IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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今回はまたしても蘭がファインプレーします。
そして、キャシーをおちょくります。そりゃあもう盛大にw

そのおかげで一人生存。

活動報告にアンケート4を設置しました。


87話 潜入、ミュネーゼ・タウン 兎、キャシーをおちょくる

雪兎達が地下水路を通っていた頃、マドカと蘭はシシーの監禁場所を突き止め、伝説の傭兵も愛用していた秘密兵器【ダンボール】で監禁場所であるホテルに潜入していた。

 

「やはり潜入と言ったらダンボールだな」

 

「何で誰も不審に思わないんだろう・・・・明らかに怪しいのに」

 

謎のダンボール万能説はこの世界でも有効らしい。

 

「あの部屋だな・・・・いくぞ、蘭」

 

「うん」

 

そこからは光学迷彩マントで姿を隠し通気口から部屋へと侵入。監視カメラにクロエ特製のウィルスで偽の映像を流し、見張りはマドカが手刀、蘭が兎印のスタンガンで気絶させる。

 

「・・・・えっ?」

 

シシーには彼らが突然倒れたように見えた為驚くが、肝が据わっているのか逃走経路の確認を始める。そんなシシーにマドカはマントを脱いで声をかける。

 

「シシー=クロフトだな?とある人物達の依頼で貴様を救助に来た」

 

「えっ?救助?」

 

「うん、ピュアアムドライバーの人達が貴女が捕まったって聞いてこっちに来てるの」

 

蘭もマントをとってマドカの説明の補足をする。

 

「ピュアアムドライバー!?それって本当!?」

 

「ああ、とりあえずここを脱出するぞ。いつまでもここにいては見張りに見つかる」

 

そこからはマドカにとっては簡単なものだった。予め探しておいた逃走ルートでホテルを抜け出すと(そのついでに兎印の嫌がらせグッズもばらまいて)、シシーの案内で迷路のようなダウンタウンの工作員のところに身を隠した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、シシーの脱走に気付いたキャシーは鬼の形相でシシーを捜索するよう指示を飛ばしていた。

 

「警備は万全だったはず!どうやって脱走したというの!?」

 

だが、更なる不幸がキャシーを襲う。それは・・・・

 

「きゃ、キャシー様!ホテル内の我々の設備が次々と動作不良を・・・・」

 

「なんですって!?」

 

聞けばJAが設置していた通信機材などの電子機器がいきなりダウンしたらしい。

 

「早く原因を調べなさい!」

 

そう怒鳴り散らすキャシーを他所にキャシーの使っているモニターが落ち、原因の方がキャシーの前に現れる。

 

「キャシー様!あそこ!」

 

「えっ?」

 

そこにいたのは端末のケーブルをかじるハムスターのような何かだった。

 

「ね、ネズミィイイイイ!!」

 

「い、いえ、あれはハムスターではないかと・・・・」

 

「どっちでも大して変わらないじゃない!どちらも同じ齧歯類よ!」

 

ネズミに何かしらのトラウマでもあるのか取り乱し始めるキャシー。それを見てそいつは目をキランッと光らせる。

 

「えっ?ちょっと待ちなさい!まさか、あなた・・・・」

 

そいつが何を考えているのか直感的に察し後退りするキャシーだったが、時既に遅し。そいつはキャシーの胸元へと跳びかかる。

 

「きゅう・・・・」

 

「きゃ、キャシー様!?」

 

そいつに跳びかかられ気を失うキャシー。その後は何匹ものそいつらによってJAは甚大な被害を被り、その立て直しに時間がかかりシシー達をまんまと逃がしてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・あの、兄さん」

 

『マドカ、お説教は帰ってきてからだ。で、勿論何か成果はあったんだろうな?』

 

ダウンタウンに逃げ延びたマドカ達はとりあえず雪兎に連絡をする事にしたのだが、やはり雪兎はお冠状態だった。

 

「は、はい!シシー・クロフトの身柄を確保し、蘭と三人でミュネーゼ市街にて潜伏中です!」

 

雪兎の声に震えながらもマドカは自身の得た成果を報告する。

 

「しかも、ニルギースが言っていた協力者はどうやら彼女の様です」

 

『『『『な、何だってぇえええええ!?』』』』

 

これは蘭が聞き出した事なのだが、シシーはニルギースが探していた工作員だったらしく、これを聞きあちらは驚愕していた。

 

『どのみちシシーは救出する必要があったって訳か・・・・まあいい、身柄を確保しているんだったら話は早い。こっちから迎えを出すからそのまま待機してろ』

 

「はい」

 

