荀シン(何故か変換できない)が恋姫的世界で奮闘するようです   作:なんやかんや

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感想ありがとうございます。
……けーりんが終わらない(;_;)


けーりん4

「さあ、荀兄妹仲直り大作戦を始めますわよー!」

 

文醜、顔良、郭嘉、程昱を前に袁紹が叫んだ。

 

「おーっ!」

「頑張りますー」

 

文醜と程昱が元気の良い返答を返す。

その様子に袁紹は満足そうに頷いた。

 

「あの、こんなことしていて大丈夫なのでしょうか? 随分と皆さん、忙しいみたいですけれど……」

 

生真面目な顔良が上機嫌な袁紹におずおずと尋ねた。

彼女達の背後では無数の官吏達が血走った目で走り回っている。

 

「大丈夫ですわ! 皆さんとてもよく働いてくれているじゃありませんか。少しくらい仕事をさぼった所で――」

「さ、サボるって今言いましたよねっ! 駄目ですよ、麗羽様! 真面目手に政務をこなさないとあの世にいる元皓さんに怒られちゃいますよ!」

「あ、あら、斗詩さん。た、たまには息抜きも大事ですわよ」

 

思わず漏れたという感じの本音に顔良が噛み付く。

対する袁紹も黙って言い負かされる性格の持ち主ではない。

言い争いを始める2人に文醜は手を頭の後ろで組みながらのんびりと欠伸をしていた。

 

「麗羽様は息抜きに政務をやっているからなあ。斗詩の奴もいい加減諦めればいいのに」

「ちょっと、猪々子さん! それはどういう意味ですの!?」

「れ、麗羽様、落ち着いてー! 文ちゃんもいい加減にしてよ!」

 

茶化すような文醜の言葉に袁紹が噛み付いた。

それを顔良が仲裁にかかる。

だが、それで矛を収める2人ではない。

姦しいという文字の通り、三人組の言い争いは中々終わりそうになかった。

 

「変わりませんねー」

 

程昱が呟いた。

昔から、この三人組は度々こうした言い争いをしてじゃれ合っていた。

それは程昱が冀州にいた時と変わっていない。

 

「変わる必要性がなかった、ということでしょう」

「なるほどー……確かにそうですね。でも、今は色々と変わらなければいけないのでは?」

 

郭嘉の呟きに程昱は皮肉を交えて返答した。

郭嘉は何も答えなかった。

発展著しい冀州であるが袁紹はあまり政務には関わってこなかった。

もちろん、重要な決定の裁可等は行っていたが、舵取りを行っていたのは田豊達や元清流の人間であった。

そして、日々の行政を支えていたのは無数の官吏達だったのだ。

それで、冀州行政は上手く回っていた。

それは過去の話となりつつあるのだが。

 

「もうっ! こんな事を言うために集まったのではありませんわ!」

 

文醜、顔良と漫才を続けていた袁紹はしばらくすると目的を思い出したのか、言い争いを打ち切った。

 

「私達が集まったのはあの兄妹を仲直りさせるためですわ! もちろん、皆さんも同じ志を抱いているのでしょう。いわば、私達は同志。その同志同士で争っていてはどうしようもありませんわ!」

「麗羽様が余計な一言を言わなければこんなに話はこじれなかったと思うんですが」

「文ちゃん!!」

 

袁紹の言葉に、余計な一言を呟く文醜を顔良が窘める。

幸いにして、袁紹は文醜にこれ以上反論する様子は見せず、不毛な言い争いは幕を閉じた。

 

その様子を見ながら、郭嘉は『同じ志』という袁紹の言葉に内心で首を傾げていた。

袁紹の立場に立つ限り、あの兄妹を仲直りさせる利点が郭嘉には思い浮かばない。

兄妹自身の為にはなるのかもしれないが、そうした人助けは余裕のあるときにやりたいものだ、と郭嘉は思う。

とは言え、自分がどんな状況にあっても、目に写った相手には手を差し伸べる袁紹である。

仲違いする兄妹の様子が袁紹の視界に入ってしまった以上、彼女に行動を思い留まらせることはできないだろう。

郭嘉は小さく溜息を付いた。

 

「さて、奉孝さん。兄妹仲直りのための作戦を立案して皆さんに説明しなさい」

「ちょっ、麗羽様、それは唐突すぎやしませんか! 郭の姉御だってそんないきなり話を振られたって困っちまいますよ!」

「と言うか、麗羽様、何にも考えてなかったのですね……」

 

袁紹の唐突とも言える言葉に文醜と顔良は呆れた様な表情を見せた。

側近からの駄目出しに袁紹は少々狼狽えた。

 

「ちょっ、2人共、何を言うのですか!? 私は孟卓さんから奉孝さんが兄妹の様子をよく知っていると聞いたのですわ! 餅は餅屋、と言うではありませんか」

「それにしたって限度がありますよ、麗羽様。どうせ実行はあたいら任せなんですから、作戦立案まで人任せにすると、麗羽様のやることが無くなっちゃうじゃないですか。ただでさえ、あたいらは忙しいですから」

「文ちゃん!! そんなにはっきり言っちゃあ駄目ですよ!!」

 

普段と比べて袁紹に対して辛辣な文醜と顔良である。

特に顔良は文醜を諌めるふりをしながら袁紹の傷口に塩を塗りたくっていた。

彼女達の目の下には隈ができている。

ここ最近の激務の影響だ。

袁紹幕僚が数多く亡くなったが、その分の仕事が彼女達にも伸し掛かっているのだ。

あの文醜でさえ、ここ最近は遊びまわる暇もなく、朝から晩まで書類漬けだというあたりに、残された者達に伸し掛かる負担の重さが見て取れる。

そんな最中に、袁紹の思いつきに振り回されれば文句の一つも言いたくなるものだろう。

 

「本初様」

 

もう少し、袁紹がうろたえる様子を見ていたいと思わないでもなかった郭嘉だが、あまり時間を無駄にしてもしょうがない。

郭嘉は兄妹の関係改善のための策を述べることにした。

 

「作戦を説明してもよろしいでしょうか?」

「ほ、ほら、猪々子さん。奉孝さんはしっかりと作戦を立案して見せましたわよ!」

「まあ、麗羽様にやれと言われりゃあ、やらないわけには行きませんからね」

 

水を得た魚のように袁紹に文醜には冷めた口調で答えた。

郭嘉は2人の諍いを無視して話し続ける。

 

「まず、作戦において鍵を握るのは本初様です。昨日の様子を見る限りにおいて、兄妹の関係改善の為には荀大老師殿の心を変えなければいけません。その説得をするための適任者は袁本初様をおいて他にいないでしょう。大老師殿は本初様に特別な感情を抱いているように見受けられます」

「おーっほっほっほっ!! 聞きましたか、猪々子さん。当然ながら私が作戦の要。人任せなどとは言わせませんわ!」

「同時に、2人が険悪にならずに話し合うための場を設けることが重要でしょう。皆さんの様子を見る限り、昨日の試みは上手くいかなかったようですが、同じ轍を踏まないためにも、二人きりという状況は避けるべきでしょう。更に、状況に応じて、兄妹の仲裁をできる人間が必要だと思います。と言っても、立場がありますから、双方からそれぞれ人間を出す、というのが妥当ではないでしょうか」

