護衛艦でいず!   作:角煮か?

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第13話

 

 長月が新たに艦隊に加わり、この基地も段々と賑やかになってきた感じだ。

今日も雲の断片すらなく晴れ渡る青空の下、日課の訓練が始まる。

 

 艦娘の要となる砲撃や海上機動は概ねみんなと同一の構成になるが、魚雷戦、ミサイル訓練は別々だ。

 皐月たちはミサイルを打てないし(当たり前)、逆に俺は魚雷を水上艦に発射することはない。護衛艦の短魚雷は対潜兵器、時には戦艦にすら大打撃を与えうる酸素魚雷とは根本から目的が異なるのだ。

 

 無論、戦況次第では打つ時もあるだろうけど……搭載されている炸薬の量は酸素魚雷の十分の一以下だし、射程も短い。基本、装甲を持たない現代の艦艇でも効果の薄い短魚雷では大鑑巨砲の軍艦には歯が立たないと思われる。

 専ら潜水艦が扱う長魚雷なら、誘導可能かつ高威力なんだけどね。

 

 そんなわけで――周りが魚雷戦に励む中、俺はミサイルの射撃練習に入る。

 

「……今度こそ、当ててみせる!」

 

 レーダーもミサイルも各種システムも正常稼働しているんだ。成功できる要素は全部揃っている。

 後は……俺次第。シーホークのデータを読み取り、座標、距離、方位を正確に判別する。

 

「攻撃情報、セット」

 

 無論この前の反省点も生かしていく。示される数値を何度もチェックし、準備を完了させた。

 さあ…やるぞ。リベンジだ。

 

「トマホーク用意、打てッ!!」

 

 吹き荒れる熱が噴煙を紅く染める。トマホークは俺が指示した方角へ、飛び立った。

 

「………」

 

 ブースターの輝きは青空に浮かぶ雲間に消えるが、レーダー上にはアイコンとなって表示されている。

 

「当たれ……!」

 

 祈るように俺は輝点を睨む。洋上のターゲットまで残り10秒弱。両手の指で数え切れる程度なのに、とてつもなく長く感じた。

 

『こちらシーホーク……弾――』

 

 ああ、この声音だと今回もダメか……。

 

『…着!! ターゲットキル! 命中です! 文句なし、ど真ん中!』

「……え?」

『だから命中ですよ! やりましたね!』

「……マジ?」

 

 当たった、の?

 ついに?

 本当に?

 俺のミサイルが?

 

「――っ!」

 

 アーレイバーク級なら誰でもできるって?

 知るか、それでも嬉しいんだよ。

 

「やった……!! やったんだ、俺!! 司令官、やったよ!!」

『ああ、よく頑張ったな。エラいぞ、うん。……くっ、今の笑顔は反則だろ……不覚にも……』

「え? なんか言った?」

『ゴホゴホッ、聞き間違いじゃないか? 今日はお祝いだな!』

 

 コツさえ掴んでしまえばこっちのもの。残りの時間は手ごたえを忘れないために反復練習を行い、訓練が終了する頃には50発中、49発命中という大成果だった。

 

 

 

「で、奮発しようと思ったが……」

「張り切りすぎて利き腕の指を怪我したと」

 

 俺は司令官の人差し指に包帯を巻いていく。こっちまで背筋がムズムズしそうな傷口だった。

 重傷ってほどでもないが、無理にペンや調理器具を握らせて二次被害を出すのも拙い。

 

「暫くは報告書とかはボクたちが書かないとダメっぽいね」

 

 喜んでくれるのは嬉しいけど、安全第一にな。

 

「ほい、終ったよ」

 

 ひとまずの処置は済んだ。もし悪化するようなら病院へ行くことも視野に入れないと。

 

「すまないな。今日のご飯は出前を頼もうか? 近くに店がないから、いつ届くかは分かったものではないが……」

「…その前に一つ、挑戦してもいい?」

「ん?」

 

 俺は司令官がつけていたエプロンを掴んだ。

 

「作ってみる」

 