『今回の活躍に免じてお説教は一時間で勘弁してやる』

 

通信を切ると、マドカは目に見えて落ち込んでいた。

 

「ごめんね、マドカ。私が巻き込んじゃったから・・・・」

 

「いや、決めたのは私だ。それにこうしてシシーも救出出来たんだ・・・・一時間くらい我慢する」

 

「私も一緒に怒られるから」

 

「蘭・・・・」

 

あの冷酷無比だったマドカが変わったものだ。そして、その原因とも言える蘭が今回もシシーの運命を変える。

 

「ところでシシー」

 

「何?」

 

「多分、この後街を脱出する事になるけど、やり残した事とか無い?しばらく帰って来れないと思うから」

 

「だよね・・・・あっ、施設の人達にお別れを言っておきたいかな?」

 

「施設?」

 

「うん、孤児の子達の面倒をみてくれる施設があってね。日頃お世話になってたから・・・・それと、そこにピースと一緒に預かった物があるの」

 

そう、本来なら一度ミュネーゼ・タウンを出てからシシーの我が儘で戻ってくる一因となった出来事なのだが、蘭が脱出前にそれを上手く潰してしまったのだ・・・・本当にこの世界の蘭はフラグクラッシャーの才能があるのかもしれない。

 

「今日はもう遅い。兄さん達と合流してからにしよう。一応、今のうちに連絡はしておく」

 

シシーから聞いた事をメールで雪兎に報せると三人は一時の休息を取るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝。未だに混乱が続くキャシー達を他所に雪兎達はミュネーゼ市街へと潜入していた。検問は余裕で通過している。

 

「潜入成功だな・・・・本当にJA仕事してないな」

 

「これを見破れっていう方が無茶だと思うよ、僕は」

 

雪兎達が潜入に用いたのはクレープの移動販売車と束がハッキングして偽造した通行許可証。そして、ウィッグと網膜認証付きカラコン装備というやたら手の込んだ偽装を施したものだった。ちなみに潜入メンバーは雪兎、シャルロット、弾、ラグナ、セラ、シーンの六名。全員変装済みだ。

 

「声帯まで変えれるなんてな・・・・本当にお前と束博士は凄いな」

 

声は喉の辺りに目立たない特殊なシールを貼ることで声を変化させれる某怪盗が愛用してそうな一品を再現したものだ。

 

「とりあえず、マドカとの合流ポイントに向かう。その後、シシーの言う預かり物とやらを回収してからジェナス達の陽動の隙を突いて脱出する」

 

「でも、その預かり物はどうやって持ち帰るの?」

 

「こっちにはstorageって便利アイテムがあるんでな。こいつの拡張領域にならバイザーくらいなら十は余裕で持ち出せるぜ?」

 

「本当に住む世界が違うと常識も通じないのね」

 

「あはは・・・・雪兎と束さんはこっちでも非常識の部類だよ」

 

セラの疑問は雪兎の非常識アイテムで解決。世界を越えても兎師弟の非常識っぷりは健在のようだ。

 

「さて、そろそろ合流ポイントだ」

 

合流ポイントに着くとそこにはマドカ、蘭、シシーの三人が待っていた。

 

「君がシシーか?」

 

「は、はい」

 

「話はマドカから聞いている。その施設に案内してくれるか?」

 

「うん!」

 

シシーの案内でやってきたのは市街から少し離れた丘にある児童保護施設。そこに住まう子供達や管理人の女性・べティはシシーがJAに捕らえられたと聞いて心配していたそうだ。

 

「兄ちゃんのクレープうまっ!」

 

「こんなの初めて食べる」

 

そんな子供達に雪兎はクレープを振る舞っていた。道中でも、偽装工作を兼ねて市街の市民に売ったり、JAに陣中見舞いとして振る舞っていたが、何れも大盛況だった。おかげで疑われる事なく潜入出来たのだから食の力は侮れない。

 

「クレープって甘いのだけだと思ってた・・・・」

 

こっち(この世界)には惣菜クレープは広まってないみたいだね」

 

シシーも惣菜クレープ(クレープ・サレとも言い、日本人に一般的なクレープはクレープ・シュクレと言う)という存在に驚いている。

 

「日本人の食への探究心は本当に尊敬するよ・・・・」

 

元々クレープはフランス北西部ブルターニュが発祥で、元になったとはそば粉で作られた薄いパンケーキ(ガレット)である。現在のような生クリームや果物を巻くクレープは1977年に原宿で誕生したものでフランス発祥ではないらしい。世界各国の料理を日本風に魔改造(アレンジ)するのはもはや日本のお家芸と言ってもいいだろう。あんかけスパや肉じゃがなどがいい例だ。