 

郭嘉はそう言って程昱へ視線を向けた。

何時も通りの眠そうな顔で程昱は答える。

 

「そうですねー。桂花ちゃんには私が付き添います。昨晩、桂花ちゃんは喧嘩しちゃったみたいですから、2人だけだと気まずいでしょうし。そちらで1人、荀大老師を抑えられる方をお願いしたいのですが」

「……なるほど。まあ、こちらから何人送るかは本初様が最終的に決めるべきだと思います。さて、繰り返すようですが兄妹を仲直りさせるためには大老師殿をその気にさせなければいけません。昨晩喧嘩したならば、兄妹2人が冷静になるまで時間をおいた方がいいですから、2人を会わせるのは夕方以降にしましょう。本初様にはそれまでに荀大老師殿の説得をお願いしたいのですが。これは本初様にしかできないことです。私達はその間に、2人を会わせるための場所を用意しておきます」

「おーっほっほっほ! そこまで言われてはこの袁本初、やらないわけにはいきませんわ! 任せなさい! 見事、兄妹の仲直りを実現させてみせますわよ!」

 

郭嘉の言葉に袁紹は上機嫌に頷くと、ごきげんよう、と言って踵を返して立ち去っていった。

友若の下へ向かったのだろう。

袁紹を見送りながら郭嘉の頭脳は既に先を見据えていた。

 

これで、本日、友若はまともに動けないだろうから、いくつかの政策の裁可が滞るはずである。

その中には先の戦いに参加して負傷した兵士達の手当の財源に関するものがある。

もともと、負傷兵に見舞金を支払う制度は幽州から義勇兵の指揮官劉備の提案を採用した友若が強引に始めたものである。

その財源には友若を始めとした袁紹の側近や豪族達、名士達から徴収した資金――名目上は寄付金である――が当てられていた。

 

これは、見舞金自体が当初想定されておらず、急な話であったため、冀州行政の年度予算にねじり込むことが難しかったためである。

官軍との戦いにあたっての特別予算は、戦争の為の兵糧集めや弩や矢を始めとした武器の調達に当てられており、殆ど残っていなかったのだ。

いくら友若と言え、戦争後の処理と、田豊らの穴埋めの為、血走った目で奔走している官吏達に対して追加の予算を組むように命じる気概はなかった。

友若は空気がよめない訳ではないのだ。

普段無視しているだけである。

 

とは言え、迂闊に劉備の依頼を断って将来の覇王の1人の心象を悪化させるのは避けるべきだと友若は考えた。

既に友若や袁紹は覇王の1人である孫策(?)からは恨まれており、曹操とは現在進行形で敵対関係にある。

ここで最後の覇王まで敵に回したらどうしようもなくなる、と友若は思った。

だから、友若は見舞金制度を何とか実行するために冀州行政予算以外から見舞金のための資金を調達することにしたのだ。

具体的には金持ちの懐である。

 

新たな資金徴収という印象を避けるために、『万民の間で勝利の喜びを分かちあう』という名目で始まった見舞金支給制度は、当初から非難轟々であった。

官軍との戦いで一応は勝利した袁紹側であるが、それは防衛戦における勝利である。

つまり、勝利によって袁紹側は土地や金銭などの利益を得る事はなかった。

戦いの為に私兵を出した豪族達や資金を拠出した名士達にしてみれば、袁紹の為に十分に貢献したにも関わらず、更に財政負担を求める友若に怒り心頭だった。

友若を含む元清流派閥の人間達の負担金が豪族達や名士達よりも少ないという噂が広まると、この制度に対する批判は激しさを増した。

珍しいことに、友若に関する部分においてこの噂は事実ではなかったが、常日頃の友若の吝嗇家ぶりを知っている人間達はあっさりとこの噂を信じた。

妙な落書きには金を惜しまない友若だが、その分、日頃の財布の紐の硬さは有名だったのだ。

実際、仮に劉備の提案でなければ、友若が自腹を切ることはなかっただろう。

更に言えば、実権を抑えている元清流派閥の人間達はなんだかんだと理由を付けて資金の拠出を回避していたことは事実であり、反対者の勢いは留まる所を知らなかった。

豪族達は負傷兵など存在しないとまで言い張る始末である。

これには友若やこの制度の運用を任された官吏達も為す術がなかった。

友若は勢いに任せて強行できないかと考えたが、豪族達や名士達をこれ以上追い込めば彼らが強硬手段に出る可能性があると諭されては諦めるしか無かった。

だが、劉備の心象悪化をさせかねない結果は避けなければいけない、と友若は考えた。

 

そのために、友若は当初諦めた冀州行政における予算獲得を目指した。

一通りの戦後処理と抜けた人員の穴埋めを終えた官吏達には若干の余裕があったこともあり、辛うじて予算の草案は編成された。

 

徹頭徹尾見舞金制度に反対している名士達に対して、途中から豪族達が協力的になったことも大きい。

もちろん、これは友若達と豪族達の和解を意味しないし、負傷兵に対する博愛精神の発露でもない。

豪族達が憎き友若と手を結んで見舞金制度に賛成したのは、この制度が新たな利権となり得たからである。

 

そもそも、この見舞金制度が考案された当初、負傷兵の申告は兵士達を率いてきた人物が行う事になっていた。

例えば、袁紹に私兵ならば、袁紹配下の担当官が負傷兵の数を数えるし、豪族達が率いて来た兵士ならば、それぞれの豪族がその数を申告するのである。

そして、申告された負傷兵の数を元に、見舞金が袁紹や豪族達に割り振られるのである。

同時に、負傷兵の数に応じて、豪族達には『寄付金』の支払いが求められるのだ。

だが、反対意見に押される形で、この制度の財源には冀州行政から予算を拠出する方向で話が進んだ。

この時、急いで話をまとめようとしていた友若の焦りもあり、財源以外に関しては特に手が付けられていなかった。

特に、負傷兵の数を自己申告に任せるという部分についても、何の変更も加えられていなかったのだ。

 

結果として、この見舞金制度の青写真はその姿を変えた。

負傷兵の数を申告するのが豪族達である以上、その数を水増しは容易である。

一応、負傷兵の数を調べるための役割が下級官吏に割り当てられはした。

だが、実際の所、根強い反対も相まって官吏達に与えられた権限は微々たるものだった。

更に、官吏による調査はその数を過小報告していないかを調べるためのものである。

つまり、報告された負傷兵の数が極端に少ない場合に調査を実行する権限が与えられるのであって、負傷兵が多い分には何もできないのだ。

負傷兵の数を過大申告しても支出が増えるばかりで、豪族達には何の利点もなかったのだから、それで問題はなかった。

 

だが、その負傷兵に支払われる見舞金は当初予定されていた自己負担ではなく、冀州の負担になると話は全く別になる。

極端なことを言えば、自分が率いて来た兵士達全員が負傷したことにすれば、その分の見舞金が豪族に支払われるのだ。

もちろん、見舞金を全て着服すれば流石に問題となるだろう。

あくまでも見舞金という名目で与えられた資金なのだから。

だが、兵士達に一部を渡して残りを懐にしまうことは容易い。

豪族達はそう考えただろう。

そして、意外でもない事だが豪族達はあっさりとその利益に飛びついた。

当初、見舞金制度に協調して反対していた名士達を裏切る事の意味を殆ど勘案することなく。

 

