護衛艦でいず! 作:角煮か?
変更点は以下の通りです。
オートメラーラ127mm砲→62口径5インチ単装砲
むつき型9番艦→むつき型13番艦
艦首番号187→191
誤字報告での本文の修正、非常に感謝しております。
この場を借りてお礼申し上げます。
背中の飛行甲板がにわかに騒がしくなる。
「航空機、即自待機。準備出来次第発艦!」
「着艦拘束装置、移動軌条へ」
格納庫のシャッターが開き、そこから鎮座した一機のヘリコプターが姿を見せた。
――SH60-Lシーホーク。
豊富な武器を搭載した哨戒ヘリ。この世界だとSH60-Kでシリーズは打ち止めとなったが、俺が搭載するのはその発展型――らしい。
基本的な部分は変わらないので、妖精さんたちも残された海自のマニュアルから操縦法を学べた。
もう一機、ティルトローター型の艦載機もあるけど……こちらは海自での運用記録のない未知の機体らしい。見た目は戦闘機に近いがジェットエンジンではなく、二基のローターが装備されている。
妖精さんたちの調査が終わればこっちも本格的に運用されるだろう。
「エンジン始動。甲板作業員は誘導員を除いて退避せよ」
「シーホーク、発艦」
折り畳まれたローターと尾翼を展開。エンジン音を唸らせ、着艦拘束装置から飛び立つ。
「まずは救難者の状況の確認を頼む。潜水艦を見つけたらその場で攻撃して」
『了解』
青空に飛び去っていく機体を見送り、俺は次の準備に移る。
「シーホークとのデータリンクを始めます」
「頼むぞ……」
万全を期すためにもアクティブソナーは確実な所で打ちたい。その前に哨戒ヘリで倒せるならそれに越したことはないけどな。
「私たちも行こう。潜水艦には気をつけろ」
「オッケー」
菊月の指示に従い、俺たちは陣形を組み直した。
ゆきづきから飛び立ったシーホークは一足先に信号の発信地に到着する。
「信号はこの辺だ! 見落とすな!」
今も微弱に発し続ける信号を頼りに、機体は速度と硬度を落とす。
同時にこの大海原に潜んでいるであろう潜水艦にも注意を払う。
「ソノブイ、投下用意……投下!」
機体から筒状のものが射出され、パラシュートを開いて減速しつつ海面に落ちる。
使い捨てソナーの一種だがその性能は非常に高く、潜水艦そのものが発する低周波をキャッチすることが可能である。
シーホークはゆきづきたちの進路上にブイを投下し、信号の探索も並行して試みる。
やがて一人が海面に浮かぶ漂流物を発見した。
「あれを!」
濛々と上がる黒煙。波間に揺れる艤装の残骸。間違いないだろう。
「高度を落とせ。近づくぞ」
旋回しながらゆっくりとシーホークはそれに接近する。
「……艦娘です。損傷は沈没寸前」
大きく拉げた装甲と折れ曲がった主砲。弾薬庫が誘爆でも起こしたのか、炎上している箇所もある。素人目に見ても長くは持たないだろう。
「艦種は恐らく駆逐艦だな。ん、発光信号か?」
妖精は艤装の上で瞬く光源を発見する。一定の規則を持って明滅するそれは船舶間の交信などで用いられる手法だ。
艦娘は気絶しているのか、ピクリとも動かない。しかし艤装の上では彼女の妖精たちが走り回っている様子がよく見える。
「解読します……『敵潜水艦、複数アリ。注意セヨ』です」
「複数だと? クソ」
「SOSUSがポンコツなんでしょうね。この辺の海域は温度や潮の濃度が安定しませんし、ソナーで探すのも一苦労ですよ」
「なおの事、急がないとな……信号を返せ。内容は『了解。応急修理要員ヲ送ル』だ。お前ら、準備は良いか!?」
妖精は後ろの座席に顔を向ける。安全ヘルメットを被った妖精たちが待機していた。艦娘の沈没を防ぐ役目を担う、重要な存在である。
「はい、いつでも行けます!」
「よし降りろ!」
シーホークの高度が更に下がり、降下用のロープが放られた。
「さあ、早く! 行け行け!」
上官に急かされ、妖精たちは続々とロープを伝って降りていく。全員が降下したのを見届けると、素早く機体を反転させて飛び去った。
「一隻だけじゃないのか……」
俺はシーホークからの情報を受け、顔を顰める。
SOSUSとのデータリンクは継続しているが、どうも安定しないようだ。
「MFTA(曳航式パッシブソナー)も展開しますか? まだ試用を試していませんが」
「そうだな……できることはやろう」
俺の指示に再び後甲板が騒がしくなった。
格納された機材が引っ張り出され、妖精さんたちが準備を始める。
「曳航ソナーは10ノット以下での運用になります。速力を下げてください」
SOSを発した艦娘の救助は一刻を争う。二人は先に向かわせるべきだろう。
『やむを得ないな……菊月、皐月は先行し救助を優先してくれ。ゆきづきは分かり次第、二人にもデータを送るように』
「了解した」
「分かったよ、司令官。ゆきづきも気をつけてね。転ばないように」
「……あいよ」
速力を上げ、先行していく二人。同時に曳航式ソナーの準備が完了し、後甲板から放出されて海の中に沈んでいく。
「あとは根競べか……」
問題なく海の上を奔れれば、アクティブも打っていけるんだけどな。
10ノット以下という速度の中、ひたすらシーホークからの報告と自身の警戒に努める。
「――来ました。シーホークから潜水艦の位置情報です」
そんな状況が数分続いた後、ついに待ち望んだ情報が届く。
「敵潜水艦三隻。方位は――」
すかさず俺は先に向かった二人にも連絡した。
「皐月、菊月聞こえる?」
『感度よし。聞こえる』
『こっちもバッチリだよ』
「敵潜水艦の位置が分かった。今から位置を伝える――」
潜水艦の位置を鑑みて、ゆきづきとシーホークが二隻を攻撃する手順となった。残る一隻は三人の中でも一番練度の高い菊月が請け負うことに。
「皐月姉さんは救助を頼む」
「任せてよ!」
牽引用のワイヤーもあるし、相手は駆逐艦だ。曳航することは可能だろう。彼女は軽く胸を叩き、信号の発信地へ走っていった。
「さて……私もやるとするか」
かつてない精度で伝えられたデータを元に、菊月は慎重に音源へと向かう。
「音源、探知しました。感2、潜水艦です。爆雷投射用意」
艤装に備わった投射機が稼働する。アームに取り付けられたドラム缶のような筒がその時を待ち望んでいた。
「感3。魚雷注水音、検知」
「まあ――運が悪かったな」
海に向かって次々と投射される爆雷。時間を置いて炸裂した爆薬が巨大な水柱を立てた。大量の水が高々と宙を舞い、やがて重力に引かれて落ちる。
最後の抵抗で発射された魚雷が、明後日の方角に飛んでいくのが見えた。
「浮遊物、多数確認。油膜も認められます。撃沈確実かと」
妖精からの報告を受けても気を抜かず、注意深く警戒は継続する。
「しかし……何でこんなところにまで潜水艦が」
菊月は解せないな、と小さく呟く。この海域は人類側の制海権で、長らく潜水艦の潜入を拒んできた。
「対潜の哨戒網は『ブルーアイランド』が担当してたはずだが……」
小規模ながらも飛行場を要する洋上基地。潜水艦をこの海域に近寄らせない役目を持っていた。
「何か、あったか?」
言いようのない不安がジワリ、と胸中を占めた。