看板には「雄英高等学校入試試験会場」の文字。
「大丈夫、大丈夫。」
出久と約束してから、色々なトレーニングをした。
毎日の筋トレ、
毎日のランニング、
食事バランス、
この10ヵ月、体力が大分ついたと思う。
これで、竜巻や風圧での攻撃も多少は出来るはず。
「よぉし、やってやる!!」
「!?」
意気込みは十分にあった。
このまま波に乗ればと思っていたのだが、
「.........。」
「.........。」
まさかの席が爆豪の隣。
私の細胞一つ一つが震え上がっているのが判る。
爆豪の隣は…
「ブツブツブツブツブツブツブツ」
出久だった。
私は途端に嬉しくなって、机の上に手を置き身を乗り出す。
「い、出久!おはよう!」
久しぶりに会ったためか、どこか照れくさい。
「あっふうちゃん!お、おはよ...!」
はにかんでいる彼の顔を見るに私と同じ状況だと言う事が判った。
それが私の心臓を高鳴らせる。
「元気そうで良かった、あ!今日の試験がんば」
「オイ!俺を挟んで会話すんじゃねぇ!!クソが!!」
すっかり爆豪の存在を忘れていた。
どうやら余計な行動はしない方がいいかもしれない。
それにしてもなんだろうか、この違和感は、あのヘドロの時からすこーしだけ落ち着いたような、着いてないような...。
あ、そういえば、あの時私の事を助けてくれたよね...
そう決まったわけじゃ無いけど、お礼は言った方がいい。
「あの.......」
「ア゛ッ!?」
迫力のある爆豪の顔に怯えながら私は唾を飲み込み口を開く。
「覚えてないと思うし、気のせいかもしれないけど、あの時は助けてくれてありがとう。」
「助けてねぇよ!役立たずは役立たずだからどっか行けって話だ!!」
「それよりてめぇ!その暗い顔なんとかしろ!!見てて腹立つ!殺すぞ!?」
「こ、ころっ、す事なぃじゃない...!!」
「反論かぁ!!」
このままでは会場を追い出されてしまうと考えた私は怖いが黙っておくことにした。
私が黙ると爆豪も舌打ちをし、それ以上は何もしなかった。
(ふうちゃんがかっちゃんと...凄い...。)
不穏な空気が流れる中、一つの声が会場内に響く。
『今日は俺のライヴにようこそー!!!』
『エヴィバディセイヘイ!!!』
こちらに耳を傾けているが、会場は静寂のまま。
『こいつあシヴィー!!!受験生のリスナー!』
『実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?』
『YEAHH!!!』
「い、イヤー......」
「アホか」
冷静になって私、今のは私がアホな部分もあったわ。
「ボイスヒーロー「プレゼント・マイク」だ、すごい...!!」
「ラジオ毎週聞いてるよ、感激だなあ、雄英の講師は皆プロのヒーローなんだ。」
「うるせえ」
流石出久だ。ヒーローの事はあのノートに書き留めてあるのだろうか。
それを全部覚えているのは相当の記憶力なのでは、
『入試要項通り!リスナーにはこの後!10分間の「模擬市街地演習」を行ってもらうぜ!!』
『持ち込みは自由!プレゼン後は各自、指定の演習会場へ向かってくれよな!!』
「同校同士で協力させねえってことか、」
「ホントだ、受験番号連番なのに会場違うね。」
「爆豪は絶対協力とかしないでしょ。」
「うっせーな弱虫。」
試験前にこんな調子でいいのだろうかと思ってしまうが、
体が妙に楽だ。
もしかしたら2人と話しているおかげで緊張が和らいでいるのかも、
「質問よろしいでしょうか!?」
こんあ静かな試験会場の中で質問をするなんて中々の受験生ね。
見た感じ真面目そう...
「プリントには四種の敵が記載されております!」
ああ、さっき映っていた"仮想敵"(カソウヴィラン)の事か、確かにモニターには三種しかいなかった。
あの人、鋭いわね。
そんな事を思っていると、鋭い人が鋭い目つきで此方を見てきた。
「ついでにそこの縮毛の君」
「!?」
「先程からボソボソと...気が散る!!物見遊山のつもりなら即刻、雄英から去りたまえ!!」
「すみません...」
何が面白いのか、周りがクスクスと笑い始めたので、私はうるさいと言わんばかりに軽く後ろをみて睨んでやった。
「ヒッ」
「お前、結構悪か」
「アンタに言われたくない。」
プレゼント・マイクが言うにはそれは所謂"お邪魔虫"。
各会場に一体ずついて大暴れしている「ギミック」らしい。
しかもPは0。
「無駄に戦わない方がいいって事ね…」
「...ま、そうだな。」
「「............」」
何故、私が零した言葉に反応した。
そして何故、話が合った。
...まぁ、本人は気にしてなさそうだし、いっか。
「有難う御座います、失礼致しました!」
『俺からは以上だ!!最後にリスナーへ我が校"校訓"をプレゼントしよう』
『かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!!』
『"Plus Ultra"!!』
嗚呼、ついに、ついに来る。
この体が全体が熱くなってくる感じ。
この試験がヒーローになりたいという夢を叶えるための、
『それでは皆、良い受難を!!』
大きな1歩にならんことを。
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「出久、頑張ろうね。」
「うん.......」
出久はどこか不安そうな顔だった。
無理もない、だって彼は…
いや、"個性"なんて関係ないじゃない。
「私はそのままの出久でいいと思う。」
「焦らないで、深呼吸...」
私は彼の肩に手を置く。
この行動が彼にとってどのくらいの助けになるかは知らないけれど。
「じゃあ、後でね!」
これが今の私に出来る事だ。
「ふうちゃん!」
「ん?」
「僕、やってみせるよ!だから!!」
「信じて待ってて欲しい!!そしてふうちゃんも頑張って!!」
決意の表情を見せた彼は私に背中を見せて歩いていった。
あんなに頼もしい背中になったんだ。
私はふと小さい頃助けて貰った出久の背中を思い出す。
似てるようで全く違う。
出久は成長したんだ。だったら私も、
私はボロボロのゴーグルを装着する。
こんな自分に負けてられない。