛辣一筋なんですけど」
「視点の違いかと」
「うん、視点の違いだよ~」
それで片付けるな。
思っても言わない。返されるのがオチだ。
休憩時間が終われば、今度はISの訓練が待っている。
事前にアリーナの予約をしているためにサクサク物事が進む。と言っても使用時間は一時間ほど。これでも多く取れた方だと。
ISに関しては指示を受けてそれを実行するだけの練習。
コーチの二人は中々に厳しく、褒められることは一切ない。のほほんさんにしても褒めてくれない。幸せそうな顔をして飴玉と戯れながらの指示と修正それだけ。
ただ、こんなことを可能な限り続ければ上手くもなる。初めてISに乗った時に比べれば動けるようになったし、射撃が当たるようになった。
「どっちつかず。どっちに才能があるわけではないけど才能がないわけでもない。伸ばし悩むわ」
「褒められていないのは理解しました。理解しても納得できねーです」
「納得など求めていませんよ」
「厳しい!!」
量産型IS打鉄が泣いてるぜ。泣いているのは分かっているけど、俺は専用機が欲しいです、見たこともない博士。
「生徒会権限で専用機の発注をお願いします」
「量産専用機で構わないのではなくて」
量産専用機。
ISは世界に467機しか存在しない。
しかし、世間には量産型ISなどという不思議な括りが存在する。
467機のISは実験用だったり専用機として代表や代表候補生に回されたりする。
IS=専用機なんて図式が成り立つ。
量産専用機は、質を大幅に落とすことによって量産に成功したISを専用機にカスタマイズした機体だ。
今のところ有名な量産型ISは打鉄とラファール・リヴァイブ。
だけど、量産とは名ばかり。
開発にかかるコストが高すぎる為にバカスカと作れない欠点がある。
量産専用機はその量産型ISを個人用にカスタマイズしたものだ。
「やっぱり乗るなら量産のつかない専用機じゃなきゃ」
それに量産型のカスタム機で強いのは腕のある人間だけだ。俺には無理。専用機でもそんなに変わらない気がするけど、ああいうのは性能が腕の低さをカバーしてくれるでしょ。
「生徒会権限でも無理なものは無理ですよ。他力本願などは上手くいきません。実力示して、専用機を与えるに足ることを証明した方が早いですよ。それよりも再開しましょう」
訓練は続く。