「なんで......」
「なんでだろうな…」
試験が終わってから一週間が経とうとしていた頃。
私と切島と言う彼は雄英からお呼び出しを貰った。
何を言われるのか、どうしてこの二人なのか、色々考えていないと心臓が持たないのだ。
きっとそれは隣に居る彼も同じ事だろう。
『YO!!男子リスナーに女子リスナー!今日は雄英から伝えたい事があるんだぜ!!』
伝えたい事?なんだろうか、
でも、わざわざ呼び出したたのだから大事な事には違いない。
『単刀直入に言っちまうが、リスナー二人同点なわけよ!』
「「えっ」」
私達は思わず顔を見合わせてしまった。
『まあ、それだけなら別に何も無いんだけどな。問題は順位さ!』
『雄英の定員は36名、1位〜36位が合格なんだが!』
プレゼント・マイクは大きく腕を振り私達を指差した。
『二人共、その中に入ってるってわけだ!!!』
私達はうんともすんとも言わず、ただただ口を開けたままだった。
よく考えると、それはつまり合格しているということなのだ。
しかし、その一瞬の嬉しさがすぐさま緊張へと変わる。
「紙には順位が同じ者が居た場合、どちらが優秀かを見定め片方を落者とするって書いてあった。」
「ま、マジかよ。」
「アンタしっかり読んで無かったの!?!?」
「読んだと思うけど、試験終わって一安心して忘れたっていうか…はは、」
「はぁ......」
私は呆れた溜め息をつき頭を働かす。
雄英はヒーローの卵が育つ場所、どちらがそれに相応しいかを考えたら。
身を呈して私を守ってくれた彼だ。
私はポイントばかりを気にして、最後、彼を助けたのはなんとかなると思ったから。
思い返すと本当に私っていう奴は…...
「どちらが相応しいかはまだ聞いていませんが、この試験、私が落ちます。」
「な!!」
「彼は私を身を呈して守ってくれました。ヒーローになる資格があるのは彼です。」
これでいい。そう思った突如、隣に居た彼が口を開いた。
「その前に、俺の馬鹿な行動を知らずに助けてくれたのはコイツです!!俺が落ちます!!」
「アンタねぇ!!」
「お前だってヒーローになりたいんだろ!?」
「それに、もしお前が落ちたって、俺はこの先罪悪感を感じながら生きて行くことになる。それが嫌なんだ!!」
「そんなの、私だって…!!!!」
『落ち着けリスナー達!女子リスナー、さっきの説明もう一回頼むぜ!!』
私は息を整えプレゼント・マイクの言う通りにさっきの説明を言った。
「順位が同じ者が居た場合、どちらが優秀かを見定め、」
『そう!!どちらが優秀かを見定め......今回はな.........』
『どちらも優秀だったんだよ!!熱いね!』
「「へ?」」
「それって、どっちも…」
『合格だな!!』
「定員数はどうなるんだ!?」
確かに彼の言う通りだ。
雄英が定員数を無視したら一気に報道、更に落ちた人達からの批判も浴びるだろう。
『これは校長ともきちんと話して決めた結果だ!これからの対処はなんとかする、そのくらい二人はサイコーだったんだぜ!?二人で一つって感じで頑張れよ!!OK!?』
プレゼント・マイクの圧力に負け、私達は頭を混乱させたままただ頷くしかなかった。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「どっと疲れた…」
「俺もだ...」
受験の事もあるが、もう一つ、何故彼がまだ私の隣にいるのか。
帰ろうとしたら「俺も同じ道なんだ!」とか言われこの状況だ。
正直、あまり知らない人と帰るのは怖い。
黙々と足を動かしていると、彼がぼそりと呟いた。
「お前さ、戦ってる時と今の感じ全然違うよな!二重人格ってやつか!?」
「......は?」
「だってさ、なんか大人しいし、前髪で顔隠して...あ、顔は戦闘の時もゴーグルで隠してたか。でも、戦闘してる時の方が喋ってたし…あ、」
「もしかして、目を合わせるのが苦手なのか?」
そう言って、彼は私の前髪に手を伸ばした。
私は急に怖くなりその手を振り払う。
「他人だって言うこと、忘れないで。」
「俺達友達じゃねぇの!?」
「誰が友達って言ったの。じゃ、せめてクラスが別々だといいわね。」
ぽけぇとする彼に背中を向け、私は歩き出したのだった。
「クールな奴だなあ」
彼の関心が深まった事も知らずに。
暫く歩いているとある人から電話が来た。
電話が来るのは久しぶりなので少し緊張しながら耳に携帯を当てた。
全く、今日は心臓に悪い事ばかり起きる。
「もしもし?」
「......もしもし、ふうちゃん.........?」
ある人とは出久の事。
しかし出久の声に潤いは無く疲れきった声をしていた。
「出久?どうしたの?まさか......」
受験の事だろう。
そう考えるのが正しい。
「ふうちゃんに会いたいんだ。あの公園で待ってるね」
携帯から聞こえてくる通話が切れた音。
私は冷や汗を掻きながら公園へと向かった。
私は息を荒くしながらも公園に着き、出久の姿を探す。
辺りを見渡すとベンチに座っている出久の姿が目に入った。
「出久!」
私の声に反応した出久は嬉しそうな悲しそうな、そんな表情を見せた。
「ふうちゃん...」
慌てて出久の元に向かい、出久の手を握ると、彼は下を向いてしまった。
私は意を決して出久に聞いた。
「出久?受験のこと?」
「僕......」
逆に私の手が出久の手によって包まれてしまった。
体に熱がこもっているのが伝わってくる。
「受かったんだ......!!」
風が私の体をすり抜けた。
出久は大粒の涙を流し、笑顔をこちらに向ける。
熱い思いが一気に溢れてきて、私は腕を広げて出久を力強く抱きしめた。
「ふうちゃん!?い、痛い...!」
「良かった...」
「え?」
「本当に良かった...!!」
私まで涙が流れてきた。
そのくらい嬉しかったのだ。自分の事より出久が受かった事の方が。
だって私は頑張り続ける彼を見てきた一人の人間なんだから。
「...ふうちゃんがあの時、そのままで大丈夫って言ってくれたから。僕は受かる事が出来たんだ。」
「ありがとう。」
彼は私の背中を擦り心を落ち着かせてくれようとしたが、今の私にやっては逆効果。
更に涙を誘うのだ。
感謝を言いたいのは私の方。
出久がこの公園で私を助けてくれていなかったら、夢も希望も無かったのだから。
出久の凄い所を知っているから私は貴方にそう言う事が出来たんだよ。
もっと自分に自信を持って出久、貴方は、
最高のヒーローなんだから。
〜帰り道〜
「え、ふうちゃんも受かったの!?」
「なんで驚くのよ。」
「嬉しいよ!!嬉しいんだけどさ!ちょっと色々複雑で...」
「複雑?何が、」
「な、なんでもないっ!頑張ろうね!!」
「変なの、」
(ふうちゃんが受かった事は嬉しい。だけど、僕としてはここで成長してふうちゃんを守れるようになりたかった。ふうちゃんも一緒だったらきっと僕は今までみたいに守られてしまう。だってふうちゃんは本気を出せばかっちゃんと並ぶくらい強いんだから。せめてクラスがブツブツブツブツブツ)
(また何か考えてるわね、出久...)