IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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いよいよ準決勝。

今回は最初の方ネタバレ+独自解釈の強い会話が入ります。

新型アドヴァンスドも登場します。

準決勝第一試合

天野雪兎VS宮本聖

ファイッ!


136話 波乱の準決勝! 兎、秘密を知る

「赤月?」

 

「そう、この束さんが白騎士の次に開発した箒ちゃんの専用機だよ」

 

白騎士事件後、束はずっとISコアの作成をしており肝心のISは作っていなかった。そして、467個目のコアを作成後、束は行方を眩ませ、束の二機目のIS・赤月が開発された。

 

「これはさっきもチラッと言ったけど、箒ちゃん専用に作ったISでね。でも、いざ箒ちゃんに乗ってもらったら予想以上に箒ちゃんとコアの相性が良くてね」

 

「・・・・暴走したと?」

 

「そうだ。そしてそれを知った私は篠ノ之を止めるべく暮桜を無断で持ち出した」

 

「そのせいで暮桜は凍結。赤月も一度封印して、箒ちゃんの記憶も箒ちゃん自身の願いで書き換えておいたんだけどね」

 

「その後、その赤月を紅椿という枷を着けて再び箒にって訳か・・・・なるほどな、道理で紅椿のプロテクトが厳重な訳だ」

 

つまり無段階移行システムは赤月を箒に馴染ませる為に設けられた補助輪のようなもの。だが、それではあの箒の紅い瞳の説明にはなっていない。

 

「多分、原因は京都でのアレだね」

 

「!?ISコアへの直接ハッキング!」

 

そう、その原因は京都での剥離剤を使ったハッキング。それにより赤月のロックが緩んだのではないかと束は言う。

 

「あの後、ロックは掛け直したんだけど、どうも箒ちゃんの方にバックドアを仕掛けてたみたいで」

 

「それで発見が遅れたのか」

 

こればかりは束にも予測出来なかったことらしく。本当ならトーナメントを中止して調べておきたかったが、そうなった場合、一夏との試合を心待ちにしていた箒のストレスから赤月がバックドア経由で何を仕出かすか判らなかったのでトーナメント後に調査をする事と、万が一暴走した場合は雪兎や千冬が拘束し再度夕凪燈夜の使用が決定された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『え~ここで準決勝の前に解説者の増員として新たに初代ブリュンヒルデにして我が校の教員・織斑千冬先生におこしいただきました。織斑先生、お願いします』

 

『よろしく頼む』

 

このサプライズに観客席から黄色歓声が上がる。いつもの事だ。

 

『まずは青コーナー、優勝候補筆頭!その戦いはまさに変幻自在!相手に合わせて装備を変え圧倒する奇才、天野雪兎!』

 

『引き出しの多いアイツ(雪兎)の事だ。また何か新しい手を繰り出してくるだろう』

 

雪兎のやり口を熟知している千冬からすれば雪兎がここで何かしらの手札を切ってくると思っているようだ。

 

『対する赤コーナー、まるで波に乗ったような快進撃を続けるダークホース!宮本聖!』

 

『宮本か、宮本は他の連中に隠れがちだが優秀な生徒だ。それに宮本の専用機は天野並みに手が読めん厄介さがある。それをどう活かすかが勝敗の決め手になるだろう』

 

『なるほど。今回のバトルフィールドは・・・・これだ!ポチッとな』

 

今回、ARプログラムが生成したステージは氷の海で構成された氷河ステージ。そう、また海関係ステージだった。

 

「あっ、また海ステージだ」

 

「三連続海関係ステージって、どんな運だよ・・・・」

 

『モチーフがサーファーなウェーブライダーがいるせいか、聖ちゃんの出る試合は海ばっかりですね』

 

『これもISの特殊環境テスト用のステージか・・・・』

 

先程の火山と対になっている氷河ステージ。他にもこのような過酷環境ステージはいくつかあるんだとか。

 

「このステージならアレが使えそうだな」

 

そう呟くと、雪兎はあるアドヴァンスドに換装する。それは白と赤のカラーリングに紫のクリアパーツを持つ重装備型のアドヴァンスド。

 

「【AA:アメイジングアルケミスト】二次移行したそいつの実力、見せてもらおうか!」

 

「うわぁ、またやばそうなのが・・・・なら、こっちもブラストガンナーで」

 

雪兎の新アドヴァンスド・アメイジングアルケミストに対し、聖もブラストガンナーを展開する。

 

『それでは準決勝第一試合、試合開始!』

 

「さあ、祭りを始めようか!」

 