 

「それでね、べティさん・・・・」

 

その後、シシーはべティにしばらくミュネーゼを離れなければならない事を告げ、施設の地下倉庫に隠してあった二つのコンテナを雪兎達に預ける。

 

「こいつはバイザーじゃねぇか!しかもおニューの・・・・」

 

「ピースを私に預けた人がJAには渡せないって言ってたんだ」

 

「なるほどな・・・・とりあえずこいつはstorageに入れておくか」

 

そう言うと雪兎はそのバイザーをコンテナごとstorageに格納する。

 

「何度見てもその電子変換だっけか?その技術には驚かされるぜ」

 

「だろうな。でも、こいつを応用すればそのうちにアムジャケットもISみたいに装置無しで装着出来るようになるかもな」

 

「ん?それくらいならすぐに出来るぞ?」

 

「「・・・・」」

 

さらっとそう告げる雪兎にラグナとシーンの二人は揃って絶句する。

 

「アムジャケットのIS化か・・・・意外に面白いかもしれんな」

 

「ほんと、こいつが敵じゃなくてよかったぜ」

 

「ああ、本当に味方でよかった・・・・」

 

雪兎はこの世界でも兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)の二つ名通り敵に災いを、味方に恵みをもたらしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にあっさり脱出出来ちゃった・・・・」

 

施設の皆と別れた後、雪兎達は行きと同様に帰りもクレープを売りながら何事も無かったかのようにミュネーゼを脱出していた。むしろ最後の検問所では惣菜クレープを振る舞って感謝されたくらいだ。キャシーがその事を知ったら激オコ案件だ。

 

「こういうのは焦って早く脱出しようとするからバレるのさ。逆にこれくらい堂々としてりゃ怪しまれないのさ」

 

「はは、こりゃ一本取られたな」

 

雪兎の言い分にシーンはなるほどと納得する。

 

「それに、ちょっと置き土産も置いてきたしな」

 

「今度は何やらかした?」

 

「なに、アイツらの拠点にハムスター型の破壊工作ロボ撒いてきただけさ」

 

そう、キャシー達を混乱の渦に叩き込んだあのハムスターらしきものは雪兎特製の破壊工作ロボだったのだ。しかも、このロボは捕まるか機能停止するとシュールストレミング並みの悪臭を放つ液体をばら撒いて自爆するという厄介極まりない機能を持つ嫌がらせにはもってこいのものだ。

 

「シュールストレミングって、えげつないにも程があるだろ!?」

 

阿鼻叫喚としているキャシー達の姿がラグナ達には容易に想像出来た。

 

「ほんと、雪兎は相変わらずだな・・・・」

 

「あはははは・・・・」

 

そんなこんなでシシー救出作戦は呆気なく終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ロシェット達は・・・・

 

「ところで、俺達はいつになったらここから出られるんだ?」

 

「さあ?」

 

「覚えてやがれぇえええええ!!」

 

未だに雪兎に崩落させられた地下水路に閉じ込められていた。




という訳で脱出時の戦闘なく、シシーがもう一度ミュネーゼに来ない為にエーリック生存。
次は雪兎とあの男が初邂逅。


次回予告

無事にミュネーゼを脱出した雪兎達。次なるピースの情報を求めムーロンに向かうべくナムールリバーのキュプロクスを回収しに向かう最中、ジェナス達と因縁の深いあの男が姿を現す。

次回

「復活のDと新バイザー 兎、色々と企む」



ジョイ「本日のメカニック紹介コーナー」

雪兎「これ、アムドライバーの原作にあったやつだな」

ジョイ「そうッス!今回からこの作品オリジナルのアムジャケットやバイザーを紹介していくッス!初回である今回は勿論、ジェナスの改修型ネオアムジャケットッス!」

雪兎「ベースは原作のネオアムジャケットとあまり変わらないが出力は1.5倍。拡張領域などのIS固有の機能も付加した既存のアムジャケットとは別物のアムジャケットだな。追加装備としてヴァリアブルソード等を装備している」

ジョイ「ヴァリアブルソードは十徳ナイフをモチーフにしたマーキュリーレヴとGNソードを元にしており、ショートソードから大型ソード、他にも様々な用途のソードを格納した装備ッス。当然、チューブチャージシステムにも対応しており、他の装備と一緒にスクラムソードと組み合わせる事ではバスタースクラムソードになり、凄まじい威力を発揮するッス!」

雪兎「まだまだ明かしていない装備や機能があるが、それは何れ本編でな」

ジェナス「俺のアムジャケット、そんな事になってたのか・・・・」

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