虚ろな彼の求めた世界   作:カニカマ天

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プロローグ

求めていたのは自分に優しい世界。

 

もっとも小さい頃から何か苦手なことがあったわけでもない彼は、不自由なく生活を送った。

 

勉強は人並み以上。運動も人並み以上。

家柄も裕福な方で金銭的にも苦労する事はなかった。

性格は社交的で年上に対する礼儀も年下への面倒見のよさも、同年代の子供よりは秀でていた。

 

強いて言えば、時間や期限にルーズだったことと、顔があまりカッコ良くなかったことくらいが彼の欠点であった。

 

生活をしていく上で多少問題はあったりはしたが、それも乗り越えられないことではなかった。

 

人は彼の事を恵まれていると感じるであろう。

彼もこれ以上を求める事は傲慢であると感じている。

頭でわかっていても求めてしまうのは人間の性なのであろう。

 

そんな彼にも悩みがあった。

彼は自分の言動を人の顔色を伺って決めるのだ。

このことを彼は表には出さないものの、強く悩んでいた。

そんな事社会に出たら当たり前だと感じる人もいるであろうが、それを理解するためには彼は幼すぎた。

喜怒哀楽がないわけではない。自我をもたないわけでもない。ただ親や他人に求められる通りのことをする事が習性になっていき、この事が彼には苦痛だったのだ。

 

次第にこの性格が悪化し、彼に深く干渉してくれる人物は減ってきた。性格が悪化した背景には彼の生活環境が影響していたのだが、このことはいずれ話すとしよう。

 

どんなに御託を並べようとも人は平等に老いていく。

つまり万人に平等に時は流れていくのだ。

それは彼にも等しくやってきた。

 

言動に自我が伴わない彼は流されるまま、高校に進学し大学に入学した。この間に彼は一度も自らの人生を自ら選択した事はなかった。

 

空虚な彼は求める。自分を変えてくれる人物を。

空虚な彼は求める。自分を変えてくれる目的を。

 

ドラマのような事を望んでも現実は好転しない。

わかっていても人は望んでしまう。都合のいい非現実的な世界を。理想的な現実を。

 

そんな彼も大学生活が四年に差し掛かった。

無為に消費していた日々も終わりが近づいてきたのだ。

そう。社会人になる事である。

 

そんな卑しい現実が迫ってくる中、彼に細やかな出逢いが訪れた。それは漫画やアニメのような突拍子もないものではなく、ごくごく普通のありふれた出逢いだった。

 

この物語は社会人までのカウントダウンを始めるようになった彼、灰場 翔が世界に色を取り戻し、彼が求めたひどく甘ったれて抽象的な世界を手に入れるための日常的な話である。

 




ゆるりと書いていきます。
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