結局のところ、豪族派閥、名士派閥が元清流派閥にとって厄介なのは、彼らが団結して敵対してくるからである。

逆に言えば、豪族派閥と名士派閥で連携が取れていなければ、権力を牛耳る元清流派閥の敵とはなり得ない。

それを理解しているからこそ、豪族達と名士達は手を組んでいた。

しかし、それは共通の敵を打ち破るための選択であり、両者の間に親密な関係が存在するわけではない。

むしろ、本質的に豪族達と名士達は相容れない関係にあるのだから。

そして、一方が自らの利益のために他方を裏切れば、果たして協力関係が続き得るのか。

 

この程度の餌で飛びつく相手にはこの程度の策で十分なのだ、と郭嘉は思う。

郭嘉は友若の一連の行動を豪族派閥と名士派閥の分離を狙った策であると考えていた。

さしもの郭嘉と言え、友若の行動が劉備の歓心を買おうとしてのものだとは思わなかったのだ。

もちろん、友若の劉備に対する態度から、あの肉体や性格に対する多少の下心はあるかもしれないとは考えていた。

だが、友若が劉備の歓心を買えるかで今後の生死が決まると思い込んでいるなどとは夢にも考えもしなかったのだ。

むしろ、友若の劉備に執心している様子には豪族達に余計な猜疑心を引き起こさないための演技が混じっていると郭嘉は考えていたほどである。

友若憎しでは一致する豪族達である。

見舞金制度が友若からの体の良い和解金だと判断すれば賛成に回ることはなかっただろう。

男好きのする体の劉備という分かりやすい理由があったからこそ、豪族達は見舞金制度を考えの足りない友若の失策だと判断し、いけ好かない男を出し抜く絶好の機会だと嬉々として賛成に回ったのだ。

 

ともあれ。

袁紹が友若の下へ向かったことで、まず間違いなく豪族達が熱心に賛成していた見舞金制度の予算裁可が遅れることになる。

ここで、豪族達、名士達に恣意的な情報を流すことで彼らの対立を一層煽ることができる、と郭嘉は判断した。

そして、それは郭嘉が一定の影響力を確保していくためにも、袁紹配下の権力闘争の勝敗を明らかにして一定の区切りを得るためにも役に立つことだ。

袁紹と友若が政務に当たれなくなった途端に行政が進まなくなる点は冀州の重大な問題だが、今回の機会は存分に活用しなければならない。

郭嘉はそう考えた。

 

「すげえ!」

 

文醜が郭嘉を見て言った。

タイミングの良さに一瞬、内心の考えを読まれたのではないか、という考えが郭嘉の脳裏に浮かぶ。

ただの考え過ぎだとすぐに切り捨てたが。

文醜は脳天気そのものと言った表情で郭嘉を見据えている。

 

「郭奉孝っていうのか? あんたすげえなあ! あの麗羽様を丸め込むなんて!!」

「は、はあ。どうも」

 

郭嘉は気の抜けた返事を返した。

袁紹を丸め込むということなら別にそれほど難しいことではない。

そもそも、文醜自身も良くやっている事だ。

立場や性格により誰にでもできる訳ではない。

だが、程度の差はあるにせよ袁紹を丸め込んで説得できる人間は他にも若干名いるのだ。

……数名しか袁紹を抑えられる人間がいない、という言い方もできるが。

文醜は郭嘉をその数名に加えたのだろう。

そして、それを態々口に出す文醜の目的は、恐らく――

 

「張姉御から郭嘉っていうできる奴がいるって聞いていたけど、大したもんじゃないか」

「文ちゃん!!」

 

上機嫌で話し続ける文醜に顔良が制止の声を上げた。

付き合いが長いだけあって、顔良は文醜の次の行動を予測して見せたのだろう。

郭嘉はその様子に自らの予想が正しいだろうという確信を強め、文醜の次の言葉を待った。

 

「いやー、それで言い難いのだけどな」

「なんなりと、文将軍」

「い、いや、文ちゃんの言葉なんて聞かなくていいんですよ」

 

躊躇する様子を示す文醜に郭嘉は静かに続きを促した。

その言葉に気を良くしたのか、文醜は笑顔を浮かべて口を開いた。

 

「い、いやー、それで、仕事のできる郭奉孝さんにあたいの分もやってもらいたいかなー、なんて。あ、あははは。いや、荀の兄貴の下へ向かった麗羽様が気になって仕方ないんでさー」

「……分かりました。権限を幾つかお借りできるのならば、文将軍の政務は代行しておきましょう」

「ぶ、文ちゃん! いい加減にしないと私怒るよ! 郭奉孝さんだって、そんないきなり言われても無理に決まっているじゃ……え?」

 

文醜と顔良は驚きを示して郭嘉を見た。

 

「だ、大丈夫なんですか? 文ちゃんが今やっている政務って昔やっていたような花占いなんかじゃなくて、兵士の賞与とか、兵站の補充とか面倒なものばっかりなんですけど……」

「お、おい、斗詩! 余計なことは言わなくていいって! それじゃあ、郭の姉御! あたいの仕事は頼んだ! あたいの名前は好きに使っていいからな―!!」

「ちょっ!? ぶ、文ちゃーん!!」

 

袁紹が逆賊と名指しされていなかった頃、政務を行う文醜は何時も暇そうにしていたものである。

その暇そうな様子に、文醜の仕事は椅子を温めることだとか、占いをすることだ、という悪意ある噂が流れたこともある。

袁紹の寵愛を受けているからこその文醜の立場をやっかむ人間はそれなりにいるのだ。

友若ほど熱烈に心を向けられているわけではないが。

しかし、本当に文醜が花占いをしていたとは。

郭嘉は悪い意味で驚愕した。

 

もっとも。

郭嘉は思い直す。

当時の袁紹私兵は3万程度に過ぎず、更に言えば、田豊や沮授等が給金や物資を取り仕切っていた。

だから、兵を率いる指揮官でしかない文醜には特に書類仕事をする必要がなかった訳であり、政務に携わる彼女が暇を持て余していたということは別におかしいことではないのだ。

郭嘉はそう考えて、気を取り直した。

そして、郭嘉が我に返るよりも前に、文醜は既に走り去っていた。

 

「……行っちゃった。あの、郭奉孝さん、本当に大丈夫なんですか。厳しいようなら文ちゃんを呼び戻しますけれど」

「まあ、問題はないでしょう」

 

顔良の提案に郭嘉は眼鏡の縁を軽く持ち上げながら答えた。

事実である。

文醜が一日かけて行っている程度の仕事であれば、郭嘉は4半刻程度の時間で十分に終わらせることができる。

それほどまでに、郭嘉の能力は隔絶しているのだ。

 

「もし差し支えなければ、顔将軍の政務も私が行っておきましょうか?」

「え!? そ、そんな、悪いですよ!」

 

郭嘉の提案に顔良はわたわたと手を振った。

その様子を見ながら、顔良は本当に人が良い、と郭嘉は内心で思った。

顔良は郭嘉の提案を善意からのものだと信じている。

郭嘉が顔良達から実権を奪おうとしているという類の疑いを些かも抱いていないのだ。

 