先手は雪兎。挨拶代わりに全身に備えたミサイルを一斉発射する。

 

「げ、迎撃するよ!ライダー!」

 

そう言ってミサイルを聖も全身の銃器で迎撃するが、雪兎が放ったミサイルは普通のミサイルだけでなく、黒褐色のクリスタルのようなものが混ざっており、それが聖の周りに散布される。

 

「ジャミング用のチャフじゃない?じゃあ、これは・・・・」

 

『これは・・・・マスター!逃げて!』

 

ウェーブライダーが聖に警告するも既に遅く、雪兎は聖に向けて今度はビーム兵器を展開し一斉総射する。だが、それは聖を正確に狙ってはおらず、散布されたクリスタルの範囲を狙った攻撃だった。

 

「どこを狙っーーえっ?」

 

しかし、その理由は直ぐに判った。なんと、雪兎の放ったビームはクリスタルに命中するとそれを乱反射し聖に襲いかかる。

 

「これってシャルロットさんとの試合の時の!?」

 

「大・正・解!」

 

クリスタルの正体は光学兵器を反射する特殊鉱石で作られた物で、先程の攻撃はそのクリスタルを利用した攻撃なのだ。

 

「これぞ、光と闇の舞さ。ほれ、次いくぞ!」

 

すると、今度は別の装備を展開し追撃する雪兎。

 

「この、弾幕、性能!ガンナーの強化タイプ!?」

 

「ガンナーだけじゃねぇよ!」

 

雪兎の言葉に合わせて背面の四つのユニットが分離する。

 

「ビット!?まさかウィザードも!?」

 

「またまた正解!」

 

そう、アメイジングアルケミストはガンナーとウィザードの特性を併せ持つアドヴァンスドなのだ。ビットはガトリングタイプとビームキャノンタイプがおり、本体と連携して聖を攻撃する。

 

『う、うわぁ~・・・・またえげつないのが出てきましたね』

 

『あれだけの装備の同時制御となるとやはり動きは鈍くなるが・・・・あの弾幕がある以上関係あるまい』

 

『そうだな。一見隙に見える距離もビットで完全にカバーしている。まあ、あれだけではなさそうではあるがな』

 

聖も今はなんとかブラストガンナーで相殺しているが、雪兎はまだ余裕があるように見える。一方、バトルフィールドの氷河は雪兎の放つ攻撃で粉々になっていく。

 

「そろそろ終わりにするか」

 

そして、雪兎は勝負を決めるべくアメイジングアルケミストの全武装を展開する。実弾兵器にビーム兵器、全身の装甲に内蔵されたミサイルにバーストバイザーが装備していた大型ミサイルまで多種多様の武装が現れる。

 

「死ぬなよ?全武装一斉掃射(アメイジングフルブラスト)!!」

 

「ちょっ!?」

 

ガンナーの一斉掃射が鉄の豪雨だとするなら、このアメイジングアルケミストの全武装一斉掃射は大嵐。聖は逃げる事も迎撃する事も叶わず、その嵐に呑まれてしまう。その後も一方的に雪兎が放つミサイルの爆音や銃撃音が響き聖の姿も爆炎で見る事が出来ない。だが、聖のシールドエネルギーが尽きた事はアリーナのモニターで確認出来た。

 

『・・・・何、あれ?』

 

『相手に何もさせぬ圧倒的な火力・・・・雪兎のやつ、あのアドヴァンスドを纏ってから一歩も動いてないとはな』

 

『高機動型で一気に近付けばチャンスはあっただろうな。あれはデュノアが使ったクロスキャリバー以上に機動力を殺している』

 

『ほ、本当にえげつないアドヴァンスドですね、あれ・・・・それはともかく!試合終了ォ!勝者、天野雪兎!』

 

薫子の試合終了コールと共に爆炎が晴れると、目を回した聖が海に漂っている。観客席もあまりの光景にしーんと静まりかえっている。

 

「きゅ~・・・・」

 

「少し、やり過ぎたか?」

 

こうして、雪兎はあまりにもあっさりと決勝への切符を手にするのだった。




遅くなった割に短くてすいません。

そして、アメイジングアルケミスト・・・・新たなトラウマ製造機アドヴァンスドです。


次回予告

雪兎が決勝進出を決め、次の第二試合は箒VS一夏の試合。互いに全力でぶつかり合う中、箒の紅椿に異変が生じ・・・・


次回

「大暴走!?赤月現る! 兎、見守る」


遅れましたが、本日は箒の誕生日。ファース党の皆様を筆頭にお祝いしましょう。

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