IS 生徒会にてちょっと   作:ネコ削ぎ

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生徒会だけどちょっと

 一対三という圧倒的な劣勢に立たされているはずの更識楯無はただ紅茶の匂いと味を楽しむ。状況を読めない愚図とも取れる対応だったが、亡国企業側のスコール・ミューゼルは微笑みの中に警戒の色を滲ませていた。

 何故に余裕ぶることができるのかと顔が語っている。

 楯無は能天気でも愚図でもなく、ただ事態を前にして余裕なだけである。恐れる事態とは言えないのだ。

 ポットに入ったおかわりを注いだ楯無は優雅にティーカップに口をつける。見る者に苛立ちを覚えさせる余裕に、ダリル・ケイシーがたまらず動きだす。

「飲んでる場合か!!」

 楯無の手からティーカップを弾き飛ばす。床に落ちたティーカップが砕け、その破片をダリルは忌々し気に更に細かく砕いていく。

「ったくよ。状況を分かってんのか、ナンバーワン。学園最強の肩書きが麻痺させてるってか」

 麻痺している。確かに麻痺しているのかもしれない。

 楯無はティーカップの損失を受けて億劫そうに立ち上がる。

 ようやく状況を理解したと思われ、ダリルが丸テーブルを蹴り飛ばす。荒っぽい言葉に違わない荒っぽい動作だ。

「それとも動じないほどに強いとでも言いたいのか」

 楯無の顔を横からのぞき込むダリル。背後ではフォルテがむすっとした顔をしているのは誰もが放っておいた。

「勝てると驕り高ぶっているなら試してみろよ。オレたち三人を相手取れる自信があるならよ」

 分かりやすい挑発であることは楯無でなくとも理解できる。

「あるわ。だけど、それでは貴女たちの方がかわいそうだから挑発には乗らないでおこうかしら」

「はぁ、それこそ挑発っスか。一対一の舞台を作り上げる。見え透いてるっスよ」

 フォルテはやれやれと大げさなジェスチャーを行う。悲しいかな、楯無は背中を向けているために見えてない。

「あら、そう。困るわね」

 困ったわ、と頬に手を当てて首を傾げる楯無はさほど困っているようには見えない。

 事実欠片も困っていないのだから。

「困ったお嬢さんだこと」

 危機感のなさすぎる楯無を前にしてスコールは得体のしれない不気味さを感じていた。

 四人はそれ以上の動きなく停滞していると学園全域に放送がかかる。

 

 

 

『全校生徒皆さん並びに来賓の皆様。この放送を聞いている全ての皆様。こんにちは。本日は学年別タッグトーナメントが行われているわけですが、トーナメント期間中に起きる事態は全て生徒会に任せております。全て任せております。それでは』

 

 

 

 不思議な放送だった。

 緊急事態での放送にしては安心要素の欠片もない、上層部の責任逃れとも取れる内容だった。

 そもそも学園内はハッキングされ、真面な状態でないというのに何故放送など行えたのか。

 スコールの瞳に現れた若干の揺らぎを見た楯無は内心を読み取った。

 学園内の警備施設は余さずハッキングされているが、主導権を奪い返してしまえばそれでおしまいだ。

 なんの不思議があるというのだ。

 亡国企業側の能力を学園側が上回れば十分に可能である。

 楯無はスマホを取り出し電話をかける。

 相手は虚だ。

「って、なに平然と電話かけてんだよ」

 無視。

 通話相手が出たのでスピーカーモードに切り替える。

「どうかしら、虚ちゃん」

『簡単でした。学園の警備システムは奪還。正直、歯ごたえがなく片手間で事足りました』

「そう、それはけっこう」

『泥棒の目的地であるISの格納庫は封鎖、更に生徒が散っていくのを阻止するためアリーナも封鎖中です。生徒の中にも共犯がいるようですから、逃がさない為にもちょうどよいかと』

「そうね」

『最悪、アリーナの全員を処刑することも視野に入れさせていただきます』

「任せるわ」

 布仏虚という人物の本質。

 更識楯無を至上に置き、それ以外のほとんど全てを取るに足らない格下と認識している。楯無の為であれば犠牲を出すことも気にしないほどだ。

『それと、アリーナ内の来賓を装った亡国企業の出資者たちは始末していますし、格納庫へ殺到する蟻共には本音を向かわせています。既に接敵しているようですが』

 つらつらと説明する。

 そこに亡国企業がいたとしても関係ないと言わんばかりだ。

 楯無としてもこの程度の情報が筒抜けになっていたとしても気になることではない。もはや事態は収拾に向かい始めている。

 生徒会役員たちは各々に行動を開始している。

 後は結果待ちだ。

「……なるほど。そちらも手を打っていたというわけね」

 スコールが立ち上がりISを装着する。

 楯無も合わせて立ち上がる。ISは装着せず。

「で、後は学園最強などという井の中の蛙の様な実力で私たちを取り押さえるだけ……なのかしら」

「ってかよ。生徒会なんてお前入れて四人だろ。布仏姉はともかくとして、残りの二人は役立たずだろ」

「でも、言ってたっスよね。本音を向かわせたって。捨て石っスかね?」

 正面にはスコール。

 横にはダリル。

 背後にはフォルテ。

 スコールは未知数だが、ダリルとフォルテは学園内では実力者に数えられる。

 三対一の状況は圧倒的に楯無が不利だ。

「それじゃあ、とっとと終わらせて残りも鎮圧するっスよ」

 フォルテが楯無の肩に手を置く。

 強者の余裕だった。

 IS展開は瞬時に行われるがタイムラグは存在する。

 たとえ、抗戦の構えを取られても対応可能なのだ。

 だからこそ、楯無が肩に置かれた手を振り払うかのように身体を捻って蹴りを繰り出したことに反応できなかった。

 ISは最強の兵器として存在している。

 その常識のせいで、フォルテは自分が蹴り飛ばされ地面を転がっていくのが信じられなかった。

「フォルテ!?」

 楯無は生身でISを蹴り飛ばすと、異様な光景に動揺したダリルの腕を取って学園の屋上から投げ飛ばした。

 生身の人間がISを数メートルも蹴飛ばし投げ飛ばす。

 異常な光景に反応が遅れたスコールが両腕を胸の前で交差させて楯無の蹴りを防ぐが、同じくISを展開した楯無の蹴りに耐えられずに吹き飛ばされる。

「では、後は任せるわ」

 一言呟いた楯無がスコールを追いかける。

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