これは友若や文醜にも言えることだが、彼らは自らの権力や名声に驚くほど執着を見せない。

もちろん、目の前に転がってきた利益は迷いなく手にする彼らだが、それでも、彼らはそれ以上に優先するものを持っている。

例えば、友若は楽ができるなら自らの権力に制限がかかることを気にもしないし、文醜や顔良達は袁紹と共にいる時間を優先する傾向にある。

もっとも、友若に関して言えば、若干変化の兆しが見られるのだが。

ともかく、だからこそ、富、権力豪族達や名士達は友若や文醜達が憎くてしかたがないのだろう。

豪族達、名士達が何にもまして強く求めるこれらの栄光を、権力を、袁紹の寵愛を手に入れていながら、大した価値を見出さずに放り投げ、それを当然としている友若達は存在自体が受け入れ難いのだ。

 

「大丈夫です。幸いにして、手の空いている優秀な部下もいますし、顔将軍の政務を代行することは十分可能です。私としても、顔将軍に本初様達を抑えていただけると助かります。万が一、荀大老師殿が倒れてしまう様な事になれば、それこそ大変ですから」

「……ああ、そうですね。でも、本当に大丈夫なのですか?」

「問題ありません。顔将軍としても、本初様や文将軍の様子が気になるのでは?」

 

郭嘉の言葉に顔良は躊躇を見せながら頷いた。

そして、お願いします、と頭を下げると懐から取り出した顔良の朱印を郭嘉に渡して走り去っていった。

 

「……いやはや、こうして目にしても、中々信じがたい光景なのですよー」

「……」

 

程昱の呟きに郭嘉は無言で答えた。

程昱と郭嘉は旧友だ。

だからこそ、あまり程昱と話し込む訳にはいかないのだ。

袁紹が強制するといった特別な理由がない限り、明日には武器を交えるかもしれない仮想敵の使者と親しくする訳にはいかない。

それをすれば、必ず郭嘉が曹操とつながっていると騒ぎ立てる者が出てくるだろう。

そして、郭嘉が力を持てば持つほど、弾劾の声は大きくなる。

そのような浅慮な声に郭嘉は足を引っ張られるわけにはいかない。

 

袁紹配下の人間で、不満を溜め込み続けた豪族達、名士達のガス抜きを適度にしつつ、強力な統制を実現できる立場と能力を持つ者は郭嘉が知る限り自分しかいない。

そして、それができなければ争いは間違いなく激化し、袁紹の権勢を傾けるだろう。

それがどれほどのものかを予測することは困難だが、その結果として袁紹の手による天下の安寧が遠のくことは疑いの余地がない。

その時、犠牲になるのは力のない民草だ。

だからこそ、郭嘉は袁紹の天下のために邁進する。

それこそが今現在、最も犠牲を少なく、滅びかけているこの国の万民を救うことになるからだ。

郭嘉はそう思っている。

 

「なるほど、稟ちゃんも決めたんですね」

「……ええ」

 

郭嘉の態度からその内心を読んだのか微笑む程昱。

その言葉に郭嘉は短く答えた。

 

「……風は、――」

「……」

 

暫くの間、郭嘉を無言で見つめていた程昱は歌うように囁いた。

 

「一度割れた碗は継ぎ接ぎするのではなく、粉になるまで打ち砕いて、造形から作りなおすべきだと思うのですよー」

「……それはあまりに手間では? そもそも本当に新たに器を作れるかも不確でしょう」

「ええ、そうなのでしょう。でも、風はそうするのです……では、失礼するのですよ」

 

郭嘉に向けて静かに微笑むと程昱は踵を返して立ち去っていった。

1人残された郭嘉は暫く、その場に佇んでいた。

曹操孟徳。

郭嘉は心のなかでその名前を口にした。

直接曹操を目にしたことのない郭嘉。

しかし、程昱や荀彧の様子を見れば、その傑物ぶりは容易に想像できる。

伝え聞く逸話は誇張を抜きにして曹操の天才性を明白に示していた。

友若という鬼才を除けば、曹操は当代最高の政治家であるだろう。

だからこそ、袁紹が天下を握るための最大の敵となるだろう、と郭嘉は無条件に確信できた。

袁紹の臣下と自らを規定するのならば、郭嘉は如何にして曹操を打ち破るかを考えなければいけない。

 

そもそも、袁紹と曹操では目指す国の在り方が全く違う。

袁紹は生まれつき全てに恵まれていた。……頭の出来はともかくとして。

三国一の名門で生を受け、名臣と名高い母や親戚を持ち、幼い頃から従者に囲まれて育ったのである。

それが袁紹の人格形成に多大な影響を与えたことは疑いようもない。

その袁紹が理想とする国のあり方は――あくまでも郭嘉の想像であり、袁紹が実際にどの程度まで具体的に考えているかは不明だが――自らを盟主とした名士達や豪族達を巻き込んだ連合だ。

その連合は漢帝国という碗に入った亀裂を塞いで、存続させることになるだろう。

誤解を恐れずに言えば、袁紹にとって袁家や自らに従う名士達、漢帝国は彼女が母親達から受け継いだ『財産』だ。

そんな袁紹にしてみれば、『財産』である漢帝国を守っていくことは当然の話だ。

なるほど、袁紹が権力を握れば、皇帝は今以上に力を失い、宦官や外戚の力も制限されるだろう。

しかし、それでも漢帝国は生き残る。

皇帝の権威失墜とそれに伴う権力の分散という問題をそのままに。

袁紹には強力な国家のために他の名士達や豪族達を排除しようという意志はない。

名士達や豪族達も袁紹にとって『財産』として守るべき側にあるのだから。

それが正しいか、それが民の為になるのかどうかはさておき。

 

一方の曹操。

曹操もまた漢帝国の名門に生まれた。

袁家程ではないにせよ、祖父の代から蓄えた財はあるし、人脈も持っている。

しかし、曹操の生まれた家は宦官の家である。

『宦官の孫』という事実は常に曹操の不利に働く。

だから、曹操は常に打ち勝って獲得しなければならなかった。

袁紹が生まれながらに栄光を友としていたのに対して、曹操は自らの手でそれを勝ち取らなければならなかったのだ。

そのための才能を持って勝ち続けた曹操が、栄光とは勝ち取るべきものだ、と考えるようになるのは自然な事だろう。

郭嘉の想像になるが、曹操にとって国とは血統を理由に無条件に引き継がれるものでは決してない。

それは、曹操が才能のみを重視し、生まれや縁故を無視して人材を集めていることからも容易に推測できる。

そして、程昱の発言を信じるならば、曹操は漢王朝の先を見ている。

長い年月を経て、複雑に入り組んだ利害関係に縛られた漢王朝自体を打ち壊し、慣習に縛られない新たな国家を樹立することを曹操は考えているのだろう。

その考えは一理あると郭嘉は思う。

 