 〝ゆきづき〟としての能力なのか――怪我の応急処置もテキパキとこなせたし、料理に関してもある種の自信があった。根拠? ないよ。

 

「調理場、借りるよ」

「料理できるのか?」

「多分」

 

 まだ作りかけの食材が並ぶ台所に入り、現状の確認。

 刺身か、寿司でも作ろうとしていたのかな。

 

「司令官は何を作ろうとしたん?」

「マグロが釣れたからな。ご期待に応えて寿司や海鮮丼を作ろうとしたんだ」

「なるほど……」

 

 酢飯用の桶まである。本格的だ。随分凝ってるな。

 

「じゃあ、始めよっか」

 

 手を洗い、消毒してから作業開始――とは言ってもご飯は既に炊きあがり、米酢を混ぜるだけだが…。

 膨らんだ白米を桶に乗せ、酢を半量ほど振りかける。残りは杓文字で米粒を潰さないように心しながらかき混ぜた。

 

「あ、すし屋の匂いが……」

 

 適度に混ざり合った白米から、あのすし屋独特の匂いが漂ってくる。

つまみ食いしたい……けど、我慢! だってみんなこっちガン見ですし。俺も鬼畜ではない。

 

 混ぜた後は水気が飛ぶまで放置。

 お次は刺身……確かタネって言うんだっけ? それを作る。

 

「見事に一匹丸々なんだな……」

 

 普通は切り身とかパックを想像するだろうな。でもウチの司令官は一本釣りをする。深海棲艦が出没する前は地元で一番の漁師だったらしいが……謎の多い人だ。

 

「てか、どうしてこんなバカでかいマグロ釣れんの?」

「皮肉な話になるが、深海棲艦の連中が海を掻き回したおかげで生態系や生息地が狂ってな、この辺の海域じゃマグロがアホみたいに釣れるのさ。べらぼーに高い高級すし屋に行かなくても大トロがたらふく食えるぞ」

 

 何でも日本の領海は海産物の宝庫になったようで。そらシーレーンや制海権の維持は死活問題になるよなぁ。

 

「せー、の!」

 

 ドン! と包丁を振り下ろしてマグロの頭を切り落とす。駆逐艦でも艦娘のパワーは本気を出すと人間は無論、一瞬でどんな生物(深海棲艦以外)でもスクラップにしてやれる。

 どれだけ人に近くともその魂は船――軽くても数千トン、重ければ数万トンにも及ぶ戦闘艦だしサ。

 

「顔は顔で食べられる部分があるから、別に調理しておくよ」

 

 胴体は五枚下ろしだ。背びれは取り除き、中骨に沿って背中側に包丁を入れる。反対の腹部の方にも切れ込みを加え、半分に分けておく。更に半身の半分をそれぞれ切り離し、残ったヒレを処理するだけだ。

 

 内臓のあった辺りは叩いてネギトロに、中心近くにある血合いは竜田揚げにでもしよう。

 で、皮を剥いでサクにしておしまい!

 

 最後に均等に切って、形を整えた酢飯の上に乗っける。……ちょい不格好だな

ま、半端な知識があるだけじゃプロの板前のようにはいかないよね。

 

「できた」

 

 さしあたり、握った寿司をテーブルに並べる。

 

「では早速……いただきます!」

 

 まるでエサに群がってくる鯉のような素早さで司令官が摘まんだ。

 

「あ、ズルい! ボクも!」

 

 続けて皐月も寿司を掴み、口元へ持っていく。

 

「ほう――美味!! 脂が乗った肉厚な身に、程よい酸味の酢飯との相性も抜群だ!!」

「うん! ゆきづきなら補給艦としてもやっていけるよ!」

 

 どうやら好評のようだ。まあ、今回は素材のポテンシャルに助けられた感が強いけど。

 

「……美味しいな」

「悪くない」

 

 言葉少なだが菊月と長月も気に入ってくれたらしい。良かった。この間にネギトロと竜田揚げも作ろう。

 

 

 

 この日から、司令官と日替わりで台所を任されるようになった。

 何故だ。

 

 

 





作り方の丸写しは規約に抵触するかもしれないので色々ハブいてます。





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