IS 生徒会にてちょっと   作:ネコ削ぎ

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織斑千冬にてちょっと

 ブラコンはそこにいる。

 オレのすぐ目の前いる。

 疑問が浮かぶ。

 解決しない。

 同じ疑問が浮かぶ。

 やはり解決しない。

 生徒会室は殺伐とした雰囲気に支配されてしまっている。

 口の中が砂漠並みに乾燥しそうだ。

 救いは持ち込んだペットボトルの水があることだ。砂漠では水源の確保が生死を分ける要因だとすれば、今のオレは生を掴み取って明日を謳歌することができる。

 本音をギュっとしたい。ギューっとして愛でていたい。

 水を一口。

 水道水とは比べ物にならない。さすが金払っただけはある。

 ペットボトルをテーブルに置く。水面がゆらゆらと揺れる。眺めると落ち着く。

 早めに生徒会室に来た。

 それが運の尽きだ。

 生徒会室に入って木彫りの熊を堪能して、スマホで時間を潰そうとした矢先に招かれざる客が姿を現してしまった。

 歓迎ムードはない。

 あっちだって友好的じゃない。

 互いに歩み寄りがないなら歓迎なんて不要だ。目を合わせたくない。

 気を許してない。無関心を装いつつも来客の一挙一動を注意する。

 雰囲気一つで全てを察した織斑千冬は、強者の余裕をひけらかすようにオレの対面の椅子に座った。両腕を組んで威圧感を出してくる。

 あからさまな威圧を受けて、オレはスマホを弄る手を止めざるを得なかった。スマホを没収されては弄ることもできまいて。

 他人様のスマホをつまらなそうにポンポンと弄ぶ世界最強の女。個人情報の塊を人質にして。

「何が目的だ」

 はっきり言え。中身がなさすぎる。

「もち。生徒会役員の端くれなんですから仕事しに来たに決まっているだろ。変なこと聞くなよ」

「ふん。目上に対する口ぶりではないように聞こえるぞ。うっかりスマホを投げつけてしまいそうだな」

「生徒会役員の端くれなんですから仕事しに来たに決まっているだろ。変なこと聞くなよ。スマホ傷つけたら出るとこ出るぞ」

 パキッとスマホの液晶に罅入った。はい、訴訟な。

 はったりと高をくくっていたら、この教師は容赦なく遂行しやがった。このままふざけた態度したら完遂される。

「何の話か教えていただけませんか? 現状心当たりないので」

 脅しに屈したことを恥じ入る必要はない。ただ認めて、次の糧にすればいい。それでも学習しないのが若さ故の過ちか。

「心当たりがない? 更識楯無が一夏に接触した。布仏本音が一夏に接触した。お前も一夏と接触した。ここまで生徒会の人間が接触してくれば、何かあると勘ぐるのが当然だろう」

 腕を組んで睨みつけてくる千冬。全てお見通しだぞ、と言いたげな顔が見当違い過ぎて話にならない。

「楯無と本音の分については知らない。オレは別に妙な意図はないぞ。たまたま出会ってしまっただけだ」

「まるで運命とでも言いたげだな」

 室内の温度が下がった気がする。冬の字が入る奴は氷結系の能力者か。

 一夏の話題になると敏感だ。ブラコンここに極まれ。極まった先にどんな世界があるのか気になる。その世界を見て帰ってきた人間はいなさそうだ。

「いちいちつっかかるな。ブラコンめ」

「ブラコン言うな」

「言われることをするな」

 言うが安し、思ったことを口にしたら頭を掴まれた。ぐぐぐ、と指先が頭蓋骨に食い込み、反射的に呻き声と涙が出てきてしまった。

 一夏と接触したのは偶然と好奇心が混ざり合っただけ。

 廊下を歩いていたら一夏の方からやってきて、オレが隠れる一夏のことを黙ってやっただけ。

 そりゃあ、切迫した顔で来られて無視はできないのが小市民のサガ。優しさの勝利だ。

 そして冤罪で私刑執行され中。

「二度と一夏に色目を使うな。お姉さんと約束だ」

「そもそも色目を使っちゃあいたたたた!?」

「はぁ? 聞こえんなぁ」

「聞こえてる人間はみんなそう言うよ」

「聞こえてはいるが、約束を守ると誓う声が聞こえんぞ」

「ひー、誓います」

 脅威的な握力に脳みそが圧殺される前に降参する。ここは命を捨てる場所ではないのだ。まだ死んでもいいと思える生き方をしてない。

「最初からそう言えば命まで取らないものを」

 さらっと殺人未遂であることを知った。アンタ、教師だろ。

 呆れる。

 千冬は去っていった。

 被害者一名。それもオレ。

 教師不信になりそうな一幕だった。これを理由に不登校になりそうだ。

 本音と一夏は同じクラスだろうに。

 今回疑われて制裁を受けるのはオレではないはずだ。

「ご苦労様」

 労いの言葉を口にする楯無。どこ吹く風だ。

 この生徒会長様は千冬が接近してくるのを感じ取って隠れていた。それも部屋の中だとバレると考えて、窓の外の縁にぶら下がっていたんだからムカつく。

「どーいたしまして。おかげで暴行を受けたんだけどなんだよ」

「なんでしょう。大事な大事な弟さんにちょっとでも何かあることが許せないみたい」

「ブラコンすぎんだろ」

「資料によれば両親は蒸発。たった二人の家族であることを考えれば分からない話ではないわね」

「……本当に分かってんのか?」

 コイツがそんなこと分かるとは思えないんだが。蒸発の経験なんてないだろうし。コイツだし。

「理解はしてるわ」

 ニッコリと笑う楯無。

 その笑顔は万人受けするな、となんとなく思った。

 それでもオレだけが被害を受けたことに納得できない。

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