漢帝国は豊かな土地から得られる多額の税を辺境の防衛に投じていた。

漢帝国が広大な土地を支配していたのは、それだけの土地を支配する必要があるからだ。

この国の北には遊牧騎馬民族、南西には南蛮勢力がそれぞれ陣取っている。

これらの異民族に対向して、侵略を防ぐためには中原で得られる力を結集しなければならない。

そして、それを成し遂げたからこそ、漢帝国に住まう万民は平和を享受することができたのだ。

そして、遊牧騎馬民族との融和が進みつつある昨今においても、漢帝国がこれまで採ってきた戦略の意義は失われていない、と郭嘉は考える。

そもそも、何百年という時を戦い続けてきた相手と高々十年程度友好的な関係を築けたから防衛を怠る方が問題だと郭嘉は思う。

騎馬民族は数多くの部族に分かれており、決して一枚岩ではないのだし、交易によって力をつけた異民族が中原へ牙をむかない保証はどこにもないのだ

 

袁紹が目指す天下では、漢帝国の分権化は更に進むだろう。

名士、豪族の連合と言えば聞こえはいいが、実際には地方が独立色を強めることは間違いない。

漢帝国全土が上手く行っていれば良いかもしれない。

だが、特定の地方で重大な問題が生じた場合、それを解決するために力を結束することが困難になる。

この国は大きすぎるのだ。

他の地方の問題に対して直接の利害関係を持たない豪族達や名士達が熱心に取り組むことは考えにくい。

そもそも、一般的な人間というものは見ず知らずの相手に対して身近な相手と同じように親身にはなれないものなのだ。

そして、人間全体を見た時に、先を見通す能力の持ち主が如何に少ないかを郭嘉は経験から嫌というほど知っていた。

だが、例えば異民族の侵攻を辺境が防ぐことができなければ、次に辺境となるのはその内側にある土地に住む人々だ。

他所の問題だからと無関心を決め込めば、最終的にその問題は自分達の上に降り掛かってくる。

 

だからこそ、この国には一定以上の権力の集中が必要となるのだ。

総力を結集しなければ振りかかる厄災を満足に防げなくなってしまうのだから。

 

そうした事を考えた時に、曹操が目指しているだろう新たな国家の樹立と言うのは1つの回答足り得る。

漢帝国という枠組みの中で、独立色を強める各州をまとめ上げることは難しい。

複雑怪奇に入り組んだ制度や慣習が常に急激な改革を妨げるからだ。

巨大な漢帝国はその巨大さ故に方針転換が困難なのだ。

地方が独立色を強める現在の流れを変えることは郭嘉をしても極めて困難だと言わざるを得ない。

だから、柵と慣習に雁字搦めにされた現状を断ち切る快刀は万民のことを思えば、1つの選択肢に数えられる。

 

ただし、その快刀が本当に全てを断ち切るだけの鋭さを持っている事が前提だ。

漢帝国を滅ぼし既存の問題を全て断ち切ったとしても、圧倒的な力を持って速やかに秩序を回復させることができなければ、それはむしろ万民を傷つける結果になる。

国家という秩序を完全に失った時に何が起こるか、それがどれだけ力なき民の命を奪うかは歴史が教えてくれる。

袁紹によって行われた経済改革の成功によってこの国にある程度の余裕が生まれた今、秩序の喪失というリスクを犯してまで漢帝国を滅ぼす事は間違っている、と郭嘉は思う。

程昱はそれでも曹操に仕える道を選んだ。

そして、郭嘉は曹操の考えに一理を認めながらも、袁紹に従い続ける事を選んだのだ。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「……いらっしゃいませ」

 

太陽が傾き始めた頃、呉服店の店主は笑顔を作って1人の客を迎え入れた。

その口元はよく見ると引きつっており、目元はピクピクと痙攣していた。

典型的な作り笑いである。

 

商売で生計を立てる者にとって、客とは不可欠の存在であり、通常ならばその来訪は喜ばしいものである。

当然ながら、多くの顧客が頻繁に足を運び、彼らに店舗が愛される状況は商売人にとって目指すべき境地である。

だが、定義上は『客』という括りに入るものの、決して喜ばしくない客というものも確かに存在するのだ。

そして、冀州最大の呉服店を営む店主にとってその日来訪した1人の客はできれば付き合いたくない手合の存在だった。

確かにこの『客』は利益をもたらさない訳ではない。

『客』にとってもこの呉服屋が利益を出すことは望ましいはずだからである。

だが、叶うことなら撮み出したいとすら店主は思っていた。

 

この『客』は、何時も、何時も平気で無理難題を押し付ける。

時として利益すらもたらさずに。

しかし、店主にはこの客を拒めない明確な理由があった。

この『客』、友若はこの店の過半数の株式を保有しているのだ。

それは冀州の法令上、この呉服店で最大の権限を有している人物が友若であることを意味している。

つまり、友若の一言で、店主は自らが汗水を垂らして発展させたこの店を失う事にもなりかねないのである。

当初はとても良い資金集めの手段だと思っていた株式制度だが、冀州の呉服商として大成功を収めた今となっては足枷となってしまった、と店主は嘆く。

一体どんな無理難題を押し付けられるのか。

如何なる言葉を掛けられても、冷静さを失わないように店主は内心で身構えた。

 

「女性用の頭巾を今日の夕方までに作ってくれ。布地はそうだな、あそこにあるあの翡翠色の奴がいいな。意匠として犬……いや、猫の耳を着けてくれ。大きさは――」

「――っ、ちょっ!? ちょっと待って下さい! いくらなんでもそれは無茶です!!」

 

だが、友若の言葉は店主の想像を遥かに超える無理難題であった。

そして、友若の言葉には今までにない強い意志が感じられた。

しかしながら、その言葉は余りにも無茶であった。

その事に我を忘れて、店主は叫ぶ。

 

「当店の職人は予約のあったお客様方の服を作るために皆仕事があります!」

「関係ない。こっちを優先してもらう」

「無茶を言わないで下さい! 当店では予約を承ってから服を作っております! 当店は盛況でして、普通なら予約してから半年程度は待って頂いているのですよ! 職人達は一人残らず、毎日朝から晩まで働いております! そ、それをっ!! 布地にしても、当店に置かれているものは全て使用先が決まっているのですぞ!!」

 

動転した店主を友若は冷たい目で見つめた。

この店の発展は自分の助力によって成されたと友若は思っている。

実際、友若はこの店を発展させるために陰になり日向になり支援をしてきた。

例えば、WAFUKU等友若がこの世界に齎した独自のデザインをこの店の職人に提供した。

同時に、服のデザインに関する特許制度を作って冀州においてWAFUKUの独占を実現したのだ。

友若にしてみれば、この店主は友若の『財産』であるこの店の経営を委託されている雇用者であり、もっと言えば小間使いに過ぎない。

株式の過半数を保有する友若がその気になれば、この店主を首にすることもできるのだ。

立場をわきまえない部下の物分りの悪い態度に友若は苛立ちを隠さなかった。

 

一方、店主にしてみれば友若の態度はたまったものではない。

確かに友若はこの店を作るにあたって株式制度を通して資金援助を行ったし、服のデサインに関するアイデアを提供した。

だが、汗水たらしてこの店を実際に発展させたのは店主や雇っている職人たちであって、断じて友若ではないのだ。

友若には既に援助された資金を遥かに超える金を配当制度に基づいて渡しているし、流行服のデザインも移行しつつあり、友若が提供したデザインは過去のものになりつつある。

株式制度だかなんだかは知らないが、未だにこの店を自分のものであるかのように振る舞う友若の態度に店主は内心で憤りを覚えていた。

とは言え、冀州において袁紹に次ぐ圧倒的な権力を持った友若に対して、一介の商人が真正面から抵抗できるわけがない。

そもそも他の地域では商人達は大した理由もなく財産を没収されたり、皆殺しにされたりしている。

相対的には冀州は商人達にとって天国とさえ言えるのだが、その事実は店主を慰めることはなかった。

 

「せ、せめて、一週間、いえ、3日は頂けませんかっ! 布地の手配や職人達の時間調整をしなければなりませんので……!」

「何度も言わせるな! 今日の夕方までだ!」

 

予定をやり繰りすれば辛うじて作り出せるかもしれない時間。

そのギリギリを提示した店主に対する友若の返答はいささかの妥協も存在しなかった。

 

「理解していないようだからはっきり言っておくが、これは命令だ」

 

早口に言葉を続ける友若に、店主は悔しさに唇を噛み締めて体を震わせる。

それでも、店主は抗弁を止めなかった。

店主にはこの店を守り、発展させていく意志と義務があるのだ。

明らかに利益が見込めないどころか損失の出る友若の言葉に唯々諾々と従うわけにはいかない。

店主はそのように考えた。

 

「で、ですが、納期通りに服を提供できなくなってしまいます! 違約金の問題もありますし、予定通りに商品を提供できなければお客様の怒りを買うでしょう! そうなれば、お客様が他所の店へと流出しかねません!」

「……別に大した損害じゃあないだろう」

「――っ!」

 

飽々とした様子で答える友若に店主は絶句した。

友若の言葉の端々にはこの店がどうなろうと知ったことではない、という意図が透けて見えた。

実際、友若にしてみれば、優先順位は明らかである。

あの妹、バケモノのご機嫌取りができるならば、多少資産を失った所で仕方がないと割り切っているのだから。

いや、友若は内心で密かに抱いた目的を達成するためなら、築き上げた資産を全て失っても良い、とすら思っていた。

吝嗇家として有名な友若とは思えない発想である。

店主にとっては何の慰めにもならなかったが。

 

斯くして、店主はしぶしぶと、本当に嫌々ながらも友若の命令に従う。

その結果として生まれる損失に頭を悩ませながら。

それ以外の選択肢は店主には与えられていなかった。

頭巾の細かい仕様について大まかな説明を終えた友若は、聞き分けの悪い店主が行動を開始したことを確認すると夕刻に出来上がった品を取りに来る、と言い捨てて店を後にした。

 

美術品や調度品、宝石類や菓子類等を夕刻までに取り揃える事を目標としている友若には向かわなければならない店が幾つもあったからである。

暇をしていた袁紹達は美術品を見て回っているはずであるから、取り敢えず菓子類を取り揃えねば、と友若は考え、歩き出した。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

袁紹の説得により、友若は荀彧と向き合って話し合うことを決心した。

今後どのように動くべきかの決心はつかなかった友若であるが、何れにしても、曹操側と話し合っておくことの重要さは理解していた。

友若は冀州において、曹操のことを最も高く評価している人物の1人である。

と言うより、友若にとって曹操が恐ろしいのは火を見るよりも明らかな法則ですらあった。

友若のうろ覚えの知識によれば、曹操は今後訪れる戦乱の世において覇を唱える人物の1人である。

更に、曹操は数百年先の技術であるはずの銃火器を実現するようなバケモノだ、と友若は思っている。

――穴だらけの歴史的知識しか持たない友若はこの時代が西暦で十一世紀だと勘違いしている。そして、この世界では服飾関係でやたらと技術が進んでいたこともあり、友若の勘違いは修正されないままであった。

 

確かに、同じくバケモノである荀彧を通して友若の転生チート知識が流れたのだろう。

だが、それを考えても、同じ覇王となるはずの劉備などと比べて曹操は卓越しているように友若には思われた。

何れにしても、曹操恐るべし、というのが友若の偽りなき本音である。

 

そして、曹操を高く評価した結果、距離を置きたいという発想に友若は至っていたのである。

だが、いつまでも逃げ続けるわけにはいかない事は友若も理解していた。

袁紹をこれからも支えていこうと言うのならば、友若は曹操に対して何らかの手を打たねばならない。

曹操が覇王を目指すのならば、何れ袁紹と対峙することは間違いないからである。

 

曹操に対してどのように対処するにしても、その為人を知っておくことは重要だ。

敵を知り己を知れば百戦危うからず、という言葉もあるのだ。

そして、曹操の腹心である荀彧の知見は未来の覇王を知るために役立つだろう。

友若が渋々ながら荀彧と話し合う事を決めた背景にはそんな考えがあった。

 

とは言え、あのバケモノ、荀彧と直接向き合う事は考えただけで友若には恐ろしい。

昨晩の荀彧の態度から考えれば、あの妹は自分を嫌ってはいない可能性もある。

とは言え、確証のある話ではない。

転生チート知識を活用しようと希望的観測を元に動いた結果として積み上げた失敗の記憶から、友若に楽観視の危険さを学んでいた。

荀彧の異常な才能を考えれば昨晩の様子はただの策謀だと考える事もできるのだ。

そうに違いないと友若は自分に言い聞かせた。

 

自らが犯してしまった過ちなど存在しないと。

全ての責任は友若ではなく荀彧にあるのだと。

荀彧の行動は打算に因るものだと。

友若はそう信じたかった。

だが、心の奥底で友若は自らの行動が荀彧を傷つけた事を認めてしまっていた。

そして、昨日の記憶を誤魔化せるほどの自己暗示は友若には不可能だった。

 

だからこそ、友若は荀彧と話し合うための場に大量の贈り物を持って行くことにした。

その為に友若が費やそうとしている資金は決して安くはないが、贈り物によって少しでも自分の感情と、荀彧の自分達に対するそれを改善にできるなら費用対効果は十二分だ、と友若は思う。

少なくとも荀彧の感情が悪くなることはないだろうし、友若自身の罪悪感を減らすことも期待できる。

ならば、試してみるべきだ、というのが友若の考えである。

そもそも、友若は官軍との戦いにあたって曹操や孫堅を退けるために一億銭を懐から拠出している友若である。

今更数千万銭程度の追加出費など誤差の範囲だ。

年収を考えると痛い出費であることは間違いないのだが、膨大な収入と支出を経験した友若の金銭感覚は人生ゲームの終盤の様に麻痺している。

 

とにかく、友若は荀彧との対面を前に思いつく限りの贈り物を準備することにした。

冀州で今一番人気のある呉服店に頭巾を依頼したのもその一環である。

昨晩の記憶をたどると、荀彧が身に付けていた頭巾はずいぶんと古くなっていた様であるから、贈り物の選択肢として悪くはないと思う。

腕の良い服職人を抱えているあの店ならばそれなりのものが出来上がるだろう。

そして、頭巾ならば採寸しなくてもそう違和感はないはずである。少なくとも上着などと比べればましだろう。

更に、頭巾の布地は幼いころ荀彧が好んでいた淡い緑色系であるし、犬派の友若と異なり猫派だった荀彧に合わせて猫耳の意匠を付けるように依頼した。

あの頭巾ならばもしかして荀彧の心象向上に一役買うのではないか、と友若は期待した。

 

とは言え、他の準備も怠る訳にはいかない。

友若には袁紹の臣下として期待値を最大化させるべく最善を尽くす義務があるのだ。

 

幸いにして美術品の方面には袁紹の助力を得ることができた。

審美眼の優れた彼女ならばそれなりに良い物を選ぶだろう。

美術品に関しては今ひとつ自信のなかった友若にとって有り難い強力であった。

友若はこの時代の一般的な美術感覚と自分のそれが若干異なっていることを自覚している。

だから、自らの好みで美術的な掛け軸や贈り物、陶器や漆器を選ぶことには不安があった。

もちろん、これは己の美術感覚がこの時代よりも遥かに進んでいるがためである、と友若は信じている。

とは言え、この時代の生まれである荀彧を怒らせないためにはこの時代の一般感覚に迎合しておくべきだろう。

友若はそう考えた。

決して、自らのコレクションを手放すことが惜しかったわけではない。

一応、友若は自分のコレクションから一品も贈り物に混ぜておくつもりなのだ。

ともかく、美術品関係について言えば問題ない、と友若は判断した。

 

だからこそ、友若は取り敢えず菓子類を見繕いに繁華街を歩く。

幼いころの荀彧の好き嫌いを袁紹達は知らない。

それを知っているのは友若だけだ。

一応、荀彧の好き嫌いが変わった可能性もある。

だが、三つ子の魂百まで、という言葉をあることだし、幼少期の好き嫌いは中々変わるものではない、と言うのが友若の判断だった。

少なくとも、昔荀彧が嫌っていた食べ物を渡す愚行だけは避けなければ、と友若は考えた。

 

斯くして。

友若は袁紹達の協力を得ながら、何とか夕刻までに荀彧へ渡すための贈り物を一通り取り揃えることに成功した。

その品目は多岐にわたり、友若達が金に糸目をつけず、時に権力を振りかざしてかき集める様は暫くの間、冀州の井戸端会議に話題を提供することになる。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

太陽が遠くに見える城壁へと近づいている。

半刻もすれば、太陽は城壁の向こうへ沈んでしまうだろう。

冀州の政庁、その貴賓室に据え付けられた窓から程昱は外の景色を眺めていた。

窓を通して見える町並みは夕日を受けて赤く染まっていた。

日進月歩で発展を続ける冀州だが、色彩の影響によるものか、この時間だけは何時もの慌ただしい様子は鳴りを潜め、どこか落ち着いた雰囲気を醸し出している。

だから、程昱は夕焼けが好きだった。

 

「桂花ちゃん、風はもっと気楽にした方がいいと思うのですよ」

 

程昱は振り返ると、身を固くして椅子に座っている荀彧に声をかけた。

 

「桂花ちゃんのお兄さんも緊張しているでしょう。お互いにカチコチでは話もできないのですよ」

「……分かっているわよ……忠告ありがとう」

 

程昱の言葉に荀彧は僅かな苛立ちを滲ませながら答えた。

荀彧も過度の緊張がよくないことは分かっているのだろう。

だからこそ、荀彧は緊張を隠せない自分自身に苛立っているのだ。

程昱は何も言わずに再び窓の外へと視線を向けた。

 

「失礼致します」

 

暫くの間、程昱が窓から外を眺めていると、貴賓室の外から小さいながらもはっきりとした声が掛けられた。

程昱がゆっくりと振り向くと、貴賓室に侍女が入って来るところだった。

 

「袁州牧様、荀大老師様がいらっしゃいます」

「分かったわ」

 

侍女の言葉に荀彧は間を置かずに頷くと、立ち上がった。

程昱は足早に移動して荀彧の隣に並んだ。

2人の様子を見た侍女は頭を下げると引き下がっていった。

 

「いよいよ、ですね~」

「……そう、ね」

 

程昱のささやき声に荀彧は溜息を付くような声を出した。

貴賓室の扉が大開に開かれた。

しかし、その先に袁紹と友若の姿を予想した荀彧と程昱の予想は裏切られることになる。

 

「おー、これはすごいですね~」

 

程昱は思わず感嘆と呆れを交えた声を上げた。

貴賓室に入ってきたのは大量の荷物を抱えた侍女や兵士達であった。

華美な装飾を施された陶磁器や宝石類、彫刻を態々持ってきたことを見るに贈り物か何かだろう。

しかし、その数が凄まじかった。

それこそ、この貴賓室が狭く感じるほどには。

客観的に見て貴賓室は決して狭くはない。

だが、侍女と兵士合わせて二十人にもなろうかという人数がそれぞれ荷物を抱えていれば、貴賓室に全員が入るだけでやっとになってしまう。

更に、程昱の目には一瞬、侍女や兵士達の隙間から積み上げるように置かれた大型の陶器類や掛け軸の姿が映った。

程昱の見間違いでなければ、袁紹と友若が用意したのであろう贈り物は侍女や兵士達が持ち込んだこの部屋に持ち込まれたそれで全てではないらしい。

侍女や兵士達はそれぞれ手に持った美術品等の高価な品々を貴賓室の一画に積み上げていた。

 

「……ぐう」

 

取り敢えず、程昱は半分眠り込んだ振りをしながら、袁紹と友若の意図について考えた。

文字通り山のように積み上げられた品々。

これらは一日でかき集められたはずである。

少なくとも、それ以前に準備していたとすれば、曹操が放った間諜網からその情報が入ってきたはずだ。

しかしながら、昨日から荀彧達は間諜との接触を一切絶っていた。

 

間諜の1人に対して友若がその正体を知っていることを仄めかしたためである。

仄めかされた間諜の女性は酷く怯えていた。

何しろ、これまで袁紹側は曹操側の諜報活動に気が付く素振りさえ見せなかったのである。

そんな状況で、突然友若が間諜の1人の正体を知っていると示唆したことは荀彧たちにとっても衝撃的な事実であった。

ただ、顔を青ざめさせた女性から何とか聞き出した範囲では、友若が本当にその正体について確信を抱いているかは微妙なところである、というのが荀彧達の考えだ。

下手をすれば、ただ侍女がそのように思い込んだだけかもしれない、という意見も出たほどである。

袁紹側が秘密裏に防諜体制を整えようとした所で、それを全く察知できないのはおかしいからだ。

 

とは言え、確証が持てない以上、迂闊な動きはみせられない。

こちらが動揺して迂闊に動くことを期待している可能性もある。

慌てて尻尾を表した諜報員達を一網打尽にする事を友若が企んでいない保証はないのだ。

何しろ、相手はあの友若だ。

警戒をしてし過ぎることはない。

日頃の行動だけを見ればそこそこの行政官でしかない友若だが、その見かけで判断して良い相手でないことはその実績が雄弁に物語っている。

当初はただの愚行に思えた友若の行動が結果的に最終的に大成功と莫大な利益をもたらしてきた過去を思えば、ただの偶然や失策だと友若の行動を切り捨てることは余りに考えが足りていないだろう。

 

だからこそ、荀彧達は侍女を務める間諜にいつも通りに振る舞う様命じると、一旦冀州に放った諜報達との接触を絶つことにしたのだ。

打算的に侍女に対して袁紹側が何らかの行動を取ることを期待しながら。

荀彧が並々ならぬ努力で構築し、程昱の補佐によって完成した諜報網は冀州の官僚制度に劣らないほどに組織化されている。

諜報員はそれぞれお互いに誰が間諜かを知らないし、各自が利用している暗号方式も異なる。

冷酷な話だが、間諜1人を失った所で、諜報網に対する影響は少なく、曹操側にとってはさほどの痛みにはならない。

友若が間諜を処分すれば、袁紹側が曹操側の諜報活動を実際にある程度把握していることが明らかになるのだ。

その情報、袁紹側が防諜体制を整えつつあるという万金に値する確信を手に入れられるなら、間諜1人の命と十分に釣り合いがとれている。

むしろ、友若がこれ以上何もしないほうが曹操側としてはやりにくい。

友若がどこまで把握しているのか。

あるいはただの偶然に過ぎないのか。

袁紹側の動きがなければ確信が持てないのだ。

そして、確信が持てなければ、迂闊に動くことはできない。

 

長年をかけて築き上げられた諜報網。

皮肉なことに、その存在が荀彧達の行動を縛る。

何しろ、これを失うことは余りに惜しいのだ。

曹操にとって現時点で最強の競合相手は袁紹に他ならない。

その手札を覗ける状況は可能な限り維持したい。

この諜報網が最も力を発揮するのはこれからなのだから。

 

あるいは曹操側に疑心暗鬼の警戒を強いることが友若の目的なのかもしれない。

だが、その可能性を考慮し、情報戦で出遅れる事を鑑みて尚、荀彧も程昱も諜報との連絡を止めることを選択した。

何しろ、冀州にいる荀彧達が間諜と連絡をとりあうためには既存の安全な手段が使えない。

そのため、間諜と接触はどうしても場当たり的になってしまい、その秘匿が難しくなってしまう。

それでも荀彧達が間諜と接触するならば、袁紹側は荀彧達を見張っているだけで諜報網について多くの情報を得ることができるのだ。

 

そして、袁紹側は荀彧達の情報入手手段が無くなったそのタイミングで大きく動いた、ということなのだろう。

 

「風、肩に力が入っているわよ」

 

荀彧が小さく程昱に呟いた。

その声は毅然としており、荀彧が泣き疲れて眠っていた早朝から十分に回復したことを程昱は理解した。

程昱は肩を揉みほぐすように動かした。

自分ともあろうものが、これしきの状況で緊張するとは、と程昱は思う。

思っていた以上に曹操の諜報網に依存してしまった、と程昱は自らを戒めた。

相手の手札を相当の精度で覗き見ている状況に慣れてしまったせいで、相手が手札を隠した事に動揺してしまったのだ。

だが、軍師として程昱に求められているのは相手の隠した手札を予測して最善の選択肢を提示することである。

そして、袁紹と曹操が本格的に対峙した時にこの諜報網は利用できない可能性も十分にある。

ならば、これは今後のための良い機会だと思って割り切らねばならない。

程昱はそのように考えた。

 

「はてさて、蛇が出るのでしょうか。それとも、龍が出るのでしょうか」

「茂みには何もいない、という可能性もあるわよ」

「でも、風としては迂闊に茂みに足を入れて蛇に噛まれる事態は避けたいのですよ~」

 

程昱の言葉に荀彧は、そうね、と同意しながら小さく笑みを作った。

そして荀彧は程昱の顔を見ると軽く目を伏せた。

 

「心配をかけたわね」

「問題ないのですよ~。風としては桂花ちゃんの可愛いところを見る事ができて満足でしたけど。けれど、桂花ちゃんはこれでいいのですか?」

「……過去は戻らないわ。私の愚行の結果だもの。受け入れるしかないでしょう?」

 

荀彧の言葉に程昱は何も答えなかった。

荀彧と友若。

その両者の立場を考えれば、この兄妹の仲直りは極めて難しいというのが程昱の本音である。

だが、程昱は両者の仲直りを願った。

極めて優秀な軍師であり、そして繊細な一面を持ち合わせた荀彧の友人として。

 

だから、程昱は袁紹の耳に荀彧と友若の関係を吹き込んだ。

荀彧が仲違いしてしまった兄のことを今でも慕っており、離れ離れになってしまった現実に夜な夜な涙している、友若もまた妹と仲直りしたいと心の奥底で思っている様に見受けられる、といった具合の作り話を。

昔、冀州で役人をしていた程昱は基本的に袁紹が情に厚い人間であることをよく知っていた。

話を聞いた袁紹が両者の関係を取り持とうと動くことを程昱は殆ど確信するほどに。

そして、袁紹は程昱の予想通りに、あるいは予想以上に熱心に動いた。

相談した即日の内に袁紹は兄妹を対面させる席を設けたのだから。

ともかく、袁紹は純粋に兄妹の仲を取り持とうとしているのだろう。

それは良い。

 

問題は、友若の意図である。

友若の行動が偶然でないとするならば、それは恐らく袁紹にとっての利益を最大化することを目的としている。

つまりは、曹操にとって望ましくない結果となる可能性が高い。

当然ながら、荀彧と程昱はそうした事態を防ぐべく動くことが求められている。

 

しかし、――

程昱は横目に荀彧を見やった。

昨晩泣きはらしていた涙の跡は既に残っていない。

態度もまた、いつも通りの毅然としている。

だが、それでも、程昱は荀彧にはまだ時間が必要だと思った。

恐らく、友若がどんな揺さぶりをかけた所で、荀彧は揺らがずに、曹操の軍師として最善を尽くすだろう。

 

しかしながら、傷つきやすい荀彧の内面を知っている程昱は、その結果として荀彧が心の中に血を流す事に心を痛めた。

せめて、もう少し時間があれば、と程昱は嘆く。

友若にしてみれば相手が弱った所を攻めるという基本的な戦術を選択しているだけであり、軍師として程昱にその行為を非難できる権利はない。

程昱だって、友若の立場にあれば同様に行動した可能性が高いのだから。

 

――でも、兄さんはずっと有利な立場にいるんですから少し位手加減してくれてもいいんじゃないんですか……

 

有利な立場をより確固たるものにするべく行動する。

相手の弱点を徹底的に突く。

友若の行動は軍師として、王を支える参謀の職責として極めて正しい。

それでも、程昱は内心で友若への不満を呟かずにはいられなかった。

 




中途半端な所で終わることになりましたが、仕様です。(※1)
諦めてください。(※2)
そして、次こそはけーりんを終わらせます。(断言)
ただ、暫く忙しいので更新できません。
楽しみにしていただいた方(※3)には申し訳ありません。
文句を言われても何もできませんが。
……何とか今年度中には完結させたいのですが。(※4)

※1:荀シン(以下略)はさらっと読める仕様を目指しております
※2:6万字書いて1話の半分もいってないとかマジ勘弁
※3:微レ存
※4:脳内プロットは大分前から出来上がっています。細部はちょこちょこ変更になっていますが大まかには変わっていません。……ネタバレマジ勘弁。されてもストーリー変更はできないのですが。

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